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ソーシャル・ジャスティス基金 2013年度助成先 発表フォーラム ―報告

 

    皆様にご協力いただきまして、昨年度に続き第2回目の2013年度助成先発表フォーラムを10月19日、西武信用金庫本店にて開催いたしました。ここにあらためてお礼申し上げます。

    2013年度は「テーマ1:子ども・若者の貧困問題」「テーマ2:原発事故による被害者支援」「テーマ3:見逃されがちだが、大切な問題に対する取り組み」の3つに該当するアドボカシー活動を対象とし、総額300万円の公募を行いました。応募総数は39件で、内訳はテーマ1が14件、テーマ2が6件、テーマ3が19件であり、昨年度の応募総数26件に対し1.5倍と増加しました。社会課題の原因となる社会の仕組みを正す社会提案活動や政策提言活動を助成対象として、書類と面接の二度にわたり審査しました結果、最終的に下記の4事業が選考されました。残念ながら全ての応募にはお応えできませんでしたが、かけがえのない活動に取りくむ多様な市民の方々から応募いただけましたことに感謝しております。 

    助成先発表フォーラムでは、昨年度の助成3団体の活動報告と併せて、7団体が参加者と対話交流を行いました。公正な社会の実現にむけて、多数派・少数派の垣根を超え、多様な視点からの対話を広め、問題意識を高め意見を作り上げていくSJFの対話事業の礎が、あらためて確認されることとなりました。SJFは、資金面での助成事業と両輪をなす対話事業の側面からも、今後さらにアドボカシーカフェの開催等を通して助成先団体の活動を支援していきます。

 

  2013年度助成事業 ◆

◇ 『「生かそう!“子どもの貧困対策法”」市民のちから事業』「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク 

(助成金額;99.3万円 「テーマ1:子ども・若者の貧困問題」より

 2013年6月に成立した「子どもの貧困対策推進法」を実効性ある法律とするため、市民や行政関係者の当課題への理解を促進し、法律や施策の具体化を図り、市民の創意による提言づくりを行う事業。
 全国的なネットワークでの活動実績と、今後の波及効果を鑑みました。

 

  『チェルノブイリ被災地の学校を中心に子どもたちの健康、生活状況の実態についてのドキュメンタリー制作』/ NPO法人OurPlanetTV 

(助成金額;100万円 「テーマ2:原発事故による被害者支援」より

 福島原発事故以降、日本政府が続けてきた避難政策、生活支援政策、健康調査政策を抜本的に転換させるため、チェルノブイリの特に“低線量”の汚染地域の学校を取材し、制作ビデオをステイクホルダー、政府、自治体関係者などに配布し社会対話の糸口をつくる事業。
作成プロセスでの市民対話の意義と、世界的な発信力を鑑みました。

 

  『名張毒ぶどう酒事件・奥西勝死刑囚と袴田事件・袴田巌死刑囚の再審開始を通した死刑廃止の世論喚起事業』/ 公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本

(助成金額;50万円 「テーマ3:見逃されがちだが、大切な問題に対する取り組み」より

 両死刑囚が受けた密室での取り調べや、偽装が疑われる鑑定の問題点を周知させ、日本の刑事司法制度の見直しの大きなきっかけをつくるため、一刻も早い再審開始と釈放を勝ち取る緊急再審請求キャンペーンを行う事業。
当事者が高齢であること等、日本の不正義の1つを問う緊急性の高いテーマである点を鑑みました。

 

  『原発輸出による社会的不公正・途上国市民の被害回避を実現する政策・体制構築のためのアドボカシー活動』/ NPO法人「環境・持続社会」研究センター(JACSES)

(助成金額;50万円 「テーマ3:見逃されがちだが、大切な問題に対する取り組み」より

 原子力発電所の輸出は、国内事業者が多大な利益を得る一方、「立地地域は貧困地域が多い」「事故が起きた場合、立地地域に甚大な被害を押しつけることになる」「廃棄の目途すら立っていない放射性廃棄物や核拡散による核戦争の脅威を将来世代に付与する」などの問題がある。福島で事故を起こした日本が、社会的不公正を拡大する原発輸出を行うことを回避するため、関連政策への市民参加を確保する事業。
社会提案活動としての方法論の着実性、社会アピールの重要性の高さを鑑みました。

 

  主なプログラム ◆

 ◆ 開会挨拶  …上村英明(SJF運営委員長)

 ◆ 第1部 2012年度助成団体の報告 

   助成事業の紹介と総評  …黒田かをり(SJF副運営委員長)

   助成団体からの活動報告、みなさまとの対話

  ◇ 「多様な学び保障法」を実現する会 …松島裕之氏 (現状報告;事業期限来年3月)

  ◇ レインボープライド愛媛  …エディ氏  + 樋口蓉子(SJF運営委員)

  ◇ NPO法人監獄人権センター …松浦亮輔氏  + 辻利夫(SJF運営委員) 

 ◆ 第2部 2013年度助成団体の紹介   審査報告 …轟木洋子(SJF副運営委員長)

   助成団体のプレゼン、みなさまとの対話

  ◇「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク…酒井氏・山野氏+大河内秀人(SJF運営委員)

  ◇ NPO法人OurPlanetTV  白石草氏 + 轟木洋子

  ◇ 公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本 …谷口 玲子氏 + 上村英明

  ◇ NPO法人「環境・持続社会」研究センター(JACSES) 田辺有輝氏 + 黒田かをり

 
フォーラム後に集う(後列左から)松島裕之氏、エディ氏、松浦亮輔氏、上村英明、黒田かをり、轟木洋子、(前列左から)田辺有輝氏、白石草氏、酒井勇樹氏、谷口 玲子氏。

  

  概 要 ◆

 

~市民による市民社会のための公共事業~(上村英明/SJF運営委員長)

 ―ソーシャル・ジャスティス基金の助成事業には2つの特長がある。1つめに、公正な社会の実現に役立つものであるなら、利益がでない事業でも、たとえ一人の為の事業でも支援対象とする点がある。2つめに、平均3500万円の遺産に表れているように高齢な市民に留まっている資金が、市民社会の改善に取り組む市民に流れていくような、きちんとした大きな資金の流れを国家の論理とは別に創っていくことで、日本社会の活力を増すことにつなげるという経済的効果の側面があると考えている。

 

 

~全国12万人の不登校の子供たちにも「多様な学びの場」で教育を受ける権利を保障したい~(「多様な学び保障法」を実現する会)

―SJFの助成で作成したパンフレットを5カ月で約5000部配布することができ、たくさんの人とつながることができた。パンフレットというツールがあることで、個人の会員から等でも、活動を広めることがしやすくなったのが大きい。パンフレットで紹介した「多様な学びの場」の実践者や、その場で育った子ども・若者たちが登壇する集会の開催等により、子どもたちが学び・育つ場を自ら選べる社会を一緒に創っていく活動を続けている。(松島)

◇ 多様な学び保障法」を実現する会の現況報告・詳細はこちら

 

 

~性的少数者が、保守的な地方でも声を上げていける工夫いっぱいの冊子を手作り~(レインボープライド愛媛)

 ― 多様な性的少数者が地方ならではの思いを書いた冊子は、カミングアウトは難しい人の自分の顔代わりともなり、SJFの助成により継続発行され2013夏号で9号となった。また、協賛したSJFアドボカシーカフェのスタイルを参考に松山市で開催した熟議イベントでは、「日本で同性婚は認められるか!?」をテーマに、市民と賛成・反対両意見を交換することができた。これらの活動に勢いを得て、四国中央市役所の全職員に向けた性的少数者の人権研修を実施することもできた。(エディ)

エディ・樋口しゃしん
対談するエディ氏(レインボープライド愛媛代表)と樋口蓉子(SJF運営委員)

 ―男女共同参画という言葉自体が古いのではと思っているが、当事者にとってはどのような言葉が適切なのか(参加者)
 ⇒ ダイバーシティー=多様性ではないか。男女の戦いではなく、一人ひとりにとって大事なことと位置付けたい。地元で男女共同参画の運営委員もすることになった。(エディ)

―10代の少年と関わる機会が多いが、性的少数者であることを自認しつつ公言できないでいる子たちに、支援情報をどう伝えて行けばよいのか悩んでいる。(参加者)
 ⇒ 学校の先生方に、人権研修などを通して伝えていくのがよいのではないか。愛媛県教育委員会  と指導者用の研修資料を作成し、授業で性的少数者の人権を守ることについて取り扱う先生が出ることを期待している。(エディ)

◇  レインボープライド愛媛の最終報告の詳細はこちら 

 

 

~ 刑務所出所者をとりまく不寛容な社会政策の改善を求めて政策提言を行うためのネットワーク形成を促進していく ~(監獄人権センター)

 ―更生保護、社会福祉士、弁護士、メディアなど多様な分野の方々と出会う機会を、SJFの助成により開催したシンポジウムやアドボカシーカフェから得ることができた。このつながりを政策提言の基盤として活用していきたい。更生保護と社会福祉の両支援体制をつなげ、社会復帰の準備のために刑務所内外の情報交換を容易にする必要がある。受刑経験者の社会復帰を最終的に受け入れる施設の不足など課題は多い。(松浦)

松浦・辻しゃしん
対談する松浦亮輔氏(監獄人権センター)と辻利夫氏(SJF運営委員)

 ―地域社会の理解が進むかという課題もあるのでは(辻)
 ⇒ 厳罰化の風潮が強まっている点が難しくしている。(松浦)

 ―自治体との関係という観点では(上村)
 ⇒ 生活保護の申請窓口との関わりが多い。受給申請を受理されなかった受刑経験者に権利として主張することなどをアドバイスしている。(松浦)

◇ 監獄人権センターの最終報告の詳細はこちら

 

 

~ 日本にも貧困問題があり、その解決のための法律も成立したということを共有し、当事者の立場・市民の立場から提言をしていく ~(「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク)

 ―社会的に不利な立場におかれている子ども・若者への支援を充実させ、社会的正義・公正の実現を目ざす。子どもの貧困解決に向け、今後策定される「子どもの貧困対策法」の大綱が実効性のあるものになるよう、全国集会等により各分野の当事者や支援者からの声をとりまとめ、試案や要望書を政府に提出していきたい。地方自治体に対しては、子どもの貧困問題の実態と解決に向けての実践例を共有し、地域の実情に即した計画策定と施策実施を促進していきたい。市民の立場からの要望・提言をまとめる場として継続的に対話の機会をもち、「実効性のある大綱→施策の策定→見直し」というサイクルの仕組み構築をすすめたい。(酒井)

 ―貧困問題にとりくむ具体的な事例を紹介してください(大河内)
⇒ 子どもの学習支援・生活支援に関わる全国の人たちのネットワーク化を支援する集会を一昨年(2011年)・昨年(2012年)に実施した事例がある。生活保護世帯など貧困ゆえに落ち着いた学習環境がない、塾に行けない子どもたちに学習の場を提供する、弁護士、元教員、他の子ども支援の活動者、学生など活発に取り組んでいる人たちが中心だ。またそこには、幼少時に貧困状態にあった大学生もボランティアで加わっており、自身の貧困体験を共有する場ともなっている。(山野)

 ―提言をいかに自治体の施策に落とし込んでいくのか(上村)
⇒ 法律上は都道府県に関しては努力義務にとどまっているが、貧困状態にある子ども・若者に実際に接するのは地方自治体であり、重要な点だと認識している。貧困世帯の子どもの日常を把握する詳細な調査をした荒川区のような先進的な実践事例報告をもとに、自治体と情報共有や意見交換の場を持つ予定だ。(山野)

なくそう貧困・大河内しゃしん「会場と対話する(左から)酒井勇樹氏(「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク)、山野良一氏(同)、大河内秀人(SJF運営委員)

 

 

~「子ども被災者支援法」は骨抜きのままであり、福島で甲状腺癌の子どもが43件出ているにも関わらず直接の因果関係なしとされている昨今だが、低線量被爆の長期的な健康被害を直視するため、原発事故から27年経たチェルノブイリの子どもたちの実態を現地取材し、伝え、あらためて社会対話・議論の糸口としたい~(OurPlanetTV

 ―映像ドキュメント「27年目のウクライナ」プロジェクトでは、11月にウクライナ共和国のキエフ、コロステンを中心とする低線量汚染地域の学校を取材し、制作したビデオの政府・自治体・医師・法律家・市民団体等への配布、インターネットでの世界配信、全国各地での上映会をする。取材は、27年目の子どもたちの学校生活での非癌系の健康被害により授業時間を短縮せざるをえない状況、体力・学力の実態や保養システムなどに焦点を当てるとともに、健康診断と治療の仕組みを調査し甲状腺癌の子どもの様子や病院内の学校の様子も追う。最終的には、日本の行政関係者に低線量被爆に関する多様な情報の存在を認識させ、政府レポートのバイアスを検証し、放射線汚染地域において健康不安を口に出せる環境を形成したい。(白石)

 ―映像作成の時期を帰還事業開始の前に設定しているが、帰還は時期尚早と考えているのか(参加者)
⇒ 帰還を希望されている方もいるので必ずしもそうとは言えない。被爆防護に対してきちんとしてもらいたいと考えている。(白石)

 白石・轟木しゃしん
会場からの意見に耳を傾ける白石草氏(OurPlanetTV代表理事)と轟木洋子(SJF運営委員副長)

 

 

~ 名張毒ぶどう酒事件と袴田事件の両判決に共通しているのは、最新のDNA鑑定で冤罪の疑いが出されているにも関わらず、自白を偏重し続けている点だ。 ~(アムネスティ)

 ―名張毒ぶどう酒事件は一昨日(17日)に第7次再審請求が棄却されたが、再度の請求を準備中だ。袴田事件は第2次再審請求中で12月2日が弁護側・検察側からの最終意見書提出期限であり、来春にも静岡地裁が再審の可否を判断する予定。これらにむけ、世界死刑廃止デ―企画やchange.orgなどでの署名集めを袴田アクションとして開始している。また、両事件を題材にした映画「約束」や「BOX袴田事件命とは」を活用し、死刑制度の是非を議論する場の醸成に努めている。袴田さんのお姉さんと全国スピーキングを実施して確かな感触を得たことを、再審請求につなげていきたい。(谷口)

  ―冤罪は社会不正義だと思うが、死刑廃止については世論が分かれているのではないか、基金としての立ち位置を知りたい(参加者)
  ⇒ 死刑を存続させた方がよいという理由は何だとお考えか(上村)
  ⇒  被害者感情と治安維持の観点から死刑存続というのが普通の考え方だと思う(参加者)
  ⇒ SJFの社会的公正の観点では、“普通の考え”で計ってきた時に外されてしまうような考えも含めて、きちんと議論し問い直していくことが重要だと考えている。OECD内で、日本と米国のみに死刑が存続しているが、他の国は普通でないのだろうか。今いちど死刑廃止に関し社会正義とは何なのか日本で議論を広めて行くことが重要だと考えている。また被害者感情については、ある調査で被害者自身も、さらにまた人の命を奪うような死刑は望まないという回答があった。(上村)
 ⇒ 人は間違いを犯し得る。冤罪は実に多く、間違ったら正すというのが人としての正義だ。しかし、死刑は執行してしまったら正すことができない、取り返しがつかない。(谷口)

 アムネスティ・上村しゃしん
対談する谷口玲子氏(アムネスティ)と上村英明(SJF運営委員長)

 

~国会承認手続きが間近に迫っている原子力協定批准について、安全性が十分に確保されていない国々との協定批准の回避を目ざし、省庁担当者や国会議員との協議などをすすめていく~(JACSES)

 ―福島原発事故を経験した日本の市民として、原発輸出により途上国市民に環境被害・健康に関する人権侵害を押しつける社会的不公正の回避に力を尽くしたい。原発輸出への日本政府の関与では、復興支援の税金も使って、ベトナム・トルコで原発計画の事前調査を日本政府が支援している点や、公的金融の国際協力銀行や日本貿易保険による支援に対する安全確認を、原発輸出を推進する経産省が担当している点など課題が多い。厳格な審査基準・体制を構築し原発輸出関連政策の透明性を確保し、市民参加を促進したい。(田辺)

 ―主旨には賛成だが、日本が発展途上国への原発輸出をやめても、多国間の受注合戦の現状では途上国の被害回避という目的を達成できないのでは(参加者)
 ⇒ 最終的には途上国に原発を造らせないことが重要だと思っている。途上国の現地NGOとも協力して進めていきたい。その一歩として日本の原発輸出の安全管理を厳格にしていきたい。(田辺)

 ―仏教のネットワークでインドやスリランカなどの人と原発問題について話し合うことがあったが、途上国側での原発問題に対する認識は不十分だと感じた。途上国での問題意識を高めるような活動例はあるか(大河内)
 ⇒ 2011年に「海を越える原発問題~アジアの原発輸出を考える」国際シンポジウムをインドネシア、韓国、タイの方をおよびして東京で開催したり、2012年にヨルダンの議員やNGOをピースポートでお招きしセミナーを開催したりした。(田辺)

 ―国内のネットワーク活動や一般市民への広め方についてはどう考えているか。また産業界へはどうアプローチするのか(黒田)
 ⇒“eシフト”という、FoEジャパン、メコンウォッチ、原子直資料情報室など50数団体が加盟するネットワーク等を活用する。市民へはメディアやWeb 、SNSを活用する。また、産業界については、原発輸出産業が政府のバックアップがなければ成立しないので、まずは政府の動きを正すことから取り組む。(田辺)
(敬称略)

 JACSES・黒田しゃしん
対談する田辺有輝氏(JACSES)と黒田かをり(SJF運営委員副長)

 

SJFの助成事業の詳細はこちら

 

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