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目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 

1.【委員長のひとりごと】新たな政治キャンペーンか、それとも新たな政治制度か

                                              (上村英明)

2.SJFニュース

● 報告:『自然と共生する農業――ネオニコチノイド系農薬から考える4/2

 

● 参加者募集:『生活保護、バッシングに抗して活用策を考える』(5/13

        尾藤廣喜さん×寺中誠さん   SJFアドボカシーカフェ第36回)

 

参加者募集:『原発事故後の言葉と民主主義――リテラシー・ワークショップVol.3                           
   影浦峡さん・はっぴーあいらんど☆ネットワーク・市民科学者国際会議      
                (6/12SJFアドボカシーカフェ第37回)

                                   

3.【ソーシャル・ジャスティス雑感】 トルコ訪問:原発と有機農業(黒田かをり)

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1.【委員長のひとりごと】新たな政治キャンペーンか、それとも新たな政治制度か

(上村英明)

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 桜の花も散り、若葉が芽吹き始めたが、寒さもなかなかしぶとく頑張っている。そんな時期、友人からFacebook上のイベントへのお誘いが送られてきた。「投票に行くよ。ということを伝えるだけの小さなムーブメント」である。早速、賛同し、同じFacebookで拡散したが、その趣旨は、「投票に行くよ」、「期日前投票に行ってきたよ」と身近な人が伝えることで、投票率を上げることが目的らしい。重要なことだし、このキャンペーンが対象としているのは、前半戦の投票がこの412日、後半戦のそれが426日に設定された2015年統一地方選挙である。

 問題とされる投票率は、国政選挙、とくに衆議院議員総選挙を例に取れば、2012年には59.32%、2014年は52.66%とワースト記録を更新中だ。これに加えて、今回の統一地方選挙では「無投票率」が問題となっている。総定数に占める無投票当選者の割合であるこの「無投票率」は、今回21.9%で、前回2011年の17.6%から約4ポイント増加し、これまた過去最悪を記録した(これまでのワースト記録は、2001年統一地方選挙の21.8%)。自治体別の「無投票率」記録としては、香川県の65.9%が断トツで、続いて山形県の45.5%、宮崎県の43.6%である。因みに、2011年選挙に比べ、総定数(2284議席)は46議席減少しており、また今回の選挙での「無投票当選者」の70%以上が自民党の現職議員とも報道されている。「投票率」が低下する中での当選の可能性は、組織票や現職の強みにますます依存し、これは「無投票率」にも大きく影響していることかもしれない。

 日本の政治に問題がないのであれば、この結果を仕方がないかと傍観することも可能だろう。しかし、重要課題がひしめく中での、「投票率」の低下や「無投票率」の上昇は、この重要な時期の現保守政権への実質的な支持となりうる。しかも、正当な議論もなくである。日本社会の民主主義のあり方は、現保守政権の問題とは別に深刻に考えられる必要がある。

 「投票率」の問題で言えば、この「投票に行くよ。ということを伝えるだけの小さなムーブメント」だけでなく、いくつかの試みも見られるようになった。岐阜県関市では、2013年の参議院議員通常選挙から「選挙パスポート」が導入された。投票に行けば、「選挙パスポート」にスタンプを押してもらい、スタンプが貯まると商店街での割引を受けることができる。日本的な利益誘導型だが、発想は悪くない。しかし、こうしたキャンペーン型の対応だけで、この問題は解決するのだろうか。本欄の20148月号では、滞在先オーストラリアの「投票の義務制」を紹介した。「投票」に行くことが利益になるのではなく、「投票」に行かないこと(投票所に出頭しないこと)が市民の義務に反するとして「罰金」20豪ドルになるという制度で、1920年代の導入以来、この国の「投票率」は90%以上を維持している。日本円でたかだか2000円程度の罰金だが、それでも民主主義の基盤であることは間違いない。「I am not ABE」が一方で注目される日本社会だが、もう一度民主主義の本質が深く議論されることに期待したい。

 

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2.SJFニュース

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●報告:『自然と共生する農業――ネオニコチノイド系農薬から考える

           (42日開催・SJFアドボカシーカフェ第35回)

【登 壇】 菅野 正寿さん(福島県有機農業ネットワーク代表

    岡田 幹治さん(ジャーナリスト/元朝日新聞社論説委員)

    黒田 かをりさん(一般財団法人CSOネットワーク事務局長・理事)

――大規模化と低コスト化のために農薬と機械に頼る農業が進められているなか、「命を育む食」、自然環境全体を考えた農業を持続させるためには何が必要なのか、農業現場の声と客観的な情報をもとに、参加者とともに考え対話しました。

 福島第一原発から16キロの避難地域で有機農家が栽培している試験田の稲穂の上にトンボが飛んだことが報告され、放射性セシウムを吸着固定化し農産物への移行を低減したのは、多様な微生物の豊かな有機的土壌であると、日本の土の力が強調されました。生物への神経毒が危惧されているネオニコチノイド系農薬の残留基準を大幅緩和する案が意見公募を経て最終決定の予定となっています。農薬を使わざるを得ない農家の事情を踏まえながらも、農薬は天敵も殺し抵抗性をもつ害虫を発生させるとの指摘がありました。豊かな土を育み、天敵農法や病害菌を食べる菌の研究等を進めることで、農薬に頼らない農業、環境保全型農業を進めていく道筋があることへの理解が進みました。

【詳細】 http://socialjustice.jp/p/20150402report/

 

●参加者募集:『生活保護、バッシングに抗して活用策を考える

                (SJFアドボカシーカフェ第36回)

【登壇】 尾藤廣喜さん弁護士日弁連貧困問題対策本部副本部長

         /生活保護問題対策全国会議代表幹事/元厚生省

    寺中誠さん(東京経済大学他講師

【日時】 513日(水)18:30-21:00(受付開始1800

【会場】 文京シビックセンター 4階 シルバーホール

――生活保護バッシングの背景には、社会的弱者だと居直って特権にあぐらをかいているという、制度に対する誤解に基づいた不公平感が根強くあります。ヘイトスピーチに同調する心情に通じるものがあるようです。近年、こうした生活保護への偏見をむしろあおる言動が高まるなかで、生活保護基準が引き下げられるとともに、受給申請を思いとどまる人も少なくありません。日本は、先進国といわれる国々のなかでも、受給する条件・資格があるにもかかわらず生活保護を受けていない人の割合が極めて高い国です。本来、私たちが社会の中で生活し生きていくことを基本的な権利として保障する生活保護制度は、セーフティネットとしての社会保障の根幹をなすものです。今回は、この生活保護制度への理解を高め、活用しやすくするためにどのような取り組みが必要であるか、ゲストやコメンテーターからの実体をふまえた問題提起をもとに、皆さんと一緒に考え対話できればと思います。

【詳細・申込】 http://socialjustice.jp/p/20150513/

 

●参加者募集:『原発事故後の言葉と民主主義――リテラシー・ワークショップVol.3

                   ~情報の背後にある意味に気づく~

                       (SJFアドボカシーカフェ第37回)

【講師・モデレーター】 影浦峡さん(東京大学大学院教育学研究科教授)

【共催】 はっぴーあいらんど☆ネットワーク、市民科学者国際会議

【日時】 612日(金)18:00-21:00(受付開始1745)※開始時刻にご注意ください。

【会場】 新宿区・若松地域センター 2階 第1集会室

――風評被害、風評払拭、放射能「安全」、復興目途、因果関係認めず、などの言葉が蔓延しています。これらは、本当に必要な情報を伝えているでしょうか。原発事故直後から、そして時が経つにつれ、伝えられる言葉の崩壊はますます深刻化しています。専門知識がないから理解できそうにないと情報の意味を考えず、一部の専門家のみに決定と責任をあずける姿勢がこの現状を後押ししています。知識の有無にかかわらず、言葉をシンプルにひも解くことで、背後にある情報の意味に気づき、自ら判断し、行動の選択につなげていく、リテラシー・ワークショップを開催します。生まれながらにして誰もが持つ、言葉と認識、またその権利を見つめ直します。講師・モデレーターの影浦峡さんとともに、ひとりひとりが情報に適切に反応し、開かれた社会づくりにかかわっていくことを始めませんか?

【詳細・申込】 http://socialjustice.jp/p/20150612/

 

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3.【ソーシャル・ジャスティス雑感】 トルコ訪問:原発と有機農業(黒田かをり)

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 昨年秋に、「地域の力フォーラム」()でトルコを訪れた。一緒に行ったメンバーは、福島県有機農業ネットワークの菅野正寿(すげのせいじゅ)さんと大河原海(おおかわらかい)さん、福島大学の石井秀樹さん。また現地でIFOAMジャパン関係者、「環境・持続社会」研究センターの古沢広祐さんや、元アジア学院の田坂興亜さんらと合流した。前半、イスタンブールで開催された国際有機農業運動連盟(IFOAM)の世界大会に参加した。オープニングでは約900名の前に菅野さんが立ち、東日本大震災と原発事故の現状とそこからの教訓をアピールするとともに「原発と有機農業は共存できない」ことと「再生可能エネルギーへの転換」を訴えた。

 会場では、トルコで反原発運動をしている女性活動家のプナールさんにお会いした。現在、トルコは日本と原子力協定を結び、日本等の技術で原発2基目の計画が進められている。地震国でもあり、また豊かな農業を育むトルコにとって、日本の経験とそこからの教訓は非常に意味があるということであった。なお、プナールさんは、今年3月中旬に来日し、仙台で開催された国連世界防災会議の関連イベントである「福島世界会議」に出席し、トルコの現状と反原発を訴えた。

 後半は、エーゲ海近くのイズミールというところを訪問した。エーゲ大学で福島のフォーラムを行い、その後、車で移動し、13の家族が共同経営をする農業法人を訪問した。そこは、トムブルさんという人の農場で、5000ヘクタールという広い敷地で有機栽培や堆肥づくり、畜産などを行っている。搾乳の牛の糞尿をバイオマスプラントにて液肥と堆肥化する装置が作られ、ざくろの特有成分を生かすために古くから伝えられてきた伝統的な足踏みの技法も取り入れジュースなどの加工を行っていた。一方で、ITを駆使した最新型の衛生管理施設が設けられており、守るべき良いものと最新の技術が同居していた。共同型の農場経営では、各家族に給料が支払われるほか福利厚生も充実しているとのことであった。また敷地内には、博物館があり、トルコでの古くからのオリーブ栽培の歴史などがわかりやすく展示されていた。大規模ながら、持続可能な農業の循環のしくみをしっかり組み入れている農場に一同感嘆した。その晩は、農場内にあるオーガニックレストランで有機野菜をはじめ美味しい食事とワインを堪能した。

 国境を越えて、草の根で連帯・連携していくことが重要だとあらためて思った。

所属するCSOネットワークが事務局を務める緩やかなフォーラム。ジャーナリスト、有機農業者、研究者などが集まり、地域主体の豊かな取り組みをしている事例を調査し、国内外に発信するほか、地域の力を測る診断ツールを作成している。

 

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今月号の執筆者プロフィール

●上村 英明 [市民外交センター代表/SJF運営委員長; 1982年にNGO「市民外交センター」を設立、アイヌ民族や琉球・沖縄人の人権問題を中心に、アジアの先住民族問題に取り組む。また、国連の人権会議への参加をはじめ、国連改革や生物多様性条約COP10などへの市民社会としての貢献等、広い視野から人権と平和の活動、市民の国際交流を実践している。恵泉女学園大学教授]

 

●黒田かをり [一般財団法人CSOネットワーク事務局長・理事;  社会的責任やサステナビリティ推進、「地域の力フォーラム」、ポスト20152015年以降の国際的な開発目標)などをテーマに活動を行う。ISO26000(社会的責任の国際規格)の策定にNGOエキスパートとして参画。共著『社会的責任の時代企業・市民社会・国連のシナジー』(東新堂)『放射能に克つ農の営み』(コモンズ)『東日本大震災とNPO・ボランティア』(ミネルヴァ書房)他。]

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