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委員長のひとりごと(SJFメールマガジン2022年1月26日配信号より)

 

2022年の課題 いきなり年の初めに、考えること

―「主権者」としての市民のあり方をどう育みあうか―

上村英明(SJF運営委員長)

 

 2022年を迎えました。やや遅くなりましたが、「明けましておめでとうございます!」 本年もソーシャル・ジャスティス基金(SJF)をよろしくお願いいたします。

 さて、年頭の挨拶をすると、ややひねくれ者の私は、何がおめでたいのだろう、と考えてしまいます。地球は、ただ太陽の周りを回転しているだけ、元旦は人間の都合で作った、その中の軌道上の点にすぎません。では、気を取り直して人間の文脈で、考えるべきなのでしょう。人間の社会に流れる時間という概念に区切りをつけると考えれば、年明けには重要な役目があり、意味があることに思い至ります。前回の太陽の周りを回った時間のことを反省しながら感謝し、次の一周に何をするかの抱負を立て、前に進むのです。

 この時間の区切りを大切にするという意味では、この1月7日にSJFは、第10回目の「助成発表フォーラム」という重要なイベントを実施することができました。SJFは2011年11月に設立された団体で、その活動の核である助成は翌々年から始まり、今年は10回目に当たります。

 SJFが一番大切にし、努力してきたことは市民社会、民主主義の活性化を目指して、「見逃されがちだが大切な問題」を支援することです。なぜ、こういう支援が必要かというと、現在の日本は自由で、民主的、言論や表現が尊重される社会と思われがちですが、実は日が当たるところは見えても、見逃されがちな、あるいは見ない場所にたくさんの問題がある社会だからです。そこでは、少なからぬ人々が声をあげられず、理不尽な処遇と闘っています。そうした人々と手をつなぐこと、あるいはこれらの人々が市民社会と連帯するための「架け橋」になること、これがSJFの起点だと思います。 

 この第10回の助成公募から、さらに「グローバル化社会における草の根民主主義」という特設テーマも設けました。これは、人権や環境、開発などの分野で日本社会の課題につながるグローバルな活動が広がっており、こうした課題を改めて支援の対象として明確化できればという思いからでした。

(※関連コラム:解題「グローバル化社会における草の根民主主義」:金子匡良)

 

 みなさん、2021年はどんな年でしたでしょうか。あるいは、現在2022年をどのような年にしようと考えられていますか。

 私個人の視点でいえば、2021年は2年目のコロナ禍でもあって、いろいろと社会のあり方を深刻に考える年であり、その反省の上に、2022年は新しい課題の年だと思っています。抽象的な言い方ですみません。

 具体例を挙げれば、ご存知のように、昨年は、コロナ禍の中での反対を押し切って、東京オリンピックが強行され、さまざまな理不尽な対応や失政が明らかになりました。また、ワクチン接種も遅れに遅れました。これまでの医療体制の縮小から、医療崩壊が現実になり、重篤な感染者の自宅待機などの耳を疑う政策がとられた時期もありました。

 こうした状況下、客観的な科学的知見の集約を政治に反映させることが重要であると思われる中、日本学術会議では政府の政策に批判的な会員の任命が拒否されるという異常な事態が続いています。そして、野党による再三の国会開会の要求にも拘わらず、与党は国会を開かず、閣議決定が優先されてきました。その他にも深刻な問題は、少なくとも2020年から継続する形で、たくさん見受けられたのです。

 その点、2021年10月31日に実施された衆議院議員総選挙には期待するものがありました。こうした状況に危惧をもった多くの取り組みも、目を見張るほど自発的に行われました。

 「市民の会」を仲介とした、政治の保守化とグローバル化による経済格差の拡大などに反対する野党の連合が形成されました。また、芸能人たちを中心に「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」という映像がYoutubeにアップされ、「これは広告でも、政府の放送でもなく、僕たちが・・・」で始まる投票への呼びかけ、低い投票率で政治が決定されることに対する懸念は多くの市民に衝撃を与えました。

 投票日に選挙に行けない人たちの期日前投票は史上最高になると予想され、僕自身の投票所での個人感覚でも、これは投票率が上がるかなと予感されました。少なくとも60%半ばになることで、市民の政治的意思が最低ベースで表現されることを期待していました。しかし、投票が終わり、明らかになった選挙結果では、投票率は、戦後ワースト3の55.93%で、この2年間の明らかな失政に関する批判は表面化されず、むしろ肯定されたと考えることもできます。

 

 さまざまな分析が可能にしろ、まず従来通り、市民社会の構築は日本社会では依然として苦難の道だという認識を持たなければなりません。さらに、一歩進めれば、「見逃されがちで大切な問題」に取り組む前に、日本の社会の中では何が「見逃されがちで大切な問題」かそうでないかを判断する規準さえ持たない人びとが多数派ではないかと懸念してしまいました。その点、SJFは、市民社会の拡大に向けた事業を助成すると共に、市民社会の市民社会としてのあり方とは何かを発信し、「主権者」としての市民のあり方を学び合う役割も担っていかなくてはならないのではないかと考えています。

 より具体的にいえば、権力に忖度するのではない、良い意味で社会を変えるための政治教育の構築であり、提案や対話の前にきちんと批判と実行のできる市民社会を築くことが重要になると思います。とくに、この時期「批判」の内容を高める作業が大切だと思います。SJFとそこに関わる助成先の団体を含む多くの市民のみなさんが、こうした問題意識を共有していただければありがたいです。

 改めて、本年もよろしくお願いいたします。     ■

 

 

 

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