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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)アドボカシーカフェ第52回開催報告

 

若者の政治参画

マイノリティーの声も社会へ 

 

 2018年4月6日、穂積亮次さん(愛知県新城市長)と、両角達平さん(NPO法人わかもののまち「日本版ローカルユースカウンシル」検討会議委員)をお迎えしたアドボカシーカフェを、SJFは東京都文京区にて開催しました。

 若者が社会に参画する仕組みが日本ではなかなか実体化してきませんでした。欧州を中心に広がっているユースカウンシルという、若者が地域政策や地域づくりに参画するしくみを参考に、日本で子どもや若者が自らそういった仕組みをつくるための考え方や方法をしめすハンドブック作りがNPO法人わかもののまちによって進められています。

 愛知県新城市では、若者議会に1千万円の予算をつけて、若者の意思決定を政策に生かしており、若者の社会参画が実体化しています。市長の穂積亮次氏は、若者議会は自治の原点だと強調されました。消滅可能性都市に指定された新城市は、新しい世代へリレーする仕組みとして若者議会を、自治基本条例から育まれた若者議会条例によって設置しています。若者議会は地域社会を継続的に構成する主体となっており、いまの社会的な格差、孤立、政治的無関心と自ら戦い、成長しています。

 ユースカウンシルが根付いているスウェーデンでは、若者の社会的な排除を乗り越えて、大人に操られない本当の若者参加が進んでいます。教育的な目的で若者参加の枠組みを大人が用意するのではなく、若者から発して若者の主導でなされています。若者も立法過程に市民として参加しやすく、年齢でのあらゆる差別を禁止しているスウェーデンでは、若者の幸福度が高くなっていることが、スウェーデンの若者参加政策の研究者でもある両角達平氏から報告されました。

 自分の人生の主人公となれるかは、あらゆる世代が市民として社会に参画できるかにかかっています。

 

 

―土肥潤也さん(NPO法人わかもののまち代表理事/コーディネータ)から概要説明―

 NPO法人わかもののまち静岡として今年の2月まで活動していましたが、今年の2月に法人名を変更しまして、わかもののまち静岡から<わかもののまち>になりました。その代表をしております土肥と申します。

 私たちのNPOが昨年よりソーシャル・ジャスティス基金から「日本ローカルユースカウンシル・プロジェクト」で助成を受けております。

 このプロジェクトは、欧州を中心に広がっているユースカウンシルという、若者の地域社会に参加する仕組みを日本で実体化していこうとするものです。ユースカウンシルは、日本語にすると、「若者議会」や「子ども議会」、「若者協議会」となるかと思います。欧州や最近ではアジア圏でも活発になっているようですが、日本では若者議会や子ども議会は非常に幼稚に扱われてきた、形骸的なものであったという印象があります。そこで、参加を実体化していく仕組みを日本版でどういうふうに開発ができるか、日本の各地の実践者や研究者を検討委員会にお招きし検討していくのを、一昨年の12月から取り組んでおります。1年間、議論を重ね、それを一つのハンドブック――それを見た若者たちが自分たちのまちでユースカウンシルを立ち上げられる――作りに1年間取り組んできました。今年やっと公開できるかなという所まで来ました。

 今回、両角さんと穂積さんをお招きしております。

 両角達平さんは、一緒にユースカウンシルのハンドブックをつくってきた検討会議のメンバーとして参画していただいており、その縁からスウェーデンの若者政策などを紹介していただくということでお招きしております。

 穂積亮次さん。最近、新城市の若者議会が有名になってきています。これまでなぜ国内で子どもや若者の参加が実体化してこなかったかというと、子ども議会や若者議会に対する意思決定権や若者たちが実際に行動するための予算が付いていなかったからです。それを新城市は、若者議会に実際に予算を付けて、若者の意思決定に力を持たせていった、影響力を持たせていったところが、大きな特長かなと考えています。なぜ市長のお立場で、その若者議会や若者政策を推進されて来たのかという背景から、そこに対してどういう思いを込められているのかを伺いたいなと今日お招きした次第です。

 今日の流れは、まず両角さんと穂積さんからお話をいただいた後、登壇者間で簡単な質疑をやらせていただき、グループの中で対話、その中から質問や意見を前に持ってきていただき、全体で対話をしていくという形を考えています。

土肥さんSJF20180406

 

――両角達平さんのお話――「スウェーデンに学ぶ若者参加を支える思想」

 スウェーデンにおける、ユースカウンシルや若者議会など、若者政策や若者参加はどのような思想によって支えられるのかをみなさんと考えられればと思います。

 僕と穂積さんのつながりは、僕からの一方的なつながりでした。グーグル・アラートという、あるキーワードが出たら検索結果をメールくれるという機能があるのですが、そこで「若者政策」というキーワードを入れたところ、もう4~5年前になりますが、ぱっと来た通知メールを開いたら、なんと穂積さんのブログにたどり着いたのです。そのブログで紹介していたのが新城市における若者政策の思想などで、「若者を資源とみなす」ということが明言されていた。そこで引用されていたのが、スウェーデンの若者政策の文章でした。その文章は、津富宏さん(静岡県立大学教授)が翻訳をなさったもので、その下訳を僕がしていたのです。というわけで、その文章の前書きに「両角達平」と書いてあるので、僕は一方的にすごくうれしかったのです。それ以来、僕は一方的に新城市をずっと見ていて、今日このように全国的に注目されるような取り組みになったことをうれしく思っております。

 

 スウェーデンに4~5年住んでいました。その間、ブログを書いたり若者活動の支援をしたりしてきました。もともと静岡の大学に行っていたので、わかもののまち静岡とも関わってきました。この四月からは、大学で非常勤講師もしています。僕の活動の原点は、YEC(若者エンパワーメント委員会)という静岡での取り組みで、中高生の活動を大学生が応援するというもので、小さな取り組みですがみなさん頑張っています。

 このような活動とともにいろいろ勉強していくなかで、北欧の若者政策やユースワークが非常に進んでいると大学2年の時に知りました。それでスウェーデンについていろいろ勉強して、大学4年で休学して1年半スウェーデンに行って戻ってきて、また向こうの大学に行って、その間いろいろな若者団体やユースワークの取り組み、ユースカウンシルや、主権者教育や政治教育の分野を含めて70以上の団体を訪問してきました。その中で得た知見をみなさんと共有したいと思います。

ゲストSJF20180406

 

若者は社会の資源と認識するスウェーデンと新城市

 スウェーデンは人口1千万程の国で、首都ストックホルムは日本の仙台や京都ぐらいの規模のまちだと考えてください。北欧は高福祉・高負担の国がある一方で資本主義的な国もありますが、スウェーデン研究をされている岡沢憲夫さんがスウェーデンを「優しさと厳しさの絶妙なバランス感覚」と表されており、まさにそれが当てはまる国だなと思ってます。

 スウェーデンは若者の投票率が高いことが有名ですが、実は学校教育に関しては、あまり良くない成績になっています。国際学習到達度調査(PISA)ランキングを見ますと、フィンランドと日本は同程度に高いのですが、スウェーデンはここ10年くらいぐっと下がっていて15歳の学力という点ではあまり良くなく、フィンランドと大きな差があります。いっぽうで投票率は非常に高いです。年代別の投票率を比較しますと、一番若い世代はどこの国も低い傾向にありますが、スウェーデンは80%を超えていて(スウェーデン総選挙2014年)、日本は35%程と低くなっています(衆議院選2012年)。

 スウェーデンの若者は社会参加意識も非常に高いことがスウェーデンの白書から明らかになっています。僕が衝撃を受けた数字は、政党に所属している数や、市議会における24歳以下の政治家の数が約5%に達していることや、地域の政治家に意見を伝えられていると思う24歳以下の若者が約3割もいるというものです。半数近くの人が、その地域の人に自分の関心のあることを伝えたいと思っています。そして、アソシエーション活動や、スタディーサークル等、若者団体がたくさんあって、それに所属している人が半数を超えている。若い政治家もいて、選挙権・被選挙権の年齢は同じで、16歳選挙権も検討しています。若い国会議員も多いです。今の最年少の国会議員は22歳です。現在の連立内閣の大臣にも30代以下の人が3名いて、教育大臣、高校・知識向上担当大臣、国民健康・医療およびスポーツ担当大臣です。

 スウェーデンは、これこそ穂積市長が読まれた文章に書いてある若者政策(youth policy)のことなのですが、こういった若者政策があります。この若者政策が長い歴史をもって設置されていて、5つの分野、就労・家庭・学校教育・余暇活動・政治という分野になっています。目的のキーワードを一つ上げるとしたら「影響力」かと思います。目的は「13歳から25歳のすべての若者が、良質な生活環境に恵まれ、自身の人生を形作る力を持ち、コミュニティの発展に影響力を持てるようになること」となっています。若者政策の管轄は、教育庁にある若者・市民社会庁です。

 要であるのが、若者をどう認識しているか。スウェーデンの若者政策は、若者を社会の問題ではなく、社会のリソース、資源であると認識しています。

 日本にも子ども育成政策や若者政策が最近できましたけれども、大きな違いは何なのか。スウェーデンの若者政策を担当している若者・市民社会庁がやっていることは主に3つあります。調査・研究・出版(子ども・若者白書、テーマレポート)と、協議会の実施(若者団体と若者政策担当大臣との面談開催など)は他国でもみられることですが、最優先の政策は、若者団体への助成金の拠出です。若者団体がいろいろな活動をしていく中で必要な資金を付けています。2014年では約30億円の助成金を106の子ども・若者団体に拠出していて、これは毎年やっています。若者団体の支援を言うだけでなく、実際にお金を出すところまで国レベルでこの規模でやっていることはスウェーデンの強みかと思います。 

 

 ではそのお金で実際に何をしているかを見ていきましょう。スウェーデンの若者の参加がどんな場所で起きているのかを3つ、公式の場・余暇の場・その他の場に分けてみました(図1)。

※図1.

両角さん図1

 

 公式の場(Formal)は、学校や政治の場などであり、そういう場で若者がどのように社会参加や政治参加しているのか。社会科の授業や、模擬選挙、生徒会活動、学生組合、政党の青年部、全国若者協議会等があります。

 余暇の場(Non-formal)は、公式の場ではない参加の場、だけどある程度目的があって組織活動をする場で、余暇の機会に行われている若者の活動では、若者議会や若者団体、余暇活動施設における活動があると思っています。

 それ以外の活動は、その他の場(In-formal)として分類させていただきました。

 

若者と政治家との権力関係の転換 若者から発して若者の主導で

 今日は、余暇の場である若者議会に焦点を当てます。

 スウェーデンの若者議会で何が起きているのか。スウェーデンの若者議会はシンプルな活動をしているなという実感があります。みなさん高校生だとしましょう。何かこの地域で何か面白いことをやりたい。この地域でこんな問題があって何とかしなきゃと思っている。だけど、生徒会はやりたくない人――スウェーデンは生徒会も活発なのですが――、政党青年部は政治色もあって違うなと感じる人――いろいろある政党にある若者部は10代から20代まで所属でき、そこで地域の課題を話すこともできますが――、そういう人が若者議会に入るのです。

 スウェーデンの第2の都市、ヨーテボリでやっている若者議会を紹介します。12歳から17歳までの若者101人で構成されています。若者議会のメンバーは 選挙で選ばれたり選ばれない場合もあります。やることは基本的に、定期的に集まって自分たちでやりたいことをやっていく。いまこの課題を僕は気になっているから話し合おうということを定例会で話し合って、活動が大きくなったら委員会等を作ってみんなで話し合っていきます。

 実際に行政への政策提言につながる場合もあります。地方選挙における16歳選挙権の導入を提言したり、ヨーテボリで走っているチンチン電車を若者は無料で使えるようにしようという活動をしたり、ウォータースライド祭りをやろうという活動もあります。

 予算が毎年出ていて、約350万円が自由に使えます。

 この若者議会は スウェーデン全国の地域に37団体あります。それらを束ねている全国団体がスウェーデン若者協議会です。束ねているからといって「代表です!」というわけではなく、地域の若者議会の活動をサポートすることを徹底的にやっている団体です。全国の交流会を主催したり、全国の若者議会の声を集めて、それを国に政策提言する時にこの団体が母体となってやったりします。

 このスウェーデン若者協議会に所属していない若者議会的な取り組みがあります。公式的なものとそうでないものがある。公式でない団体は、勝手に自分たちで活動しているだけです。

 スウェーデン全国若者協議会でやっていることで面白いものの一つに、毎年やっている全国集会があります。組織運営の研修合宿をやります。若者の組織や団体を続けていくのは結構大変なので、みんなで組織運営の方法をシェアしていこうというリーダーシップの合宿です。そういうことを続けていたら、政治家から「若者政策、どうしたら若者に関心を持ってもらえるのか」という相談が相次いだそうで、それについての本を出版したら、とても売れているとのことです。若者と政治家との権力関係の転換が生まれていて、若者の方が上にあるということが起きています。

 いろんな方法で若者議会は政策に影響を与えることができています。若者の声を吸い上げる仕組みがあります。地域にいろんな若者団体があり、若者議会や政党青年部もそうです。それらが束になったものがたくさんあります。それが県レベル、国レベル、自治体レベル、それぞれのチャンネルにおいて、若者政策を担当している役職がありますので、そこを入口にして若者の声を伝えられます。全部の若者団体を束ねる若者協議会があり、それが若者sr会(SU)です。こういう重層的な取り組みが若者団体だけでなく、スウェーデンのいろいろな市民団体で起きていて、ひとつの伝統になっているのではないかと思います。

 

若者を人生の消費者にさせない 社会的な排除を乗り越えて

 新城市の若者政策では、若者は問題ではなく資源であるといっています。僕はそれをブログで見て、とても感動したのです。そして、「では、資源の次は何だろう」と考えてみました。

 スウェーデンの若者政策の歴史的発展を見ていくなかで、資源の次に大事にした方がいいのではないかということが見えてきた気がしたので共有したいと思います。

 スウェーデン若者政策は、1898年に初めて国レベルでやっていこうとなりました。この時はまだ、子ども・若者政策という形でした。都市化が始まる頃で、福祉国家が形成される段階。どんどん国ができていく時に、若者という層がまだ政策の対象になっていなかった。それで若者たちがどんどん街に繰り出したり、路上にたむろしたりというふうになっていった。その不良の若者たちをどうにかしなければいけないと始まったのがスウェーデンの若者政策です。当時設立された委員会はギャングボーイ・コミッティーと呼ばれたように、不良若者を私たち大人が何とかして良くしなければいけないんだという姿勢でやっていました。

 この姿勢はどうなのかという問題提起が1940年代になされました。それは、1945年のスウェーデン政府報告書に書かれていました。委員会のある人が「大人が若者の余暇活動の選択に影響を与えることができるのか」と疑問を投げかけました。それはつまり、「若者の活動なのに、なぜ大人が自分たちと違う人たちを変えてあげようとするのか。この姿勢はどうなのか」という問題意識です。そこから政策が変わってきたという流れがあります。それ以来、スウェーデンの若者政策はできるだけ当事者の声を聞く傾向になりました。

 1950年代からユースワーク、学校外での活動や余暇活動の推進が本格的になりました。この時期に、「若者は問題ではなく社会の資源である」という視点が入りました。これは、国際連合の1965年の文章に刺激を受けたことが起点となっています。

 1980年代からは、もう一つ新しいターニングポイントを向かえて、「若者を消費者にさせない」という視点が導入されるようになりました。市場社会が拡大していくなかで、若者がどんどんお金持ちになって、いろんなサービスも受けられるし、ユースセンターに行けばいろんな職員さんがよくしてくれるということが起きて、若者が消費者化してしまうことが起きているのではないかという報告書が1981年に出されました。「若者が商品や製品の、さらには自身の人生の『消費者』になってしまい、結果として自身の人生も自分で決めることができなくなっている」と書かれています。それ以来、若者団体の活動にいっそう出資することによって、消費者にしないようにして行くということにしました。

 1985年、EUの世界青年年に若者の「積極的な市民性」(アクティブ・シティズンシップ)をスウェーデンの教育だけでなく、ユースセンターなど学校外の場所でも強めていこうという流れになりました。

 1990年代からは、子どもの権利としての参加など、先進国で起きたのと同じような流れになっているかと思います。

 2000年代からは、若者政策に「影響力」や「社会的包摂」という言葉が使われるようになったかと思います。

 ヨーロッパにおいて若者政策が浮上した出発点は、若者の社会的排除でした。

 

 なぜ若者参加が必要なのでしょうか。これをまとめた欧州議会の分かりやすい文章を紹介します。

一つ目は、基本的人権だから。

二つ目は、子ども・若者が排除されなくなるから。

三つ目は、若者の成長や学びになり、自信が高まるから。

四つ目は、その政策自体が良くなるから。

五つ目は、積極的な市民になるためには、訓練が必要だから。

 日本だとこの5つのうちどれに該当しているのか。たぶん、教育や学び、成長なのではないかと思いますので、ほかの一つ目・二つ目・四つ目を日本は高めるとよいのではないかと思います。

 

本当の若者参加 大人が操らない

 若者参加を考えるためのフレームワークについてお話します。

 ロジャーハートの子ども参加のハシゴというのがあります。子ども・若者参加にもいろいろあり、ニセの参加もあります。大人が操ったり、お飾りの参加をさせたりする段階もあります。そうではなく本当の参加というのは、きちんと情報を提供したり、意思決定を大人と一緒にやる、あるいは子ども・若者だけが意思決定し主導していくことなのではないか。そういうことが見えるようにしたのがこのハシゴです。このハシゴに関してはいろいろな議論があります。子ども・若者参画は、このハシゴがあることによって、逆に動けなくなるのではないかと批判している人もいます。

 これも参考にしながら、現代における若者参加にはこういうのがあるのではないかと、修士論文で出したのがこの図です(図2)。

※図2.

両角さん図2

 

 一番下の楕円が、若者の参加がどんな場所で起きているかを示しています。いろんな分類を3つにまとめた結果として、政治、教育・雇用、社会・市民に分類し、そのなかにさまざまな若者参加を置きます。

 いい参加は、図の真ん中にあるハシゴの上の方で起きるものです。非参加の状態があり、その上に参加の状態があり大人と子どもが一緒に意思決定していきます。さらに上にある、より積極的で多様な参加というのは、若者主導でいろんな人を巻き込んでやっていく状態です。

 これらを起こしていくためには何が必要かは、左側にある矢印が示しています。要は、権利として参加が認められているか。さらに、参加のための十分な資源――財源もそうですし、空間や誰かの助け(人的資源)――があるとよいものになる。そして、一番上の「権力関係の転換」とは、子ども・若者をとりまくサポートする人や周りの社会の状況との関係を変えていくことです。主導している人が上から目線で、パターナリズムで私がやってあげようという姿勢で関わってくる人がいたら、権力関係は大人の方が強いですからずっと変わらないものです。この3つがあるとよい参加になります。

 参加の目的が右側で、「若者が社会と自分への影響力を高めて、社会的排除を乗り越える」とまとめました。

 

「若者参加」 教育ではなく市民参加として

 もう一つ考えなければいけないのは、若者参加をそれだけで終わらせないためには次なるステップが必要なのではないかということです。

 一つ目が、第3セクターのさらなる拡大と若者参画という視点です。

 ロバート・パットナムというアメリカの研究者が、「なぜアメリカの対人・信頼関係が下がっているのか」というテーマでずっと研究をしています。この方はアメリカの対人・信頼関係が下がっていると言いますが、北欧はすごく高いのです。他者を信じる社会で、ノルウェーは約70%の人が他者を信じることができると答えていますし、スウェーデンもそうです。日本はアメリカと同じくらいで30%~40%です。

 パットナムは、なぜ今こうなっているのかについて、市民活動やアソシエーション活動など第3活動への参加率がどんどん下がっているからだと分析しています。PTA活動やボーイスカウトなど伝統的にあったアメリカの活動に参加している人がどんどん減っていて、それによって信頼関係が下がっているということです。

 北欧はなぜ対人信頼関係が高いのかといったら、やはりこういう第3セクターでの活動や市民活動が大きいのではないかと思っています。若者問題を取り扱うところはスウェーデンには伝統的にスタディーサークルや教会活動に元々ありましたし、市民運動やセツルメント運動も昔から盛んでした。

 現在、スウェーデンの若者団体を担当しているのが若者・市民社会庁です。これが意味することは、若者団体の活動と市民活動を同列に見ているということです。それぐらい、第3セクターの役割が大きいのではないかと思っています。第3セクターというのは、スウェーデン人のペストフ(Pestoff)による福祉トライアングルにおける第3セクターです。

 日本では、第3セクターの若者団体だけでなく市民団体全体がまだまだ弱いのではないかなと思っています。ですから、第3セクターを大きくして活発化していかない限り、若者団体の活動も大きく広がっていかないのではないかと思っています。

 欧米の事例を参考にしようというとき、比較的アメリカやイギリスが引き合いに出されます。教育もそうです。NPOの活動や事業レベルにおいてはそれでいいと思うのですが、社会像がアメリカとヨーロッパはそもそも全く違うことを認識しなければいけないと思います。アメリカにおけるユースワークの活動は、学習支援や就労支援などに回収されてしまう。要は、成績を上げたら点数が上げるし、数字で見えるし、就職率が上がったら成果達成となってしまう。一方、ヨーロッパだと比較的そんなことを気にしないという伝統がまだあります。そんな事業にお金を出すんですかということがあります。若者団体の中には、年間1億円ぐらいを国からもらって職員45人を雇ってストックホルムで事務所を借りてということができるのです。こういうのを見ていると、何か違うなと思います。僕らがやってきていることは科学国家・科学主義のアメリカの影響が大きいのではないかと思っています。

 

 二つ目が、「資源」の次の若者政策の理念は何かという視点です。いま出てきたキーワードである「影響力」や「社会的包摂」、財源を付けることとか、「若者を人生の消費者にしない」ということを日本の若者政策で考えていくとよいと思います。

 

 三つ目が、若者参加それ自体に価値があるという視点です。最近ある団体によばれて審査委員みたいなことをやっていたのですが、中高生の活動を応援するという全国の活動を審査委員が審査をする。中高生とともに時間を過ごしてよかったのですが、ぼくは嫌いがあって、中高生が自由にやっている活動を大人が審査するのはすごく日本的で教育的だと思いました。若者参加の活動は好きでやっているのに、審査されるとなれば行くし、優勝すれば大臣賞とかもらえる。これでは結局、教育への回収になってしまうと思うのです。一方で若者は表現の自由としてやっているだけという場合もあります。いちいち教育に回収するのは、何かを捨象するのではないかという危機感があります。

 

 四つ目として、若者参加、若者議会が、ある一部の人しか参加しないようにならないためには、社会的包摂との接続が大事だと思います。イギリスの若者議会(youth parliament)を見に行きましたが、かなりエリートが集まっている傾向があります。一方でスウェーデンは、そもそも政治家自体がアマチュア、ど素人ばかりという感じです。

 こういうのを見ていく中で、より多くの人たちの声を聞くためには、そして、関係者以外は立ち入り禁止という表札を社会は自動的につくってしまうと思うのですが、それに気づかせてくれるのは、後者(の一部のエリートに支配された社会ではない多様な人が参画する社会)なのではないかなと思います。

 

土肥さん) 教育と参加の話のなかで紹介されたロジャー・ハートの子ども参画のハシゴについては、シェリー・アーンスタインという方が市民参加のハシゴを子ども参画のハシゴに変えたのが始まりです。ですので、教育的な文脈ではなく、市民参加の文脈として子ども参加・若者参加がスウェーデンで絶対化してきたというのがお話のなかでつながりました。

 これからお話いただく新城市の若者議会は所管が「まちづくり推進課」であることは大きな特長だと思います。日本の子ども議会や若者議会をいま全国で調査していますが、ほとんど教育委員会が所管でやっています。あるいは子どもの権利関係の課がやっていることが多いです。まちづくり系の課や、市民参加系・市民協働系の課が若者議会を持っているというのは非常に珍しい取り組みなのではないかなと思います。

 

 

 

――穂積亮次さん(愛知県新城市長)のお話――

 

 若者議会は新城市という一地方都市でやられていますが、こうして全国の問題意識を持ったみなさん方から、とくにソーシャル・ジャスティスという視点から、新城市の若者議会を検証していただくいい機会かなと思って参加をさせてもらいました。

穂積さんSJF20180406

 

 新城市は、愛知県の一番東に位置し、隣が静岡県の浜松市になります。人口はわずか4万7千人、世帯数が1万7千で、高齢化率は全体で30%を超えています。山間地に行きますと40%・50%という集落があります。面積全体の80%が森林ですので、これから中山間地が始まるよというところです。第1次産業と第2次産業の構成比率(8.5%と37.3%)が全国平均より少しずつ高いかなというところです。

 

 まずは昨年放映されたニュース番組を少しご覧ください(2017年6月13日放送、CBCテレビ 「イッポウ」)。

 

消滅可能性都市の挑戦 1千万円の予算内で政策を提言する若者議会 ~番組の概要~

 新城市の若者議会は、議員は主に市内に住む高校生から20代の若者たち。この若者議会は単なるデモンストレーションではない。

 年間1千万円の予算が付き、その範囲内で政策を提言するという議会。

 地方自治の優れた実践団体をたたえるマニフェスト大賞の最優秀賞を2016年に受賞。過疎化に悩む全国の自治体から注目を集めている。

(穂積市長)「若者の可能性を信じて、若者と共にこれからのまちをつくっていくという新しい若者政策として他のまちのモデルになる取り組みだと思います。」

 

 2015年の若者議会の立ち上げに動き、初代の議長を務めた竹下修平さん。5年前の2000年、イギリスでの交流イベント、世界新城アライアンス会議に参加して衝撃を受けたのが始まりだと振り返る――「イギリスでは、もう若者たちが自分のまちをどうしたいか、何が課題かを常に考えていて。それに比べて、自分たちは全然まちづくりについて考えたことがなかった」。

 竹下さんは帰国後、友人とともに新城ユースの会を設立。外国の若者たちを招いて、新城の魅力をPRする活動を始めた。

 この活動に注目したのが、新城市の穂積亮次市長。人口減少と高齢化が進む新城市は、愛知県内の市で唯一、消滅可能性都市に指定されていて、この問題をなんとかしたいと市長は思っていた。

(穂積市長)「人口が減っていく日本社会を考える時、どうしたって若者の力が必要じゃないですか。必要にもかかわらず、彼らの考え方や要望や求めるものは、じつは余り聞いていないのが政治の現状。」

 こうして発足した若者議会。メンバーは公募で集まった、主に新城市内に住む高校生から29歳までの20人で、任期は1年。

 

 若者議会の年間スケジュール。メンバーは5月の所信表明の発表後、月2回のペースで市の若手職員らと政策を立案する。8月の中間報告では、政策の方向性について市の幹部とも議論。そして11月、練り上げた政策を市長に答申し、議会の承認を経て正式に市の事業となる。

 

 若者議会は2015年4月以来の2期=2年であわせて13の政策を提言した。実現した政策はどんなものか。

 1期生の浅井さんが新城市内の図書館を案内。若者議会の議論によって、2階の郷土資料室にあったジオラマを撤去。学生が利用できる自主学習スペースにした。これまで禁止されていた飲み物の持ちこみも可能にした。公共の図書館を若者がリノベーションするという全国初の取り組み。利用者も大幅にアップした。

(浅井さん)「学習スペースが少ないというのが、若者議員の感覚や感想としてあって。どんな世代の方も使えるというのもあったので図書館を変えていくのが一番いいんじゃないかとなりました。」

 浅井さんは、若者議会に参加していた大学時代は名古屋で一人暮らしだったが、就職を機に新城の実家に戻ってきた。現在は隣の豊川市のジュエリーショップで働いている。

(浅井さん)「自分と関わりが無いと思っていた市や市役所の活動が、人ごとではないという感覚。とくに地元に残っている若い人たちがより関心を持つ必要があるなと感じました。」

 

 第3期若者議会(2017年度)の初顔合わせの日。今回のメンバーは、市内在住の15歳から20歳までの20人に、市外からの参加者5人を加えた25人。

 「新城市を変えていくのを手伝ってみたいなと思ったので。」

 「私たちの年代の人は居場所が無くてみんな外に遊びに行ってしまうので、まずはスタバがほしいです。」

 2期生のアドバイスを受けながら、公募チームやこれまでの事業を引き継ぐチームなど3つのチームに分かれ、1年間の計画を立てる。

 3期生の一人、山本くん、16歳。防災担当を務めることになった。新城高校柔道部の一員だ。山本くんが若者議会に応募したきっかけは、中学生の時に地元の消防出初式に参加したことだという。

(山本くん)「防災意識が自分から高まって。地震なんか、いつ来るか分からないのに。こんな暇があったら議員とかしたいなと思いました。」

 熊本地震であらためて注目された日本最長の活断層、中央構造線が市中を横断する新城市。愛知県の自治体では最初に東海地震の対策強化地域に指定されている。

 

 今期1回目の若者議会が始まる日。緊張するメンバーもいる中、山本くんは自分の丸刈り頭をネタに冗談を飛ばす。

 3期生それぞれが所信表明を行う。

「若者議会に参加したのは、新城のことが好きというのが一番大きな理由です。」

「僕の住んでいる地区でも若者はおらず高齢者が増えるばかりで、とても大変なことになっています。なかには50年以上、舗装が直されていない所もあります。新城市はこういうところまで目が届いているのかと僕はとても思います。」

いよいよ山本くんの番。

「あまりに同級生の防災の意識が低いとあらためて思いました。なので今年一年、若者議会に入り、もっと新城を良くしていきたいと思います。」

 

 1千万円の使い道を決める重責を担った若者たち。消滅可能性都市に活気を呼ぶ。新城市と若者たちの挑戦が続いている。

 政治は遠いものではなく、生活そのものなんだよということを若者議会を通して教わったように思います。

~~~番組終了~~~

 

 ざっと、現状を肌で感じていただければと思いました。

 

 若者政策の立ち位置、いろんな角度から検証することができますし、語ることができますが、今日は私の方から二つほど大きなポイントを出させていただきます。

 

これからの家族や働き方を決める人たち――若者――の意思を反映した社会政策を

 一つは、人口減少時代への入り方。つまり日本で若者政策、若者議会というのが大きな課題となっていると感じられるのは、いろんな時代状況がありますが、間違いなく今までで初めて高度経済成長時代以来はじめて人口減少時代に入っていくということ。

 この時代は、家族とか地域とか企業とか政府とかの関係性そのものがどんどん変わっていきます。従来の家族関係というのが変わっていきますし、すでに単身世帯が子どものいる世帯を上回る時代になっています。さらに生涯の未婚率、結婚しない人も増え、あるいはLGBTのような性的少数者の方もおられる。それから子どもの貧困もある。

 人は一人では生きていけないのだけれども、どこに帰属するのかという帰属の相手と意識がどんどん変わっていきます。その変わっていく中で、私は市長という立場ですから、行政・政治のことをやっています。

 社会不安が非常に大きな時代の中にこれからの社会政策、社会保障をしっかりと制度設計していこうと思うと、これからの家族や働き方を決める人たちの意思が政治に反映され、組み込まれない限り、その制度設計は 絵に描いた餅になる。いくら政府が、専門家が、有識者が100年通用するぞと出した制度でも、政府への信頼性がなかったり、政府が想定する家族関係とまったく異なる形態を当事者の方が選んで行きだせば、その制度は1年と持ちません。

 そういう時代的な緊張感の中で、これからの社会保障、社会政策は形作っていく必要があるが、その時に一番肝心のこと――若い女性とそのパートナーたち、つまりは若者と女性たちの社会参加、政治的な意思決定への参画――というのが決定的に欠落しているのが日本の現状だと思います。いろんな政党の立場や価値観は異なるでしょうけれども、その一番肝心のことを組み入れる仕組みを構築すること無しには、日本の社会のあり方、将来というのを共有して描いていくことはできないと思います。

 いまの時代の変革の中で、若者政策が大きな課題として浮上してきたというのが、私の一つの理解です。いろいろな見方があると思います。

 

政治的な民主主義の保障を問うている若者議会

 もう一つが、民主主義のあり方です。自由を放棄する「自由」はあるか。自治を返上する「自治」はあるか。これは昔からいろんな方が問うてきたテーマではあります。

 自由を放棄する自由は一度はあるのですけれども、自由をいったん放棄すれば、その時は放棄する自由はあるかもしれませんが、その後は永続的に自由は無くなっていきます。

 自治も同じで、地方自治を返上して政府に任せれば楽じゃないかと。そういう感覚が一部で生まれているのも現状です。

 あるいは、どうでしょうか。極端な例かもしれませんけれども、刑務所は最高の最大の究極の福祉施設だと言われている。例えば高齢者の方で、仕事が無い。じゃあどうするか。頼る家族も無い。じゃあ軽犯罪を犯して刑務所に入れば生存だけは保障される。ならば自由を放棄して身柄を拘束されてでもそっちへ行った方がいいんじゃないのという究極の選択が起きかねない状況が一方で在ると私は感じています。

 いまの若者たちがこれから人生を切り拓いていく時に、自分自身が自分の人生の主人公だという道を切り拓いていくためには、政治的な民主主義が保障されていなければ、それは絵に描いた餅になるということは歴史が教えていることです。

 ですので若者政策、若者議会というのは、日本の民主主義をいまひとつブラッシュアップする大きな課題だと思っています。民主主義は一度できあがればそのまま在るものではなく、絶えず拡大したり、内容を充実させていかなければいけないものです。いま世界的に議会制を含めて、民主政治の在り方があらゆるところから問われていると思います。日本でも同じかと思います。

 

新しい世代へのリレーを通じて社会的公正を獲得する若者議会

 論点としまして、若者政策を世代間の対立として語られることもあります。いわゆるシルバーデモクラシー。高齢者が増えれば、高齢者の有権者が選挙に来る率が高いですから、高齢者の要求は政策に反映されやすいけれども、若者が政治に行かなくなれば若者の利益は政策に反映されないと。それで高齢者だけに偏った福祉政策だけが肥大していくと。これに関して、若者が割を食っている状況があり、その若者がこれから非常に大きな負担を強いられてくる。それゆえに今度は逆に若者たちに政策資源をより重点的に配分すべきだと。だから若者政策が必要なんだと語る方もおられるかと思います。

 そういう面も無きにしもあらずなのですが、本市が消滅可能性都市と言われているように、大きな人口減少時代に入っていくと、今日の若者は明日の高齢者ですから、「世代の継承」、「世代の更新」が本当に地域でできるのかというギリギリのことを探っていかなければなりません。

 そうすると、いわゆる高齢者と若者との世代間の戦いとしての若者政策という立ち位置をとることはできないし、むしろそこからいかに「世代間の交流」、「新しい世代へのリレー」、そしてそのことを通じて「社会的公正」を獲得していく。いわゆるソーシャル・ジャスティスということでしょうけれども。そのための仕掛けとしての若者政策、若者議会なのだということを、私としては強調しておきたいと思います。

 とくに若者議会、若者政策をやっていきますと、若者が地域社会と関わりを持っていきます。若者は流動性が高いから、いつかは高校生・大学生になればどこかに行く、就職をすれば名古屋や東京に行くというように、地域社会の中では「通過する人」あるいは「成長する人」とは見られていても、「地域社会を継続的に構成する主体」とはほとんど見られていませんが、若者議会・若者政策をやりますと否応なしに若者が地域社会と向き合っていきます。その時に若者自身が地域をどう見るか、そして地域の方から若者にどういう要求を出していくか。これで新しい意識の交流が始まっていきます。

 先だって若者議会から今年度の最終答申を受けたのですが、その中である若者議会のメンバーが「地域社会から応援される若者議会ではなく、地域社会に必要とされる若者議会をつくっていきたい」と表現しました。若者議会の登場によって、そのように意識が劇的に変わっていき、そして地域の中で世代間をもっとしっかり結びつけて行く必要があるということが、高齢世代にも強く意識されて行きます。

 

教育委員会と若者議会で協議 中学校でシティズンシップ教育 

 若者自らが持ち込む主権者教育――学校と社会的自立についてお話します。

 高校生以上が新城市の若者議会の主体なのですが、小学校や中学生に若者議会のメンバーが学校に入っていってシティズンシップ教育をやりたいと若者議会が言いだして、教育委員会と協議をしてもらいました。最初は教育委員会は非常に頑なで、カリキュラムがあって授業に関わるのはそんな簡単なことではないというように言われながら、ただ何とか折り合いをつけようということで、昨年度はじめて一つの中学校をモデルにして、まちづくりへの参加意識を高めるワークショップを若者議会のメンバーが自ら入ってやりました。

 そのように若者ということを一つの媒介にして、上の世代と下の世代が連携をしていくつなぎが具体的に見えてくる。そして中学生議会の中から若者議会への参加者が出てくる。

 先ほどのテレビで見ていただいた若者議会の初代議長の竹下修平君は、若者議会を卒業した後、実は昨年10月に市長選挙・市議会議員選挙があって、市議会議員の選挙に立候補し、みごと最年少の議員として当選しました。

 まちづくりのワークショップで「10年後の新城市がどうなっているか予測してください」とグループ討議をしてみなさんに書いてもらいました。その中のかなり大勢の方が、10年後には市議会議員の半分は若者議会の経験者になっているだろうと書いていました。若者議会を見てきた市民がそう書いているのです。実際にそうなるかどうかは別として、間違いなくそういう予測が起こっているのです。

 それは効果が非常に早く現れ、かつ関わった人たちのインパクトが強くなっている。

 アメリカのいくつかの州や都市では、教育委員会に高校生が入ることを必置にしている所があります。日本は、教育委員会は法律上は25歳以上しか入られませんが、私は教育委員会と若者――高校生以上ぐらいの世代―とが恒常的な協議を持つべきだと思っていて、教育委員会にもできるだけそういうふうに働きかけていきたいと思っています。中学生でも不登校やいじめなどの問題がたくさんあります。進路の問題もたくさんあります。そういうことに教育委員会がきちんと関われるかどうかは、きのう中学生だった高校生、おととい中学生だった社会人が、教育委員会で学校のことをしっかりとお互い話せるかどうかが1つの大きな試金石かなと思います。

 いま一部ではブラック校則と言われていますけれども、暗たんたる気持ちがいたしますが、そうした状況を打破しない限り、若者の政治参加、主権者教育といっても絵に描いた餅です。

 

 高齢化が進む地域社会と、これからの社会を担っていくであろう子どもや若者たち、それをつないでいく役割は間違いなく若者政策・若者議会の大きなポイントだと思っています。

 いまの社会的な格差、孤立、あるいは政治的無関心、こういうものと若者議会は自ら戦っていくことを通じ成長していくわけですし、より多くの参加を呼び掛けていくことを通じて自分たちの役割を自覚し、そこに誇りを持っていけるだろうと思います。

 若者議会は自治の原点だということをご報告申し上げたいと思います。

 

 

土肥さん)この後のグループ対話の前提となるところで、いくつか質問させていただきます。まず両角さん、イギリスのユースパリアメントとユースカウンシルの違いをもう少し説明してください。

 

両角さん)イギリスのユースパリアメントは新城市の若者議会に近いものかと思います。公式な場における参加の場かと思います。スウェーデンのユースカウンシルは、そういうものもありますし、そうでないものもあります。どちらが良い悪いというわけではなく、性格の違いだと思います。ユースパリアメント的な、市議会に行って公式な見解を述べて政治家とがっちりトークするということも、ヨーテボリの若者議会もやっています。ただヨーテボリの若者議会のなかには、そういう活動とは違うタイプの若者会や若者議会もあり、そこはもっと地域に根差して地域の問題を扱っています。

 

土肥さん)参加している若者もちょっと違いますか。

 

両角さん)できるだけエリートだけにしないということをスウェーデンのはかなり意識されていますけれども、若干ユースパリアメント的なほうはちゃんとした人が入ってよという印象があります。このあいだ一緒に見に行った小野航太くん(わかもののまち副代表)、印象はどうでしたか。

 

小野航太さん)パリアメント的なほうは、より強い問題意識、より法的な問題意識を持った子たちが多いという印象は持ちました。ユースカウンシルは、よりローカルな問題意識を持った子たちが多く、自分の地域の治安を良くしたいといった意識持ったいわゆるふつうの子が多いのではないかという印象を持ちました。

 

市民自治会議で若者の声を聞いて生まれた若者議会条例

土肥さん)今度は穂積さんに質問です。エリートばかりが参加するという話のなかでは、新城市の若者議会も一部の若者だけが参加しているのに1千万円も予算をつけているという印象を持たれなくはないのかなと思っていまして、実体としてどうなっているのでしょうか。

 あと、まちのなかで若者議会を実際に立ち上げられるときに、子ども議会や若者議会をいろいろ調査していますと、「議会」という名前を付けることに本物の議会がいやがるという話を聞いたりするので、まちや議員側の反応はどうでしたか。

 

穂積さん) 後ろの質問から答えますと、あることはありました。若者議会というのは憲法違反ではないかというぐらいの議員さんもおられました。それはどこでもあるのです。住民自治を進めると必ず議会軽視という声が起きますし、若者議会というと議会を無視するのかという声も起きてきますが、いろんな模擬議会にしろ何議会という形で使っていますので。

 今にして思えば、「若者会議」と命名したか「若者議会」と命名したかでは、かなり社会的な影響力は違ったかと思います。

 本市では5年前に自治基本条例を作っていて、自治基本条例を回していく会議として市民自治会議をつくっています。その市民自治会議が毎年、自治基本条例を検証したりブラッシュアップしたりしているのですが、その市民自治会議の中に若者政策のための分科会をつくって、そこに若い人たちを入れて議論をして、その市民自治会議からの答申として「若者議会を作るべきだ」という意見を市長に受けました。私のマニフェストには、若者議会までは書いてありません。「若者政策をやるよ、そのための会議を立ち上げるよ」とまでは書きましたが、「若者議会までいけるかな」というのは内心ありました。しかし市民自治会議で若者たちの声を聞く中で、若者たちも「若者議会をやりたい」と言い、市民自治会議の人たちも「これならもう条例でやるべきだ」となって議会に提案しましたから、ある種の手続、正当性を経ていましたから。

 

 前の質問、一部の若者だけではないかという議論は、これはやはり付いてまわると思います。いわゆる正当性、代表性はどこにあるのかと。いまのところ本市では、市長の諮問機関・付属機関として若者議会を位置づけていますので、市長の責任のなかでやっていますけれども、ゆくゆくはヨーロッパのユースパリアメントのように選挙をやるのか、何らかの選出方法を考えていかななければいけないと思います。いまはその走りですので、ある種偏っていると見る人はいるかもしれないし、正当性・代表性があるのかという議論は残りますが、それ以上の効果、それ以上の突破力を持てるかどうかというところが問われていると思います。

 

両角さん) 先ほど言われた、もともと若者議会をやっていた方で市議に選出された方は何歳ですか。

穂積さん) 26歳です。

両角さん) 最年少ですね。

 

「がんばる元気な若者を後押しする」 にとどまらない若者議会

穂積さん) 若者政治参画を、それ自体に価値があると言われました。私も同感です。また、いわゆる教育効果、学びに回収する必要があるのかと言われました。そこを深堀していただければと思います。

両角さん) ぼくのこだわりなのかなと思います。ワークショップをやったりもそうですし、学校で出前事業をやったりするときもそうですし、若者の声もそうですけど、自分はただやりたいからやっているだけなのです。例えば僕はブログを書いています。ブログを発信するのも表現の自由の一つだと思いますし、そういうレベルでやっている若者活動はいろいろあると思うのです。ダンスをやったり文化祭をやったりもあります。それらをある大人から見ると、ただ遊んでいるだけじゃないかという見方がある。それはそうだよ、その何が悪いんだということです。

穂積さん) よくわかります。一番最初にこの若者議会が全国放送に取り上げられたのが、NHKのクローズアップ現代で国谷さんの頃でした。終わった後、コメントの方が、ちょっとクスッという感じで、「若者、がんばってますよね」という感覚。また、みなさんに先ほどご覧いただいた若者議会のニュースでも、最後に「いいよね、こういう取り組み。元気で、若者後押しして」ということで留まる反応というのがあるのです。

 いやいや私たちの方では、そんな簡単なことじゃないぞ、君たちの立場をいずれは脅かす若者議会かもしれないぞと。その気持ちをできるだけ広げて共有したいと考えているので、先ほどのパターナリズムの話じゃないですけれども、それは日本は若者を語るときに乗り越えていかなければいけないところだと思います。

 

両角さん)「若者政策」という言葉をブログ等でも意識的にずっと使い続けています。伝統的に「青少年政策」といったものが日本だと多いと思うのですが、地方自治体の役職を見ても「若者」はあまり出てこない。さらに「若者政策」となると新城市ぐらいしか無いのではないかと思うのです。なぜ「若者政策」という言葉になったのでしょうか。

穂積さん) もともとが平成25年ですから、いまから5年前の市長選挙、私の3期目の市長選挙のマニフェストで「若者政策」を掲げた。その前段で、若者議会のキックオフシンポジウムなど、そういう動きは始まっていました。若者たちの中から若者議会、ユースの力を何とかしたいという動きが出てきて、これを確実に形にしていきたいということでマニフェストにしました。その時に、いくつかの自治体や研究者の書いたものを見ていく中で、地方都市には若者の流出に非常に危機感をもっているところが多い。若者が都会に流出していく。若者をなんとか定住させなければいけない。それがいい政策かは別として、そういうことが当時いろんなところで議論されていて、どなたかが「若者政策」という言葉を語っていた。それから「若者政策」をキーワードにスウェーデン事業庁の若者政策など先ほどの両角さんの下訳も含めていろいろな研究に突き当たって、「若者政策」と言うのがいいのかなと思いました。

 山形県遊佐町は「少年議会」、「少年町長」と言っているのですが、じつは私は市長になる前、鳳来町の町長時代が1年ほどあって、町長時代に遊佐町の町長さんのお話を聞く機会があり、そのお話がインプットされていました。当時数10万円の予算を出していたと思います。そのことも背景にあって、なんとか若者が政治参加できるように、若者のパワーを社会が組み込めるようにという思いがあった中で、いろいろなことが重なって「若者政策」に行きつきました。

 

 

~ここで、グループ対話に入りました~

 

――全体共有&全体対話――

 グルー対話から生まれた感想や疑問、論点になりそうなことを付箋紙に書いていただいて、全体で共有し、ゲストからコメントいただきました。

 

 

土肥さん)みなさんから集めましたご質問をかいつまみながら、僕から質問させていただきます。場合に応じては会場からご意見をいただければと思います。まず穂積市長への質問が非常に多いのですが、

なぜ1千万円なのか。1千万円は出しすぎではないか

という意見がまずあります。この点についてはいかがでしょうか。

 

穂積さん) みなさん「政治参加」、「住民自治」といったことは、肯定的にとらえていただいている方たちばかりだと思います。NPO活動にしろ、いろいろな住民団体にしろ、行政あるいは政治に参加するという時に、予算が付いていない、事務局は行政が完全に握っているという場合には、どんなに良いことをやろうと言おうと、それは形ばかりに終わるというのが実態だと思うのです。予算というものを使う権限あるいはアクセスする環境が作られているかどうかが実は非常に大きなポイントだと思っています。

 1千万円という額はどうだろうか。いま私どもは市を10の区域に分けて、地域自治区というのをやっています。地域自治区には自治区で決める予算、地域の住民活動を支援する地域活動交付金を地域自治区自身が決める仕組みがあり、総額で1億円とっています。人口や面積で10の地域自治区に配分しながらやりくりしています。

 やはりある程度かたちにしていくためには、一定の予算をとっていくのがどうしても必要だと思って取り組んでいます。どうでしょうか。高校生にとっては、1千万円は非常に大きなお金です。教育委員会と若者がもう一回協議した結果を聞いてみたら、教育委員会の人から「君たちな、1千万円の予算をもらっているけどな、われわれは学校で10万円の予算をとってくるだけで大変なんだぞ」と言われて、逆に言うと、若者たちが自分たちが扱っている1千万円とはどういう意味なんだと考えるきっかけになりますから、プレッシャーにさらした方がよく、いろんな世代との意見調整や利害調整が必要なんだと自覚する仕掛けとしては決して高いことではないと思います。  

 

土肥さん)ありがとうございます。これは両角さんへも共通している質問だと思います。

若者の影響力を発揮できるところは1千万円以外のところであるのか

という質問があります。予算1千万円のなかだけしか若者が市へ意見表明できないのではないかと。例えば新庁舎をつくるなど大きな政策に対して、また他の基幹となっている政策に対して若者が参加をしたり影響力を持ったりというのは、1千万円以外のところで新城市で行われているのか穂積さんに伺ってよろしいでしょうか。

 

穂積さん) 若者議会のほかに中学生議会をつくっています。年に1度ですが、中学校代表者が議場に来ていろいろなことを質問します。それは、もともとは東日本大震災の後にいわゆる節電が出てきて、中学校単位でも「君たちはこの時代に何ができるか考えてくれ」と、「中学生環境会議」と称して始まりました。その後、中学生議会も定例化していきました。そのなかではいろいろな要望が出てきます。道路の問題や街路灯が少ないなども含めて出てきます。ですからチャネルは多様に開いているし、他の市政へ参画するきっかけは多様につくられていると思います。

 いま出た「若者議会以外のところで」ということになると、若者議会というものに関わらない若者層たちの問題、それから若者議会ではどうしても市政に対してあまり批判的なものは出にくいのが実際ですから、いろいろな問題――庁舎で反対運動が起こったり産廃反対運動があったりしますが、そういったもの――への若者のアクセスはどうなのかという議論はいまも続いています。そういう状態だと理解いただきたい。

 

土肥さん) スウェーデンでのユースカウンシルや若者組織に予算がついて活動すること以外に、若者が影響力を与えていくことはあるのか、両角さんにお伺いしたい。

 

両角さん) ある学校では、授業のカリキュラムを自分で決めることをやっているところもあります。どうやって学ぶのか、何の課目を学ぶのか、誰と学ぶのか。自分で学びを評価したり。ただスウェーデンは学校教育が多様なので一概には言えません。

 議会以外の場における若者のためのプロジェクトにちょっとした規模のお金を出すというのがあります。ストックホルム市では、若者政策課はまちづくり課のようなところに入っていて、その文化委員会に入っています。そこではアート活動などで1カ月から2カ月間ぐらいのものに、クイックマネーを出すという制度を取り入れました。予算規模ですと数万円程度ですが。また、単発的な予算で対応しているものもあります。

 学校外では、若者団体やスタディーサークル。スタディーサークルというのは、スウェーデンの伝統で若者運動の流れの中で広がった活動で、勉強会をやるのですが、勉強会の方法それ自体を民主的な方法でやっていくと。みんなで何の勉強をしてどう勉強するか決めていく。また、民主主義的な方法に基づく運営方法についての講座をとった人でないとスタディーサークルのリーダーになれない。それも参加だと思っています。そこの場において発言することが、そこのグループで自分の影響力を高めること、それが自分自身への影響力を高めることになりますし、小さい社会から大きな社会への影響力を高めることになると思います。

 

土肥さん) この質問の意図を私が汲み取ったものとしては、子ども議会や若者議会が大人の手の上で転がされているのではないかということも指摘としてあると受け取っています。例えば、まちのなかで起こっている論争的なテーマに若者や子どもがどのように意見を表明していくのか、影響力を持っていくのかということについて、1千万円の予算の範囲以外のところでの参加についてのご質問かと思いました。スウェーデンだったら政党青年部もあるので、そこでは政治的テーマについてもあるかと思いますが、そうした論争的なテーマに対する意見表明はどうなっているのでしょうか。大人が枠組みをつくって子どもが参加をしていくというのが、従来の日本の子ども参加や若者参加だったと思うのですが、スウェーデンではどうなっているのでしょう。

 

両角さん) そういうところもありますし、そうでないところもあります。若者議会の設置を自治体や国に義務付けるという論争が1990年代にありましたが、結局無しになりました。それは、設置してしまうと、その地域で若者を無理やりでも集めてやっていかなければいけない、それこそ主体性を損なうものになるよね、ということがあったからです。というのは参考になると思います。

 

 

土肥さん) 継続性への視点からの質問が他にありました。例えば、市長が替わってしまうと政策としての継続性が無くなるのではないか。あるいは、スウェーデンのユースカウンシルでも、非公式の団体もあるということでしたが、日本の学生団体だと3年するとつぶれるという話がよくあるのですが、そういう若者主体の組織の継続性について、まず穂積さんから。

 

次の世代への継承 任期1年の若者議会

穂積さん) 「市長が替わったら」という議論は若者政策を始めた当初からありました。当の若者たち自身が若者議会をつくりたい若者政策をやりたいと先述の竹下君たちが頑張っているときに、市の担当職員に「これって、市長が替わったらどうなるんだろう」と聞いたら、「そのリスクはあることはあるが、条例をつくると、それは自治体の法ですから法制度になる」と言われ、「条例にしてください」となりました。そして「若者政策条例」、「若者議会条例」ができました。

 条例は自治体の意思なので、これを廃止しない限りは続くことになります。もちろん市長の政策の重点が変わったり、形はあるけれども今ほど力が入っていないということは起こるかもしれないと思います。それはやむを得ないと思います。どんな政策でも時代の変化のなかで洗礼は受けますし、民意が変われば政策も変わっていきます。そういう意味では、他の政策課題と何ら変わらないと思います。

 継承という意味で、若者議会の任期は1年と決めています。再任を妨げないという規定はあるのですが、今のところ1年で全部変わっていくということを続けています。というのは、一回すごく熱心なグループがいた時にできたことなのですが、それが続くかどうかが若者議会の肝ですから。若者という世代は成長する世代だから、いずれは大人の世代に入っていく。その次の世代に継承されなければ若者議会・若者政策と銘打つ意味自身がないわけですから、継承性をどうするかは、やっている本人たちが最初から意識しているのが若者議会だと思います。それは学校の部活と同じです。「強い3年生がいなくなった後どうなるの? 次の1年・2年を勧誘して来ようよ」となって、それが一つの自律的な継続の力に組み込めるかどうかですから。やり続けていくしかないと思います。

 

国が予算を若者団体に 継続性に担保するスウェーデン

両角さん) 継続性・持続性がスウェーデンの若者団体にはすごくあると思います。先述の全国の若者団体を集約しているSUという団体は1960年代からありますし、生徒会の連合組織も50年以上長く続く団体です。日本は安保闘争などがあって若者団体がつぶされましたが、それがスウェーデンにはなかったわけです。

 それ+αで、若者団体の継続性に担保をつけるため予算をつけようと国レベルで1990年代からしていくとなりました。若者団体を長くやるのは大変です。若者世代はいろいろなところを行き来して流動性が高い世代ですから。僕も日本で若者団体をやってしていましたが、日本だとお金がないし、最近ではミーティングする場もなくなってきました。スウェーデンでいろいろ話を聞きますと、この活動のしやすさの違いは何なんだろうと思います。

 圧倒的な暇がスウェーデンにはあります。若者団体が余暇活動をやっています。大人は成人の生涯学習の一環として余暇活動をしています。仕事や学校の授業が昼間ありますが、その後の時間が圧倒的にある。日本は仕事や学業で忙しい。

 時間政策がヨーロッパで議論されていて、人間らしく生きていくという視点があります。これが日本にはないのかなと最近とくに感じています。これも若者政策に関わることかと思います。

 

土肥さん) 新城市の若者議会を卒業したメンバーが、高校生だけが参加できる場がないということで、東三河ハイスクールミーティングという若者団体を自分たちで立ち上げて、静岡に高校生たちだけで視察に来て交流しました。一方、若者議会はメンバーが1期で入れ替わって卒業したらどうなるのだろうと思っていたのですが、自分たちで活動しているという広がりも出ているのが印象的です。高校生たちから話を聞くと、メンバーの確保が大変だったり、今は盛り上がっていても卒業したらどうなるのだろうという不安もあったりとのことでした。子ども議会や若者議会はどうしても忙しさがまとわりついてくるなと実感しています。

 

 もう二つほど大きな点。

 まず、若者や子どもと関わる時の大人、市の職員さんの役割はどうなっているのか。メンターですとか。これは職員さんに答えていただいたほうがよいでしょうか。

 

白頭さん・新城市企画部まちづくり推進課/若者議会事務局) 職員の役割、大人の役割は日々、自問自答させていただいているところです。若者議会では、委員を卒業するとサポーター、メンターとしてサポートする側に変わりますので、委員をとりまく人口は増えていきます。その中で私が個人的に重視しているところは「大人の本気を見せる」。若者が本気になるのが先か、大人が本気になるのが先かは難しいところがあると思いますが、私が関わる姿としてはこれを一番重視しています。

 

土肥さん) もう一つ、若者がどういうモチベーションで参加しているのかという質問がありました。現場で関わっておられる職員さんいかがでしょう。

 

さん・新城市企画部まちづくり推進課/若者議会事務局) 最初の段階はみんな不安で何をしてよいか分からないところがスタートかと思います。でも同じ意識で入ってきた子たちですから、仲間ができていき、みんなで切磋琢磨していく中で成長していくような感じで、一歩下がって見させていただいているようなところはあります。自分が事務局になった最初の年度は、「この子たちうらやましいな。自分が高校生だったらやってみたいな」とこちらが嫉妬するほどでした。  

 実際に一緒に成長していく部分もあると思います。若手の職員の方も地域の若い子たちと一緒に考えていく中で自分たちも成長することができますし、若い子たちも成長できているのではないかなと感じています。日々勉強させていただいています。

 

土肥さん) 「若者議会だけでいいのか」というような質問がありました。今後のビジョンを含めてお二人から。

穂積さん) 若者議会だけでいいのかとはどういう意味でしょうか。

参加者) 若者の政治参画ということを大きくとらえると、若者に限らず、政治参画や市民参画というのがそもそも基本にあって、その中で若者は一つの年代層にすぎないと思います。今回は若者にフォーカスした話だとは思いますが、他の年代の政治参画や市民参画はうまくいっているのか確認したかったのです。

 

市民自治の土壌づくりから若者議会

穂積さん) ありがとうございます。若者議会ができあがるのに先行して、地域自治区制度をつくってきました。自治基本条例もつくってきて、総合計画の第1目標は市民自治社会の創造を謳っておりまして、いろんなチャンネルを通して市民自治を深めるということで、この間まちづくりをしてきました。そのベースの上で初めて若者議会が花開いたと思っています。それがなかった場合には若者議会を立ち上げることは、たぶんできなかったと思っています。先述のように「若者だけに1千万円なんてどうなのか」や「議会軽視ではないか」という議論が必ず出ますので。若者だけにその課題や負担を集中するような政策であったなら、若者議会は立ち上がることすらできなかったと思っています。それを受け入れる市民自治の気風や土壌をどれだけつくられたかは新城市はまだまだ途上ですが、それと一緒になって進んできたということがあります。その点はご理解いただきたい。

 それから、若者議会以外の政治的争点になったような課題はどうなのかについて。これも若者議会だけがチャネルではなく、例えば「若者議会は市長の言うなりの議会ではないか。市政に対してもっと物を申す若者集団が必要なんだ」と批判をされる場合もあると思います。それもO.K.ではないかと思うのです。そういうのが出てくるのは若者議会というベンチマークをつくったからであって、そこを標的にまたいろいろな議論が起こることが取りも直さず「まちづくり」なのではないかなと思います。

 

年齢での差別を禁止するスウェーデン 立法過程に市民として参画できるかで異なる若者の幸福度

両角さん) スウェーデンには差別禁止法があります。また学校教育基本法のなかで、差別や不当な扱いを禁止する法律があります。そのなかで「以下の点での差別を禁止する」ということをいっています。そこに出てくるものとして「性差、宗教、人種、身体障害」などのほか、「年齢」があり「若者政策」もそこに該当すると思います。

 要は、あらゆる不当な扱いをしないそして平等な扱いをするということがスウェーデンの民主主義の肝になると思います。そのなかで出てきた一つの属性が年齢であって、そのなかの一つが若者であったにすぎないと思います。民主主義という包括的な政策をつくっていく中で起きていることの一つの部分だと思います。スウェーデンはこれ以外の部分での市民参加が進んでいます。例えば、全国の障害者団体がステークホルダーとして集まり、国がある法律をつくったら登録されている関係団体全てから意見を聞いてポジティブな了承を得ないと法律ができないことになっています。これが若者政策でも起きていますし、いろいろな分野で起きています。

 最近チェックした若者幸福度調査、CSISというアメリカ・ワシントンにある研究所が出している世界の若者の幸福度状況を調べるという調査があります。その中で市民参加状況という項目があり、スウェーデンと日本で大きな差があります。その項目の一つに、立法過程における市民の参画があるかというのがあった。こういったことが国レベルで出来ているというのは大きな違いだろうと思います。すべての属性における参画ができる社会にしていくということは忘れないようにしたいと思っています。

 

若者が意見表明する場づくりのためのハンドブック

土肥さん) 今日は、NPO法人わかもののまちの日本ローカルユースカウンシル・プロジェクトの一つとしてアドボカシーカフェを開催させていただいております。

 私たちの大きな問題意識の一つには、行政や大人が枠組みを設置しないと若者が意見表明をする場が無いという日本の現状があります。例えば、静岡の若者が(新城のように)若者議会をいいなと思ってみても、静岡には無いわけです。それはおかしいことだと思いました。子ども議会や若者議会を子どもや若者の自主的な組織として位置付けるのであれば、子どもや若者が自らどうやってつくればよいのかという考え方や方法を、スウェーデンでユースカウンシルをつくっているのを参考にしてハンドブックにしたいと考えました。ヨーロッパに行くと、そういったハンドブックが大量にあって、それを参考にいろいろな方のお力をお借りしてハンドブックをつくっています。

 今年の7月にはリリースフォーラムを開催する予定で、ヨーロッパから実際にユースカウンシルの活動をしている方を招致して、静岡・東京・京都の3地域で開催する予定です。ご参加いただければと思います。クラウドファンディングもしてみなさんのお手元に届けたいと思っていますので支援していただければと思っております。ありがとうございました。  

 

●次回アドボカシーカフェのご案内
障害のある子どもの意見表明を支える――施設に外からの風を

【登壇】尾上浩二さん(DPI/障害者インターナショナル日本会議副議長)

    鳥海直美さん(子ども情報研究センター子どもアドボカシー研究プロジェクト・コーディネータ)

    奥村仁美さん(子ども情報研究センター子どもアドボカシー研究プロジェクト・市民アドボケイト)

【日時】2018年5月15日 13時30分~16時

【会場】文京シビックセンター 5階会議室C

【詳細】こちらから

 

*** 今回の2018年4月6日の企画ご案内状はこちら(ご参考)***

 

 

 

 

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