このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on Facebook
Post to Google Buzz
Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Livedoor Clip
Share on FriendFeed
LINEで送る

ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第14回助成中間1次報告

特定非営利活動法人トイミッケ(2026年6月)

助成事業名・事業目的

「ネット/SNSにかかる社会的公正・人権の問題」に取り組むアドボカシー活動

 本事業は、2017年以降公的調査が途絶えている「不安定居住・不安定就労層」の実態を可視化することを目的とする。ネットカフェ等を主な居所とし、日払いのスキマバイト等で生計を立てる同層は、2017年の東京都の唯一の調査で推計3,000人とされた。しかしコロナ禍と物価高を経た現在、困窮は明らかに増えているにもかかわらず、公的な継続的把握はなく、実態は不明である。

 彼らはもともと既存の相談窓口につながりにくく、民間のアウトリーチも不足している。一方、私たちは2021年末から市民と連携し、ICTを活用した同層特化の緊急支援アウトリーチ「せかいビバーク」を展開し、2024年度はのべ1329件・実数338名の利用があった。

 そこで、この社会のギャップを埋めるため、これまでにつながった方と今後1年間につながる方を対象に、アンケートで成因、生計維持の方法、ニーズを明らかにし、必要な社会制度の拡充につなげる。

 

助成金額 : 100万円 

助成事業期間 : 2026年1月~27年6月

報告時点までに実施した事業の内容: 

 現時点では、助成対象事業の中心であるアンケート調査の実施には至っていないが、調査の質と社会的な活用可能性を高めるための準備を進めてきた。当初は社会啓発や政策提言への活用を主眼としていたが、相談支援チームおよび研究者との協議を重ねた結果、調査結果を学術的にも信頼性のあるものとし、今後の政策提言に耐え得る内容にする必要があると判断した。このため、調査項目や実施方法を見直し、大学の倫理審査を経て実施する方針へ変更している。

 一方で、事業が目指す「不安定居住・不安定就労層の実態の可視化」については、すでに成果への兆しが表れている。今年度は当団体の活動がほぼ毎月メディアに取り上げられ、NHKの報道番組にも複数回登場するなど、「見えないホームレス」や若年・就労中の困窮者に対する社会的関心は高まりつつある。今後は、この関心を一時的な報道にとどめず、アンケート調査による客観的なデータへとつなげ、議員質問や東京都による再調査、制度改善を後押しする材料としていく。

Kaida SJF
(写真上=緊急支援でつながり、継続支援をしているご相談者。不安定な居処のまま、お仕事を続けられています(許可を得て撮影))

 

今後の事業予定

※本調査スケジュールにおける主な変更点は、以下の二点。

 第一に、調査開始時期を変更(後ろ倒し)。当初は、社会運動や社会的啓発への活用を主な目的として調査項目を設計していた。その後、相談支援チームとの協議を経て、研究者に改めて相談した結果、本調査を学術的な論文として発表できる水準のものとする方針となった。これに伴い、調査計画について大学の倫理審査委員会による審査を受けることとなり、調査の開始時期に遅れが生じている。なお、調査全体の終了時期については、現時点では変更を予定していない。

 第二に、2026年12月末の段階でアンケート結果の仮集計を行い、緊急提言として公表する工程を追加した。現在の生活困窮の深刻化に加え、例年、年末には困窮者からの相談が増加する傾向にある。このため、調査終了を待たずに中間的な集計を行い、その時点で把握できた課題や支援ニーズを社会に発信する予定である。発表方法については、プレスリリースまたは記者会見を想定しており、複数団体との共同発表を含めて現在調整を進めている。

 2026年7月に大学の倫理審査委員会へ審査を申請し、同年7月初旬に審査が完了した後、アンケート調査を開始する予定である。

 また、相談対応については、相談件数の増加に加え、相談内容そのものも複雑化している。このため、当初のアンケート内容に固定するのではなく、現場の状況や対象者のニーズを踏まえながら、方法や支援の進め方を柔軟に検討していく必要があると感じている。調査および相談支援を進める過程では、これまで十分に把握されていなかった新たな困窮課題や社会的な論点が明らかになる可能性もあるため、状況に応じて調査項目や発信内容についても適宜見直していく。

 

 

助成事業の目的と照らし合わせた効果・課題と展望:   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか。

(1)当事者主体の徹底した確保

 本調査は、長期の伴走支援の過程で、当事者から「自分の置かれた状況を社会に伝えてほしい」という要請が多数寄せられてきた事実を出発点とする。私たちは、著しく搾取され不公正な立場に置かれている人々の声を、当事者の意思と語りを中心に可視化し、社会へ確実に届けることを最優先にする。また、起案者の佐々木自身も十数年前、やむを得ない事情からネットカフェでの生活を経験し、その後支援団体に助けられた当事者である。この原体験に根ざす本取り組みは、同様の困難を抱える人々の声を当事者主体で汲み上げ続けるための悲願であり、調査の設計・実施・発信の各段階で当事者の関与と主体性を徹底して確保する。

(2)法制度・社会変革への機動力

 私たちが支援でつながる不安定居住・不安定就労層の約半数は若年層であり、その困窮はすでに可視化され、看過できない状況にある。とりわけ、生活と就労の前提となる通信費が重荷となり、公的扶助が届かない領域が苦しみを深めている。携帯電話料金の公的支援については、区独自の取り組みが複数進んでおり、制度化に至りうる可能性があると考える。こうした現場の知見とデータを根拠に、法制度・社会変革へつながる働きかけを機動的に進める。一方で、アドボカシーは自団体のみでは経験が限られるため、過去に実績のある団体の力を借り、連携して推進する。

(3)社会における認知度の向上力

 社会における認知度の向上は、本申請で最も重視・期待される成果である。前例がなく、また当該実態は2017年以降ほとんど可視化されていないため、取り組みの社会的インパクトは大きく、重要度も極めて高い。本事業は、この認知のギャップを埋めることで、認知度の向上に確実に寄与できる。

 今年度は、ほぼ毎月のように当団体の活動がメディアに掲載され、NHKの報道番組にも複数回取り上げられた。こうした状況から、ネットカフェや短期滞在先を転々とする「見えないホームレス」への社会的関心が高まっていることを実感している。

 一方で、問題の存在は知られるようになっても、なお「一部の人に起きること」として受け止められがちである。今後は、誰もが困窮に陥り得る社会構造や、既存制度の課題まで踏み込み、この問題を社会全体の課題として共有できる発信を強化していきたい。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 そもそもアウトリーチスキーム「せかいビバーク」が、市民や企業が緊急一時支援を担う仕組みとして、市民協働を前提に運用している。そのため、ステークホルダーとの関係構築力は基盤として確立している。さらに「今夜、住まいを失った人」を対象とする受け皿の広い一時支援という特性上、未成年・若年・女性・LGBT・難民・精神疾患・依存症など、多様な背景をもつ方々と日常的につながる。これに対応するため、各属性に専門性をもつ支援団体との連携を必須かつ継続的に行っており、そのネットワークは拡大しつつ、安定して維持されている。

(5)持続力

 緊急支援「せかいビバーク」は、ごく少人数のスタッフ・予算にも関わらず、実質24時間・週7日の窓口として運用し、2025年7月まで一日も休まず対応を継続した。その結果、2024年だけで休みなく計1,300件に対応。これは高い持続力(いわば根性)を示す実績である。一方で、持続可能性を高めるため、2025年7月からは事務局運営やファンドレイジングに注力できるよう、計画的な休止期間を導入。さらに、根性頼みの運営から脱却し継続性を確保するため、同時期より組織力の強化と協力体制の整備を現在進行形で進めている。

 相談者の増加とともに、相談内容も多様化・複雑化している。特に、アディクションをはじめ、複数の生活課題を抱えるなど、継続的かつ専門的な対応を必要とするケースが増えている。こうした相談を適切に受け止め、支援の質と継続性を確保するため、現在、SVP東京の協力を得ながら、組織体制や支援体制の整備を進めている。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目について考察。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか

 当事業が向き合っているのは、住まいや所持金を失い、ネットカフェ、簡易宿泊所、知人宅などを転々とする「見えないホームレス」の問題である。その根底には、非正規雇用やスキマバイトの拡大、低賃金、家賃や物価の上昇などにより、働いていても安定した住まいを確保できない社会構造がある。

 また、家族や地域との関係が弱まり、困窮した際に頼れる人がいないことも大きな要因である。加えて、公的支援制度が平日日中の窓口対応を前提としていること、申請手続きが複雑であること、生活保護に対する偏見や施設生活への不安があることなどから、制度につながらないまま困窮が深刻化する人も少なくない。

 近年は、若年層や就労中の相談者に加え、アディクション、精神的不調、家族関係の断絶、債務など、複数の課題を抱える人も増えている。問題の本質は、本人の努力や自己責任ではなく、住まい、雇用、福祉、医療等の制度が分断され、困窮した人を早期かつ包括的に支える仕組みが不足していることにあると考える。

 

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか

 トイミッケは、既存の窓口では把握されにくい困窮者を早期に発見し、緊急支援から公的制度、住まい、医療等へつなぐ役割を担う。主な事業である「せかいビバーク」では、地域の店舗や団体を支援拠点とし、宿泊、食料、交通、通信手段などを速やかに提供したうえで、翌日以降の継続的な相談支援につなげている。

 さらに、相談現場で把握した困窮の実態や既存制度の課題を記録・分析し、調査、政策提言、メディア発信につなげる。個別の相談者を支援するだけでなく、支援を通じて明らかになった制度の隙間を可視化し、制度や社会の側を変えていくことが当団体の役割である。

 また、ICTを活用した相談、申請、オンライン同行等の仕組みを整えることで、居場所や時間にかかわらず支援につながれる環境をつくる。市民や地域の事業者が支援に参加できる仕組みを広げることにより、困窮者を一部の専門機関だけで支えるのではなく、社会全体で支える基盤づくりに貢献する

 

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。

 根本課題の解決には、単独の団体による支援だけではなく、分野を越えた連携が不可欠である。まず、生活困窮者支援団体、その管理シェルター、居住支援法人等との連携を強化し、緊急対応から住まいの確保、生活再建までを切れ目なく支える体制が必要である。

 また、公的相談機関を筆頭として、医療機関、アディクション支援団体、法律家と連携し、複合的な課題を抱える相談者に対して、専門的な支援を組み合わせることが重要である。特に自治体や福祉事務所とは、個別事例の連携にとどまらず、制度運用上の課題を共有し、改善につなげる関係を構築していく必要がある。

 さらに、大学や研究者との連携によって相談データを分析し、困窮の実態を客観的に示すことも有効である。メディア、企業、地域の店舗、助成団体、寄付者等とも協力し、問題の周知、支援資源の確保、市民参加の拡大を進める。それが本申請事業の狙いでもある。 ■

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on Facebook
Post to Google Buzz
Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Livedoor Clip
Share on FriendFeed
LINEで送る