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 2011年度 アドボカシーカフェ ご報告

 

原発問題シリーズ第3回

「必要な情報はなぜ公開されないのか

‐30年前に話していた原発の情報公開-」

 

2011年10月19日、原発と情報公開の問題について私たちのできること、すべきことについて、ゲストや参加者と共に活発な意見交換が行われ深く考える機会を持つことができました。今回の原発事故にさかのぼる30年前、私たちの仲間が情報公開法を作る運動を行っている際に、すでに高木仁三郎氏などと原発における情報公開の議論は行われていましたが、今回の原発事故には十分には生かされませんでした。今後に向け、市民が問題解決に向けて議論や行動できるよう、リスク情報を社会が共有する仕組みづくりや得た情報を生かす市民力の醸成の重要性を強調する声が、会場では多く上がりました。

――― 主な内容 ―――

【1】 辻 利夫の導入話 (30年前の「情報公開8原則」に言及されていた原発問題)
あああああ認定NPO法人まちぽっと事務局長

【2 】伴 英幸さんの提言 (原発問題に係る情報公開の現状について)
あああああ原子力資料情報室事務局長

【3】三木 由希子さんの提言 (情報公開法の課題と今後の展望について)
あああああ情報公開クリアリングハウス理事長

【4】参加者とゲストのダイアログやディスカッション

【進行】奥田 裕之(SJF事務局)

 

以上を映像アーカイブと共に報告いたします。

_______________

 

【1】30年前の「情報公開8原則」に言及されていた原発問題 (辻 利夫)

・情報公開法を求める市民運動が1981年1月の臨時総会で、情報公開法の立法にあたって最低限定めるべき8つの原則を採択した。

・8原則の4項と5項が、今回2011年3月11日に発生した福島第一原発事故にかかわりある原則。

第4項「国民の生命・健康及び心身の安全などに関連する情報」

第5項「独占的公益事業(電力、ガス等)の事業計画の決定、その他国民生活に重大な影響を与える事項の関連する情報」

これについて絶対的に公開とし、いかなる理由によっても公開を拒絶することができないことを掲げた。

・情報公開法を求める市民運動は1980年に設立。1979年には米国スリーマイル原発事故が発生、米国の情報公開制度を参考に日本でも制定する気運が高まった。

・原発設置の許認可申請に添付されるデータは、市民の生命・安全に関わる情報が含まれる重要なものであるが、原発に関連する裁判などで市民団体が公開を求めても公開されてこなかった。

 

【2】原発問題に係る情報公開の現状 (伴 英幸さん)

~企業秘密を盾にした情報非公開との戦い~

・1990年のもんじゅ事故をうけて、国民の安全に関する情報を公開要請が強まり、1999年に情報公開法が制定された。ただし、これは、行政機関が保有する情報についてであり、電力会社を含め企業が保有する情報については直接の対象とはならない。

・電力自由化(1995年)以降、非公開が増えた。電力事業は独占状態であったのだから情報公開が競争の自由を阻害する理由とはならないはずも関わらず、だ。

・3.11原発事故後、衆議院の科学技術イノベーション推進特別委員会により「操作運転マニュアル」の公開が求められた。事故直後の1時間の状況を調べるためだ。しかし、開示されたのは、ほとんど黒く塗りつぶされた文書だった。

・これに対し、特別委員会は「公開命令」を発するも、原子力保安委員会により、公開による不利益が発生しないかチェック中であり未公開の状況だ。

~電力の閉鎖的運営は、今回の事故の遠因となっている~

・原子力運営は安全第一であり、今回のような事故は国民に多大な影響を及ぼすのだから、情報を公開し白日の下で運営する必要がある。

 

【3】情報公開法の課題と今後の展望 (三木 由希子さん)

~情報公開は全ての行動のスタート地点となる~

・私たち市民には情報公開を請求する権利があり、行政機関はこれに応じ、権利を保障するために最大限のことをする義務がある。

・情報公開請求は私たちの手段であり、そこから何をなすべきかが大切だ。

~「情報公開8原則」の4項・5項が生かしきれていない今の情報公開制度~

・個人や法人に係る不開示条項でも国民の生命・健康などに関する事項について絶対公開とする条項(4項)は、今の情報公開法にも同様の規定があるが公開制度に含まれている。しかし、判断は行政にゆだねられており適用されるケースは稀だ。

・公益的な事業について国民生活に重大な影響を与える事項については絶対公開とする条項(5項)は、現行の公益的裁量開示規定に含まれるが、電力など公益法人は対象外であり、市民が情報公開を請求しても開示義務はない。

~原発事故の初動に連動できない今の情報公開システム~

・東京電力から国に流れていない情報には、市民はアクセスできない。

・国から自治体に情報が流れるのは、プレスリリースの数時間前にすぎず、情報不足から自治体は初動段階では住民のためにできることが少ない。

~「情報公開プロジェクト」~

・原発事故への対応を市民が能動的に選択できる情報公開システムを目指すプロジェクトをスタートする。

・公開情報を市民サイドでアーカイブ化する。国内外で情報公開を活発に請求する。不開示決定のケースによっては不服申し立てを積極的に行う。

~事故予防に情報公開が効果を発揮する仕組みへ~

・リスクや不利益の情報を社会で共有することで、それを前提にした政策的な議論に市民参加する仕組みが必要だ(例;原発の設置許可申請の時点での議論参加)。

・危険が発生した時には、市民にリスク情報を流通させる市民目線での仕組みが必要だ。

 

【4】参加者とゲストのダイアログやディスカッション

~情報公開について自分たちに何ができるのか~

⇒ネットワークを作り自分たちで情報を取りましょう。メディアを利用し自分たちが得た情報を知らしめ少しずつ変えていこう。

⇒ニュースに対するコメントをツイッター等でどんどん流して、いずれ政策に反映されることを目ざそう。また、情報に対する教育を進めよう。

⇒情報に対する日本人の特性として、意思表示が弱い、公開情報に疑問を持たなさすぎる、行動選択に対する自由が狭く特異的にみられたりする、などがあげられる。

⇒権利を行使して公開された情報に対する責任も出てくる。知らなかったでは通用しなくなり、また、公開情報を読み取る力も求められるようになる。

⇒(伴さん)情報公開で知ったことを生かして行動する力が求められる。市民たちが何かを調べていくという気概をもって社会問題に深く入っていかないと、何も情報は出てこないと思う。

⇒(三木さん)普通の市民が普通に生活していける社会を目指したのが活動の原点だ。市民の思いを代弁してくれるNPOを市民が支える仕組みをSJFに期待する。色々な課題や専門性をもった政策提言系のNPOがもっと力をつける社会を目指したい。

~個人が組織にかかわっていったとき情報公開に関し何ができるのか?~

⇒(伴さん)日本人は滅私奉公で組織に埋没する傾向が強いが、個人をベースにした情報公開システムを再構築する必要がある。

⇒(三木さん)所属する組織に対して“おかしい”という声を安全に挙げられる仕組みとして「公益通報者保護法」の法制化の段階で議論してきた。

~原発事故情報を、市民が電力会社やメーカーに直接聞けない仕組みの問題(伴さん)~

⇒(三木さん)核物質防護と秘密保全の壁がある。核物質のような公共の安全に係る情報については、行政機関の開示判断に多大な裁量が認められており、2011年4月の情報公開改正法案でも修正するに留まった。また、次国会に提出される予定の秘密保護法では、公共の安全や秩序にかかる秘密とされた情報にはアクセスするだけで刑事罰の対象となる予定だ。

~開示されたマニュアルの中で隠された部分には何が書かれているのか~

⇒(伴さん)不明だ。2011年11月半ばには、地震発生から津波到来までの間の操作手順が書かれた詳しい情報が出そうだが、今回の事故原因を地震でなく津波とし原発施設の耐震性に問題無しとしたい電力会社にとっては開示しにくい情報なのだろう。

~原発の設置前の情報公開の状況は改善されたか?~

⇒(伴さん)一般概要は早い段階で情報が出るようになったが、詳細は設置許可申請書が出された段階で初めてわかる状態であり許可申請には市民は関われない。

⇒(三木さん)今回の事故で痛感したのは、普段から情報公開する仕組みを整えリスク情報を共有していないと非常時に対応できないということだ。

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映像アーカイブズ

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