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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第8回助成


アプロ・未来を創造する在日コリアン女性ネットワーク
SJF助成事業中間報告(20年12月

 

助成事業名在日コリアン女性に関する複合差別実態調査~第3回在日コリアン女性実態調査~  

 民族差別とジェンダー差別の複合によって周縁化され、不可視化されてきた在日コリアン女性の生活・人権状況に関する統計的情報はほとんど無い。一方、20年ほど前からマイノリティ女性に対する複合差別に関心を持つ国連人権機関からは関連する情報の提供が日本政府だけではなく当事者に対しても求められるようになってきた。
 そうした状況下でアプロ女性ネットは、2004年と2015年からそれぞれ3年がかりで当事者による「在日コリアン女性実態調査」を2回実施し、結果を報告書にして発表してきた。その成果は大きいが、課題もいくつか見つかったため、内容も抜本的に補足・改善して、政府と日本社会、さらに国連人権機関に対してより一層説得力のある情報を提供すべく「第3回在日コリアン女性実態調査」を行い、在日コリアン女性の存在を可視化し、複合差別の解消に向けた政策提言に活用し、人権と尊厳が保障される社会の実現をはかる。
 第3回在日コリアン女性実態調査では、当初、在日コリアン高齢女性の健康や生活など、在日コリアン高齢女性の実態および、戦後、就労や結婚、留学などの目的で渡日し、居住するようになった在日コリアン女性の実態についても明らかにするということであったが、複合差別の実態をよりクリアにすることと併せて新型コロナのパンデミックが起きたため、焦点を「子育て・介護・コロナと仕事」に当てることにし、アンケートとインタビューの項目や対象を変更することにした。


 

事業計画 

①  アンケート調査の質問項目の作成。これまでは、大阪在住のアプロ女性ネットのメンバーだけで質問項目を作成したが、東京や北海道在住のメンバーにも会議に参加してもらう機会を持つ。
 当初計画の変更点として、紙媒体は日本で生まれ育った在日コリアン女性を対象とすることにし、韓国から来日して居住するようになった在日コリアン女性にはインターネットでのアンケートを準備する。
 また、調査の打合せは、対面の会議とMLでの会議を駆使して行なってきた。当初、東京、北海道など関西以外の地域で暮らすメンバーには、その地元での交流会も含めて、関西からメンバーが訪問する予定をしていたが、新型コロナ禍のため、zoomでのオンライン開催を模索することになった。


②  アンケート調査に合わせてインタビュー調査の準備にとりかかり、あわせてインタビュー調査を行う。


③  アンケート調査票の作成後、検討会を開催し、広く調査票配布の協力者を募り、参加者の意見を聞き、アンケート調査票を完成する。


④  アンケート調査票配布・回収後、基本的にアプロのメンバーによるデータ精査、分析を行い、調査結果を報告書にまとめ、配布する。


⑤  調査結果を発信し、問題提起するために関西をはじめ、東京および九州、北海道などのメンバーの協力を得て報告会を開催する。


⑥  調査結果を広く、市民と共有するため学習会を開催する。


 

助成金額 : 100万円

助成事業期間 : 2020年1月~2021年12月

実施した事業と内容:  

【2020年1月~12月】
①  アンケート調査の質問項目の作成。
 2020年1月26日より、概ね月1回のペースでアンケート調査項目とインタビュー調査の実施方法について対面での会議とMLを通じての意見交換を進めてきた。しかし、新型コロナのパンデミックが起こり、大阪府、そして国の緊急事態宣言の状況下で、3月から2か月以上は実質的に活動ができず、会議を再開できたのは、5月31日であった。その後、調査実施の実務会議は月1回のペースで開催してきた。9月以降は、zoomによるオンライン会議も実施できるようになった。9月26日には、SJFから上村英明さんが来阪されて交流会を持ち、アンケート項目についても意見交換を行った。
 当初予定していた紙媒体によるアンケートは、日本で生まれ育った在日コリアン女性を対象とすることにし、来日して住むようになった在日コリアン女性にはグーグル・フォームを利用したハングルでのインターネットでのアンケートを作成することになった。

② インタビュー調査は、当初グループ・インタビューも含めて対象を30人と予定していたが、コロナ禍で対面でのインタビューが難しくなった。またグループ・インタビューは一層困難であると判断し、対象者を20人に減らした。8月より月1人~3人程度の目安でインタビューを実施し、これまで、家族の高齢者介護の経験者、在日コリアン高齢者対象のケア施設の運営者、仕事での差別体験者などへのインタビューを計5人に行った。インタビューの内容は文字起こしをした後、インタビュー相手に確認してもらい、その後、アプロ女性ネットのメンバーで共有する。


③ アンケート調査票原案の作成後、10月18日にアプロ女性ネットのメンバー以外の在日コリアン女性にも参加を呼び掛けて検討会を開催し、参加者の意見や提案を取り入れて11月末に紙媒体のアンケート調査票を完成した(全部でA4サイズ16頁)。


④ 12月中旬に1,000部印刷し、配布協力者の確認や配布のための作業を始めた。具体的には第2調査の協力者や報告書の送付先の一覧表を更新する作業に取り組んでいる。2020年はコロナ禍のため、メンバーの活動自体が一時ストップした上、配布先への訪問や対面インタビューといった従来までのやり方が難しくなり、苦慮しているところであるが、アプロのメンバー各自が持つネットワークを丁寧に活用するとともにFacebookやその他の利用可能な媒体は積極的に発信のツールとしている。

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(写真上=実態調査のための会議後アンケート発送作業の様子/20年12月)

 

助成事業の目的と照らし合わせ 効果・課題と展望   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか(自力での解決が難しい場合、他とのどのように連携できることを望むか)。

(1)当事者主体の徹底力
 アンケート調査項目の決定からデータの精査と分析、報告書の内容に至るまで、アプロ内で十分に時間をかけてメンバー全員で議論して行う事を大事にしてきた。全員がこのような調査の経験者や専門家ではないものの関連領域の研究者もおり、時には社会調査の専門家のアドバイスを受けるが、最終的には私たちの考えを大事にしてきた。今回も、調査主体であると同時に調査対象でもある私たちの経験や感性を資源としながら、丁寧に議論を深め、調査報告をまとめたい。

(2)法制度・社会変革への機動力
 2016年JNNC(日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク)に参加し、女性差別撤廃委員会日本政府報告書審査に向けて、被差別部落女性やアイヌ女性とともにマイノリティ女性として独自に包括的なNGOレポートを提出した。部落女性とアイヌ女性とは、国際人権NGOであるIMADR(反差別国際運動)での複合差別研究会や2004年にほぼ同時にそれぞれのコミュニティで行った生活・人権状況実態調査を契機にマイノリティ女性フォーラムを結成・開催し、協働してきた。
 今後もその協働を拡大強化して、女性差別撤廃委員会や内閣府男女共同参画局への働きかけを通じて、日本社会のマイノリティ女性全体と各グループの人権状況の向上を目指す活動を行なっていくことを課題としたい。
今回の調査結果は、そのための具体的な提案の基礎データとなるため報告書をわかりやすい形にまとめる努力をする。


(3)社会における認知度の向上力
 在日コリアン女性のように複合差別を受ける立場にある人たちの存在を「見える化」し、差別是正に向けた人権意識を高めるために、報告書の配布、報告会開催やメディアへの働きかけなどを通じて調査結果を発信し、活用する。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)
 2002年いわゆる拉致が事実と確認されて以後、日本社会には、それまで以上に在日コリアンに対するバッシングが露骨な形で噴出・蔓延し、ヘイトスピーチやヘイトクライムが横行してきた。さらに、高校無償化措置政策からの朝鮮高等学校生徒排除や自治体による助成金の廃止など、行政や政治による民族差別が公然と行なわれてきた。そうした中で不可視化された在日コリアン女性は、無関心あるいは偏見や差別に晒されてきた。在日コリアン女性の多くは、民族差別と女性差別という複合差別の中で懸命に生き抜いて来るほかなく、そのような活動をおこなう余裕がない。そのような状況の中で、相反する立場をとるようなステークホルダーとの関係を構築するのは容易ではない。
 しかし、ヘイトスピーチに対するカウンターの存在や国レベルでのヘイトスピーチ解消法(理念法であり、罰則がないため実効性が不十分ではあるが)の成立、自治体レベルでも川崎市の差別禁止条例の成立などは、社会の現状に疑問を持ち行動するマジョリティのメンバーを増やし、共にステークホルダーと向き合えば、社会を変えることができることを示している。
 その意味で今回の実態調査は、在日コリアン女性の存在を可視化し、真の共生社会のあり方について説得力をもって具体的に提示し、社会全体を啓発する効果を持ち得るであろう。
 また、アプロ女性ネットは、実態調査の協力要請を通じて、政治的主張に関わりなく、複数の民族団体をはじめ多様な団体やグループにアプローチすることで日本社会のマイノリティの分断を乗り越え、共通の課題に協力して取り組む可能性を切り拓いてきた。

(5)持続力
 現在のメンバー11名の小さな組織であるが、それぞれが長年様々な在日コリアンのグループの活動に参加してきた経験がある。目下の課題は、そうした活動の実績を次の世代に引き継ぐことである。これまでも各自が育児・家事・仕事・介護などを担いながら、アプロ女性ネットの活動に主体的に参加してきた。自らの力量に見合った活動を楽しく、魅力的に展開しながら新たな仲間を増やしたい。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 ジェンダーに基づく差別以外の複数の差別―複合差別の問題が国際的に認識されたのは、1995年北京女性会議である。
在日コリアン女性は、民族差別と女性差別という複合差別の問題に直面してきたが、在日コリアンに対する民族差別に取り組むことが余儀なくされる中で、在日コリアン女性自身も複合差別の問題が認識されてこなかった。
そして、日本社会、在日コリアン社会に長年、根付いてきた儒教的家父長制の意識がなかなか変わらず、ジェンダー平等の達成には程遠い状況である。
 また、日本政府が朝鮮半島を植民地支配した結果、日本に残らざるをえなかったコリアンの人権保障は不十分なままであり、これは、植民地支配に対する日本社会の歴史認識が不十分であることを反映している。
 このような歴史的背景を経てきた在日コリアン女性であるが、私たちの存在と複合差別に直面している実態は、日本の女性運動の課題からも在日コリアンの人権運動の課題からも抜け落ちた課題になっていた。


(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。
 当事者たちの実態を示すデータ、生の声を集めて発信することで、在日コリアン女性の存在を可視化し、真のジェンダー平等社会と在日コリアンの人権保障の実現に向けた意識変革に貢献する。
 日本の女性運動や在日コリアンの人権運動に対し、在日コリアン女性のような複合的な差別を受ける人たちの存在とその課題を問題提起する。
 当事者たちの意識覚醒の契機となり、在日コリアン女性が自らをエンパワーし、差別や抑圧をなくすためのネットワークに参加する。

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。
 JNNCをはじめとする日本の女性運動のネットワーク組織との連携強化をはかり、問題意識の共有と、在日コリアン女性の人権向上にも有効なツールとなる女性差別撤廃条約選択議定書の日本政府の批准を求める活動に参加する。
 マイノリティ女性フォーラムをはじめ日本国内の他のマイノリティ女性のグループとの交流・協働の機会を継続して発展させることで当事者がエンパワーする。そして、マイノリティ女性たちとの協働で日本政府や地方自治体に働きかける。
 在日コリアンのコミュニティとの協働作業を模索し、性平等文化を共につくる契機とする。さらには韓国をはじめとする家父長的文化が根付く国々でのマイノリティ女性たちとの交流を通じて、国境を越えた複合差別への取組みの連帯をする契機にする。


 

今後の事業予定

①  アンケート調査票配布(紙媒体とネットによる調査と2種類)
 各メンバーのネットワークを活用し、またFacebookやその他のメディアを活用し、紙媒体のアンケート1,000部を2021年2月28日までを期限として、丁寧に配付・回収する。民団・総連傘下の関連団体や民族学校などなるべく多様な立場のコリアン・コミュニティに配布するよう努める。
 韓国からのいわゆるニューカマーに対する調査は、グーグル・フォームによるインターネットでのハングル版アンケート調査という形でおこなうが、韓国系のキリスト教会のコミュニティ、地元の商工業者のグループなどに働きかける。
 紙媒体のアンケートについては500部を、インターネットでのアンケート調査については、200部を回収目標とする。



②  データ精査・分析・報告書作成
 回収した2種類のアンケートのデータの精査と分析は、アプロ女性ネット内で議論しながらみんなで行う。またインタビュー調査の文字起こしデータも同様にアプロ内で分析し、報告書作成に向けた作業を進める。報告書は、当初200部を全国の在日コリアン女性の多住地域の公立図書館や専門図書館、調査協力団体に寄贈するという計画であったが、それに加えて300部程度を増し刷りして、当事者、関心のある日本人、研究者等に有料頒布する。


③  調査結果を報告に協力してもらった当事者を含めた様々な市民団体と共有するための報告会をオンラインを含めて複数回開催する。その中では、関心のある女性団体や人権団体との共催も積極的に模索する。


④  報告書の概要を英語に翻訳して、国連女性差別撤廃委員会などの人権機関に、在日コリアン女性に対する複合差別状況を具体的に示すデータとして提供する。■

 

 

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