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目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 

1.【巻頭】 ~委員長のひとりごと~ (上村英明)

 

2.SJFニュース

●『ヘイトスピーチをのりこえる!』:SJFアドボカシーカフェ第32回ご案内

2014年度SJF助成公募に多くのご応募ありがとうございました

 

3.【コラム:ソーシャル・ジャスティス雑感】~水とリニア新幹線~(轟木洋子)

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1.【巻頭】 ~委員長のひとりごと~ (上村英明)

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 短い期間ではあったが、4月から半年の在外研究休暇を終了して、916日深夜には無事羽田空港に到着した。フゥ~。しかし、なかなか生活スタイルの切替えができない。ともかく、その週末の19日には秋学期の授業が再開されたが、翌週は久々の教授会であった。

 帰国後最初の教授会ということもあって、組織人間としては、帰国を報告し、休暇中にお世話になった方々にお礼をいい、そして、これからはリフレッシュした分も頑張りますと宣言することにした。ただし、「浦島太郎」らしく、今回は静かに教授会の議論を聞くことに決めていた。幸い帰国報告は無事終了したが、残念ながらその後の静寂を守ることはできなかった。

 事務局からの報告では、「学校教育法」および「国立大学法人法」の一部改正が2014620日に可決され、来年201541日に施行されるというのである。これを機に、20153月までに、改正法に関係する各大学の内部規則を改定する必要があり、文部科学省からこれを「支援」するというお節介な文書が配られた。「浦島太郎」は学内問題ではそうだと自認していたが、国内問題に関してはオーストラリアでもアンテナを張っていたつもりであった。しかし、寝耳に水の話である。

 国会の記録によれば、安倍晋三内閣から法案が衆議院に送られたのは2014425日、その後衆議院で修正、可決の後、参議院に付託されたのは610日で、圧倒的多数の与党で占められた国会でスピード審議されたことがわかる。

 改定の目的は、大学経営における学長のリーダーシップを強化してガバナンス改革を促進し、これに合わせて副学長や教授会の役割を見直すことである。職場の恵泉女学園大学も関わるのは、とくに学校教育法で、改定は以下のようなものであった。従来「学長の職務を助ける」と規定された副学長の職務が「学長を助け、命を受けて校務をつかさどる」に変更された。また、教授会は「学生の入学、卒業及び課程の修了」、「学位の授与」その他「教育研究に関する重要な事項で、教授会の意見を聴くことが必要なものとして学長が定めるもの」に「意見を述べる」、さらに、学長及び学部長などがつかさどる「教育研究に関する事項について審議し、及び学長の求めに応じ、意見を述べることができる」とされた。つまり、学長・副学長権限の強化と教授会の形骸化、つまり教授会を大学自治の機関ではなく、学長の単なる諮問機関にしようというものだ。

 さて、帰国を前にした912日はメルボルン大学での研修最終日であったが、午前中はサウス・ローンと呼ばれた広場で、学生や教職員組合によって開催されたトニー・アボット・オーストラリア連邦首相の来学に反対する集会に出席した。アボット政権は20139月に誕生したが、安倍政権と同じような超保守的な政策を次々と打ち出した。教育でいえば、教育予算の大幅削減である。オーストラリアには約40の大学があるが、そのほとんどは国立大学である。アボット政権の政策では、その教育予算の20%がカットされる。メルボルン大学では、これによって約3000あるポストの内500が削減されると見込まれている。そのほとんどは学生の研究や生活を支援するポストだといわれ、その削減は残った教職員の労働強化や学生サービスの低下につながる。同時に、アボット政権は、大学に学費値上げの権利を認めた。つまり、ポストを維持したければ、学生から金を取れということだ。

 集会では、移民・難民出身の学生あるいは先住民族の学生から、教育は恩恵ではなく権利であり、また自分たちを差別するのかという声が相次いだ。そして、そのアボット首相をキャンパスに招聘して講演の機会を提供したのが、副学長であった。彼は、アボット政権の強い支持者であるとともに、大学内部で政権の「教育改革」を具体的に進めている責任者で、これを含めた集会で何度も批判された人物でもある。因みに、彼の連れ合いは、同じアボット政権の支持者であると同時に、メルボルン市内にある別の国立大学の副学長だ。

 日本の話に戻るが、200612月には、第1次安倍内閣によって、学校教育法の上位法ともいえる教育基本法の改定が行われた。安倍晋三首相にとっては、平和主義・民主主義を明文化した日本国憲法とこれに合致する人材の育成を目指した教育基本法は車の両輪のごとく「目の上の瘤」であり、その改定を自らの使命としていたといわれる。そのひとつ教育基本法が、この時改定されたのだ。しかし、基本法の改定を実体化するためには下位法の改定が必要であり、これが今回の学校教育法の改定となったのだ。

 説明を聞きながら、資料を読んでいた僕は逆上しそうになった。どうしてむざむざとこの改定を認めたのか。なぜ抵抗あるいは抗戦しなかったのか。近代日本は、あの軍国主義以来、第1線を突破されると、第2線、第3線の防戦が決定的に弱い。政治家は、ジャーナリストは、また当事者の大学人は何をしていたのか。・・・ともかく、「浦島太郎」らしく落ち着いたふりをしながら、状況のきちんとした把握を大学執行部と事務局に要請し、学内規定の改定を進めないように提案し、了承された。・・・帰国するやいなや、また余計な仕事を背負いこんでしまったのかもしれない。

 

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2.SJFニュース

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●『ヘイトスピーチをのりこえる!』(SJFアドボカシーカフェ第32回)★申込受付中★

         ~シリーズ:「日本で生かそう!国連人権勧告」第7回~ 

【日 時】14年1112日(水)18:30-21:00(受付開始1800

【会 場】文京シビックセンター4シルバーホール

【登 壇】淑玉さん・ゲスト(のりこえねっと共同代表

    上村英明さん・コメンテータ(市民外交センター代表)

    寺中誠さん・コーディネータ(日本経済大学現代法学部非常勤講師)

―― 今や日本社会の各地に蔓延するヘイトスピーチ。しかし、政府当局は有効な対処を何もしないまま、野放しにして放置しています。これに対して、国連や条約機関が相次いで改善勧告を出しました。日本での議論は、ともすれば法的規制の難しさを説く傾向があります。しかし、法的規制とは、ヘイトの問題を自分のこととしてよりも、単なる対応事例として第三者的に捉えていることでもあります。実際のヘイトの被害を的確に捉えた態度とはいえません。
 ヘイトの実態はどうなっているのか。被害者という立場からこの問題を捉えた場合、何が見えてくるのか。この日本社会に、マイノリティとして生きるとはどういうことなのか。ヘイトをのりこえるべく、その最前線で闘い続ける「のりこえねっと」代表の辛淑玉さんに語っていただきます。そして、ヘイトが蔓延する日本社会が国際社会の目にはどう映っているのかについて、市民の声を国際社会に届けてきた「市民外交センター」代表の上村英明さんに語っていただき、参加者の皆さんと対話します。ぜひご参加ください。

詳細 ⇒http://socialjustice.jp/p/20141112/

 

★レビュー発売中:「日本で生かそう!国連人権勧告」(監修 寺中誠)

詳細 ⇒ http://machi-pot.org/modules/publication/index.php?content_id=15 

 

●~SJF助成2014年度公募に多くのご応募ありがとうございました~

 社会の不公正を正す政策提言等のアドボカシー(社会・政策提案)活動を推進し、発展させることによって希望ある未来を創造することを目的として、アドボカシー活動を支援する第3SJF助成先を9月末まで公募しました。多くのご応募をいただき誠にありがとうございました。書類による1次審査と、面接による2次審査により決定した助成先の発表フォーラムを、来年早々にも開催する予定です。詳細決まりましたらご案内いたしますので、ご参加いただければ幸いです。

 

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3.【コラム:ソーシャル・ジャスティス雑感】 ~水とリニア新幹線~(轟木洋子)

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 父の転勤で中一の時に熊本から北海道に移り住むことになったが、12歳まで過ごした熊本は私の原点。阿蘇山や水前寺公園などが有名だが、私は八景水谷(はけのみや)が大好きだった。氷のように冷たく透明な水がこんこんとわき出るそこは真夏でも涼しく、子どもだった私は友達とどれだけ長く足をつけていられるか競ったものだ。クーラーがなかった時代に、涼しい冷気で人を癒してくれる場所だった。熊本は水の都。正しかったのかどうかわからないが、私の記憶では1秒に数万トンの水がわき出るということだった。今では半世紀以上も生き、おかげさまで何十カ国も旅をさせてもらったが、あんな神秘的で美しかった場所を他にみない。なのに2年前、およそ40年ぶりに訪れてみると、そこはすっかり水が枯れ、かつての人々の憩いの場は影も形もなくなっていた。そう、水は有限の資源だったのだ。

 あまり話題にのぼっていないが、別の場所でこの貴重な水資源を枯渇させるだろうプロジェクトが今年度中に着工する。リニア新幹線だ。リニアについては、膨大な電力を必要とすることによる原発再稼働の可能性、電磁波による人体への悪影響、ウランを含む残土の処理などの問題に加え、すでに実験線で発生している水枯れの問題がある。リニアは直線的に走ることから圧倒的な速さを売り物にできるのだが、直線を確保するために東京から大阪までのおよそ8割が地下を掘削してトンネルを走るそうだ。実験線でも8割以上の区間がトンネル掘削により造成されたが、水脈を断ち切ったために周辺で水枯れがすでに発生している。リニアを推進しているJR東海は、水枯れ被害にあった家庭を戸別訪問して補償金を支払うことで、この問題を大きくしないようにしているという報道がある。事実であれば、原発建設のために地元住民を金で巧みに抑え込んできた電力会社と似ているではないか。

 夢のリニア新幹線。期待をかける人も多いだろう。しかし、上記の問題に加えて、中央構造線と糸魚川・静岡構造線が交差する世界最大級の活断層を貫通するトンネルを掘ることに危険はないのか。数々の疑問が多い中での着工を許してはならない。この問題については、以下のYou Tube上のアニメ漫才「リニア中央新幹線がやってくるヤァ!ヤァ!ヤァ!」が分かりやすい。ぜひ視聴を。

https://www.youtube.com/watch?v=u-cLZ2m6324

 

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今月号の執筆者プロフィール

  • 村 英明 (恵泉女学園大学教授/市民外交センター代表; 1982年にNGO「市民外交センター」を設立、アイヌ民族や琉球・沖縄人の人権問題を中心に、アジアの先住民族問題に取り組む。また、国連の人権会議への参加をはじめ、国連改革や生物多様性条約COP10などへの市民社会としての貢献等、広い視野から人権と平和の活動、市民の国際交流を実践している。)

     

  • 轟木 洋子 ((公財)ジョン万次郎ホイットフィールド記念国際草の根交流センター事務局長; 民間企業を経て、アムネスティ・インターナショナル日本支部のキャンペーン・オフィサー、日本フォスター・プラン協会の広報室長を担当後に、米国の大学へ留学。帰国し「シーズ=市民活動を支える制度をつくる会」プログラム・ディレクターとして支援税制の成立・改正運動等に関わり、その後現職。)

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    *SJFでは、助成事業や対話事業を応援してくださるサポーターやご寄付を募っております。認定NPO法人への寄付として税金の優遇制度をご利用いただけます。

    詳細は http://socialjustice.jp/p/shien/

     

    ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)

    〒160-0021 新宿区歌舞伎町2-19-13 ASKビル5F 認定NPO法人まちぽっと

    Tel: 03-5941-7948     FAX: 03-3200-9250

    URL: http://socialjustice.jp/p/

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