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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第2回助成先
=「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク=助成事業最終報告(Dec.2014)

団体概要
「なくそう! 子どもの貧困」全国ネットワークは、日本の子どもの貧困解決を目的として、2010年4月25日に設立された個人参加のネットワーク。①貧困を生み出す社会的メカニズムを解明し可視化すること、②一人でも多くの人とこの現実を共有すること、③困難のなかで生きるあらゆる子ども/若者に支援を行き届かせること、④子どもの貧困問題を解決する政策を推進することを柱に活動し、メーリングリストでの情報発信・共有、相互交流などを中心としつつ、ゆるやかなつながりで運営している。

助成事業名「生かそう!子どもの貧困対策法」市民のちから事業

 ネットワークの強みを生かし、子どもの貧困問題に関わる多領域/多分野の方々の知恵をいただき、提言につなげていくために、①市民のつどい、②自治体セミナー、③連続セミナーを開催し、提言書をまとめる。

助成金額 : 99万3,000円

助成事業期間 : 2013年10月~2014年9月

助成事業の成果・助成の効果:

(1)「『生かそう!子どもの貧困対策法』市民の集い」事業について
 本事業のねらい・意義は、子どもの貧困の当事者や、子どもの貧困に関わる活動をしている多分野の団体・個人に参加して頂き、今後策定される「大綱」に対する要望等をとりまとめることであった。2回に及ぶ市民の集いの成果として、参加者が「法律」「大綱」に求めるものを考える中で、「法律についての理解」「法律に対して私(たち)は何ができるか」「私(たち)が訴えるべきことは何か」について、改めて考える機会を提供できたことがあげられる。またその結果、子どもの貧困対策法「大綱」案について内閣府がパブリックコメントを募集した際、「なくそう!子どもの貧困」ネットワークとして意見提出を行なったことに加え、市民の集いに参加頂いた多くの団体・個人からもパブリックコメントへの意見提出して頂くことができた。さらに、市民の集いに参加した団体が独自に連携して、「大綱」への要望を訴えるイベントを開催し、マスコミ等で報道されるといった形への発展もあった。以上のように、当初のねらいであったネットワークとして「大綱」への要望をまとめることに加え、市民の集いの参加者が「法律」「大綱」というものに自分(たち)の意見を伝え・活かすことができるということを理解し、実行に移していただけたことも、助成事業による成果だと考える。

(2)「子どもの貧困対策自治体セミナー」事業について

 本事業のねらい・意義は、自治体関係者を講師・参加者として、子どもの貧困解決につながる先進的な施策を共有し、自治体関係者や市民の間で情報共有と意見交換を行うことで、「法律」で義務付けられた施策の具体化の参考として頂くことであった。参加者には自治体関係者以外に、地方議員や、地域で行政と連携して活動を行なうNPO団体の方の参加もあり、議員の立場から自身の自治体でどのような施策が求められるか、また行政とNPO等が連携してどのような支援ができるのか、セミナーを通してそれぞれの立場での問題意識を共有し、啓発の機会にできたと考える。2度のセミナー開催後には、セミナーに参加できなかった遠方の自治体関係者から資料請求もあり、子どもの貧困対策に関する意識の高まりを感じた。こうしたセミナーは、今後国レベルでも必要とされているものだと思われるが、これまでのところほとんど公的には開催されていない。今回の助成で先駆的に開催できたこと自体も大きな成果だと考える。

(3)「子どもの貧困を考える連続セミナー」事業について

 本事業では、テーマごとにその分野の専門家や実践者を講師として招き、広く市民のかたに子どもの貧困の現状を伝えること、子どもの貧困に関わる方には課題、対応策を学んでもらうことをねらい・意義とした。セミナーでは就学援助の問題と、夜間中学校・夜間定時制高校私立通信制の問題を取り上げたが、夜間中学校については、2月のセミナーの後、4月に「夜間中学等義務教育拡充議員連盟」が発足することとなり、また子どもの貧困対策法「大綱」にも夜間中学校の設置拡充が盛り込まれるなど、セミナーの開催が夜間中学の問題を多くの人に知って頂くきっかけとなり、議連の発足や「大綱」に盛り込まれる一助となったと考えられる。

 

助成事業の成果をふまえた今後の展望:

 今回の助成事業の成果により、市民・自治体・地域で活動するNPO等の団体が連携をして、地域でもとめられる施策を協働で作り上げていく“道筋”が立てられたと考える。2014年8月末に発表された子どもの貧困対策法の「大綱」は、まだまだ不十分な点も多く、5年後の見直しに向けて、そして「大綱」に基づいた各自治体での施策の計画・実施に向けて、“道筋”から“土台”作りのステップに進む必要があると考える。その“土台”作りの一環として、今回の助成事業全体のねらいである“①地域の実情に即した「子どもの貧困対策計画」立案の促進②実態把握をもとにした子ども・保護者に届く施策の策定・実施の促進”を踏襲した「子どもの貧困対策情報交換会(仮称)」を今後は定期的に開催していく。また、助成事業で構築した「子どもの貧困対策法情報提供ページ」の内容を充実させ、各地での子ども貧困対策に関する情報共有も行なっていく。今後、市民の声を「大綱」の改定や地域で求められる施策に届けるために、「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークとして、さらにネットワーク力を増強していく必要があると考えている。セミナーや学習会を通して、見えにくい子どもの貧困問題を可視化させるための啓発活動を続けながら、市民同士、自治体同士、NPO等の団体同士のネットワーク、そして地域ごとに様々な立場の方を包括したネットワーク(=対話の場)を構築する一助となるような機会の提供に貢献して行きたいと考える
 

助成事業計画

(1)全国集会の開催:2013年10月6日(日)実施

「『生かそう!子どもの貧困対策法』市民の集い」を開催。保育・教育・福祉(社会的養護を含む)・医療・若者支援等の領域で活動する団体・個人が一堂に会し、法律を各現場や地域で生かすための方策について考え、今後策定される「大綱」に対する試案や要望等をとりまとめる。

(2)子どもの貧困対策自治体セミナーの開催:2013年12月14日(土)実施,2014年4月27日(日)実施予定

行政関係者を講師・参加者として招き、子どもの貧困対策法の趣旨と有効な活用方法について学び合う。先進実践事例をもつ自治体(民間との連携を含む)の報告をもとに、自治体担当者間で情報共有と意見交換を行う場とする。

(3)連続セミナーの開催:2014年1月30日(木)、2月27日(木)実施

隔月ごとに、テーマ/分野をしぼり、その分野の専門家や実践者を講師に招き、現状と課題、対応策を学ぶとともに、参加者が活躍する分野・団体等がそれらを共有することで解決できることがないか、方向性を探る。

(4)全国集会の開催:2014年5月24日(土)実施予定

(1)~(3)の成果をふまえ、市民の立場からの要望・提言をまとめる場とし、提言・報告書作成を予定。ホームページ掲載などを通じて広める。

 

事業計画の達成度:

事業計画に基づき、成果を上げることが出来た。
事業計画にのっとり2回開催した、全国集会(『生かそう!子どもの貧困対策法』市民の集い)では、「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークのネットワーク力を生かし、多領域の方から発題を行っていただくと同時に、さまざまな領域の方に参加していただいた。
同様に事業計画通り2回開催した自治体セミナーでは、子どもたちや保護者に対して地域で支援を行っている方のほかに、市町村など自治体関係の方々にもお話をいただいた。
連続セミナーでは、就学援助と定時制高校、夜間中学という、貧困問題を抱える子どもや若者、保護者を支援する上での重要な施策の問題や現場の課題を深く学ぶ機会となった。
最後に、上記の事業結果を活かし、提言の作成と普及へとつなげた。

 

実施助成事業と内容

SJF2013助成先_子どもの貧困
写真=第2回 子どもの貧困対策・自治体セミナー(2014/04/27)
©「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク

 

1.「生かそう!子どもの貧困対策法」市民のつどい

◆日時:2013年10月6日(日)13時開場 13時30分~16時30分
◆会場:豊島区勤労福祉会館 大会議室
◆参加者:約120名(学生・奨学生、ひとり親家庭当事者・社会的養護当事者、子ども関連NPO・支援団体・福祉施設スタッフ、学校教職員、夜間中学教員、スクールソーシャルワーカー、地方議員、医師、弁護士、研究者など)
◆内容
【第1部】「当事者が願う子どもの貧困対策」では、下記の当事者/支援者の方々が発言してくださった。
・地域での支援:栗林知絵子さん/NPO法人 豊島子どもWAKUWAKUネットワーク代表
・ひとり親家庭支援:片山知行さん/特定非営利活動法人 全国父子家庭支援連絡会代表理事
・子どもの貧困対策:村井琢哉さん/特定非営利活動法人 山科醍醐こどものひろば理事長
・奨学金問題:岩重佳治さん/奨学金問題対策全国会議・弁護士
・夜間中学問題:澤井留里さん/夜間中学講師
・若者・学生の立場から:岸野秀昭さん/大学生・子どもサポーターズとしま 学習支援会「クローバー」・CYCLE
・社会的養護:渡井隆行さん/特定非営利活動法人 社会的養護の当事者参加推進団体日向ぼっこ代表理事

【第2部】では、【第1部】の発言を受けて、① 教育、②社会的養護、③ ひとり親支援、④ 若者問題、⑤保育・乳幼児・医療・障害児、といった領域のほか、⑥領域は限定しないグループに分かれ討論を行った。

 

2.「子どもの貧困対策・自治体セミナー」

◆日時:2013年12月14日(土)12時30分開場 13時~16時30分
◆会場:お茶の水女子大学 共通講義棟1号館301
◆参加者:84名。(自治体職員、地方議員、NPOスタッフ、学生、大学教員、マスコミ関係者、省庁職員など)
◆内容
4名の方々に自治体での取り組みを報告していただいた。

◎報告1:片岡孝さん(東京・荒川区総務企画部企画担当課長)には「あらかわシステムと荒川区の取り組みの現状」をご報告いただいた。

「区政は区民を幸せにするシステムである」という区の基本姿勢のもと、荒川区民幸福度の研究とともに、2009年には「子どもの貧困問題検討委員会」が設置された。同年には荒川区自治総合研究所が設立され、「子どもの貧困・社会排除問題研究プロジェクト」がスタートした。2011年には最終報告書がまとめられ、「荒川区子どもの貧困・社会排除問題対策本部」が設置されている。

◎報告2:富山耕生さん(東京・足立区教育委員会子ども家庭部こども支援センターげんき・北地区支援係・相談員)には、「あだち・ほっとほーむ事業について」ご報告いただきました。

足立区では、2002年に子ども家庭支援センターを設立し、「あだち・ほっとほーむ」事業を開始しました。現在の法的位置づけは「養育支援訪問事業」。養育困難家庭で支援が必要であると判断した家庭に対し、区が指定する「あだちほっとほーむ協力家庭」が養育支援をするシステムだ。協力家庭は登録制の有償ボランティアで、対象となる子どもは3か月から15歳(中学生)です。「最も不遇な児童の潜在能力を補償するため、オーダーメイドの支援を提供」する点にこの事業の意義がある。

◎報告3:白數宗雄さん(京都府健康福祉部家庭支援課ひとり親家庭支援担当課長 )には「ひとり親家庭で育つ子どもへの支援―NPO 等とつくる居場所づくり」についてご報告いただいた。

この事業は、悩みや不安をもつひとり親家庭の子どもと保護者が、気軽に交流し集うことのできる居場所を提供することで、子どもの心の安定や学習意欲の向上、保護者の悩みの解消を図ることを目的としています。NPO等に補助金を交付し、通年型は3か所、夏休み短期型は19か所で実施されている。通年型には①平日開催型(生活支援・学習支援・余暇支援・保護者支援の4プログラム)、②土日開催型(ピアサポート&ワークショップ、学習支援・食育プロジェクト、定期プログラム)がある。

◎報告4:岡部卓さん(首都大学東京・教授)には、有識者の立場から神奈川県による生活保護受給世帯の「子どもの健全育成プログラム策定推進モデル事業について」ご報告いただいた。

神奈川県では、2010年度からこのモデル事業を実施している。生活保護を所管する郡部保健福祉事務所6か所に、生活保護制度と子育てについて専門的知識をもつ「子ども支援員」を配置し、家庭訪問や電話相談、カンファレンスや関係機関調整など、積極的なアウトリーチによる寄り添い型の支援を実施している。また、ケースワーカーが子どもに支援を行ううえで活用するため、手順や留意点、関連する情報を集めた支援の手引書にあたる「子どもの健全育成プログラム」も作成されている。全年齢を対象に6つのプログラムを作成し、新任ケースワーカーや関係機関でも使えるよう工夫されている。

セミナーの参加者からは、「子どもの選択の幅を広げ、社会資源や機会を提供していきたい」「困窮している家庭を支援するには、多様な人が関わることが大事であり、輪がつながり、ネットワークが構築される必要があるという認識を共有した」などの感想が寄せられた。

 

3.子どもの貧困対策連続セミナー第1

◆テーマ「どうする? どうなる? 就学援助」
◆日時:2014年1月30日(木)18時30分~20時30分
◆会場:立教大学 池袋キャンパス16号館 第1会議室
◆参加者:約50名(NPO・民間非営利団体スタッフ、地方議員、児童養護施設・社会福祉協議会・若者サポートステーションスタッフ、労働組合、学生、会社員、フリーランスライター、新聞記者など)

◆内容

学校事務に携わる4名の方々にご報告をいただいた。

◎報告1:岡田昌也さん(福島・公立中学校事務職員)には、「今、福島の学校で」というタイトルで福島の現状と県外避難している子どもたちへの対応の実状を伝えていただいた。

震災後2万9000人もの子どもがまだ避難生活をしており、「避難先の自治体からの就学援助」を受けている(所得制限有)。また平成23年度補正予算において平成26年度まで被災者に必要な就学支援を行うことができる「被災児童生徒就学援助支援等臨時特例交付金」が設けられた。所得制限はないが、一部自治体で所得制限を付けている例がある。特に、この交付金については被災地外に避難している人や自治体に知られていないのが実状だ。福島の子どもの生活を考えると復興どころか復旧もしていないと感じるとお話くださった。

◎報告2:近藤満さん(埼玉・公立高等学校事務職員)には、「 高校生への就学支援」について話していただいた。2010年から公立高校は授業料無償ではあったものの、実際には授業料以外の諸経費が25万円にのぼること、高校統廃合による通学費の負担が大きい現状があり、その中で、所得制限付きとはいえ公立高校の授業料が復活することによる生徒の経済的困難への懸念が指摘された。

◎報告3:竹山トシエさん(全国学校事務職員制度研究会)・永山美子さん(埼玉・公立小学校事務職員)には、「学校事務職員ができる福祉的支援」について、具体的にお話いただいた。

竹山さんからは、就学援助が市町村による実施のため、自治体によって、就学援助の項目や金額に差異が生じていること、それぞれの学校現場で就学援助事務を担当する事務職員が保護者へわかりやすく工夫したお知らせを作成したり、中学校でも高校でかかる費用について事前に案内をしたりするなどの努力が払われていることが報告された。

永山さんからは、越谷市の実施例をご報告いただいた。保護者向けに就学援助の説明会を開いたり、年度はじめに在籍児童・生徒全世帯に文書を配布、援助対象となる所得、支給額の目安などを示したりしている。学校独自でも案内を作成し配布して、伝える努力をしていますが、事務職員が学校に1名しかおらず、出張等でいないと保護者が仕事を休み書類を持ってきてくれても手続きにつながらないことがある。2013年の竜巻災害のときにも就学援助を受けられるようになったが、告知は被害地域の学校だけで、被害を受け他校に転校してきた生徒がいた場合のことは考えられていなかった。

報告の後、参加者からも就学援助をめぐる各地の動きをご発言いただいた。

・就学援助制度のお知らせでは、「経済的に苦しい家庭のために」ではなく「子どもが元気に学べるために」と文言を変える努力をしている。
・就学援助の内容についてほとんど知らなかったので、勉強になった。
・子どもだけに目を向けて支援するだけでは足りない事実を知った。
・上履きのかかとを踏んで履いていた生徒に教員は「ちゃんと履け」と指導するが、話を聞くと上履きが小さくて足に合わずかかとを踏み潰していたことがわかった。教育指導とは異なるまなざしを子どもに向けられることが学校事務職員の居る意味だと思う。

 

4.子どもの貧困対策連続セミナー第2回

◆テーマ:「学びのセーフティネット」の現場からー夜間中学校、夜間定時制高校、私立通信制の「子ども・若者たち」ー
◆日時:2月27日(木)19時~21時
◆会場:立教大学池袋キャンパス 12号館第3・第4会議室
◆参加者:約50名(NPOスタッフ、地方議員、社会福祉士、弁護士、スクールソーシャルワーカー、学校教職員、学生、会社員、フリーランスライター、新聞記者、TV局記者など)

◆内容

「学びのセーフティネット」と呼ばれる夜間中学校、夜間定時制高校、私立通信制の学校の教室がいまどうなっているか、それぞれの学校に関わるかた4名にご報告頂いた。

~VTR~
夜間中学校から夜間定時制高校に進学した83歳の女性の映像。

◎報告①:金子和夫さん(埼玉・川口自主夜間中学校代表)には、夜間中学の現状と、開校から28年たった自主夜間中学について報告して頂いた。

 県は公立の夜間中学を作ってもよいと常に言うが、市からは色々な市町村から生徒がくるので設置は認められないと矛盾した回答をされる。横浜、大阪、東京でも夜間中学が減らされており、夜間中学の役割が終わったという言い方をされるが、本当に必要ないのか。どの学校も生徒数の減少に困っている。外国籍の生徒が増えている。埼玉には公立の夜間中学がないので、東京の公立に通う生徒もいるが、埼玉県からは何の補助も出ないので今は減ってきている。

 川口自主夜間中学では日本語教室と教科学習を行っている。埼玉県には生活保護世帯には学習支援があるが、ここに来るのは生活保護を受けられないかた・受けたくないかた。外国籍のかたが生活保護を受けると、ビザの申請ができなくなる。夜間中学から進学したい気持ちがあるが、お金の問題や外国籍のかたは日本語の問題で進学を諦めることも。中学校を不登校で1日も通わずに卒業してしまったかた、統合失調症で10年寝たきりだったかた、外国から来ているが生活保護を受けていないかた、家庭の事情で58歳の今まで学校に通えなかったかた、このような人がいつでも学べる場所を保障しなければならないと考えている。

◎報告②:澤井留里さん(東京・公立夜間中学校講師)は、夜間中学元講師で現在は墨田文花中学校で時間講師として音楽を担当されている。澤井さんからは2つのポイントでお話をして頂いた。

 まず、夜間中学があまりにも知られていないこと。教員養成課程でも教わらない。横浜市の公立夜間中学を5校減らすことも1ヶ月で決定しどんどん計画が進められているが、横浜市民が知らない。昼間学校に通う生徒も夜間中学があることを知らない。それゆえ暴挙ができたのではないか。夜間中学の発展は全国の課題なので、多くの人に知ってもらいたい。

 なぜ、夜間中学が必要かということ。読み書きができない、日本語ができない人、学習権が全ての人にある。公立の夜間中学は8都府県にしかないので転居をする人もいる。全都道府県と政令市に1校以上作りたい。3/9には広げよう夜間中学の教育の集会がある。2013年9月現在で2098人の生徒がおり、日本人・在日韓国人・引揚者・難民など、年齢は10代から80代まで。東京より北、広島から南には公立がなく自主夜間中学が実施されている。自治体により在勤・在住などの条件がある。東京、横浜市は在勤・在住が対象だが、川崎市はつい先ごろまで在住だけ。今は正規雇用も対象だが、これでは絵に描いた餅。

~VTR~
「自分を取り戻すための学校」

◎報告③:大能清子さん(東京・都立高校教諭、夜間定時制高校を守る会)からは、定時制高校から考える子どもの貧困というテーマでお話をして頂いた。

 定時制高校には、夜間中学に入れない子ども(不登校でも卒業証書がある子)の他、ニューカマーとして日本語のわからない人、亡命してきた人、シベリア抑留者、ヤンキー、不登校、家庭環境に問題のある子、オール1だった子、心身の病気など、そのような子どもがひとつの場所にいる。以前は1クラス20人の少人数クラスだったが、今では半分に減らされた。学校数も107校→55校と半分に。子どもたちは頑張って国連まで行ってアピールをしたところ、国連も勧告に見直せと書いてくれた。

 親が貧困だから子どもが貧困になってしまうが、大人と子どもの貧困は違う。大人はその時点で援助すれば立ち直れる可能性が高いが、子どもは生育過程での虐待などがある。貧困は社会による子どもへの虐待。必要とする資源が与えられないことによって子ども社会でも簡単に排除されてしまう。食べ物も満足でなく、子ども社会のなかでもメンバーとして認められ難い。成長モデルのない子どもに、お金の使い方からセックスのしかたetc.健全なライフスタイルを教えるのは難しい。

 やっと定時制のなかでほっとする子ども。テーマは自立だが、卒業後はなかなか難しいので、子どものうちにリカバリーできたほうがよい。一昨日20歳を過ぎた人から電話があった。離婚、再就職をして、「ああやっと第一歩。今度こそ頑張ります」と話していた。

◎報告④:鈴木敏則さん(「お金がないと学校に行けないの?」首都圏高校生集会実行委員会世話人、元定時制高校教諭)からは、定時制高校の実態と高校生・教師の取り組みについて報告を頂いた。

 定時制高校は3188校→601校まで減っている。2010年には高校生100人中2.67人が夜間定時制、100人中2人が通信制高校。資料をもとに定時制高校に通う生徒の経済的困難の話。雑誌通販生活でも特集記事が掲載されている。授業料の減免、教科書補助や給食の補助をやめた自治体もある。養護教諭は「置くことができる」という規定で、通信制にいたっては配置基準さえない現状。捕食がパンと牛乳だけ、弁当給もある。給食のデザートを持ち帰る生徒もいるが、欠席した生徒のパンを持って帰っていけないという県もある。生徒の89.8%が非正規雇用で正規雇用は5%のみ。ダブルワーク、トリプルワーク、残業を強いられながら、43%の生徒が自分で授業料を払っている。

 埼玉県の高校生が「定通教育を良くする会」として、教育委員会に要望書を提出し、統廃合問題・進路・アルバイト・施設設備・教員への要望等について2時間の交渉をした。

報告の後には、参加者から以下のような質問があった。
・夜間中学関係の統計について
・定時制高校の定員が減らされた理由について
・通信制高校の増加の背景は etc.

また、セミナー参加者からは以下のような感想があった。

・夜間中学・定時制高校の実態について、数字を含めた話を聞くことができ、とても考えさせられた。
・自主夜間中学の存在を初めて知って驚いた。また、夜間中学に外国籍の生徒が多いのにも驚いた。不登校だとしても、中学校の卒業証書をもらってしまうと公立の夜間中学に入れないということには、行政の冷たさを感じた。
・なかなか生の声を聞く機会がないので、実際の現場の声を聞くことができてよかった。
・映像等で夜間中学・定時制高校につい見ることができてよかった。

定時制高校は中学で躓いた子どもたちの最後の砦になっていることを日々感じている。学力格差・経済格差が広がる今こそ、定時制高校を減らさずに存続してもらいたいと思った。

 

5.第2回 子どもの貧困対策・自治体セミナー

  • 日時:2014年4月27日(日)12時半開場 13時~16時30分
  • 会場:生活クラブ東京・生活クラブ館(デポーせたがや)地下1階会議室
  • 参加者:約80名
  • 内容: 4名の方々に各自治体での3つの実践報告をいただいた。

◎報告1:鈴木友一郎さん(沖縄市子どもの町推進調査会議委員)には「沖縄市子どもの生活実態調査を通して」をご報告いただいた。沖縄市は、市域の36%を米軍基地が占め米軍人の犯罪も多い。また、若年層の失業率や若年出産率も高い。沖縄の子どもに関しては歴史的・文化的・経済的・政治的なことを抜きには語れない面がある。2008年に、子どもが夢に向かって元気にたくましく育つ環境を目指し「子どものまち宣言」を行った。2011年、議会で子どもの貧困対策が取り上げられ、生活実態を捉えた上で施策を展開すると市当局が答弁したことがきっかけとなって、沖縄市子どもの生活実態調査を行った。小学4年生と中学2年生対象に行ったアンケートからは、核家族が多く家族や先生以外の「第3の大人」との出会いが重要、母親への感謝の気持ちが深い、祖父母の存在が大きいなどの点が伺われた。また、教職員など子ども現場の職員からの聴取では、食事の不十分さ、病気や怪我でも受診を行わない事例などが見られた。こうした調査に基づき、「こどものまち」条例制定を目指したが、1票差で否決されてしまった。

◎報告2:佐藤拓代 さん(大阪府立母子保健総合医療センター母子保健情報センター長)「地域を基盤としたアプローチ~要保護児童対策地域協議会の活動を通して~

報告3:小田敏郎さん(大阪市西成区保健福祉課子育て支援担当課長)と荘保共子さん(わが町にしなり子育てネット代表・こどもの里館長)のおふたりには、行政と民間それぞれの立場から、「地域を基盤としたアプローチ~西成区における要保護児童対策地域協議会の取り組みについて」をご報告いただいた。

   ○小田敏郎さんのお話

 大阪市における地域福祉のネットワークの形成は1991年からスタートし、西成区では高齢者支援部会を設置、1996年には西成区障害者自立生活支援調整委員会が立ち上がった。児童福祉の分野では、20023月より、市レベル、区レベルでのネットワークの形成がすすめられた。西成区においても、児童虐待防止のネットワークづくりに取り組むこととなったが、すでに1998年から「わが町にしなり子育てネット」(以下「子育てネット」)が活動していた。そのため、大阪市・西成区・「子育てネット」で協議を重ねて、200212月に「西成区児童虐待防止・子育て支援連絡会議」を設置した。他区にはない「子育て支援」の文言は、虐待防止の実効性をあげるには虐待が起こる前の段階が重要であり、「虐待防止は子育て支援から」という視点が重要との認識から名称に入れたものである。

大阪市では、2005年度には、すべての市民を対象とした「地域支援システム」を構築する中で、児童虐待防止ネットワークについても「地域支援システム」に組み込まれた。西成区では、形成したネットワークを崩すことなく維持できるように大阪市の構想に合う形で「西成区地域支援システム」に調整した。その特徴的なものの一つが、西成区児童虐待防止・子育て支援連絡会議における区内6中学校下での地域別ケア会議(事例検討会議)の開催である。既に3中学校下での実績があったことや「子育てネット」からの必要性と実績に裏付けされた強い要望があったことから、同年11月には6中学校下すべてで開催することとなり、「顔の見えるネットワーク」ができた。

 また、2006度には、大阪市では児童福祉法改正を踏まえ「子育て支援室」が開設されるとともに、各区の児童虐待防止連絡会議を児童福祉法に基づく区要保護児童対策地域協議会(以下「区要対協」)として整備した。西成区では、西成区児童虐待防止・子育て支援連絡会議(西成区要保護児童対策地域協議会)としたうえで、区内6中学校下でのケア会議は、要対協における実務者会議(事例検討会議)として位置付けた。要対協として法定化され構成員に守秘義務が課せられたことから、個人情報の提供に躊躇のあった関係者からの積極的な情報提供が期待されるとともに、関係機関等のケア会議への積極的な参加を得ることとなり、区内の学校園、保育所、児童福祉施設、民生委員・児童委員、主任児童委員、保護司、子ども家庭支援員、区役所(子育て支援室・保健師・生活保護ケースワーカー)等が情報共有し、連携を強める中で地域での多くの「気づき」「見守り」の目ができた。

 うつ等の精神疾患、アルコールや薬物等の依存症の養育者が、子育て困難な状況に陥るケースが各中学校下で増加しており、様々な形で子どもに深刻な影響を及ぼすことも多い。要保護児童の安全や権利を守るため子ども自身への支援はもちろんのこと、養育者の課題を正しく認識し、その解決に向けた支援策を検討することが必要かつ重要になっている。

 これまで、中学校下という小地域での「顔の見えるネットワーク」が形成されてきているが、子どもを取り巻く課題が複雑になる中で、より一層のネットワークの強化が必要となっている。「ひとりはみんなのために」「みんなはひとりのために」というネットワークの考え方を基本に、官民協働による「児童虐待防止・子育て支援」をすすめていきたい。

 

   ○荘保共子さんのお話

さまざまな困難を背負っている、しんどい子どもが親や家庭などから逃げほっとできる場所が地域の中に必要だと考え、これまで無料で子どもたちが過ごせる「子どもの家事業」を実施してきた。しかし、この4月で事業は廃止され、現在は学童保育事業の中でやっているが、学童保育は保育料が払える家庭でないと基本は使えない制度であり課題を抱えている。

西成区の要対協が中学校区ごとに事例検討会(ネットワーク)があるのは、個別の子どもの顔が見える中で話をしないと、子どものしんどさは分からないしどうやって解決したらいいか見えてこない、つまり子どもの権利条約にある子どもの最善の利益を提供できないからだ。どんな風に発見するかというと何気ない偶然のとても小さなタイミングであることが多い。例えば、いつも遊びに来ている子どもがいきなり暴言を吐いたりけんかをしたりする。それがSOSなのだと思う。それをきっかけにして話を聴いてみると、実は昨日母親がいなくなったりとか父親に殴られたりとかする。そうした発見を事例検討会(ネットワーク)にあげていく。

虐待を公衆衛生の立場で考える必要があると考える。一次防止としては、子どもを含めた一般の人々への虐待問題の周知。2次防止は、緊急的に子どもや保護者からSOSが発せられた時に、柔軟に一時的な保護をすることだが「こどもの里」ではそうした場合にも緊急一時保護や宿泊を受け入れてきた。3次防止は、長期的な親子分離であり、被虐待児の治療も必要となるが、「子どもの里」ではファミリーホームを行っており対応している。

地域に一時保護やファミリーホームを持っていることの意味は大きい。虐待が起き親子分離が必要な場合、多くは加害者である親は家(地域)に残って生活を継続していくが、被害者である子どもは地域から遠いところの生活の場に移さざるを得ない。このことが子どもたちの見捨てられ感につながってしまう。地域で保護が出来ることで子どもは同じ学校にいくことができ同じ仲間と生活できる。これが子どもの最善の利益につながるのだと思う。

虐待予防として子育て支援の充実が必要であると考える。そのためにも、中学校区という子どもの顔の見える小地域でのネットワークが重要であると考える。子ども版の地域包括支援センターを作るべきである。

 

6.第2回 『生かそう!子どもの貧困対策法』市民の集い

◆ 日時 524日(土)13時~17
◆ 場所 豊島区勤労福祉会館
◆ 参加者約60名(学生・奨学生、子ども関連NPO・支援団体スタッフ、行政職員、夜間中学教員、地方議員、協同組合関係者、フリーランスライター、報道関係者など)
◆ 内容

◎第1部「子ども・若者の声・支援の現場から」では、下記の領域の支援者の方々の発言をいただいた。

・奨学金問題の現状と課題
岩重佳治さん/弁護士・奨学金問題対策全国会議事務局長・日弁連貧困問題対策本部委員
・学校に行きづらい子どもたち―スクールソーシャルワーカーの立場から
荒巻りかさん/スクールソーシャルワーカー
・見過ごされてきた障害児の生活と発達の貧困
小野川文子さん/大和大学教育学部教育学科准教授
・社会的養護の子どもたちにも生かされる子どもの貧困対策法に!
高橋亜美さん/アフターケア相談所ゆずりは所長
・地域での支援
栗林知絵子さん/NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク

◎第2部では、第1部の発言を受けて、5つのグループに分かれ、 子どもの貧困対策法「大綱」への意見・要望について参加者全員で自由に討論を行った。
 最後にグループごとに討論内容について発表した。
  今回のつどいでは、普段はなかなかふれることのできない、障害児やスクールソーシャルワーク、社会的養護の分野からの貴重な報告をお聞きすることができた。
 登壇者のみなさまには、グループ討論にも参加していただき、新しい出会いの機会ともなった。

 

7.「大綱案に盛り込むべき事項(意見の整理)」に対する意見提出

1から6の事業の成果をふまえ、市民の立場からの要望・提言をまとめ、提言書を作成し意見提出を行った。また、ホームページ掲載などを通して広く周知した。

 

8.子どもの貧困対策法情報ページをHPに構築

 子どもの貧困対策法について市民への周知を行うと同時に、行政関係者など多くの方に参考にしてもらえるように「子どもの貧困対策法情報提供ホームページ」を構築し、子どもの貧困対策法や大綱についての説明、そして各地の子どもの貧困対策に関する報道等のニュースクリップを掲載した。

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