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  ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第3回助成事業最終報告

 人身取引被害者サポートセンター ライトハウス 活動報告(2016年2月

団体概要 

 国連の定める人身取引(「性的搾取」「強制労働」「臓器摘出」)の中でも、特に「性的搾取」の被害にあっている人々の支援、救済を行う。「被害者への相談・直接支援」「啓発・啓蒙」「政策提言」を活動の3本柱とし、人身取引の無い社会の実現を目指す。

 

助成事業名児童・青少年向け人身取引被害者のための専用サイト/アプリ開発プロジェクト

 人身取引被害に対応した啓発や、相談支援を行うことを目的とした専用サイト、およびアプリの開発を行い、JKビジネスに代表される児童や未成年者の被害者の救済、支援、また予防に寄与する。

 

事業計画 

 JKビジネスに代表される、児童・未成年者被害の増加傾向に対応すべく、対象となる層への啓蒙・啓発を目的として、2つのプロジェクトを推進する。

【児童・未成年者向け啓発アプリ】

 既に発刊した啓発マンガプロジェクトの成果を用いてスマートフォン上から、当該マンガを閲覧できる仕組みを構築する。

【相談アプリ】

 現在、当団体はコミュニケーションアプリLINEを使った児童や未成年者向けの人身取引被害相談窓口を設置しているが、当団体支援員が長時間、1名の相談に拘束されてしまう問題があるため、複数の被害者に対し、救済の手が行き届いていない。この問題を克服するために、啓発アプリと連動した形で人身取引被害に特化した相談支援アプリを構築する。

 支援員はネットに接続されたパソコンがあれば、どこからでもボランティアとして参加できる革新的なクラウドアプリを制作すると同時に、相談支援の水準を保つため、相談支援ボランティアを養成するためのマニュアル作成も実施する。

【児童・未成年者向け専用ウェブアプリの必要性について】

 現在、日本国内で、日本人が性的搾取の被害に遭ってしまう事案が急増している。これらの被害は巧妙かつ悪質であり、捜査機関も把握できていないのが現状である。特に、JKビジネスに代表される児童・未成年者の性的搾取の被害は深刻かつ増加傾向にあり、被害を未然に防ぐための予防・啓発が急務である。そこで、既に刊行中で知名度のある啓発マンガプロジェクトの成果と、相談支援アプリを連動させることで、児童・未成年者が性的搾取を含む人身取引被害に巻き込まれても、本アプリを用いて相談を受けられるようにする。

 ライトハウスではこれら、児童・未成年者被害者への相談支援業務を実施するにあたり、電話やメール以外にLINEも活用している。内容は大きく2つ、ソーシャルワークを要する相談(例:児童買春・児童ポルノ、親からの虐待、家出等)と、傾聴支援を要する相談(例:性的搾取を受け「死にたい」「今から自殺する」等、自傷、自殺等の危険性)がある。

 スマートフォンの普及により、常に手元に電話、メール機能、LINEがあるため、若年層が我々のような支援団体にコンタクトを取りやすい環境となっていることから、相談数の増加も考えられる。相談の中には深刻なものも多く、支援員が独りで抱え込まないよう、チームでバックアップする仕組みが必要であるが、現行のLINE仕様では、複数の支援員が同時にログインすることができず、1人の相談員が複数の相談に対応しなければならないため、相談の質の維持に限界があったことから、本事業ではクラウドを用いることで、相談者と日本全国にいる支援員が、アプリを通して繋がることができ、36524時間、クラウド上で相談できるアプリ「相談支援アプリ」を開発するものとした。

助成金額 : 80万円

助成事業期間 : 2015年1月~2016年2月

実施した事業と内容: 

【啓発アプリ】
 2015年4月に発刊したマンガプロジェクトに対して、スマホで閲覧可能な形式のウェブアプリとして配信するためのシステム開発を行った。

【相談アプリ】
<6月>
基本設計開始
レンタルサーバー(CentOS)を借りる
基本設計完了
詳細設計着手
データベース基本設計、完了
画面デザイン着手
<7月~8月>
詳細設計完了
ユーザー側の実装
画面デザイン完了
<9月~11月>
ユーザー側の実装完了
管理側の実装完了
Facebook、Yahooを使ったO-Auth認証機能の作成
<12月>
テスト
仮運用開始
某都立高校の高校生4名に使用してもらいフィードバックをもらう。
ライトハウス 高校生試験運用2 

SSL通信対応
サーバー側ファイヤーウォール設置
<1月>
SSL証明書購入設置
仮運用中
不具合修正
プロモーション準備
<2月>
2月1日、本番運用開始

 

事業計画の達成度: 

  2015年1117日に、某都立高校の高校生4名(女性2名、男性2名)に実際に相談アプリを使用してもらい、操作性や利便性について、感想や気付きの点など様々な意見や指摘を受けた。指摘のあった箇所については改善を行った。2016年2月1日から、相談アプリとして本番運用を行った。スマートフォン向けにはAndroid(Google)用に相談アプリを開発し、プレイストア上にて公開した。
相談アプリはパソコンからはこちら。
スマートフォンからはこちら。

ライトハウス 相談アプリ インストール画面

<スケジュール遅延について>
 スケジュールについては、約1ヶ月の遅延が発生したその理由として、現役の高校生はじめ、関係者に実際に使用してもらい、もらったフィードバックの反映、機能追加を行ったことなどにより、当初の想定よりも改善点が増え、結果として作業工数も増加したが、予算の関係上、人件費の捻出が難しく、一人当たりの業務量が増えたことなどが挙げられる。

なお、現在進行中ならびに今後の対応となるタスクは以下のとおり。

 <タスク1> 

 スタッフ2名とボランティア1名の計3名で本番運用中であるが、当該支援はクラウド上で行う相談支援のため、ソーシャルワーカー、ケースワーカー、臨床心理士の資格や経験を持つ方を、日本全国からボランティアとして募集する。現在、募集と審査の方法を検討しつつ、相談支援用のマニュアルを作成中。

<タスク2

 これまでLINEで受けていた相談者には、本番運用中の相談支援アプリに移行するように呼びかけており、今後も継続して呼びかけを行っていく。

<タスク3

 iPhone(Apple)用のアプリについては3月以降を予定している。

 

助成事業の成果・助成の効果:   

 相談支援アプリの本稼動時から、グーグル・アナリティクスを用いて分析を行った。

分析期間は、2016年2月1日~3日(合計3日間)。告知方法は、Facebook、Twitter、当団体のホームページ上で行った。利用者数は130名であり、そのほとんどが啓発マンガを読むためであったが、ログインしてチャット相談画面を開いた件数が5件、実際に相談をしてきた件数は2件、当該期間利用者の1.5パーセントが実際に相談をしたこととなる。

啓発マンガは、これまでスタッフが手作業で地道に配布・販売を行ってきたが、本助成事業をとおし、アプリとしての無料配布が可能となり、3日間で100名以上の人々読まれたことは評価できる。また、今後もより多くの人々に読まれ、このような犯罪に対する抑止効果が高まることも期待できる。

また、メディアなどに対しても何らかのキャンペーンを行い、さらに知名度を上げていくことも視野に入れて考えている。

相談件数の1.5パーセントという数字が多いか少ないかの判断は、現段階ではできないが、メディア等に対する特段のキャンペーンを行なわなかったにも関わらず、実際に相談があったことは評価できる。

相談支援の現場において、本システムの導入により、これまでのメール相談では、支援者がリアルタイムに情報を確認することができなかった問題が解決され、匿名での相談も可能となったと同時に、電話などを介し、口頭で相談することに抵抗や苦手意識がある相談者による相談のハードルを下げることができたものと思われる。

これらのことから、これまで相談を躊躇していた被害者からの相談も増えることが期待される。

 

助成事業の成果をふまえた今後の展望:  

 「福祉行政が性風俗産業に敗北している」という言葉が象徴するように、現在の性風俗産業は、LINEやソーシャルメディアを駆使し、甘言や錯誤などによって巧妙に児童・青少年を勧誘し、搾取しているのが現状である。児童の場合であれば、児童買春や児童ポルノ、18歳以上であれば、性風俗産業やアダルトビデオ産業に巻き込まれる危険が高い。

 また皮肉なことに、寮付き、給与前払いの「ポルノ・風俗産業」が、親からの虐待や養育放棄によって行き場を失い、行政・福祉にもつながることのできない児童・青少年の歪んだセーフティネットとして機能しており、本人の意思に関係なく、生きていくためにそれらを頼らざるを得ないという現実がある。

 ライトハウスはこれら性的搾取に関わる業者に対抗し、困窮する児童や青少年にリーチするアプリとして、日本全国のソーシャルワーカー、ケースワーカー、臨床心理士などの方々を巻き込み、新時代のソーシャルワークのあるべき姿を模索する。

 これまで性的搾取被害を受けた人々の多くは、様々な理由により泣き寝入りを余儀なくされてきた。加害者と被害者のやりとりは、密室で行われることが多く、記録を残されていることが少ないことから、「言った、言わない」の水掛け論となってしまうこと、きっかけから被害に遭うまでの状況の立証が困難であること、犯罪としての構成要件が高いこと、更にこのような被害相談に対し、匿名での相談を受けられる場所が少なく、ワンストップで相談できる場所もないこと、相談しなくてはならない先が多いことで、自分自身が語りたくない、自分自身のプライベートを何度にもわたって話さなくてはならないことなどが、その原因として考えられる。

 当該相談支援アプリでは匿名での相談も受け付け、医療機関、警察、法的機関等、被害者の必要とする社会資源へも積極的につなげていく。今後、本アプリが積極的に活用されることで、被害回復の選択肢の幅が広がり、本人の社会復帰、自立支援にも寄与するものと期待できる。

 最後になるが、このような搾取の問題は日本全国で発生していると思慮される。

 また、このような被害者のために何かをしたい、自分の経験を活かしたい、そのための専門知識や経験を豊富に持つ人々も日本全国にいることと思われる。

 居住地がライトハウスの事務所や首都圏はじめ全国の繁華街などから離れていても、本アプリを介して問題意識を持つ多くの人々がつながり、その中で、性的搾取の問題も徐々に理解され、ついては日本国内での認知も高くなっていくことが期待される。

 今後は現実的な問題として、相談が増えることで当然のことながら、これらに応対する人員が必要となることや、様々な経費が必要となることから、資金調達についても併せて強化していく必要がある。

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