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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第8回助成最終報告


アプロ・未来を創造する在日コリアン女性ネットワーク(2022年1月)

 

助成事業名・事業概要

在日コリアン女性に関する複合差別実態調査―第3回在日コリアン女性実態調査―

 民族差別とジェンダー差別の複合によって周縁化され、不可視化されてきた在日コリアン女性の生活・人権状況に関する統計的情報はほとんど無い。一方、20年ほど前からマイノリティ女性に対する複合差別に関心を持つ国連人権機関からは関連する情報の提供が日本政府だけではなく当事者に対しても求められるようになってきた。
 そうした状況下でアプロ女性ネットは、2004年と2015年からそれぞれ3年がかりで当事者による「在日コリアン女性実態調査」を2回実施し、結果を報告書にして発表してきた。その成果は大きいが、課題もいくつか見つかったため、内容も抜本的に補足・改善して、政府と日本社会、さらに政府と国連人権機関に対してより一層説得力のある情報を提供すべく「第3回在日コリアン女性実態調査」を行い、在日コリアン女性の存在を可視化し、複合差別の解消に向けた政策提言に活用し、人権と尊厳が保障される社会の実現をはかる。

 第3回在日コリアン女性実態調査では、「子育て」「介護」「コロナと仕事」を中心にした生きにくさについて、配布形式のアンケート調査といわゆるニューカマーの在日コリアン女性を対象にしたオンライン調査、そして、インタビュー調査を実施し、複合差別の実態を明らかにする。

助成金額 : 100万円 

助成期間 : 2020年1月~21年12月

実施事業の内容: 


  • アンケート調査の質問項目の作成。

 2020年1月26日より、概ね月1回のペースでアンケート調査項目とインタビュー調査の実施方法について対面での会議とメーリングリストを通じての意見交換を進めてきた。しかし、新型コロナのパンデミックが起こり、大阪府、そして国の緊急事態宣言の状況下で、3月から2か月以上は実質活動ができず、会議を再開できたのは、5月31日であった。その後、調査実施の実務会議は月1回のペースで開催してきた。9月以降は、ZOOMによるオンライン会議も実施できるようになった。9月26日には、SJFから上村英明さんと小林幸治さんが来阪されて交流会を持ち、アンケート項目についても意見交換を行った。

 当初予定していた紙媒体によるアンケートは、日本で生まれ育った在日コリアン女性を対象とすることにし、来日して住むようになった在日コリアン女性にはグーグルフォームを利用したハングルでのインターネットでのアンケートを作成することになった。


  • インタビュー調査は、当初グループインタビューも想定し、30人を予定していたが、コロナ禍で対面でのアポイントを取るのが難しくなり、複数人数でのインタビューは一層困難であると判断し、対象者を20人にした。8月より月1人~3人程度の目安でインタビューを実施しているが、これまで、家族の高齢者介護の経験者、在日コリアン高齢者を対象にしたケア施設の運営者、仕事での差別体験者などへのインタビューを計19人行なった。インタビューは文字起こしをした内容をインタビューイに確認してもらった後、アプロ女性ネットのメンバーで情報を共有した。
  • アンケート調査票原案の作成後、10月18日に意見検討会を開催し、参加者の意見を聞いて、11月末に紙媒体のアンケート調査票を完成した(全部でA4サイズ16頁)。

 12月中旬に1,000部印刷し、配布協力者の確認や配布のための作業を始めた。具体的には前回の第2回の協力者や報告書の送付先の一覧表を作成し、2020年12月から2021年4月までアンケート調査票の配布および回収を行った。2020年はコロナ禍のため、メンバーの活動自体が一時ストップし、また配布先への訪問やインタビューを対面でするという従来までのやり方が難しくなり、苦慮したが、メンバーのネットワークを丁寧に活用し、またfacebookやその他のメディアで自分たちが利用できるものは積極的に発信のツールとし、配布を行った。また、民団や総連傘下の関連機関や地域同胞コミュニティ、在日コリアンNGO団体、民族学校コミュニティ、韓国総領事館関係者、キリスト教会関係者などの協力を得て、当初、千部なので、途中で刷り増しをし、最終的に1157部調査票を配布し、553部回収することができた。


  • 2021年3月8日から4月13日まで、いわゆるニューカマーの新渡日の在日コリアン女性を対象にグーグルフォームを利用したオンライン調査を実施した。この調査では、133名の回答を得ることができた。
  • 7月27日 ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)主催のアドボカシーカフェで中間報告した。

「ジェンダーと民族が複合する差別―在日コリアン女性自身による実態調査―」


  • データ精査・分析・報告書(*写真下)作成

 2種類のアンケートを回収・データを精査し、アプロ女性ネットのメンバーによる分析を行った。またインタビュー調査の文字起こしデータも同様に自分たちによるデータ分析を行い、報告書作成に向け作業を進めた。報告書は、調査に協力をいただいた団体や個人、メディア関係などに寄贈するとともに、当事者、関心のある日本人、研究者等に有料頒布する。

250SJF20190723
  • 2021年12月26日 「第3回在日コリアン女性実態調査」報告会をオンラインと対面で実施した。
 

 

助成事業の達成度・成果:


  • アンケート調査、オンライン調査、インタビュー調査という3本の柱による調査を完遂した。報告書の作成後、12月26日報告会で成果の一端を関心のある市民と共有することができた。
    ―アンケート調査は、17の都道府県から553部回収

    ―オンライン調査は、133名の回答
    ―インタビュー調査は、19名の方から聞き取り
  • アンケート調査票のデータ入力やデータクリーニング、ローデータの作成をアプロのメンバーで行った。印刷費の高騰のため、500部報告書を印刷した。調査協力団体やメディアなどに寄贈し、当事者、関心のある日本人、研究者等に有料配布する。
 

助成事業の目的と照らし合わせた効果・課題と展望:   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか(自力での解決が難しい場合、他とのどのように連携できることを望むか)。

(1)当事者主体の徹底した確保


・アンケート調査項目の決定について、メンバーの中にはかならずしも社会調査の専門家ではない人もいるが、時間をかけて相互に納得が行くまで議論し、項目を精査した。その場合、社会調査の専門家のアドバイスは受けたが、決定のプロセスは自分たちが対等に考えることを大事にした。今回も調査結果の分析などの作業は、自分たちの経験や感性を資源としながら、丁寧に議論を深め、調査報告をまとめた。

・調査票をより多くの在日コリアン女性に届けるための各地域での学習会などが、コロナ禍により難しくなった。従来の機縁法で知人、友人、親族に配布するとともに、民族団体や地域同胞コミュニティ、在日コリアンNGOセンター団体、民族学校コミュニティ、韓国総領事館関係者、キリスト教会関係者などに配布協力をお願いした。

・大阪のメンバーが多いことから、地方の現状を知ることがむずかしく、そのため北海道のメンバーにコロナ禍の現状をエッセイという形で書いてもらった。

・コロナ禍という状況で、配布方法が限定されたこともあるが、アンケート調査に少なくとも協力できる(余裕のある)と思われる方への配布にとどまったと思われる。コロナ禍で経済的に困窮している在日コリアン女性にどこまでアンケート調査を届けられたかという課題は残された。

(2)法制度・社会変革への機動力

 2016年JNNC(日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク)に参加し、女性差別撤廃委員会日本審査に向けて、部落女性やアイヌ女性とともにマイノリティ女性として包括的なNGOレポートを提出した。部落女性とアイヌ女性とは、国際人権NGOであるIMADR(反差別国際運動)での複合差別研究会や2004年のそれぞれの実態調査を契機にマイノリティ女性フォーラムを開催し、協働を図ってきた。
 報告書をもとに、女性差別撤廃委員会日本審査に向けたNGOレポートに生かすと共に、日本国内では、在日コリアン女性をはじめとするマイノリティ女性の人権向上に向けて、内閣府男女共同参画局等への提言などの活動を行なっていく。今回の調査結果は、そのための具体的な提案の基礎データとなるための報告書となる。

(3)社会における認知度の向上力

 在日コリアン女性のような複合差別を受ける立場にある人たちの存在を認識し、差別是正に向けた人権意識を高めるために、報告会開催やメディアなどへの働きを通じて調査結果を発信するとともに、寄贈・有償頒布を含めた報告書の配布に注力する。

 今後、ヒューライツ大阪との共催による学習会や部落解放同盟の関係者から声がかかり、人権啓発の集会での報告などでの学習会などが予定されている。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 2002年いわゆる拉致が事実となって以後、日本社会には、これまで以上に在日コリアンに対するバッシングが蔓延し、ヘイトスピーチやヘイトクライムが横行した。さらに、高校無償化措置政策からの朝鮮高等学校生徒排除や自治体による助成金の廃止など、行政や政治による民族差別が公然と行なわれてきた。
 そうした中で、在日コリアン女性の存在は、不可視化されたまま、偏見や無関心に晒されてきた。在日コリアン女性の多くは、民族差別と女性差別という複合差別の中で、「生き抜いて」こざるを得なかった。
 ステークホルダーとの関係を構築するのは容易ではない。ひとつには、多くの在日コリアン女性にはそのような活動を展開する余裕がない。日々の暮らしに追われ、自らの生き方を模索している在日コリアン女性にとって、ステークホルダーに対置することは無理である。
 しかし、ヘイトスピーチに対するカウンターの存在やヘイトスピーチ解消法(理念法であり、罰則がないといった不十分ではあるが)の成立、川崎市の差別禁止条例などにみられるように、社会の状況に疑問を持ち実行するマジョリティを増やし、共にステークホルダーと向き合うことで、社会を変えることができることを示唆している。

 今回の実態調査は、在日コリアン女性の存在を可視化し、具体的に共に生きる社会のあり方を報告会や報告書の内容を通じて説得力をもって提示することができ、ステークホルダーとの関係構築に間接的に寄与できる。

 また、アプロ女性ネットは、実態調査の協力の際、政治的主張に関わりなく、民族団体や在日コリアンや女性たちの人権に関心のある団体にアプローチしてきた。それは、在日コリアン女性の複合差別の問題は、政治的理念を超えた共通の問題を提示しているからである。

(5)持続力

 現在のメンバー11名の小さな組織であるが、それぞれが長年様々な在日コリアンのグループの活動に参加してきた経験がある。目下の課題は、そうした活動の実績を次の世代に引き継ぐことである。これまでも各自が育児・家事・仕事・介護などを担いながら、アプロ女性ネットにボランティアとして活動してきた。自分たちの力量に見合う活動を勘案しながら新たなメンバーを勧誘することにも注力してきた。今回の実態調査を通して新たなメンバーが報告書の執筆にかかわったり、インタビュー調査を通して、若い在日コリアン女性との出会いがあった。継続は力であることを実感し、新たなメンバーを増やすとともに、アプロ女性ネットの活動に共感し、共に問題解決に向け関わってくれる(在日コリアンに限らない)個人や団体を増やしていきたい。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 ジェンダーに基づく差別以外の2重、3重の差別―複合差別の問題が国際的に認識されたのは、1995年北京女性会議である。在日コリアン女性は、民族差別と女性差別という複合差別の問題に直面してきたが、在日コリアンに対する民族差別に取り組むことが余儀なくされる中で、在日コリアン女性自身も複合差別の問題が認識されてこなかった。
 そして、日本社会、在日コリアン社会に長年、根付いてきた儒教的家父長制の意識がなかなか変わらず、ジェンダー平等の達成には程遠い状況である。また、日本政府が朝鮮半島を植民地支配した結果、日本に残らざるをえなかったコリアンの人権保障は不十分なままである。このような状況の下、在日コリアン女性の存在と複合差別に直面している実態は、日本の女性運動の課題からも在日コリアンの人権運動の課題からも抜け落ちた課題になっていた。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。

 当事者たちの実態を示すデータ、生の声を集めて発信することで、在日コリアン女性の存在を可視化し、真のジェンダー平等社会に向けた意識変革に貢献する。日本の女性運動や在日コリアンの人権運動に対し、在日コリアン女性のような複合的な差別を受ける人たちの存在とその課題を問題提起する。

 当事者たちの意識覚醒の契機となり、自らをエンパワメントし、差別や抑圧をなくすためのネットワークに参加する。

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。

 JNNCをはじめとする日本の女性運動のネットワーク組織との連携強化をはかり、問題意識の共有と多様な女性たちのニーズを把握し、例えば、女性差別撤廃条約選択議定書の締結を目指す。

 マイノリティ女性フォーラムをはじめ日本国内の他のマイノリティ女性のグループとの交流・協働の機会を継続して発展させることで当事者がエンパワーされる。そして、協働で日本政府や行政に働きかける。

 在日コリアンのコミュニティとの協働作業を通じて、性平等文化を共につくる契機とする。今後、韓国をはじめとする家父長的文化が根付く国々でのマイノリティ女性グループとの交流を通じて、複合差別に対する国境を越えた共感と解決に向けた方策を議論する契機にすることができる。

 

本助成事業によって作成した調査報告書:『第3回在日コリアン女性実態調査-「子育て」「介護」「コロナと仕事」を中心に見えたもの-

本報告書をご希望の方は、e-mailで以下の連絡先まで、○お名前、○住所、○電話番号、○希望冊数を書いてご連絡ください。折り返し、報告書と郵便振替用紙を同封してお送りします

 連絡先e–mail:  apeuro.inthefuture@gmail.com 

*1部¥800、≪送料込≫¥1,000  
 2冊まで送料200円 ※3冊以上は送料実費

*報告書の仕様:A4、本文144頁

―在日コリアンであり、女性であることで被る複合差別(交差性差別)についていっしょに考え、解決の道を探るための当事者の貴重な声と情報が詰まっています―

 

 

関連するSJFアドボカシーカフェ:ジェンダーと民族が複合する差別―在日コリアン女性自身による実態調査―の報告はこちらから

 

 

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