┏ 目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
【SJFニュース】
● SJF第3回助成先公募の選考結果
● SJF第2回助成先の活動最終報告
●来週!『セクシュアルマイノリティに開かれた、これからの社会』(12/22)ご案内
~ダイバーシティをLGBTという視点から考える~ SJFアドボカシーカフェ第33回
【コラム:ソーシャル・ジャスティス雑感】 情報公開へのチャレンジ (辻 利夫)
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【SJFニュース】
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●ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第3回助成先公募の選考結果
SJFの第3回助成先の公募には、37団体よりご応募いただき誠にありがとうございました。このたび、書類審査と面接審査により4団体へ総額300万円の助成を決定しました。この助成は、公正な社会を実現し希望ある未来を創造することを目的として、社会課題の原因を改善する新たな制度や仕組みを社会提案する市民のアドボカシー活動を、資金と社会対話の両面から支援するものです。
【助成テーマ1】=「子ども・若者の未来に関する取り組み」=
○「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」による
『大学・高校進学における外国人特別枠の設置・拡充にむけたアドボカシー』
――日本人と外国人の進学格差を是正することを目的とする即効性が期待できる対策です。経済的不安定を背景とする進学格差を是正することは、子ども世代の貧困の再生産という貧困の連鎖を断ち切ると同時に多文化社会形成にもつながります。
○「人身取引被害者サポートセンター ライトハウス」による
『児童・青少年向け人身取引被害者のための専用サイト/アプリ開発プロジェクト』
――日本で唯一の人身取引被害者専門のホットライン事業を有する団体です。事業の背景として、近年子どもの性的搾取被害が増加していますが、取り締まる国内法は未整備であり、人身取引に対する取り組みは社会的・法的・文化的に先進諸国に比べて著しく遅れている点があります。被害の早期発見・被害者の早期救済のため、訴求力のあるコンテンツと広報機能を強化し、ホットライン事業がこれを支援します。
【助成テーマ2】=「原発事故による被害者支援」=
○「市民科学者国際会議」による
『放射線防護について情報・知見・取り組みを、市民と科学者が共有し、共に次の一歩を模索していくための第5回市民科学者国際会議の開催』
――低線量被ばくによる健康影響を示す新たな研究が多数発表されていますが、社会的に知られておらず、立場の違いから政府機関に正式には取り上げられることもありません。本国際会議は、正答のない現状で、政府や企業から独立した科学的知見と市民の視点に基づいて放射線の健康影響を再評価し、総合的な意思決定に寄与することを目的とし、被害者保護と放射線防護対策のプロセスを確立します。
【助成テーマ3】=「見逃されがちだが、大切な問題に対する取り組み」=
○「生活保護問題対策全国会議」による
『生活保護基準の引下げを阻止するとともに生活保護の捕捉率100%を目指す事業』
――生活保護利用者は、高齢・障害・傷病・母子など社会的・経済的に弱い立場におかれ孤立しがちですが、昨今のバッシングの影響で偏見が強まり更に声をあげづらい立場となっています。生活保護基準の引き下げに対し当事者とともに抵抗し、さらに当事者の声を社会に届けること、および正確なデータに基づく生活保護制度についての正しい理解を市民の間に広めることは、人権保障の重要な活動であり、低所得者救済策と連動して国民経済全体の底上げにもつながります。
★詳細⇒ http://socialjustice.jp/p/fund2014plan/
●SJF第2回助成先より最終報告をいただきました(助成期間=13年10月~14年9月)
○「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークによる
『「生かそう!“子どもの貧困対策法”」市民のちから事業』
――子どもの貧困問題について、市民・自治体・地域で活動するNPO等の団体と連携して、それぞれの地域でもとめられる施策を協働して作り上げる“道筋”を立てることができました。
子どもの貧困対策法の大綱策定に向け、当事者や支援者など多分野の市民とともに要望をとりまとめました。また、自治体職員や議員と市民の間で、対策法で義務付けられた施策の具体化や、行政とNPOが連携した支援策について、情報共有と意見交換を先駆的に行いました。さらに、重要な施策となる就学援助と定時制高校・夜間中学の問題を伝え、学びあうセミナーを開催し、14年4月の「夜間中学等義務教育拡充議員連盟」の発足や、8月に発表された大綱に夜間中学の設置拡充が盛り込まれる一助となりました。
今後は、5年後の大綱見直しと大綱に基づいた各自治体での施策実施にむけて、「子どもの貧困対策情報交換会」や「子どもの貧困対策法情報提供ページ」等により、多様な市民の声を行政に届けていく土台づくりを進めていきたいとのことです。
★詳細⇒ http://socialjustice.jp/p/2013lastreport1/
○「OurPlanet-TV」による
『映像報告「チェルノブイリ・28年目の子どもたち」制作と上映キャンペーン』
――この映像報告ビデオは2000枚プレスに至っており、上映会も全国各地で開催されています。
事業の目的は、日本の放射線量基準や避難基準の見直し、健康診断や子どもの保養などの被ばく防護対策の充実など、政策を抜本的に変えることにあり、まだ活動の途上にあるものの、全国各地で成果を生み始めています。例えば、南相馬市の避難勧奨地点の指定地域では9月末に避難解除が予定されていましたが、地域の住民が、このビデオを行政区長などに配布したことにより理解が広まり、地域一丸となって反対を表明し、避難解除が延期されました。さらに、住民は原子力災害現地対策本部の本部長に、このビデオを手渡しし、低線量被ばくについて認識を改めるよう要望しています。
今後は、学校教育関係者に対する幅広い上映運動を広げ、子どもに接する現場の中から声が強まるようとりくんでいきたいとのことです。
★詳細⇒ http://socialjustice.jp/p/2013lastreport2/
○「アムネスティ・インターナショナル日本」による
『名張毒ぶどう酒事件・奥西勝死刑囚と袴田事件・袴田巌死刑囚の再審開始を通した死刑廃止の世論喚起事業』
――3月に袴田さんが釈放されたことにより、世論の関心が集まり、冤罪と死刑の問題をアピールすることができました。一般的に理解を得られにくい人権問題であるため、より分かりやすく伝え、参加しやすい形での活動となるよう努めており、映画『約束』を活用したキャンペーンや、袴田さんのお姉さんを東京に招いてお話いただいたイベント等で、多くの参加者を集めることができました。
また、袴田さんの地元・静岡での要請行動は大きなアピールとなり、静岡地裁が決定した釈放への影響は強かったと考えられるとのことです。
今後は、時間はかかるだろうが、袴田さんを招く公開イベントを開催し冤罪と死刑について世論に問題提起をしたり、奥西さんの再審開始を求め続けるとともに法務省矯正局に対して処遇の改善を働きかけたりする予定とのことです。
★詳細⇒ http://socialjustice.jp/p/2013lastreport3/
○「環境・持続社会」研究センターによる
『原発輸出による社会的不公正・途上国市民の被害回避を実現する政策・体制構築のためのアドボカシー活動』
――トルコとの原子力協定は可決してしまったものの、トルコ現地の団体と連携し、その声を日本の国会議員に提示したり、参議院外交防衛委員会の参考人質疑に招聘され、与党議員に提言したりできたことで、税金を使った不透明な原発立地調査や、安全確認体制の問題点について国会議員の理解を促進できました。
今後は、インドやサウジアラビアとの原子力協定・原発輸出における安全確認制度の策定に対し調査提言することや、トルコの原発立地調査の報告書の情報公開と内容分析などに取り組む予定とのことです。
★詳細⇒ http://socialjustice.jp/p/2013lastreport4/
●来週開催!『セクシュアルマイノリティに開かれた、これからの社会』★申込受付中★
~ダイバーシティをLGBTという視点から考える~(SJFアドボカシーカフェ第33回)
【日 時】12月22日(月)18:30-21:00(受付開始18:00)
【会 場】文京シビックセンター 4階シルバーホール
【ゲスト】藥師実芳さん(NPO法人ReBit代表理事)
阿部裕行さん(東京都多摩市長)
――日本でのLGBT(性的マイノリティ)人口は5.2%だと言われていますが、当事者の方々に対する差別は根強いものがあります。地域社会の中に実在し、あたりまえの生活をしていることへの配慮に欠ける発言をする方も、残念ながら少なくありません。いっぽう今年、多摩市と文京区で「性的指向と性自認に基づく差別の禁止」を盛り込んだ男女平等参画条例が施行されました。多摩市条例の基本理念は、「すべての人が、個人として尊重され、性別並びに性的指向及び性自認にかかわらず、個人の能力及び個性を発揮し、意欲及び希望に沿って、社会的責任を分かち合うこと」です。 またLGBTの方々から、私たちひとりひとりだけではなく、「地域社会」や「行政」など社会全体できちんと向き合うことが必要だと、広く語りかけられ始めています。
そこで、今回のアドボカシーカフェでは、「LGBT成人式」などの企画を通して社会を変えようと努力しているNPO法人ReBit代表の藥師実芳さんと、行政側で先駆的な取り組みを行っている多摩市長の阿部裕行さんをお迎えして、差別の禁止やマイノリティへの配慮を前提とするダイバーシティ(多様性)のある社会について対話します。
★詳細・お申込み ⇒http://socialjustice.jp/p/20141222/
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【コラム:ソーシャル・ジャスティス雑感】 情報公開へのチャレンジ (辻 利夫)
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アベノミクス信認選挙となった衆院選は、前回に続き自民党の圧勝に終わった。投票率は過去最低の52%で、アベノシラケ選挙でもあった。昨年来の争点であった、原発再稼動、特定秘密保護法、集団自衛権、憲法改正など、これからの日本の政治の在り方を方向づける問題は棚上げにされた選挙戦最中の12月10日、特定秘密保護法が施行された。この問題点については、すでに多く語られているが、特定秘密とはなにかを決めるのは政府のトップで、なにかとは何かも国民には知らせない情報のブラックボックスを作るのが法の狙いである。
どのような原発情報が特定秘密にあたるのか、国会でもかなり議論されたが、いまもって明らかではないのもブラックボックスだからである。元もと、原発情報は裁判においても全面墨塗り状態のものしか出てこなかったが、2001年に施行された情報公開法においても、私企業は情報公開の対象にならないので、現状でも電力会社の原発情報を公開させることはできない。
福島第1原発事故が起きたときに、当時、ロシアのメドヴェージェフ大統領はいち早く、「日本は情報公開が遅れている」と批難した。「ロシアに言われるのかよ」という、情けない思いをした方も少なくないだろう。しかし、ロシアの前身、旧ソ連時代にソ連共産党のゴルバチョフ書記長は、1986年4月のチェルノブイリ原発事故に衝撃を受け、情報公開(グラスノスチ)の推進に大きく舵を切ったのである。それがソ連崩壊の序曲になったという見方もある。ロシア大統領の発言の背景にはそうした苦渋の歴史があるのだろうと感じたものである。
その後も、国内外から電力会社と経産省保安院などの政府機関の情報隠しと情報操作が批判されているにもかかわらず、2011年9月に東京電力が衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会に提出した福島第1原発の「過酷事故の運転手順マニュアル」は、表紙と目次のほかは一面墨塗りだらけ。東電はこれすらも第三者に公開しないように求め、同特別委員会の川内委員長が「中身がないので隠す意味がない」というしごくまっとうな理由で公表したことで、東電の隠蔽体質が改めて世間に知られることになったということも、もはや忘れられようとしている。
原発事故に関わる出来事の忘却と無関心化が進むなかで、特定秘密保護法が施行されたことは、今後、特定秘密に指定された原発情報が、国会で公表されることもできなくなるし、市民やメディアによる情報へのアクセスも常に逮捕というリスクがつきまとうということでもある。それによってメディアが萎縮し、国民の無関心が一層進むことのないように、政府、電力会社を監視し、情報公開にチャレンジすることが、今こそソーシャル・ジャスティスであるといいたい。
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今月号の執筆者プロフィール
●辻 利夫 (認定NPO法人まちぽっと理事。雑誌記者・編集者などを経て、1993年東京ランポ設立とともに専従スタッフとなる。1980年情報公開法を求める市民運動の結成に加わり、情報公開制度の制定運動に取り組む。東京都品川区在住。)
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