┏ 目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
★1.【巻頭】 ~委員長のひとりごと~ (上村 英明/SJF運営委員長)
★2.【SJFニュース】
・ご案内:『ヘイトスピーチと人種差別』SJFアドボカシーカフェ(1/21)ほか
・ご報告:『「慰安婦」問題って、なんでこんなに話題になってるの?』
SJFアドボカシーカフェ(‘13/12/17)
★3.【SJF(2013年度)助成先レポート】=NPO法人 OurPlanetTV=(代表 白石草さん)
『10日間のウクライナ取材を終えて
~低線量汚染地域の学校で今~』
★4.【追跡アドボカシーカフェ:あのゲストから緊急レポート】
『特定秘密保護法のその後』
(三木由希子さん/情報公開クリアリングハウス理事長)
★5.【コラム:ソーシャル・ジャスティス雑感】 (黒田かをり/SJF運営副委員長)
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★1.【巻頭】~委員長のひとりごと~ (上村英明/SJF運営委員長)
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2014年1月7日の閣議で、文部科学省が高校での「日本史」の必修化を「前向きに検討する」ことが決定した。原則論としては、現在の高校では世界史は必修だが、日本史と地理は選択科目であり、グローバル化が進む中、「日本人」としてのアイデンティティを育てるのが必要だとの判断ということだ。文部科学省の方針によれば、今年の夏には中央教育審議会に諮問し、オリンピックの開催される2020年には、これに間に合わせる形での実施が予定されている。
この方針の決定は、東京都や神奈川県の教育行政を後追いした形でもある。例えば、東京都では、2010年に都立高校の卒業生の25%以上が「日本史」を履修することなく卒業したことを問題とし、必修化の取組みが始まった。2011年には、約1300万円の予算を投じて、『江戸から東京へ』という教科書が作成され、「都立高等学校日本史必修化事業」が始められた経緯がある。
この必修化を取り上げた朝日新聞の天声人語は、こういった動きに対し、さまざまな解釈が可能な「日本史」に対して必修科目からの削除を選択肢として示している。いわゆる国定教科書的な「国民の日本史(とくに近現代史)」が教育されることへの懸念であろう。しかし、いわゆる「国民の日本史」に対して、「日本史」の自由選択をもって対抗することがベストなのだろうか? むしろグローバル化の流れと市民社会の視点から納得のいく「近現代日本史」あるいは枠組みを広げて「東アジア近現代史」を作成する取組みが不可欠なのではないだろうか。「公正な公共」という概念を確立しない限り、偏狭なナショナリズムに自由選択で太刀打ちすることは不可能だろうし、歴史教育のしっかりしない社会に多元的な公正さは期待できないことを指摘しておきたい。もう一点、こうした流れが加速した背後には、石原慎太郎都政による必修化の動きがある。今回の都知事選では、こうした点も検討しながら、きちんとした人物を選任したい。
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★2.【SJFニュース】
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●ご案内:ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)アドボカシーカフェ第23回
~参加者募集中~{本日!}
『ヘイトスピーチと人種差別 』
シリーズ:「日本で生かそう!国連人権勧告」 第3回
【日 時】2014年1月21日(火)18:30-21:00(18:15受付開始)
【ゲスト】金 明秀さん(関西学院大学社会学部教授)
師岡 康子さん(人種差別撤廃NGOネットワーク共同世話人)
寺中 誠さん(アムネスティ日本前事務局長/東京経済大学非常勤講師)
【会 場】認定NPO法人まちぽっと会議室 @新宿/ASKビル4階
―ヘイトスピーチは、日本も加盟している「人種差別撤廃条約」等で禁止する人種差別を扇動する表現行為にあたります。排外的なヘイトスピーチについて、基本的人権を守る立場から法的規制を主張する声が広がる一方で、「表現の自由」の制限へと波及することへの危惧から、規制に対し慎重論を唱える人もいます。多様な人々の基本的人権を侵し、差別をあおる行為に私たちはどう向き合うのか。近年のヘイトスピーチに関する事例を踏まえ、ゲストの問題提起をもとに皆様と対話し考えていきます。
★ 詳細はこちら http://socialjustice.jp/p/20140121/
●ご案内:セミナー ~参加者募集中~
【主催】認定NPO法人まちぽっと(ソーシャル・ジャスティス基金/草の根市民基金・ぐらん)
『人と社会が本当に納得できる「相続セミナー&市民ファンド講談」』
【日 時】2014年1月25日(土) 14:00~16:00
【概要】
講談「カミサマの帰るところ」-講談で知る社会貢献のひとつのかたち
/ 講談師 神田織音さん
講演「相続・遺贈最新情報と、税控除で資産を社会に活かす方法」
/ 税理士 早坂毅さん
活動紹介「海外にルーツを持つ子へ、20年学習支援を続ける団体」
/ CCS世界の子どもと手をつなぐ学生の会
【会 場】新宿区戸塚地域センター7階多目的ホール
★ 専門家による無料相談をセミナー後に開催(ご希望の方、先着5名様)。
★ 詳細はこちら http://goo.gl/3dMLr4
●ご案内:ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)アドボカシーカフェ(予定)
『国連人権勧告は守らなくていいの?―国際人権条約と日本の人権施策―』
シリーズ:「日本で生かそう!国連人権勧告」 第4回
【日 時】2014年2月28日(金)18:30-21:00(18:15受付開始)
【ゲスト】寺中 誠さん(アムネスティ日本前事務局長/東京経済大学非常勤講師)
塩原 良和さん(慶應義塾大学法学部教授)
【会 場】新宿区四谷地域センター11階 集会室2+3
― 福島原発事故による「健康に関する権利」侵害などをはじめとして、日本政府は国連や条約機関の勧告を拒否する姿勢を示しています。近年、国際的にも注目されている人権問題を通して、国際人権の主流から孤立する日本の人権政策について問題提起し、国連からの人権勧告を日本で生かしていく方策について対話するシリーズを総括する予定です。
★ 詳細が決まり次第ご案内いたします。ご期待ください。
●ご報告: ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)アドボカシーカフェ第22回
(‘13/12/17 @文京シビックセンター)
『「慰安婦」問題って、なんでこんなに話題になってるの?』
シリーズ:「日本で生かそう!国連人権勧告」 第3回
【ゲスト】渡辺美奈さん(「女たちの戦争と平和資料館」(wam)事務局長)
上村英明(SJF運営委員長/NGO市民外交センター代表)ほか
― 政治的な主義主張の以前に、今につながる女性と男性の人権問題として、差別意識に根差す社会構造的な暴力の問題を根源的に考える機会となりました。より自由に近隣諸国と交流できる新たな時代を次世代に引き継げるよう、そして未だ戦乱に苦しむ世界各地で依然として行われている戦時・性暴力的による人権侵害の克服に向けて、その範としても注目される日本の「慰安婦」問題を根本解決するための課題を共有する場となりました。
★ 詳細はこちら http://socialjustice.jp/p/20131217report/
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★3.【SJF(2013年度)助成先レポート】=NPO法人OurPlanetTV=(代表 白石草さん)
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『10日間のウクライナ取材を終えて~低線量汚染地域の学校で今~』
- SJFのWebサイトでは写真付きで紹介中 http://socialjustice.jp/p/fund_ourplanet_2014jan/
私たちOurPlanetTVは去年11月、ソーシャル・ジャスティス基金の助成によって、ウクライナへわたり、低線量汚染地域の健康影響などについて取材をしてきました。
ウクライナ政府は、2011年『ウクライナ政府報告書~safety for the future』を公表し、チェルノブイリ事故後25年の間に観察された様々な健康影響について報告しました。今回の取材は、その『ウクライナ報告書』の実態を把握するとともに、日本社会で共有することが狙いです。
10日間の取材で訪れたのは、学校や医療機関など11カ所。計26人にインタビューをすることができました。詳細は、後日ドキュメンタリー映像として完成させますが、今回は最も印象深かった学校の取り組みについて報告したいと思います。
今回、私たちクルーがメインの取材エリアとしたのは、原発から140キロにある人口6万5000人の町、コロステンです。コロステンは、「チェルノブイリ法」の制定された1991年に、年間1~5ミリシーベルトだった「義務的移住地域(第3級の汚染ゾーン)」にあたるエリアです。移住を希望する人には住居や生活支援が行われる一方、経済活動などは制約を受けてきました。ウクライナ報告書によると、25年間の住民の積算線量は15~25ミリシーベルト。私が持参した線量計で計測したところ、現在は毎時0.06~0.1マイクロシーベルトでした。そのコロステンで、子どもたちの健康状態をはっきり突きつけられたのが、学校の体育の授業です。
私たちがコロステンで訪れたのは、市内で最も新しい「コロステン第12学校」。ウクライナでは6歳から17歳まで同じ学校に通っています。この学校も1年から11年生まであり、645人が通っていますが、教育科学省の定めた一般的な体育カリキュラムを受けている子どもは4分の1以下。多くの生徒が、健康診断で問題が見つかり、精密検査を受けています。
ウクライナでは、事故後、健康状態にあわせて、子どもたちを4つのグループに分けて体育の授業を行っています。特に問題がなく普通の体育を受けられる子どもは「基本グループ」。「基本グループ」と同じカリキュラムを受けるものの、激しい運動はしなくていい「準備グループ」、慢性疾患などがあり、特別の運動をする「特別グループ」。更に、障害などがあり体育を受けられない子どもは、体育が免除されます。
第12学校では、「基本グループ」が157人(24%)、「準備グループ」が385人(59%)、「特別グループ」が90人(14%)、「体育免除」が13人(3%)。体育教師によると、「特別グループ」や「体育免除」の子どもたちは、目がおかしい、喘息、胃潰瘍、肝臓炎、甲状腺炎、心臓疾患、脊椎側湾症、先天性の心臓疾患などにかかっているとのこと。体育の授業中に、心筋梗塞で死亡する子どもが目立ってきたことから、ウクライナでは2年前に、心臓負荷や状態を調べる「ルフィエ」というテストを導入し、このグループ分けに活用するようになりました。
この学校の校長、モジェック先生は、笑顔の素敵なベテランの女性教師です。しかし健康の話になると急に表情が曇ります。この学校に着任してから12年間の間に、白血病にかかった子どもは4人。そのうち2人が亡くなったといいます。「事故前は子ども30人に対して病気の子は1人くらい。みんな元気だったのに、事故後は疾患が増えた」「子どもたちは疲れやすく、勉強も難しくなっている」と静かに話してくれました。「子どもたちの健康悪化については様々な意見があるが、私自身は放射線の影響もあると思う」とも。
ウクライナでは、1991年の時点で年間0.5ミリシーベルトを超えていた地域は、「居住リスクのある汚染地域」とされ、子どもたちに対して様々な対策がとられています。例えば、給食の無償化(学校を休むとその分のお金がもらえる)、授業時間の短縮、健康診断の徹底、保養プログラムの実施などです。
低線量被曝の影響は、今も科学的に解明されていません。しかし、ウクライナの社会では、「子どもたちの未来のために、リスクは最小限に押さえる必要がある」と合意されていることは強く印象に残りました。特に、健康診断や長期の保養プログラムについては、市長も医師も行政職員も、どんな立場の人でも、重要なプログラムであると考えていました。「原子力は安全だ」「低線量被曝の影響はない」と主張する人でさえ、健康診断や保養は重要な政策であると考えていたのは新鮮でした。日本政府の関係者や研究者との隔たりを感じざるを得ませんでした。
なお、12月に国会議員会館で行った取材報告『低線量汚染地域における健康管理と保養』は以下のページからご参照いただけます。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1699
また、映像及び文章による詳細な報告は、順次、様々な形で公開の予定です。
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★4.【追跡SJFアドボカシーカフェ:あのゲストから緊急レポート】
『特定秘密保護法のその後』 (三木由希子さん/情報公開クリアリングハウス理事長)
~SJFがアドボカシーカフェで取り上げたテーマはその後どう扱われているのか、皆様のご関心にお応えできるよう、ゲストからレポートをいただきます(今回は‘13/10/24に開催した『特定秘密保護法案は、秘密のブラックホールか!』の報告者より)~
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昨年12月6日に特定秘密保護法が国会で成立し、13日に公布され、1年以内に施行されることになりました。
衆議院・参議院ともに強行採決となり、法案の修正も法案内容についての審議も決して十分とは言えないまま、臨時国会の会期末に帳尻を合わせて成立していきました。法案に対する反対や懸念の声が上がり、国会周辺に多くの市民の姿があるのに対して、国会内は別世界です。粛々と審議日程がこなされ、多少の混乱はあるものの、数の力で物事が決まっていく様に、国会の役割に疑問を持った人も多いのではないかと思います。そして、法案審議の中で政府の答弁がぶれ、さらには与党幹事長のデモとテロを混同する発言と、政府・与党が露呈させた危うさは、秘密保護が彼らにとって必要なものであることを強く印象付けたと思います。
特定秘密保護法は、国会での修正を経て成立をしました。細かな修正内容には言及しませんが、修正にまったく意味がなかったかといえばそうではなく、修正されないよりは良いとはいえます。
しかし、秘密保護は、実際に制度が動き始めると実態の把握は事実上できなくなります。法律を作るに当たって、政府のアカウンタビリティの徹底や知る権利の保障という基本的な政府の義務に対して、秘密の保護というある種、矛盾するものを導入しようとするわけです。この危うい関係を十分に認識したうえで、この法制度の問題点、懸念材料などについて十分に国会で審議をするということは、実は制度が動くと見えなくなる部分についての一定の情報公開が、国会審議を通じて行われるということにもなるわけです。こうしたこともないままに成立したことの危うさは、そう簡単に取り返すことのできない問題です。
国会審議の終盤で、秘密保護の対象のあいまいさ、秘密指定解除がされるのか、勝手に秘密が廃棄されるのではないかなどの懸念に対し、監視組織の設置を表明し、情報保全監視委員会、情報保全監察室、独立公文書管理監の設置、そして与党と維新、みんなの党の4党合意により、国会にも監視委員会を設けることとされました。しかし、考えてみてください。「監視」は、監視を想定してそれができるように指定や解除の仕組みなどができていないと、聞こえはいいけど何を監視するのかという視点が外部から確認できないものになります。法律自体は、そもそも運用監視が必要とか、運用状況の一定範囲で公表すると言った発想なく設計されています。どう監視をしていくのか、ということは言葉先行であることは間違いありません。
特定秘密保護法の廃止を目指す動き、施行前に法の修正を求める意見、施行に向けた監視の必要性と、いくつかの視点から市民側の活動が続けられています。現実には、今の国会では廃止も修正も厳しいものですが、このまま黙って施行をむかえるわけにもいきません。特定秘密保護法という問題を前にして、それでもなお政府の情報公開を進め、開かれた政府にしていくための努力をしていくことが、秘密を持ちたがる政府に対する対抗軸になるはずです。
すでに、政府内では法施行に向けた準備が粛々と進められています。特定秘密保護法が嫌だというだけでは、済まないのが現実です。嫌だ、という思いを持ちつつ、この法律の突き付けている現実に対して正面から向き合うことを続けていきたいと思います。
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★5.【コラム:ソーシャル・ジャスティス雑感】 (黒田かをり/SJF運営副委員長)
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昨年12月に和食がユネスコ世界無形文化遺産に登録された。その理由には、和食を保護、伝承してきた多くの地域コミュニティや集団の活動、「食育」や都市と農村の文化交流の取り組みがあるそうだが、テレビや新聞を見ると、登録の理由として「一汁三菜」の献立でバランスが良いことや、旬の食材を使用していて栄養価が高いことや、京料理の美しさ、世界的な日本食ブームなどがあげられている。
和食というと、高級な割烹料理から日常の食卓に並ぶ一汁三菜など「最終形」が語られ、和食を作り出してきた第一次産業や食文化を継承してきた家族農家などの「プロセス」は忘れられているのではないだろうか。和食といいながら実際その多くの食材を海外に依存している。またTPP(環太平洋経済連携協定)妥結に向けて「強い農業」を目指す我が国の政策は、食を守り伝えてきた多くの家族農業を支えるどころか、切り捨てるものである。これらのことに疑問をはさまずに、今回の世界文化遺産登録を単純に喜んでよいのか。
折しも今年は「世界家族農業年」である。一般社団法人農山漁村文化協会(農文協)は『主張』というページの1月号と2月号に『家族農業の大義』と題した論考を載せている。是非皆様にも読んでいただきたい。
http://www.ruralnet.or.jp/syutyo/2014/201401.htm
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