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『10日間のウクライナ取材を終えて〜低線量汚染地域の学校で今〜』
(OurPlanetTV 代表 白石草さん)

 

 私たちOurPlanetTVは去年11月、ソーシャル・ジャスティス基金の助成によって、ウクライナへわたり、低線量汚染地域の健康影響などについて取材をしてきました。

 ウクライナ政府は、2011年『ウクライナ政府報告書〜safety for the future』を公表し、チェルノブイリ事故後25年の間に観察された様々な健康影響について報告しました。今回の取材は、その『ウクライナ報告書』の実態を把握するとともに、日本社会で共有することが狙いです。

 10日間の取材で訪れたのは、学校や医療機関など11カ所。計26人にインタビューをすることができました。詳細は、後日ドキュメンタリー映像として完成させますが、今回は最も印象深かった学校の取り組みについて報告したいと思います。

201311コロステン風景033

 今回、私たちクルーがメインの取材エリアとしたのは、原発から140キロにある人口6万5000人の町、コロステンです。コロステンは、「チェルノブイリ法」の制定された1991年に、年間1〜5ミリシーベルトだった「義務的移住地域(第3級の汚染ゾーン)」にあたるエリアです。移住を希望する人には住居や生活支援が行われる一方、経済活動などは制約を受けてきました。ウクライナ報告書によると、25年間の住民の積算線量は15〜25ミリシーベルト。私が持参した線量計で計測したところ、現在は毎時0.06〜0.1マイクロシーベルトでした。そのコロステンで、子どもたちの健康状態をはっきり突きつけられたのが、学校の体育の授業です。

20131115第12学校_085

 私たちがコロステンで訪れたのは、市内で最も新しい「コロステン第12学校」。ウクライナでは6歳から17歳まで同じ学校に通っています。この学校も1年から11年生まであり、645人が通っていますが、教育科学省の定めた一般的な体育カリキュラムを受けている子どもは4分の1以下。多くの生徒が、健康診断で問題が見つかり、精密検査を受けています。

  ウクライナでは、事故後、健康状態にあわせて、子どもたちを4つのグループに分けて体育の授業を行っています。特に問題がなく普通の体育を受けられる子どもは「基本グループ」。「基本グループ」と同じカリキュラムを受けるものの、激しい運動はしなくていい「準備グループ」、慢性疾患などがあり、特別の運動をする「特別グループ」。更に、障害などがあり体育を受けられない子どもは、体育が免除されます。

 第12学校では、「基本グループ」が157人(24%)、「準備グループ」が385人(59%)、「特別グループ」が90人(14%)、「体育免除」が13人(3%)。体育教師によると、「特別グループ」や「体育免除」の子どもたちは、目がおかしい、喘息、胃潰瘍、肝臓炎、甲状腺炎、心臓疾患、脊椎側湾症、先天性の心臓疾患などにかかっているとのこと。体育の授業中に、心筋梗塞で死亡する子どもが目立ってきたことから、ウクライナでは2年前に、心臓負荷や状態を調べる「ルフィエ」というテストを導入し、このグループ分けに活用するようになりました。

校長

 この学校の校長、モジェック先生は、笑顔の素敵なベテランの女性教師です。しかし健康の話になると急に表情が曇ります。この学校に着任してから12年間の間に、白血病にかかった子どもは4人。そのうち2人が亡くなったといいます。「事故前は子ども30人に対して病気の子は1人くらい。みんな元気だったのに、事故後は疾患が増えた」「子どもたちは疲れやすく、勉強も難しくなっている」と静かに話してくれました。「子どもたちの健康悪化については様々な意見があるが、私自身は放射線の影響もあると思う」とも。

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 ウクライナでは、1991年の時点で年間0.5ミリシーベルトを超えていた地域は、『居住リスクのある汚染地域』とされ、子どもたちに対して様々な対策がとられています。例えば、給食の無償化(学校を休むとその分のお金がもらえる)、授業時間の短縮、健康診断の徹底、保養プログラムの実施などです。

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 低線量被曝の影響は、今も科学的に解明されていません。しかし、ウクライナの社会では、「子どもたちの未来のために、リスクは最小限に押さえる必要がある」と合意されていることは強く印象に残りました。特に、健康診断や長期の保養プログラムについては、市長も医師も行政職員も、どんな立場の人でも、重要なプログラムであると考えていました。「原子力は安全だ」「低線量被曝の影響はない」と主張する人でさえ、健康診断や保養は重要な政策であると考えていたのは新鮮でした。日本政府の関係者や研究者との隔たりを感じざるを得ませんでした。

 なお、12月に国会議員会館で行った取材報告『低線量汚染地域における健康管理と保養』は以下のページからご参照いただけます。

http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1699 

また、映像及び文章による詳細な報告は、順次、様々な形で公開の予定です。 (記:OurPlanetTV 代表 白石草さん)

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