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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第9回助成最終報告


ジュマ・ネット(2022年1月)

団体概要

 マイノリティまたは国籍を得られない人々への支援と、権利の回復や政治参加の場をつくること。主に、バングラデシュチッタゴン丘陵、インドアッサム州やリプラ州で活動を行っている。

 

助成事業名・事業目的

インド、アッサム州における国籍を奪われた人々の生活と法的支援事業

 インド、アッサム州では、以前から不法移民(主にバングラデシュ人)の排斥運動が強く、複数の民族同士による襲撃や対立が続いていた。BJP[インド人民党]政権下、2019年8月に全国市民登録簿が更新されたが、3300万人の申請中、190万人が外されることになり政治的緊張が続いている。国籍を認めさせるには外国人審判所に必要な書類を提出して訴えるしかなく、時間や費用がかかることと、一部の人は拘置所に拘留される事態となっており、住民の間に絶望感が広がり、自殺者も多数でている。被害者の規模が非常に大きいため、アッサム州バルペタ郡で、貧困層や自殺者を出した世帯を対象に、生活支援や教育支援と合わせて、法的支援を進め、この問題と向き合いながら、問題解決の糸口を探っていく。

 

助成金額 : 100万円 

助成事業期間 : 2021年1月~21年12月

実施事業の内容: 

(1)被害者のネットワーク化と提言活動は10月以降、一回に3人の元拘留者と人権活動家が集まって小規模の話し合いを重ねるという形式で開催した。元拘留者の人々の間では、同じ経験をした仲間と出会えたことで、今後共同で行動したいという意志が確認できた。

(2)法的支援活動 15件ほど、州の高裁での裁判を支援している。高裁での裁判では資料の提出に多額の費用(一件6000円ほど)かかるため、支援の多くがこの費用に充てられた。ほとんどの事例において仮釈放を得られ、一件の事例では拘留所から出すことに成功した。

(3)生活支援活動 

①年度の前半ではコロナ禍により教育の機会を失った子どもたちのため、30人の子どもたちに補習授業の機会を提供した。年度の後半は新たにNRCで被害を受けた家庭の子どもたちへの奨学金事業を始め、20人の子どもたちに月額500ルピーを支給している。

②収入向上活動として、25人の女性グループが地域の伝統的な刺繍「カタ」のトレーニングを受け、ベッドカバーや上掛けに刺繍を施して販売する事業を開始した。女性たちに布や糸を支給し、作成されたリネン類を販売している。地域の手工芸品販売促進会やfacebook上のグループで好評を得、過去一年間で約160万円の売り上げを得て、女性たちの収入活動に貢献した。支援は主に、材料費の購入や、販売促進のためのPCやスタッフの給与に充てられた。

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写真上=女性たちの刺繍グループ「アムラパリ」のメンバー

 

助成事業の達成度:

(1)被害者のネットワーク化と提言活動については、一部の元拘留者の間でミーティングを始め、ネットワーク化の端緒についたところである。

(2)法的支援活動は最高裁と高裁においてすべての事例で仮釈放を得た。また、判決の際には単に書類がないだけで外国人と決定できないなど、今後の裁判において有利になる判例も出ており、予定以上の成果を得ることができた。

(3)生活支援活動については、コロナ禍という予期しなかった状況の中で子どもたちへの教育支援と女性たちの手工芸品販売活動を支援することができた。これは単にNRCで損なわれた教育機会や収入活動を補填するだけでなく、子どもたちが教育を受けて今後社会のリーダーとなる担い手を育てることにつながり、また女性たちの間では悩みを共有したり、高等教育を得るなどの新たなエンパワメントにつながり、当初予定していた通りの成果を得ることができた。

 

助成事業の成果:   

 コロナ禍という予期していなかった感染症流行に見舞われたプロジェクト実施期間であったが、現地のコーディネーターと緊密に連絡を取ることにより、事業実施の状況の把握にさほど問題はなかった。元拘留者のネットワーク化についてはようやく始まったばかりだが、法的支援と生活支援活動に関しては、当初予定していた通りか、それ以上の成果を得ることができた。

 法的支援活動に関しては、外国人という嫌疑をかけられた人々に対する弁護活動の費用を賄うという点でこのプロジェクトの核となる、市民権問題によって苦しめられる人々への支援となった。単に弁護活動を提供するだけではなく、外国人と疑われた人々に有利な判決を勝ち取ることで今後の問題の進展に影響を与える活動の支援ができている。

 生活支援活動に関しては、市民権問題だけではなく、コロナ禍による休校や収入の激減といった問題への支援ともなった。しかし、もともと市民権問題によって影響の大きかった人々にコロナ禍はさらなる打撃を与えたため、こうした支援活動は非常に有意義であったといえる。これ以上、子どもたちの教育機会を損なわないよう、補習授業のための臨時教員が配置され、さらに後半からは市民権問題で被害を受けた子どもたちへの奨学金を支給することもできた。また、手工芸品の生産と販売は、女性たちが自分たちの収入を得ることで自信を得、エンパワメントにつながった。

 

助成事業の目的と照らし合わせた効果・課題と展望:   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか(自力での解決が難しい場合、他とのどのように連携できることを望むか)。

(1)当事者主体の徹底した確保


 今回のプロジェクトでは、なるべく市民権問題によって負の影響を受けた人々がダメージを回復し、かつ今後はそういった目に遭わないような識字力や収入を得ること、ネットワーク化をすることを心がけた。前者については非常に成功している。元拘留者のネットワーク化は一度に集まることができないため、支援実施期間内に形にすることはできなかったが、今後の進展が期待される。

(2)法制度・社会変革への機動力

 最高裁、高裁において有利な判例を重ねることにより、今後の制度変化への重要な変化が見られた。特に拘留期間について無期限だったものが3年に、コロナ禍で3年から2年になったことの成果は大きい。

(3)社会における認知度の向上力

 平等研究財団は支援の一部として映像や取材記事をfacebook上で発信し、社会にこの問題の認知度を上げる上で大きく貢献した。代表のアブドゥル・カラム・アザド氏、そして支援している弁護士の一人であるアマン・ワドゥッド氏はそれぞれ新聞やSNSでの発信力が高く、正しい理解を広める上で非常に重要な役割を果たしている。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 協力的な市民グループやNGOとの連携が望まれたが、この点については政治状況もあり現在は目に見える成果は出ていない。

(5)持続力

 現在、ジュマ・ネットからの支援は2年目も終わりに近づいている。ジュマ・ネットからの資金も含めて、今後どのようにプロジェクトを発展させることができるのか、現地との協力と工夫が必要である。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 アッサム州では移民出自のムスリムに対する偏見と差別があり、特に「バングラデシュからの移民」が大量に入ってきているのではないかという恐怖感が人々の間にあることが課題である。残念ながら、インドとアッサム州においてヒンドゥー至上主義を掲げるインド人民党が政権の座に就いたことにより、この傾向は一層顕著になっている。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。

 外国人として宣告され、拘留された人々の声や状況を伝える活動を一定程度持続させてことにより、問題の認知に貢献した。さらに、NRCから排除された人々への教育・収入向上活動は、現状の危機に対する直接的な支援になり、さらに今後の将来世代を育てる上で非常に貢献した。

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。

 インド国内における市民社会組織との連携は今までもあったが、それが政権の圧力により危機にさらされている。さらに、アッサム州内におけるリベラル層との連携も今まで以上に厳しい状況である。この点に関して打開策はなかなか見えないが、あきらめずにきっかけをつかめるよう努力を継続したい。

 

関連するSJFアドボカシーカフェ:あなたがある日突然、外国人だと言われたら ―インド・アッサム州における市民権問題―の報告はこちらから

 

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