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目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 

★1.【委員長のひとりごと】オバマ大統領が、一番「大統領」らしかった時
                               (上村英明) 

★2.SJFニュース】 

●参加者募集「『票育』――若者と政治が出会う新しい授業の作り方」(413日)
      保坂展人さん×後藤寛勝さん (SJFアドボカシーカフェ第42回) 

●開催報告;『SJF助成発表フォーラム第4回』(118日)

 

★3.【助成先リポート】 ~第3回助成先・活動報告

  ●人身取引被害者サポートセンターライトハウス

  ●生活保護問題対策全国会議

 

★4.【ソーシャル・ジャスティス雑感】 祭の前に (寺中誠)                  

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★1.【委員長のひとりごと】オバマ大統領が、一番「大統領」らしかった時
(上村英明)

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 本コラムでの新年の挨拶は年末・年始と多忙を極めスキップさせていただいたが、幸運にも本稿を書いている28日は、東アジア本来の正月ともいうべき「旧正月」の元旦に当たる。新年明けましておめでとうございます。本年もみなさまによい年が訪れますように。

 さて、新暦の正月に戻ると、米国のバラク・オバマ大統領が112日に連邦議会で最後の一般教書演説を行った。2009120日に第44代米国大統領に就任以来、28年の任期の中で、最後となる一般教書演説である。すでに次期大統領選挙に向けて、いろいろな動きが始まっているが、残り1年の任期を残したオバマ大統領に対するあなたの評価はどうであろうか。

 オバマ大統領は、新しいものに囲まれた大統領であった。米国史上、最初のアフリカ系であり、最初の1960年代以降生まれで、最初のハワイ出身(生まれ)の大統領でもあった。200910月のノーベル平和賞の受賞も記憶にあるが、現役の米国大統領でノーベル平和賞を受賞したのは第26代セオドア・ルーズベルト、第28代ウッドロー・ウィルソンに続いて3人目である。アフリカ系といわれるのは、父親のバラク・オバマ・シニアがケニアのルオ民族出身で、さらにムスリムであったからだ。その名前も他の米国大統領と違って、スワヒリ語・アラブ語・ルオ語に由来しているという。とくに、米国の歴史を考えた時、アフリカ系の米国大統領という存在は、大きな意味を持っていた。就任にあたって、南アフリカのネルソン・マンデラは、「建国以来初の黒人大統領の誕生は希望のシンボルだ」との祝辞を送ったとも報道されている。しかし、米国大統領は、誰がなろうと世界の最強の軍事力と経済力を誇る米国大統領である。8年に及ぶ任期中の政策には国内外のそれぞれの視点からさまざまな評価があるだろう。

 そして、オバマ大統領が、もっとも「大統領」らしかった時を、ニュースを聞きながら、思い出した。それは、「核なき世界」をプラハで語った20094月でもなければ、歴代大統領として初めて、その2期目の就任演説で同性婚に重点政策として言及した20131月(のちに、最高裁判所は20156月同性婚を認めた)でもない。それは、同じ20156月、オバマ大統領が演説の中で突然歌い出した光景だった。

 発端となる事件は、2015617日サウスカロライナ州チャールストンの「エマニュエル・アフリカン・メソジスト・エピスコパル教会」で起きた「憎悪犯罪(ヘイトクライム)」である。米国は黒人に乗っ取られる、人種間戦争を始めるのだと主張する白人至上主義者の男性に、同州の上院議員を務めるクレメンタ・ピンクニー牧師を含めて、黒人9名がそこで射殺された。1960年代公民権運動の拠点でもあったという教会で行われた追悼式で、オバマ大統領は演壇に立ったが、途中で力強い演説が止まり、ある沈黙が続いた。そして、大統領は、アカペラ(無伴奏)で、讃美歌「アメージング・グレース」を静かに歌い始めた。奴隷貿易とその犠牲者に捧げる歌だ。世界中の抵抗運動で歌われてきた歌でもある。大統領の歌は、多くのアフリカ系市民の参列者とともに大合唱になった。その時、バラク・オバマは、ただの米国大統領ではなく、本来大統領に彼自身を押し上げた動機を表現した「オバマ大統領」になったように見えた。

 最後の1年、こうした事件を背景に、オバマ大統領は銃規制問題をますます前面に出すようになった。この16日にはホワイトハウスで演説し、大統領令による銃規制強化策を発表した。無許可の銃販売者に最大5年の懲役・罰金を課し、購入者の犯罪歴の調査を徹底する。現在、共和党のすべての大統領候補は銃規制に反対であるが、オバマ大統領は「常識的な銃規制を支持しない候補者は、たとえ私の党であっても支援しない」とも表明している。この視点から、米国の民主主義をどこまで前に進めることができるか。「オバマ大統領」の最後の1年に期待したい。(関心のある方は、その演説と歌をフルの映像でみていただきたい。Youtubeで簡単に視聴することができる。)

 

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★2.SJFニュース】

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●「『票育』――若者と政治が出会う新しい授業の作り方」(SJFアドボカシーカフェ第42回)★参加者募集中★

【ゲスト】保坂展人さん(世田谷区長

     後藤寛勝さん(僕らの一歩が日本を変える。代表理事)

【日時】16年4月13日(水) 18:30~21:00 (開場 18:00)

【会場】文京シビックセンター 4階 シルバーホール

 少子高齢化社会に生きる若者にとって、将来に何らかの課題と向き合うことはもはや必然です。だれの生活にも必ず結びついている政治。まずは身近な地域社会の課題に気づき、理解し、自分には何ができるのか、課題解決の選択肢を見出す力を養う――それが今必要とされている政治教育だと、NPO法人「僕らの一歩が日本を変える。」は考えています。そして、この新しい政治教育に“中立的でエンターテイメントという要素を加え、『票育』と称し、全国各地で授業を行ってきました。『票育』は、授業の受け手だけが学ぶのではなく、この教育を担う若者自身が、社会課題の理解と解決への一歩を踏み出せる、そんな力が地域社会の中で育成されるプロセスになります。

 今回は、教育現場で感じている政治教育の壁と打開策、そして『票育』の可能性についてお話しさせていただきます。また、ゲストとの対話やワークショップを通して、この『票育』が誰でも、どこでも、当たり前に実践される社会を目指して、みなさんと新たな気づきを共有していければ幸いです。

【詳細】http://socialjustice.jp/p/20160413/

 

●開催報告;『SJF助成発表フォーラム第4回』(16118日、東京都新宿区にて)

 新たに決定した第4回目の助成先である3つのNPO法人を迎えました。異なる分野の人たちが問題をシェアし、新しい組み合わせをつくる土台となった対話交流会。

 情報を正しく格差なく伝えあうことの重要性が浮き彫りになりました。政治教育を中立的に行うためにも、子どもの健康管理を迅速的確に行うためにも、加害者の家族に対する偏見や差別をなくすためにも、公正な意思決定に必要な情報が課題となっています。

【発表者】僕らの一歩が日本を変える。(後藤寛勝さん・代表理事)

     OurPlanet-TV(白石草さん・代表理事)

     WorldOpenHeart(阿部恭子さん・理事長)

【詳細】http://socialjustice.jp/p/report20160118/

 

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★3.【助成先リポート】~第3回助成先の活動報告Ver.2

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人身取引被害者サポートセンターライトハウス

『児童・青少年向け人身取引被害者のための専用サイト/アプリ開発プロジェクト』(助成期間=151月から162月、助成金額=80万円)

★報告の詳細はhttp://socialjustice.jp/p/2015lastreport2/

――SNSを駆使し巧妙に児童・青少年を勧誘し搾取しているポルノ・性風俗・アダルトビデオ産業に対抗するため、困窮する若年層がコンタクトしやすいアプリを開発しました。クラウド型であり、増加する深刻な相談に対し、チームで、日本全国で相談支援する体制を整えられます。受け付けた相談は、当事者が必要とする支援、医療機関・警察・法的機関などの社会資源につなげていきます。被害回復の選択肢が広がり、当事者の社会復帰や自立支援に寄与したいとの思いで、当アプリが積極的に活用されるようアピールしていきます。当アプリは、https://s.lhj.jp/から――

 

生活保護問題対策全国会議

生活保護基準の引下げを阻止するともに生活保護の捕捉率100%を目指す事業』(助成期間=151月から162月、助成金額=60万円)

★報告の詳細はhttp://socialjustice.jp/p/2015lastreport4/

――住宅扶助基準・冬季加算削減問題や資産申告書問題についてのQ&Aパンフレットを作成し、当事者や支援団体から好評です。福祉事務所版も作成し、全国の全福祉事務所に無償送付したところ、追加の依頼をいただいています。奨学金の収入認定問題については、国会議員や報道機関との連携により、福島県のケースで当事者の訴えを認める再審査請求の裁決と、運用を改善する厚生労働省通知が158月に出されました。7月に開催した8周年記念集会を通じて、パネリストであった生活保護受給者支援団体、障害者団体、労働団体のメンバーらが連携し、10月の(憲法)25条大集会の実行委員会等において主要な役割を果たし、4000人が集まった素地となりました――

   

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★4.【ソーシャル・ジャスティス雑感】 祭の前に (寺中誠)

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 社会課題の解決を考える際、警戒している発想がある。「選挙で勝つ」というフレーズだ。

 まるで、選挙に勝てばその社会課題は解決できる、あるいはその社会課題を解決するためにはまず選挙に勝たなければ始まらない、といわんばかりだ。しかし、現実がそう単純ではないことは、少し考えればわかる。

 社会課題の解決に向かうときには、社会の中の多くの資源が動く。その一つ一つの手続きには、それぞれ膨大な労力と手間がかかる。その過程に耐えられるだけの関係者の気力の維持も必須だ。選挙で勝つことは大きな意味のあるエピソードにはなるかもしれない。だが極端な話、たとえ選挙で負けても、社会課題の解決を果たし得る方策がまったく費えるわけではない。逆に選挙に勝っても、解決できなかった例は枚挙にいとまがない。

 作物を作る場合、畑を耕し、種を撒き、毎日欠かさず手入れをして、その膨大な作業の果てにようやく収穫がある。途中に収穫を祈るための雨乞いの祭などもあるが、天候に恵まれるかどうかは運次第。ただ、祭に参加した仲間たちがお互いを支えあう体制を築き上げるところに大きな意味がある。

 社会運動の場合なら、ビラ配りやデモ、地道な活動などで周りを耕し続けていくことでようやく道筋を見出すことができる。そこに具体的なアイデアという種を撒き、それを丹念に育て実施できる体制を作り上げてこそ、課題解決への道を進めることができる。選挙はその過程の一部でしかなく、むしろここでは祭のような出来事だ。祭の帰趨だけを見ていても状況は変わらない。

 もちろん、祭に参加し、「この一票で変える!」という実感を持つ仲間を増やしていくのはとても大切だ。その実感こそが社会課題を取り巻く状況を変える一人一人の原動力になるからだ。一種の「ノリ」だと言って良い。でも、そのノリをどう祭の後にまで引き継がせ、社会課題解決に向かう息の長い気力として維持するか。社会運動の成否はそこにかかっている。

 選挙や勝利の結果を望むことを否定するわけではない。でも、社会運動の畑を耕し種を撒き、地道にコツコツと手入れを重ねていくことなしには、課題の解決はありえない。

 ちらほらと選挙の話題が頭をもたげてきている今日この頃に思うことである。 

 

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今月号の執筆者プロフィール

  • 村 英明  [SJF運営委員長; NGO市民外交センターの代表として、先住民族の人権問題に取り組み、この関連で国連改革や生物多様性などの環境保全、核問題など平和への取り組みを実践するとともに、グローバルな市民の連帯に携わってきました。SJFでは、平和、人権、エネルギー、教育など多くの分野で新たに現れている21世紀の課題を解決するため、市民による民主主義実現のための政策や制度づくりを支援している。恵泉女学園大学教授]

 

  • 寺中 誠 [SJF企画委員; 東京経済大学他講師。主な研究分野は、国際人権法、犯罪学理論、刑事政策論。国際的な人権基準を実現させるという観点から、国内人権機関やグローバリゼーションが人権に及ぼす負の影響の問題などについて、理論的な研究と実践的な人権活動の両面で取り組んでいる。アムネスティ・インターナショナル日本前事務局長。]

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