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目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 

★1.【委員長のひとりごと】 (上村英明)

「政治的意思」をどう社会化できるか:「中立性」と「公共性」への問いかけ

 

★2.SJFニュース】 

 ●「『票育』―若者と政治が出会う新しい授業の作り方」(413)参加者募集

   保坂 展人さん×後藤 寛勝さん(SJFアドボカシーカフェ第42回)

   http://socialjustice.jp/p/20160413/

 

 ●『加害者と被害者――家族支援について考える』(523日)参加者募集

             片山 徒有さん×阿部 恭子さん(SJFアドボカシーカフェ第43回)

    http://socialjustice.jp/p/20160523/

 

 ●『性について――命と愛をどう学ぶ?伝える?』(215日)開催報告

   http://socialjustice.jp/p/report20160215/

 

★3.【助成先リポート】

 ●「人身取引をなくすには~ライトハウス講演会~」

        横浜インターナショナルスクール主催(323日)

 

★4.【ソーシャル・ジャスティス雑感】 JKビジネスと国連人権勧告(大河内秀人)                   

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

 

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★1.【委員長のひとりごと】 (上村英明)

「政治的意思」をどう社会化できるか:「中立性」と「公共性」への問いかけ

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 前回言及した米国の大統領選挙も、秋の投票に向かってデッドヒートが繰り広げられている。そんな中、おやっと思う記事を読むことになった。米国の新聞であるニューヨーク・タイムズ紙が、民主党候補ではヒラリー・クリントン(前国務長官)、共和党候補ではジョン・ケーシック(オハイオ州知事)支持を2016130日に明らかにした。新聞社はひとつの組織であり、また同時にメディアとして「公共性」を担う機関でもある。ニューヨーク・タイムズ社の中にもドナルド・トランプ(実業家)の支持者もいるだろうし、社を挙げての支持表明はバーニー・サンダース(バーモント州上院議員)の支持者を怒らせることになるだろう。

 なぜ、この記事が刺激的だったかといえば、こうした「公共性」につながる組織による「政治的意思」の表明が日本では、近年ますますタブー視されているからだ。

 例えば、同じ201628日、高市早苗総務大臣が衆議院予算委員会で、「放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合」、放送法4条を盾に、「電波停止」の措置を取ることがあると表明して、物議を醸している。確かに、放送法第4条では、第2項で「放送事業者」に対し、「政治的に公平であること」を要求している。これに対し、高市総務大臣の個人的失言として諫める声があり、他方で「政治権力とメディアの戦争」(鳥越俊太郎氏)との抗議声明や抗議行動も行われた。(朝日新聞2016229日)

 しかし、問題は、「失言」でも「戦争」でもなく、より深く日本の市民社会のあり方、とくに民主主義を実体化できない日本社会の深刻な問題につながる現象ではないだろうか。

 別の事例を考えてみよう。201571日には、京都の弁護士が、日本弁護士連合会(日弁連)やその会長などを相手に、強制加入団体である弁護士会が正式な機関決定も経ずに意見書や会長声明など「政治的な声明」を出すのは「違法だ」と東京地方裁判所に提訴した。これは、具体的には、日弁連が2015618日付けで日本政府に提出した「安全保障法制改定法案に対する意見書」などを具体的に指し、この意見書で実質展開された(安倍)政権批判を高市発言と同じく「違法」とするものだ。ここまで明確ではないが、同じ現象は至るところで起きていると言ってよい。例えば2014620日に「集団的自衛権行使を可能にする解釈改憲に反対する緊急声明」が日本平和学会から出されたが、その主体は、正確には「日本平和学会第21期理事会有志一同」であった。先に示した安保法制に反対して、多くの大学からも声明や意見書が出されたが、そのすべてが「有志」の声明であったことは記憶に新しい。内部で行われた議論のほとんどは、僕自身の経験からすれば、いろいろな意見があるのだから、大学という機関の意思として出されては困る。中立性や公共性のある教育機関が政治的声明を出すのは、慎重であるべきだなどの意見であった。

 個人には表現の自由や思想の自由という人権がある。それが尊重されなければならないことは十分理解できる。そうであれば、個人から構成されるいかなる集団も、意見を持つことは不可能あるいは百歩譲っても相応しくないのであろうか。あるいは、京都の弁護士がいうように正式な機関決定だけが、集団の意思といえるのだろうか。この考え方によれば、国会での決定は、正式な手続きに沿った最高レベルの集団の意思決定であり、国会周辺のデモは民主主義への「挑戦」とも受け取られない。

 一息入れよう。どうも昨今の日本社会は、グローバル化やIT社会の中での「個人」の自由、普遍的な価値のひとつと言われる「法治主義」などを薄っぺらに解釈する傾向に引きずられて、多様な形での政治的意思の表明を不当に矮小化しているのではないだろうか。

 個人に意思があるように、集団にも理念がある。強大な権力を持つ政権に対して、メディアは第4権力と言われるように本来批判的であることが「公正」の意味するところだ。弁護士会や会長が、機関決定に寄らずとも、弁護士法第1条の理念に沿って法の専門家として「意見書」を書くことも「公正」であるだろう。そして、大学や学会も、その設立の理念に従って民主主義や平和をもっと語ってもよいのではないだろうか。

 因みに、冒頭のニューヨーク・タイムズの記事は、政治家の資質を評価し、政治的支持・不支持を表明するに当たって、その理由を明確にしている。すべての評価が正しいかどうかはともかく、それこそが、この新聞社が明確な理念をもつ証拠ではないだろうか。「すべての論点を平等に紹介する中立性」、「有志民主主義による公共性」や「権力による法治主義」を乗り越えなければ、質の高い市民社会は実現されそうにない。

 

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★2.SJFニュース】

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●「『票育』――若者と政治が出会う新しい授業の作り方」(SJFアドボカシーカフェ第42回)★参加者募集中★

【ゲスト】保坂展人さん(世田谷区長)

       後藤寛勝さん(NPO僕らの一歩が日本を変える。代表理事)

【日時】16年4月13日(水) 18:30~21:00 (開場 18:00)

【会場】文京シビックセンター 4階 シルバーホール

 少子高齢化社会に生きる若者にとって、将来に何らかの課題と向き合うことはもはや必然です。だれの生活にも必ず結びついている政治。まずは身近な地域社会の課題に気づき、理解し、自分には何ができるのか、課題解決の選択肢を見出す力を養う――それが今必要とされている政治教育だと、NPO法人「僕らの一歩が日本を変える。」は考えています。そして、この新しい政治教育に“中立的でエンターテイメントという要素を加え、『票育』と称し、全国各地で授業を行ってきました。『票育』は、授業の受け手だけが学ぶのではなく、この教育を担う若者自身が、社会課題の理解と解決への一歩を踏み出せる、そんな力が地域社会の中で育成されるプロセスになります。

 今回は、教育現場で感じている政治教育の壁と打開策、そして『票育』の可能性についてお話しさせていただきます。また、ゲストとの対話やワークショップを通して、この『票育』が誰でも、どこでも、当たり前に実践される社会を目指して、みなさんと新たな気づきを共有していければ幸いです。

【詳細】http://socialjustice.jp/p/20160413/

 

加害者と被害者――家族支援について考える(SJFアドボカシーカフェ第43)★参加者募集中★

【ゲスト】片山 徒有さん(被害者と司法を考える会代表)

     阿部 恭子さん(WorldOpenHeart理事長)

【日時】165月23(月) 18:30~21:00 (開場 18:00)

【会場】文京シビックセンター 4階 シルバーホール

 被害者やその家族への支援体制は、犯罪被害者等基本法が2004年に制定され、全国的に敷かれるようになりました。一方、加害者の家族は自責の念から自殺に至るケースがあるにもかかわらず、社会的に問題として扱われることもなく、あらゆる支援の網の目からこぼれてきました。日本では、加害者家族を支援する団体は非常に少なく、とくに加害者家族の子どもが学校教育現場からも排除されている差別は深刻ですが、社会的な理解は進んでいません。欧米諸国では、加害者家族は “Hidden victim”(隠れた被害者)や”Forgotten victim”(忘れられた被害者)とも表現され、さまざまなアプローチで行われている支援は再犯防止になると認められています。

 加害者家族は加害者か、それとも被害者なのか、その実態は? 被害者の視点からみた加害者家族の支援とは? 加害者家族支援は社会に何をもたらすのか? 今回のゲスト、加害者家族支援を全国に先駆けて行ってきた団体代表の阿部恭子氏と、被害者支援団体代表の片山徒有氏が議論します。被害者、加害者、家族、地域社会が新たな関係性を築いて再生していく、修復的な実践の一歩へ。ゲストと一緒に考え対話する場にぜひご参加ください。

【詳細】http://socialjustice.jp/p/20160523/

 

●開催報告;『性について――命と愛をどう学ぶ?伝える?』SJFアドボカシーカフェ第41回(16215日)

 ゲストの染矢明日香さん(NPO法人ピルコン理事長)は、相手がある愛もあれば、自分に対する愛――ありのままの自分を受け入れること、自分自身と向き合うこと――もあり、それらを健康という概念でとらえていく、人権という概念でとらえていくことの大切さを話されました。性=タブーではなく、自分としてどう生きていきたいか、どう人と関わっていきたいかという部分を含めて、「対話」がとても大事だと強調されました。

 さらに、星久美子さん(NPO法人開発教育協会/DEAR)による、心も体も温かくなるワークショップで会場は氷解したおかげで、深い議論が筋道だって進展しました。全体を通じ、科学的な性知識だけでなく、愛とはどういうことなのか、どのような責任が伴うのかも、伝え学んでいくことが必要であり、また、その子の生き方にプラスになるような関わりかた見守りかたが大切だと締めくくられました。

【詳細】http://socialjustice.jp/p/report20160215/

 

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★3.【助成先リポート】

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●「人身取引をなくすには~ライトハウス講演会~」

         横浜インターナショナルスクール主催(323日)

 人身取引被害者サポートセンター ライトハウスの代表 藤原志帆子さんと広報・アドボカシーマネージャー 瀬川愛葵さんが、横浜インターナショナルスクールの公開イベントに登壇します。同スクールの人身取引撲滅グループは、昨年9月にライトハウスと共催されたSJFアドボカシーカフェで、瀬川さんとともに登壇しました。同グループの学生さんたちがこのアドボカシーカフェにインスパイアされ、ディスカッションの大切さを痛感したとのこと。当イベントにもディスカッションの時間がございます。なお、ご参加いただけるのは中学2年生以上です。ご案内は(画面下方に日本語のポスター掲載);http://www.yis.ac.jp/community/news-posts/~post/lighthouse-speaker-evening-at-20160308

※ライトハウスは、SJFの第3回助成先です。

   

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★4.【ソーシャル・ジャスティス雑感】JKビジネスと国連人権勧告(大河内秀人)

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 子どもの人身売買やポルノ問題を担当する国連のマオド・ド・ブーア=ブキッキオ特別報告者(オランダ)が、女子高生らに男性の接待などをさせる「JKビジネス」などの禁止を勧告した報告書に対し、日本政府は8日までに反論の意見書を国連人権理事会に提出した。

 ジュネーブから共同配信の記事によると、日本政府は29項目にわたる反論文書も人権理に提出。報告書が「JKビジネスは1217歳の女子中高生の間ではまれなことではなく、彼女たちは立派なバイトと考えている」と言及したことに対し「客観的情報に基づいていないように思われる」と指摘し、ブキッキオ氏が昨年10月、東京都内での記者会見で「日本の女子生徒の13%が援助交際を経験している」とした発言に対し外務省は客観的な根拠に基づかない発言だとして発言撤回を要求していた。そして日本政府は特別報告者が日本と日本の文化に対する理解が不足していると主張している。

 女性差別撤廃委員会による「夫婦同姓」「再婚禁止期間」に関する民法規定の改正、「マタハラ」を含む職業上の差別に対しても実効ある対策を強く求める勧告が出されたばかりでもあるが、世の中にはこれも日本文化だと反論する空気がある。

 私自身、家制度を基盤にムラ社会的なコミュニティで育ってきた者として染み付いてしまった感覚も自覚している。そしてその感覚が多くの人びとを苦しめ、絶望させる現実も目の当たりにしてきた。だからこそ、国際人権法やそれに基づいた勧告には謙虚であるべきだ。そして怪しげな「文化」で反論するより、国際人として、社会人として、人間として、そもそもその文化に問題があると考えるべきであろう。

 報告書が、日本の女子中高生の多くが売春をしているような誤解を与えるので「遺憾」などと細かく理屈をこねるより、現に性的搾取の被害に遭っていることに対する有効な対策を講じることが先決だ。子どもたちの尊厳よりも国家の体面が大事という姿勢は、日本の評価を悪くするだけだ。女子高生を男性客と一緒に散歩させる「JKお散歩」や「JK撮影会」、足裏マッサージなどをさせる「JKリフレ」などのJKビジネスだけでなく、より若年層を対象とした「だっこ会」など、明らかに性産業における子どもの商品化として禁止すべきというのは当然の勧告と言えよう。日本社会として真摯に受け止める必要がある。ソーシャル・ジャスティス基金が支援する「ライトハウス」や、まさに当事者が始めた「Colabo」などの民間機関がさまざまな取組み・努力をしているが、表に出ないケースが圧倒的に多く被害者が泣き寝入りしやすい問題だけに、人権擁護のため法的規制と共に専門性の高い救済体制が必要だ。

 そしてさらに根本的に掘り下げなくてはならない。それは複合的に様々な要因をはらんでいる。お金を稼げる「立派なアルバイト」と考える拝金主義。それは「貧困」とも密接につながる。ネット社会の危険性は分断・孤立化と表裏一体だ。子どもの権利を考える国際比較において日本の子どもたちの最大の弱点は「自尊感情(セルフエスティーム)」の低さであり、それは社会参加への諦めと、卵とニワトリの関係にある。

 今後もソーシャル・ジャスティス基金を通して、これらの問題を構造的に捉え、一つずつ、あるいは包括的に取り組んでいければと思う。的外れな反論ではなく、世界の到達点としての国際人権条約の理念と、たとえ少数であっても当事者の視点を踏まえ、建設的な対話を積み上げ、本当の私たちの「文化」を築いていければと思う。

 

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今月号の執筆者プロフィール

  • 上村 英明  [SJF運営委員長; NGO市民外交センターの代表として、先住民族の人権問題に取り組み、この関連で国連改革や生物多様性などの環境保全、核問題など平和への取り組みを実践するとともに、グローバルな市民の連帯に携わってきました。SJFでは、平和、人権、エネルギー、教育など多くの分野で新たに現れている21世紀の課題を解決するため、市民による民主主義実現のための政策や制度づくりを支援している。恵泉女学園大学教授]
  • 大河内 秀人 [SJF企画委員; 浄土宗見樹院及び同宗寿光院住職。インドシナ難民大量流出をきっかけに国際協力・NGO活動にかかわる。一方で地域づくりの大切さを実感し、寺院を基盤に環境、人権、平和等の活動を続けている。江戸川子どもおんぶず代表、NPO法人パレスチナ子どものキャンペーン理事、原子力行政を問い直す宗教者の会世話人、ほか]++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

★SJFでは、助成事業や対話事業を応援してくださるサポーターやご寄付を募っております。認定NPO法人への寄付として税金の優遇制度をご利用いただけます。
詳細は http://socialjustice.jp/p/shien/ ★

 

配信元: 認定NPO法人まちぽっと ソーシャル・ジャスティス基金(SJF) 

 

 

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