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目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 

1.【巻頭】 ~委員長のひとりごと~ (上村英明)

 

2.SJFニュース

●『セクシュアルマイノリティに開かれた、これからの社会』(12/22)ご案内

    ~ダイバーシティをLGBTという視点から考える~ SJFアドボカシーカフェ第33

『ヘイトスピーチをのりこえる!』(11/12)報告・SJFアドボカシーカフェ第32                                     

●『外国人と生活保護』(10/14)報告・SJFアドボカシーカフェ第31

 

3.【コラム:ソーシャル・ジャスティス雑感】―128日という日―(大河内秀人)

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★1.【巻頭】 ~委員長のひとりごと~ (上村英明)

 

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 本日(2014年11月16日)は、10月30日に公示された沖縄県知事選の投開票の当日に当たる。先ほど午後9時過ぎに調べたニュース速報によれば、現職知事の仲井真弘多氏を破って、元那覇市長の翁長雄志氏の当選が決まったらしい。翁長氏が、普天間基地の撤去、新基地の辺野古移設反対、米軍の新型輸送機オスプレイの配備撤回を公約に掲げた点からしても、日本の市民社会にとって大きな成果であることは間違いなく、沖縄のメディアは喜ぶ翁長氏とその支持者を報道する一方、日本の大手メディアの報道には、知事が代わっても何も変わらないよという冷めた意見がアップされ始めた。

 日本の大手メディアは、今回の知事選を、安倍晋三政権により強行される基地建設を焦点にした「保守分裂」の選挙と位置付け、少なくともこれに影響された日本市民はそうだと思ったことだろう。2000年に那覇市長に当選して以来4期14年を勤め上げた翁長氏は、沖縄における自民党の有力な政治家であり、前回2010年に行われた知事選では、当選した仲井真弘多氏の選対本部長を務めた人物でもあるからだ。

 他方、沖縄のメディアである「琉球新報」は今回の選挙を「沖縄の未来がかかる歴史的知事選」と位置づけた。「歴史的知事選」とは、基地問題だけを指すのであろうか。沖縄における「琉球人」の人権とアイデンティティの問題に関わってきた経験からすれば、残念ながら、今回は「保守分裂」の選挙ではなく、「琉球人」のアイデンティティが問われた史上初の選挙といってよいかもしれない。

 翁長氏が主要な政策として掲げた3つの基地対応は、「ウチナーンチュの誇りを取り戻す」という、より大きな「大義」と連動しており、2014年7月に結成された「沖縄建白書を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」(以下、島ぐるみ会議)が採択した「建白書」の実現を公約したものだ。

 この「島ぐるみ会議」は、2014年3月22日に最初の発起人会が開催されたが、事務局で中心的な役割を務める島袋純琉球大学教授は、この会の目的として「沖縄の自己決定権を取り戻す」ことを表明した。つまり、1879年の琉球併合以来続いている日本政府による植民地化と「構造的差別」に対し、琉球人が一丸となって(「島ぐるみ」で)闘おうというものであり、「琉球新報」が選挙速報の解説に起用した新垣毅編集委員は、2014年5月に始まった、琉球の「主権」に関する歴史と現在を紹介し分析する長期連載「道標求めて」の担当者でもある。因みに、こうした動きの土台に、2013年5月に設立された「琉球民族独立総合研究学会」や1999年2月に設立された「琉球弧の先住民族会」などの活動による流れがあることも忘れてはならないだろう。

 沖縄の基地問題が日米安全保障に関する反戦・反基地・環境保護運動ではなく、日本政府による琉球への植民地支配への抗議運動として語られ始めたのである。翁長氏の実態は、その意味では「沖縄県」の知事ではなく「琉球政府」の代表である。翁長氏の今後の活動に心から期待したいとともに、私たち「日本人」の読み違いに注意を払いたい。

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2.SJFニュース

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●『セクシュアルマイノリティに開かれた、これからの社会』 ★申込受付中★

   ~ダイバーシティをLGBTという視点から考える~SJFアドボカシーカフェ第33回) 

【日 時】14年1222日(月)18:30-21:00(受付開始1800

【会 場】文京シビックセンター 4シルバーホール

【ゲスト】藥師実芳さん(NPO法人ReBit代表理事)

     阿部裕行さん(東京都多摩市長)

――日本でのLGBT(性的マイノリティ)人口は5.2%だと言われていますが、当事者の方々に対する差別は根強いものがあります。地域社会の中に実在し、あたりまえの生活をしていることへの配慮に欠ける発言をする方も、残念ながら少なくありません。いっぽう今年、多摩市と文京区で「性的指向と性自認に基づく差別の禁止」を盛り込んだ男女平等参画条例が施行されました。多摩市条例の基本理念は、「すべての人が、個人として尊重され、性別並びに性的指向及び性自認にかかわらず、個人の能力及び個性を発揮し、意欲及び希望に沿って、社会的責任を分かち合うこと」です。 またLGBTの方々から、私たちひとりひとりだけではなく、「地域社会」や「行政」など社会全体できちんと向き合うことが必要だと、広く語りかけられ始めています。

そこで、今回のアドボカシ―カフェでは、「LGBT成人式」などの企画を通して社会を変えようと努力しているNPO法人ReBit代表の藥師実芳さんと、行政側で先駆的な取り組みを行っている多摩市長の阿部裕行さんをお迎えして、差別の禁止やマイノリティへの配慮を前提とするダイバーシティ(多様性)のある社会について対話します。

詳細・お申込み ⇒http://socialjustice.jp/p/20141222/

 

●『ヘイトスピーチをのりこえる!』:SJFアドボカシーカフェ第32回開催報告

【登 壇】淑玉さん・ゲスト(のりこえねっと共同代表

    上村英明さん・コメンテータ(市民外交センター代表)

    寺中誠さん・コーディネータ(日本経済大学現代法学部非常勤講師)

【日時・会場】141112日・文京シビックセンター

――ヘイトスピーチという暴力により心身を深く傷つけ合う社会現象にどう対応したらよいのでしょうか。憎悪の扇動が蔓延する日本社会の課題について、地域から国際的な視点まで含めた対話がなされました。

 ヘイトスピーチは、弱い立場に置かれ、さまざまな社会課題を背負わされてきた集団を標的として、排除しようというものです。その論理は、政府の伝統的な差別的政策を支持するもので、こうした差別活動に参加する人々は政府の「お墨付き」を得て安心しようとする人々だという見方が示されました。また、政府は「表現の自由」を盾にこれに対応しようとしませんでしたし、またメディアや法律家もこれを支持する場合が少なくありませんでした。こうした動きは「ヘイトスピーチ」という言葉がなかった時代から続いてきたのです。

 しかし、今回は「ヘイトスピーチ」と言語化されると同時に、カウンターと呼ばれる対抗する人々が出て広く問題視されるようになったと言えます。カウンター活動に参加する人々は、ヘイトスピーチを「それは、アウトでしょ」と捉える思想信条をこえた差別に対する拒否感を共有し、むしろ厳しい生活環境の人たちだろうと報告されました。問題意識は国会議員、学者に広がり、今年7月の国連自由権規約委員会、8月の人種差別撤廃委員会の勧告を受けて、首相や法相、都・府知事がヘイトスピーチを問題視する流れが作り出されましたが、これをどう定着化や制度化するかが問いかけられました。

 そもそもヘイトスピーチは、単なる「言葉の暴力」ではなく、憎悪の扇動により心身を極限的に傷つける「暴力」であり、8月の人種差別撤廃委員会からも、明確な「暴力」として法規制すべきだと強く勧告されました。第2次世界大戦後、ユダヤ人差別がホロコーストを引き起こした歴史への反省から、特定の人種・民族集団に対する差別の撤廃は重要な国際課題だとされましたが、日本は、軍国主義や戦争への反省はあっても、差別の土俵となった植民地主義や帝国主義への反省に乏しく、こうした問題への対応を遅らせてきました。また、社会課題を制度により解決しようとする姿勢の乏しい日本に対し、今回の人種差別撤廃委員会の勧告は、差別禁止法の制定や国内人権機関(国内人権委員会)の設置を取り上げています。さらに、差別の実態に関する調査やそれを土台とした差別の定義の明確化も不可欠な作業です。

 まず、マイノリティの被害当事者が声をあげられるような安心・安全な環境が必要ですが、その環境が不十分で声を上げられず、社会的弱者から脱せられないという実態があり、行政が間に入って被害を阻止することのできる制度構築が必要だと強調されました。視野を広げてみれば、「多様性」が日常にある社会をつくれば、マイノリティが発言できる環境保障につながる学びや社会参加、市民の意識変革が進むことから、日本は多民族・多文化社会をつくっていく覚悟が試されていると締めくくられました。

 

 ★参加者アンケートより★

企業のCSR部門で人権の啓発を企図しております。役員も社員も、公的生活とプライベートはつながっています。上司や机を並べている同僚がヘイトデモに参加する、あるいは賛同するような人であってほしくありません。というような観点から「ビジネスと人権」のほかにプライベートで犯しがちな人権問題にもスポットライトを当てたいと思っております。

エネルギーをもらいました。何でもいいからやってみる、行動に起こす、やらなきゃ何も始まらない――心に残りました。グループワークもとても楽しかったです。来てよかったです。

初めて伺いましたが、本当によかったです。小さくとも具体的な動きにできるよう努力します。

 

 

●『外国人と生活保護』(10/14SJFアドボカシーカフェ第31回開催報告

【登 壇】奥貫妃文さん(相模女子大学人間社会学部社会マネジメント学科専任講師)

    大川昭博さん(自治体職員/移住労働者と連帯する全国ネットワーク運営委員)

――大分生活保護事件について、福岡高裁判決と最高裁判決とを国際人権法の視点も含めて分析するとともに、自治体の福祉業務の現場の視点からみた社会保障政策全体への提言がなされ、私たちが現在直面している問題が集約されていることが浮き彫りとなりました。

 ゲストの奥貫妃文氏は、「外国人は生活保護が受けられなくなった!」と単純な誤解された受け止め方が先走りしていることへ強い危惧を示しました。福岡高裁の判決を画期的と評価しながら、最高裁の判決は元に戻ったに過ぎず法的インパクトはないとの考えを示しました。一方、社会的インパクトとして、ネットや報道、さらに地方議会などでリアルに外国人の生活保護申請を排除する動きが現れ、政治の主流派の人たちがこの排外主義的な流れに乗ろうとする動きにつながっている点を指摘しました。今後の課題として、外国人の社会権について、国際法と整合性をとりながら正面から理論の精緻化を進める必要があると提言しました。

 一方、コメンテータの大川昭博氏は、福祉業務の実務に携わる立場から、原告の方に「活用可能な」資産が確認されていることから、どこの自治体においても判断が割れる難しい事案であり、保護の決定自体は明らかに不当とは言い切れないところに「弱み」があったのではないか、したがって、敗訴したからと言って、外国人に保護請求権を認めない今の解釈が正当性を勝ち得たわけではない、との見方を示しました。一方、この判決が独り歩きあるいは曲解されることによって、生活保護制度への無理解がいちだんと増幅され、生活保護を受給している外国人へのプレッシャーが強まるような世の中になるのではないか、との危惧が示されました。

また本質的な問題としては、労働力不足を補うために外国人を受け入れていながら、移住者の存在を前提としない社会保障・福祉制度となっているがゆえに、貧困や格差が拡大し、結果として外国人の生活保護が増えていくという悪循環がある、との考えを示しました。今後、国境を越えた人の移動がさらに活発になる中で、社会のリソースをどう分けていくのか、私たちの社会の在り方が問われており、外国人を単なる「労働力」としてではなく、地域でともに暮らしていくことができるようにするための基盤を構築することが重要だと提言しました。

 会場全体での対話を通して、この判決が問うているものは、外国人に生活保護を出していいか、という議論にすり替えられるものではなく、移住者が貧困に陥るリスクをできる限り減らせるような、場当たり的ではない制度設計が重要性ではないか、ということが強調されました。

 ★詳細報告⇒ http://socialjustice.jp/p/20141014report/

 

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3.【コラム:ソーシャル・ジャスティス雑感】―128日という日―(大河内秀人)

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 「128日」と聞くと、このメルマガの読者の多くは、1941年、≪真珠湾攻撃で太平洋戦争開戦≫を思い起こすのではないだろうか。次にこの日が記憶されているのは、1980年、≪ビートルズのメンバーだったジョン・レノンが凶弾に倒れた≫日だろう。さらにこの日は、1987年、≪パレスチナ民衆の抵抗運動「インティファーダ」がガザの難民キャンプから始まった日≫であり、1995年、≪高速増殖炉「もんじゅ」がナトリウム漏れを起こした日≫でもある。

 真珠湾攻撃は、最近の映画などを見ていると、日本では旧日本軍の華々しい歴史を礼賛し、米国では原爆投下の正当性を主張する世論喚起のモチーフとなっている気配を感じている。

 インティファーダは、2000年以降再燃した第2次を含め、「暴力の連鎖」という言葉をともなって語られてきた。その表現では、石を投げれば銃弾が返され、自爆テロには空爆・ミサイルという非対称性が隠される。そして犠牲を承知で投石や自爆をやむなくさせる、封鎖による人権侵害、不当な入植地建設や土地の収奪という「日常」は伝えられない。「もんじゅ」は獅子のみなぎる力(プルトニウム)を智慧によって治める文殊菩薩から命名されたというが、運転開始直後の事故から20年近く経っても動かない現実が、人間の奢りと浅はかさを象徴しているように思う。

 そして日本の仏教徒にとって128日は≪釈迦が覚(さと)りを開いた「成道会(じょうどうえ)」≫である。「覚り」とはすべての苦しみから解放され、真の幸福を得ること。欲望と憎悪と無知という内なる毒を自覚し、その囚われから離れ、普遍的な愛(慈悲)で時空のあらゆる存在を受け入れることである。

 最近、ヘイトスピーチに接し、人間の欲望と憎悪と無知の根深さを突きつけられる思いだ。ターゲットにされている人にはもちろん、それを口にする人の人間性に対して、この社会が構造的に暴力をふるっていると思えてならない。「これはアウトでしょ」という当たり前の感性も、憎悪の力に支配された社会では口にすることが難しい。

 しかし本来、Justiceとは、正義を主張し力で勝ち取るものではない。奢ること、煽ることなく、苦しみ(問題)を引き起こす根源、構造の中に織り込まれた暴力の種を見極めながら、様々な立場との対話を重ね、折り合いをつけていくことではないだろうか。

 かつてパレスチナ支援の集会で、ジョン・レノンの「イマジン」を歌うことの是非を議論したことがある。国家がないことで苦しみ、敬虔な信者の多いパレスチナ人に、「no country」「no religion」という歌詞はいかがなものか? という指摘だ。しかし私は、ここで言う「no」とは単純な否定ではなく、それを乗り越えていくことだと考える。そこに共生の希望がある。

 

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今月号の執筆者プロフィール

  • 村 英明 (市民外交センター代表/SJF運営委員長; 1982年にNGO「市民外交センター」を設立、アイヌ民族や琉球・沖縄人の人権問題を中心に、アジアの先住民族問題に取り組む。また、国連の人権会議への参加をはじめ、国連改革や生物多様性条約COP10などへの市民社会としての貢献等、広い視野から人権と平和の活動、市民の国際交流を実践している。恵泉女学園大学教授。) 
  • 大河内 秀人 (浄土宗見樹院及び同宗寿光院住職。インドシナ難民大量流出をきっかけに国際協力・NGO活動にかかわる。一方で地域づくりの大切さを実感し、寺院を基盤に環境、人権、平和等の活動を続けている。江戸川子どもおんぶず代表、NPO法人パレスチナ子どものキャンペーン理事、原子力行政を問い直す宗教者の会世話人、ほか。)

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*SJFでは、助成事業や対話事業を応援してくださるサポーターやご寄付を募っております。認定NPO法人への寄付として税金の優遇制度をご利用いただけます。

詳細はhttp://socialjustice.jp/p/shien/

 

ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)

160-0021 新宿区歌舞伎町2-19-13 ASKビル5F 認定NPO法人まちぽっと

Tel: 03-5941-7948     FAX: 03-3200-9250

URL: http://socialjustice.jp/ 

Twitter: https://twitter.com/socialjusticef

Facebook: https://www.facebook.com/socialjusticefundjp

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