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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第7回助成最終報告


特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)活動報告(2020年1月)

団体概要

 日本に暮らす移民・移民ルーツをもつ人びとの権利と尊厳が保障される法制度の確立を目指して、全国レベルのアドボカシー活動を中心に活動しています。草の根で活動する団体や個人がつながり、移民や移民ルーツをもつ人びとのニーズや課題を集め、法制度改革や社会認識の変革につなげることが目的です。また、海外のNGOとも連携し、国境を超えた視点での移民の権利向上にも努めています。これらにより、誰もが安心して自分らしく生きられると同時に、多様性を豊かさと捉える社会を目指しています。

 

助成事業名・事業概要

移住者による移民政策―市民立法としての移民基本法の制定を目指して―

 1980年代末より来日する移民が増え、日本に定住するようになってから30年が経過している。しかしその間、入国・在留管理に偏る政府の移民に対する方針に変化はない。また、人権侵害や労働問題が頻発する技能実習制度も改善がないままに温存されている。そのような中、日本政府は大規模「外国人材」受け入れの方針を打ち出し、中身ある議論を経ずに新たな在留資格「特定技能」を創設した。

 こうした状況に対して、移民・外国人労働者を使い捨てる政策を繰り返さないため、80年代からの移民・外国人労働者受け入れの経験を直視・教訓化し、移民が日本に定住する市民であることを前提に、その生活を包括的に支える「移民基本法」の制定を目指す。

 具体的には、移民・外国にルーツを持つ人々の声を反映させた政策提言を作成する。これまで移民問題に関心のなかった層へもリーチすることを念頭に中高生にも読みやすい内容にし、2日間にわたる移住者と連帯する全国フォーラムin東京を開催し、政策提言を発表、さらに提言をより拡散・周知すべく、プレ・フォローアップイベントを開催する。

 

助成金額 : 100万円 ―公益財団法人 庭野平和財団のご協力による助成です―

助成事業期間 : 2019年1月~12月

助成事業の成果・助成の効果:   

●日本に暮らす移民の存在と取り巻く問題に対する認識の向上

 政策提言は、とにかく読みやすく、手に取られやすい形を意識して作り上げた。こうした工夫は好評を得ており、フォーラムでの発表以降、約1500冊以上の政策提言が拡散し、日本に暮らす移民が直面する課題等について周知することができた。さらにこの政策提言の活用として、団体の活動に関わる大学教員に対して、この政策提言を授業のテキストとして取り扱ってもらうなどの働きかけも行った。またこの間、社会における移民に関するニュースや言説の中で、誤りのあるものに対してはファクトチェックを行い、積極的に発信したことで、正しい理解を促し、人々の視点の転換に貢献した。

●支援層の厚さのアピールと拡大

 この事業を通して、既存の支援者層に加えて、新規層の開拓ができた。特に6月のフォーラムでは、関心は持ちつつも行動へ移していなかった潜在層へ働きかけをし、900人を超える参加者動員を達成した。加えて、大学教員へもアプローチをしたことで学生も多く参加し、これまではあまり見ることできなかった若者層の支援・支持も可視化された。この場には、こうした参加者以外にも、移民や移民ルーツの当事者、海外の活動家、メディアといった方々も多く参加し、その活気と層の厚さがしっかりとアピールされる機会となった。

 また今回のフォーラムは、従来の支援者や活動家の層と、移民当事者やこれまで移民支援の活動に触れてこなかった新しい一般者や若者などの層が一同に介し、それぞれがつながることができる場としての役割を果たすことができたという意味でも大きな成果となった。

●移民ルーツを持つ若者とのつながりの強化と当事者が声をあげられる場づくりへの貢献

 今回の事業を通して、もともと声が挙げづらい状況に置かれていた若者と繋がり、彼/彼女らが声を挙げられる場を作り、その若者がさらにそうした場を作りだすという連鎖を生み出すことができた。具体的には、日ごろ声を上げる機会を持たない若者が声を上げる機会を創りたいというユースメンバーの希望を受け、ワークショップの自主企画を移住連がサポートをした。さらに毎年12月18日の国際移住者デーを記念して開催するイベントも、今年はそうした若者との共同企画とし、「若者の視点から多文化共生社会を考える」というテーマで幅広い国籍、年齢層の当事者中心の参加者と共に、課題を学び、自身で何ができるかを考えるワークショップを開催した。

 また彼/彼女らのアイディアを受け、日ごろ接する機会のない活動の現場やそうした活動に関わるきっかけとなったライフストーリーなどを紹介し、移民のイシューや支援活動に対するイメージのハードルを下げることを試みる広報プロジェクトをフォーラム広報の一環で実施し、好評を得ることができた。これまでとは性質の違う取組みができたことは今後の活動の発展に向けて非常に有意義な経験となった。

 

助成事業の成果をふまえた課題と展望:   

【Ⅰ】次の5つの評価軸※)それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか(自力での解決が難しい場合、他とのどのように連携できることを望むか)。

※この評価軸はソーシャル・ジャスティス基金がこれまでの助成事業の成果効果を分析した結果、アドボカシーを成功に導く重要な評価軸として導出した。

(1)当事者性(当事者主体の徹底力)
事業の企画を通じて若者の層の参加が強化され、彼/彼女らの存在が活動の中心に置かれるようになってきた。また、そうした若者による自主的な企画なども開催された。こうした企画が増えたことで、参加する移民自身がエンパワーされ、省庁交渉などの場において、直接自身の経験や思いを訴え、伝えるという場面が多くなった。


(2)法制度・社会変革への機動力
これまでの支援者層だけでなく新たな層の人々と共に、今事業で制作した政策提言をベースにした議論ができたことで、移民基本法の制定に向けた基盤が作られたと言える。今後は、これを具体的な法律案に落とし込み、実際の立法化に向けた議論を進める段階に入った。さらに、SNSなどを通してこうした政策の必要性について継続的に発信し、社会における議論を喚起していくことが求められるだろう。

(3)社会における認知度の向上力
今事業の大きな柱であったフォーラムを通して、これまでとは違う層にアプローチすることができた。当日の900人もの参加者動員は、近年の移民関連のイベントではなかなか到達できない数字である。そうした中で、日本にある移民の問題に対する認識を向上させると共に、移住連の団体や活動について知ってもらう機会も増えた。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)
今後は、今事業で作成した政策提言を具体的な法律案に落とし込み、「移民基本法」として制定することを目指す段階に入る。この段階では、国会議員や省庁といったステークホルダーとどのような関係性を築くかについては大きな課題となる。さらにこのプロセスでは、社会一般との関わりも非常に重要である。全ての人の権利と尊厳が保障され、多様な人々が自分らしく安心して暮らせる社会をつくる意義と重要性を継続的に発信していくことが求められるだろう。

(5)持続力
今回の政策提言冊子を作成したことにより、移民の課題が網羅的にまとめられ、幅広い層がアクセスでき、学べるようになった。この冊子は、今後の日本の移民、彼/彼女らやその2世や3世などを取り巻く課題について知り、どうそれを克服するのかを示すガイドブックのような役割を果たしている。今後さらなるステップを進む中でも、この冊子を広め、活用することで、更なる層へ広めていく。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。
●移民が異質であり、社会のメンバーにはなりえないという社会の認識

 現在の日本社会においては、移民が日本に暮らす日本人と同じように、学び、働き、暮らしている一人ひとりの人間であるという認識となっていない。むしろ、こうした外国籍の住民は、「移民」もしくは「外国人」など、大きく括られた異質な存在として、概念的にしかみなされていない現状がある。そうした結果、「移民」=「社会保障をのっとり、犯罪の温床となり、伝統・文化を破壊する存在」として一部のメディア報道やSNSなどで極端に発信され、それを見た人々がそれを信じ、移民を排除の対象としてみなすことに疑問を持たず、結果的に法制度が改善されないという負のサイクルが出来上がっている。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。
●丁寧な検証を踏まえたファクトの発信とコミュニケーションの必要性

 移住連は移民の問題に向き合い、30年もの間しっかりと現場を見てきた。その間、政府との定期交渉の実施を通して政策の変遷を追っており、データの蓄積もある。そのため、社会に伝播する誤った言説を検証し、ファクトを発信できる土台がある。また長年の活動のなかで、移民や移民ルーツの人々が日本の労働市場で活躍し、日本社会を盛り上げ、支えているという事実をしっかりと見てきた。移住連はそうした移民や移民ルーツの人々とのつながりがあり、彼/彼女らのストーリーにリーチすることができる。そうした移民一人ひとりのストーリーを発信することで、社会一般に根付いている偏見や差別意識を生み出す思考のフィルターを取り除くことができるのではないかと考える。

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。
 上記のような目標のもとに社会に向けて発信をするには、しっかりとした戦略が求められる。なぜならば、ヘイトスピーチなどの分野では、フェイクニュースや誤った理解に対して正攻法でファクトを突きつけても、まったくの逆効果を生み出してしまうということが分かっているためである。そうした事実を踏まえると、単純にファクトを発信するのではなく、戦略に基づいて発信内容や方法を工夫する必要がある。

 現状考えられる戦略としては、サイレントマジョリティーと言われる層に向けて、共感しやすい内容から発信し、徐々にこちらの主張を伝えていくといったものである。しかし、こうした広報の分野は移住連ではあまり注力してこなかったため、ノウハウがあまりないのが現状である。そのため、発信戦略の部分について協力を仰げるような若者層や団体、個人との連携は有効だと考えられる。

 さらに、広報分野での連携と合わせて、移民だけではなく、その他のマイノリティの問題に対して活動する団体との連携を深め、「マイノリティ」や「多様性」など、それぞれに共通する別の切り口から、力を合わせて社会に訴えかけていく方法も考えられる。

 

 

実施した事業の詳細: 

 来日する移民が増加し始めた1980年代より彼/彼女らを取り巻く問題は山積しているにも関わらず、その問題解決を置き去りにしたまま政府主導でさらなる「外国人材」の受入れへと舵が切られた状況に対し、移民日本に暮らす市民として共に生きる社会を包括的に支える「移民基本法」の必要性を発信し、その制定を目指して活動を行った。 

 事業の中で開催された企画は、以下の通りである。前回の中間報告以降の後期活動は作成した政策提言の拡散とその内容理解を深めること、移民当事者が声を上げる場所を作ることに主眼を置いた 

前期 
  • 「私も言いたい移民政策~外国人労働者受入れ政策を問う~」(日時:2019年2月23日、会場:明治大学) 
  • 「移住労働者の権利のための行動 『マーチ・イン・マーチ March in March』」(日時:2019年3月3日、会場:上野水上音楽堂) 
  • 『移民社会20の提案』(政策提言冊子)の出版
  • 「フォーラム前日 上野・御徒町ツアー」(日時:2019年5月31日、場所:上野・御徒町) 
  • 「フォーラム前日ツアー マルチ・エスニックタウン新宿・大久保のまちを歩く」(日時:2019年5月31日、場所:新大久保) 
  • 「移住者と連帯する全国フォーラム・東京2019」(日時:2019612日、会場:日本教育会館) 
 

Kaida SJF
写真上=「私も言いたい移民政策~外国人労働者受入れ政策を問う~」(19年2月23日、於 明治大学)

Kaida SJF
写真上=「移住者と連帯する全国フォーラム・東京2019」(19612日、於 日本教育会館)

 

後期 
  • シンポジウム外国ルーツの子どもの高校進学を考える~高校まで? 高校から?~」(日時:2019112日、会場:明治大学) 
詳細政策提言の中でも喫緊に対応が求められるイシューの一つである外国ルーツの子どもの教育に関する問題を検討するため、専門家である小島祥美さん(愛知淑徳大学)と支援者、当事者経験を持つ若者4名を迎え、約120名の参加者とともに問題の概要を学び、議論した。 

 
  • 移住者デー2019ユースの目線から見る移民社会 にほん(日時:201912月7日、場所:在日本韓国YMCA 
詳細フォーラムを通して繋がりを深めた外国ルーツの若者を中心に、国連によって定められた国際移住者デー2019を記念したイベントを企画。「若者の目線」から多様化する日本の移民社会について知り、考えるワークショップイベントを開催メインスピーカーには矢野デイビットさんを招き、当事者を中心に63名の人が参加した。 

 

Kaida SJF
写真上・下=移住者デー2019ユースの目線から見る移民社会 にほん12月7日 
Kaida SJF
 
  • 内部学習会「諸外国の移民政策」講師:近藤敦さん(名城大学)(日時:20191215日、場所:移住連) 
詳細社会における移民と彼/彼女らを取り巻く問題についての認識を向上させるため今回の政策提言が作成されたが、今後はこれを実際に「移民基本法」として立法化することを目指すフェーズに入。これに向けた準備の段階の一つとして諸外国の移民政策の概要について学ぶ内部勉強会を開催した。 

加えて、当事者が声を上げることを目的とした企画も行った。まず、移民・移民ルーツの人々を対象に、フォトジャーナリストの大藪順子さんを招き、写真を通して彼/彼女らの視点から見える社会を映し出す方法を学ぶフォトワークショップを開催した。出来上がった写真は上智大学の図書館にて展示された。この他、この間に繋がりを持った外国ルーツのユースメンバーと連携を強化し、ユースによる自主企画のサポートも実施した。 

ロビイングの面では、11月の省庁交渉において、技能実習、労働、入管法・住基法、医療・福祉・社会保障、女性・貧困、難民・収容、子ども・若者(教育)、ヘイトスピーチ・人種差別の分野に関して省庁と直接、課題について協議をし。今年は移民当事者から直接、省庁職員へ声が届けられるよう工夫をし、移民基本法の必要性をアピールするなど、移民基本法の制定に向けた取り組みも進めた。また、昨今問題が深刻化し、社会的関心も高まっている収容の問題に対しても積極的に取り組んだ。これまでこの分野では、団体間の連携が取れていないのが課題だったが、他団体との連携を強化して取り組みの立て直しを行い、共同での声明発表や院内集会の開催などを通して世論喚起を起こすなど、積極的に取り組んだ。 

 

 

 

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