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目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

★1.【委員長のひとりごと】(上村英明)
  なぜオリバー・ストーン監督はトランプ大統領を「評価」するようになったのか

 

★2.【SJFニュース】

  ●『障害や病気をもつ家族をケアする子ども・若者たちに希望を』(3月29日)
      井手大喜さん×松崎実穂さん: SJFアドボカシーカフェ第48回ご案内

    ● 報告:『SJF助成発表フォーラム第5回』(1月13日開催)

 

★3.【助成先ニュース】
『対談 被害者家族×加害者家族』(WorldOpenHeart主催、3月25日)ご案内
    ゲスト:片山徒有氏

 

★4.【ソーシャル・ジャスティス雑感】 暮らしの場から政治をつくる(樋口蓉子)

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★1.【委員長のひとりごと】(上村英明)

  なぜオリバー・ストーン監督はトランプ大統領を「評価」するようになったのか

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 2017年1月20日(日本時間21日)、米国ではドナルド・トランプが第45代米国大統領に正式に就任した。

 2016年11月号の本コラムで、「トランプ現象」以降を読み解くには少なくとも2つの評価軸が存在し、その構造へのトータルな理解が不可欠だと、「子ども騙しの単純化」を行った。2つの評価軸とは「社会のグローバル化」と「経済のグローバル化」で、前者は人や情報の移動、国際人権規準の普遍化、地球環境保全活動の共有などを基準とし、他方後者の「経済のグローバル化」は、市場経済の拡大、貿易・金融の自由化、競争原理の強化などを基準とする。それぞれのグローバル化を受け入れるグループと拒否するグループに分ければ、世界はこの21世紀の初頭に2つの軸によって、以下の4つのグループに大別されると説明した。

 社会のグローバル化  経済のグローバル化
 Aグループ:  〇      〇
 Bグループ:  〇      ×
 Cグループ:  ×      〇
 Dグループ:  ×      ×

 そして、ヒラリー・クリントンはAグループ、トランプはDグループ、さらに僕自身やソーシャル・ジャスティス基金は、基本的にBグループに属することになるのではないだろうかとまとめてみた。加えて、今後の社会課題では、複数の少なくともこの2つの軸と4つのグループの「合従連衡」の政治力学が働く可能性があり、その全体の構造をきちんと見据えて、自らの立場をしっかり構築すべきだと提案したつもりだ。

 「子ども騙しの単純化」だが、トランプ演説の英語のように、わかりやすく、役に立つこともある。

 朝日新聞の記事(2017年1月24日)は、トランプ大統領の就任に当たって、著名人の見解を紹介したが、その中でも目を引いたのは、米国政府を批判し続け、沖縄米軍基地の辺野古移設問題などにもエールを送ったオリバー・ストーン監督が、「トランプ大統領もあながち悪くない」「プラスの変化を起こさせるよう応援しよう」と支持論に転換したことだ。すでに、トランプ大統領は、前政権の「医療保険制度改革(オバマケア)」廃止にむけての大統領令に署名(1月20日)した直後でもある。

 なぜか。ベトナム帰還兵であり、1986年の映画「プラトーン」で一躍有名になったオリバー・ストーンにとっての評価軸は、米国は「世界の警察官」にならないというトランプの方針である。これはトランプの経済観と密接に関連したポイントだ。そして、実はロシア、中国、イスラム諸国や途上国でも、この視点からトランプ大統領をましだとする相対的な評価は小さくない。ヒラリーが大統領になっていたら、米国の軍事介入は悪化していただろうと、オリバー・ストーンも述べている。軍事大国であり、介入主義の米国がまずに念頭に置かれている。そして、重要なことは、彼が、そのひとつの軸だけで、あるいはそれを前面に出してトランプ政権を評価していることだ。

 同じ単線的な評価構造の問題を、Bグループに近く、経済のグローバル化に警鐘を鳴らしてきたフランスのトマ・ピケティも懸念している。フランスでは、4月から大統領選に突入するが、フランスのメディアが、急進右派のマリーヌ・ルペンと急進左派のジャンリュック・メランションを同じ「ポピュリスト(大衆迎合主義者)」として切り捨てていることが彼の深い懸念である。(ルモンド2017年1月15日-16日、朝日新聞2017年1月25日要約版)フランスのメディアによれば、2人は、共通して「国や地域同士が激しく競い合う今の体制を疑問視する。その姿勢がグローバリゼーションから取り残された人びとをひきつける」特徴をもつ。このような単線的な評価は、良識派を自認する日本のメディアや市民団体がトランプを「極右」と切り捨てる現象にも共通するのではないだろうか。

 もうひとつ面白い記事に出会った。日本経済新聞(2017年2月5日)の記事は、国際的な経済紙フィナンシャル・タイムズの次のような社説を紹介している。それは、1月27日の米国大統領令による移民入国制限に、米国に拠点を置く多国籍企業が反発する中、問題は多国籍企業がこれまで、現地で労働者の雇用の権利や労働条件を守らず、税金をきちんと納めなかったことだと分析し、「義務を果たしていない企業はトランプ氏の攻撃の格好の標的になる」と警告を発したことだ。この主張は、「経済のグローバル化」という単一の評価軸に、労働者の権利や社会貢献という「社会のグローバル化」というもうひとつの軸を改めて重ね、いわゆる複数の軸でそのあるべき姿を再構築しようとするものだ。さらに、「トランプ現象」をトランプ政権の問題ではなく、自分たちがむしろ問われている問題だとしている点も、オリバー・ストーンとは違って、注目されるべき本質的な視点だろう。

 もちろん、トランプ政権も、そして日本の安倍政権も「極右」の政権であると思う。しかし、その言葉で切り捨ててしまっては、こうした政権の問題、ひいては自分たち自身の問題に立ち向かえないのではなかろうか。なぜ、この時代にこうした政権が誕生してしまったのか、なぜ良識ある市民社会はそれを阻止できなかったのか、真剣に検討する必要がある。「トランプ現象」は、その意味で市民社会再生のための「鏡」にもなりうるのだ。

 

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★2.【SJFニュース】

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●『障害や病気をもつ家族をケアする子ども・若者たちに希望を』★参加者募集★
                      :SJFアドボカシーカフェ第48回
【ゲスト】井手大喜さん(草加市議会議員)
     松﨑実穂さん(国際基督教大学ジェンダー研究センター研究所助手)

【日時】3月29日(水)18時30分から21時(開場18時)
【会場】文京シビックセンター 4階 シルバーホール
【詳細・お申し込み】こちらから

 障害や病気をもつ家族をケアする子どもたち、若者たちの声は聴こえていますか。若いケアラーたちは、過度な責任を背負っている自覚がなかったり、支援制度が分断されていて行政にアクセスしにくかったり、悩みを共有してもらえず「助けて」と言えなかったりと、孤立し見逃されがちです。学び、働く機会、選択が非常に制限され、認められないままの若いケアラーたちのつらさはなかなか理解されません。ケアラーの意思を尊重しながら、家族全体の関係性を調整し、支えあう社会が望まれています。そして、ケアが終わってからのフォローも不可欠です。ケアを担った後、新たに希望を見出し、次の一歩を踏み出せるまで一緒に考えてくれる人がいる。自分が主体となって将来をあきらめずに考えられるような支援がある。そんな社会を私たちはどうつくっていけばよいのでしょうか。ゲストのお話をうかがい対話する場にぜひご参加ください。

 

●報告:『SJF助成発表フォーラム第5回

 2017年1月13日、ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)は、このたび決定した第5回目の助成先3団体(子ども情報研究センター、わかもののまち静岡、メコン・ウォッチ)を迎えた助成発表フォーラムを東京都新宿区にて開催しました。総じて、障害をもつ子どもたち、地域の若者たち、海外開発の現地住民の意見表明権や主体としての参加をどう保障していくか、一人ひとりの意識が問われました。

(上村英明・開会挨拶より)……「市民社会」は大丈夫なのかということを共有しながら、みなさんがそれぞれ自ら関わっている問題に取り組んでいただきたいと、改めて思っています。……「市民社会」が危なくなっているという認識は、それほど簡単なことではありません。何が本当に危ないのか、ということを認識していただくには、20年~30年前のように何か良い人と悪い人がいるという単純な構図を越えたものを理解していただく必要があります。冷戦構造型の思考の枠組み自体の転換が迫られているという点、これはなかなか容易なことではありませんし、そこに現在の「市民社会の危機」があります。その問題に迫りながら、どう考え、動き、「市民社会」の再構築に貢献できるのか。ある意味、今年は試金石の年に当たるのではないかと思っています……

(黒田かをり・閉会挨拶より)……今、「市民社会」のスペース自体に非常に制限がかかってきています。世界でもこの傾向が顕著であり、日本でもそうです。今、社会的不公正を正そうとすることは非常にしにくい環境にあるとひしひしと感じております。
 それだからこそ、ソーシャル・ジャスティス基金はもっと頑張らなければいけないと思っております。この基金自体も、みなさまのご協力とご支援に支えられているということもありますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 また、こういった社会に共感を広めていくということで難しい状況もあろうかなと思いますが、そこはさまざまな活動に取り組みむ方たちと共に知恵を出し合いながら、少しでも良い社会をつくっていければと思います。

【詳細】こちらから

 

 

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★3.【助成先ニュース】『対談 被害者家族×加害者家族』ご案内
    主催:NPO法人WorldOpenHeart(SJF第4回助成先)

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 大切な人が交通事故に巻き込まれたら、また、加害者となってしまったら…。
 被害者、加害者、その家族たちが直面する困難、求められる支援とは…。
 被害者と加害者の和解は可能なのか…。
 ひとつの事故からそれ以上の犠牲者を出さないために―被害者と加害者、それぞれ支援のアプローチを探る。

【ゲスト】片山徒有氏(あひる一会代表・被害者と司法を考える会代表) 1997年当時8歳の息子、隼(しゅん)をひき逃げ事故で亡くす。この事故20日後に一旦、加害者が不起訴処分となった。事件は再捜査を求める24万人の賛同署名を受けて捜査が行われた結果、加害者は起訴され有罪判決を受けた。その後、被害者支援を行う一方、法務省で行っている「被害者の視点を取り入れた教育」で全国の少年院、刑務所で講話や指導を行っている。最近は、立ち直りプログラムに関心を持ち、国内外の少年院や刑務所でのスポーツプログラムの調査研究を行う。

【司会】阿部恭子(WorldOpenHeart理事長=加害者家族支援団体代表)――東北大学大学院法学研究科博士課程前期修了(法学修士)。2008年大学院在学中、任意団体WorldOpenHeartを設立し(2011年法人格取得)日本で初めて犯罪加害者家族を対象とした支援を行う。現在まで、軽微な事件から凶悪犯罪まで全国の700件以上の加害者家族の支援を経験。近年、刑事施設内で受刑者らを対象とした講演活動にも力を入れるとともに、韓国や台湾でも活動を展開。著書『交通事故加害者家族の現状と支援―過失犯の家族へのアプローチ―』(現代人文社、2016)、『加害者家族支援の理論と実践―家族の回復と加害者の更生に向けて―』(編著、現代人文社、2015)。

【日時】3月25日(土)14時から15時30分
【会場】ハロー貸会議室 八重洲ファーストビル3階(東京都中央区日本橋3-4-12)
【参加費】1000円

【申し込み】メール(world.open.heart@gmail.com)またはファックス(022-398-7129)にて、前日までにお申し込みください。
【お問い合わせ先】NPO法人WorldOpenHeart
        〒980-0804 仙台市青葉区大町2-3-12大町マンション902号室
        ホームページ http://www.worldopenheart.com/

 

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★4.【ソーシャル・ジャスティス雑感】暮らしの場から政治をつくる(樋口蓉子)

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 私は、今の場所にずーとこの40数年暮らしている。子育てをし、親の面倒を見、地域活動をし、いつの間にか後期高齢者と言われる年齢に近づいてきている。そして改めて、自分はこのまちでこの先も暮らし続け、年老いていくのだろうと先が見えてきている。

 私はこの10年余り、仲間と一緒に地域福祉関係のNPO法人を立ち上げ、誰もがその人らしく安心して住み続けられるまちにしていこうと、活動をしてきている。その活動の一環として2年ほど前から「地域の居場所づくり」の活動をしている。毎週木曜日の午後、主には高齢者が、そして時には公園や幼稚園帰りの若いお母さんや子どもたちもやってくる。思い思いにお茶とお菓子をいただきながらおしゃべりをしたり、時には生の演奏を聴いたり、地域で活動している人の話を聞いたり。はじめは知らなかった人たちがここで知り合いになり、逆に若い時代に一緒に子育てをした人が歳を重ねて再び巡り逢ったり。最近は地域包括支援センターからの紹介やグループホームからの参加者も増えてきている。この方たちは認知症を抱えながら、でも楽しそうにボランティアと話したり、お隣の人とも和やかにお話しされている。

 そんな午後の穏やかなひとときが生まれている。そして、そんな地域の活動が今、あちらこちらで生まれている。今話題の「子ども食堂」も・・・。

 なんでこのようなことを改めて書いているかと言えば――。

 最近、朝日新聞の論壇時評に書かれている小熊英二氏の文章を読み、共感を覚えたからである。「社会の分断 他者思う大人(たいじん)はどこに」と題して、「人が他者を思い、結びつくこと。そこからしか、政治と民主主義の再生も始まらない」と結んでいる。そこでは、湯浅誠氏と阿部彩氏との対談「子どもの貧困問題のゆくえ」(世界2月号)を紹介しながら、「彼らが懸念するのは、政治の危機につながる社会の分断が日本でも生じつつあることだ。だがだからこそ彼等は、地域活動を通じて『状況も意見も違う人たちが同じ問題について考えられるような土台』を築く意義を強調する。そうした土台がないまま、政治のリーダーシップを期待しても、権威主義しか生み出さないからだ」と。

 政治に異議申し立てをするには、様々な手段があるだろう。長寿社会となり、第2、第3の人生を生きるようになって、その時「暮らす」「地域に暮らす」ということがより身近なものになってくる。暮らしの場から、地域から政治に対峙する。その試みは小さくとも、みんなが主体的に問題に係わることが、政治をつくる、民主主義を再生させる一歩になるのではないか。そんな思いを、今、新たにしている。 ■

 

 

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