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1.【巻頭】~委員長のひとりごと~ (上村英明)

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 この4月から半年、オーストラリアのメルボルンで研究休暇を楽しむことになったが、この1ヶ月は生活環境を整えることが最優先で、なかなか情報に接し、ものを考える余裕に乏しかった。そんな中、425日はオーストラリアの休日ANZAC Dayであった。ANZACとはオーストラリアと隣国ニュージーランド連合軍のことで、99年前の1915425日に、同軍は連合国軍の一員として同盟国軍の一角を占めるトルコ(オスマン帝国)のガリポリに上陸した(欧州では海峡名から「ダーダネルスの戦い」と呼ばれる)。来年の100周年を目前に、この日は午前6時から市内の戦争記念館で追悼式が挙行され、午前9時からのパレードもあって、メルボルン市内はいつになくオーストラリア陸海空軍の男女の現役兵士や退役軍人、予備士官などでいっぱいであった。

 「ガリポリの戦い」は日本人にはなじみが薄いが、第一次世界大戦の激戦のひとつで、数少ない連合軍の敗北に終わった。近代戦史上最初といわれるこの大規模上陸作戦を計画したのは当時の海軍大臣ウィンストン・チャーチル、またANZAC軍の上陸地点でのオスマン帝国軍の司令官はムスタファ・ケマル・アタチュルクで、敗戦の責任を取ってチャーチルはその後政界をしばらく退き、連合軍の上陸を退けたケマル・アタチュルクは「英雄」としてトルコの近代化を進め、その後トルコ共和国の初代大統領になった。また、第一次世界大戦全体で、オーストラリア軍は約40万人が派兵され、戦死者は62000人を数え、連合軍の中でも高い比率の犠牲者を記録した。ちなみに、このANZAC軍の欧州派遣の護衛任務のため、日英同盟のもと、日本海軍の軍艦がシドニーに派遣されてもいる。

 この記念日は、ANZACの兵士が「母国・英国」のために勇敢に戦ったことに対する誇りとオーストラリア・ニュージーランドの国際的な地位の高揚を思い出す日でもある。1901年に「オーストラリア連邦」として、このメルボルンで独立を宣言したこの国は、第一次世界大戦への参加を契機に、国際連盟の原加盟国になった。

 しかし、オーストラリアではこのANZACの「神話」に挑戦する試みも盛んだ。メルボルンの市内でも、英国が植民地軍であるANZACを最も危険な戦線に綿密な計画で配置したこと、オーストラリアがその後帝国主義国家の仲間として第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争などに加担することになったことを考える講演会や集会も少なくない。ちなみに、多くの難民を受け入れ、中国やベトナム、インド系の住民などが闊歩するオーストラリア社会は、ANZACの「神話」に対する間接的な挑戦でもある。

 このゴールデン・ウィークは、日本でも大日本帝国の「神話」にまつわる催しが多かったと聞いた。議論するのは結構である。しかし、「戦争のできる国家」としての日本と同時に、「帝国主義の国家」としての日本にも改めて光を当ててほしい。

 

目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 

1.【巻頭】 ~委員長のひとりごと~ (上村 英明)

 

2.SJFニュース/ご案内

・『ソーシャルジャスティス・ダイアログ2014 SJFフォーラム(5/27

・『子どもの貧困―保育と当事者の視点からSJFアドボカシーカフェ(6/15

  

3.SJF助成先より近況レポート】=「多様な学び保障法」を実現する会(中村国生)

 『子どもの学ぶ権利―目からうろこのフリースクール議連、再び足がかりが見えてきた』

 

4.SJFニュース/ご報告

  ・『27年目のチェルノブイリから考える、日本の子どものいまと未来

                          SJFアドボカシーカフェ(4/9

  ・『トルコへの原発輸出から、日本の原発政策を考える

                          SJFアドボカシーカフェ(4/18

                                       

4.【コラム:ソーシャル・ジャスティス雑感】 (辻 利夫)

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2.SJFニュース/ご案内

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SJFアドボカシーカフェ参加者の声~

「様々な立場の方から様々なご意見をお聴きすることができ、大変有意義な時間でした。」(4/18『トルコへの原発輸出から、日本の原発政策を考える』)

「感じ考え対話しアドボカシーにつなげるためのキソ知識を今日はたくさんいただけたように思います。寺中さんも塩原さんもお話は私には難しいものでしたが、ひきこまれました。頭の中がぐるぐるまだいろんな言葉が飛んでいます。どこに着地するのかしら?飛んで逃げちゃうかしら?ハラハラ…。」(2/28『国際人権条約と日本の人権施策』)

「ただ一方的に話を聞くだけでなく、他の参加者と話ができたのはとても良かった。言葉になりにくいことを互いに形にして聞き出していく経験はもっと広めたらいいと思った。学校でも。」(1/21『ヘイトスピーチと人種差別』)

「大変良い内容でした。慰安婦のこともよくわかり、差別のことなど深く考えるきっかけをつかめました。心を打つ言葉がいくつもありました。」(‘13/12/17『「慰安婦」問題って、なんでこんなに話題になってるの?』)

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● 『ソーシャルジャスティス・ダイアログ2014』:SJFフォーラム

                   ★参加者募集中・無料★ 

【日 時】527日(火)18:00-20:30(受付開始1745

【報告団体】「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク

         NPO法人OurPlanet-TV

      公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本

         NPO法人「環境・持続社会」研究センター(JACSES) 

      「多様な学び保障法」を実現する会 

【会 場】認定NPO法人まちぽっと会議室(新宿・ASKビル4階)

SJFの助成先とともに対話交流する会を開催いたします。

 交流会は2部構成で、まずSJF助成先団体(上記)のアドボカシー(政策・社会提言)活動現場から報告をうけ、みなさまの率直なご意見をいただきながら課題を共有し活動の発展につなげる場にしていきたいと思います。

 つづいて、『次世代=子ども・若者の人権にかかる様々な課題を解決していくために、アドボカシーしづらい状況を変えていく共同作戦は』という共通テーマについて、報告団体から活動に根ざした課題や問題の提起をうけ、対話を展開します。

 さまざまな課題をかかえるSJFや助成先のアドボカシー活動へのご要望やご提言を含めて意見を交わしていただき、活動の連携が広がるような芽吹きをともに見いだせれば幸甚です。どうぞご参加ください。

★ご案内サイト http://socialjustice.jp/p/20140527/

★ご参加登録サイト https://socialjustice.jp/20140527.html

 

●『子どもの貧困―保育と当事者の視点から』:SJFアドボカシーカフェ第28

                    ★参加者募集・開始しました★ 

【日 時】615日(日)13:00-15:30(受付開始1230

【ゲスト】平松知子さん(名古屋・けやきの木保育園園長)

     山野良一さん(「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク世話人)

     岩井佑樹さん(大学生)

 【会 場】見樹院(東京都文京区)

いま日本で、貧困が子どもの育ちや学びを阻んでいます。その解決のための法律として、「子どもの貧困対策法」が20136月に制定され、20141月に施行されました。この施策の「大綱」は、7月にも政府によりまとめられる予定です。実情によりそった施策となるよう、貧困や低所得の状況にある子どもや保護者を支えてきた市民の経験と知恵を生かしていく活動が、「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークにより進められています。

 子どもの貧困は多岐にわたる問題ですが、欧米では幼少期のサポートが貧困対策として注目されています。また、貧困対策を検討するにあたっては当事者の声を反映させることが大切です。そこで今回、保育の現場から、そして当事者である若者の視点から、貧困の現状やその解決に向けた実践をふまえた問題提起をうけ、学びや育ちの機会を奪われている子どもにとって実効性のある施策とはどのようなものなのか、みなさまと考え対話できればと思います。

★ご案内サイト http://socialjustice.jp/p/20140615/

★ご参加登録サイト https://socialjustice.jp/20140615.html

 

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3.SJF助成先より近況レポート】=「多様な学び保障法」を実現する会 (中村 国生)

『子どもの学ぶ権利―目からうろこのフリースクール議連、再び足がかりが見えてきた』

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子どもの多様な学びを実現するための立法をめざす活動』は、SJF2012年度助成先事業の1つです。20143月末で助成期間は終了しましたが、その後の近況をリポートくださいました。

~・~・~・~

 多様な学び保障法とは、学校教育だけでなく、フリースクールをはじめ様々な学びの場を選択できるような制度整備をしようというものだ。私が参画している東京シューレという子どもの居場所・フリースクールは、何と、開設から30年目を迎える。不登校の社会問題化とともに歩んできた歴史だが、どれほど多くの子どもたちが憲法26条の“教育を受ける権利を実質的に満たされてこなかったことか。

 現行制度では、“教育を受ける権利が国または地方公共団体が設置あるいは認可する学校に限定されている。権利と言いながら、極めて画一的で規制された学校でしか、権利の行使が認められない。一方で、いじめをはじめ、どんなに辛いことや身の危険があっても、その学校から降りることができない。権利行使しないことも許されないのだ。まったく、おかしな話である。

 子どもの学ぶ権利。すなわち「学習権」という基本的人権がはっきりしていないのだ。この点でいえば、現憲法は“古いと言えば古い。

 実現する会が始動しSJFよりご支援をいただき始めたときは、前政権時代であった。当時、子どもの権利や学習権に関心の高い国会議員が多かった。私たちが目指す立法も、立法のための超党派議連を結成する準備が進められており、意外と近いうちに成立するのではないか、と淡い期待感があった。

 現政権になって、教育委員会改革、道徳の教科化など、国家中心的な観点、上からの改革の勢いに攻め込まれている感覚を覚える。そこに、子どもの権利や学習権といった、人間一人ひとりへの眼差しは感じられない。結果、私たちのロビー活動も、どこを足がかりにしてよいか迷い、様子をうかがう時間が長かった。その時間で、多様な学びの場の実践研究や交流を進められたことは有意義であったが。

 いま、ようやく、足がかりが再び見え始めている。フリースクール議連が5月末~6月初めに結成される予定だ。ダイレクトに立法のための議連、とは到底むずかしい情勢の中で、フリースクール議連は期待できる光だ。実は、2008年に「フリースクール環境整備推進議連」が小宮山洋子前衆議院議員(民主・元厚労大臣)と馳浩衆議院議員(自民)のタッグで設立され、高校生の不登校生へのフリースクール出席認定など一定の成果を得たものの衰退、 死に体のまま昨年解散となっていた。今回はその小宮山さんの妹分と自身でおっしゃる林久美子参議院議員と馳議員が組んでの再スタートだ。間もなくである。

 ねじれ国会でなく与党が圧倒的に強い情勢において、超党派の議連は成果を出せるのだという。なるほど、と目からうろこ。これからに期待している。

 

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4.SJFニュース/ご報告

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●ご報告: SJFアドボカシーカフェ第26回 (201449日開催) 

27年目のチェルノブイリから考える、日本の子どものいまと未来

【ゲスト】根本崇さん(千葉県・野田市長

     白石草さん(NPO法人OurPlanetTV代表

福島原発事故から3年を経て、原発から20キロ圏の旧警戒区域への帰還が始まった矢先の開催となりました。

 子どもたちが放射線を低線量であっても長期間被曝(ひばく)せざるをえない環境で育つことへの不安に私たちはどのように向き合っていくのか。昨年11月にウクライナの学校や医療機関そして家庭を訪れ、子どもたちの健康状態を取材した白石草氏は、ドキュメンタリーを作成し社会対話の糸口とする活動をしています。今回、白石氏は、子どもの低線量被曝リスクへの日本とウクライナの考え方や支援体制の違いを提示し、日本でよりいっそう子どもの心身の健全性への支援が必要であることを強調しました。

 これに対し、「子ども・被災者支援法」がより住民の納得ができる内容となるよう要望書を国に提出した野田市長の根本崇氏からは、被曝被害の有無について議論が収束しないのは、この支援法において支援対象地域を定める「一定基準」が不明瞭であるのが一因だとの見方が示されました。そして、「不安な人がいる」という本来の立法趣旨に立ち返り、もういちど国会で議論することの重要性が強調されました。

★詳細はWebサイト(http://socialjustice.jp/p/20140409report/ )をご覧ください。

 

●ご報告: SJFアドボカシーカフェ第27回 (2014418日開催) 

トルコへの原発輸出から、日本の原発政策を考える

【ゲスト】鈴木真奈美さん(フリーランス・ジャーナリスト

     田辺有輝さん(「環境・持続社会」研究センター(JACSES)理事)

―折しもトルコとの原子力協定が参議院で可決された日と重なりましたが、ゲストの田辺有輝氏からは、原発輸出が実行されるまでにはまだ日本政府が関与するプロセスとして事前調査、融資・貿易保険、ODAによる支援等があり、それらの問題点を社会に提起していきたいと表明されました。

 これに対して、ジャーナリストの鈴木真奈美氏からは、他国に輸出することの意味について透徹した視点から問題提起され、輸出という形で核エネルギーが世界に拡散していくという側面への注目が喚起されました。

★詳細はWebサイト(http://socialjustice.jp/p/20140418report/ )をご覧ください。

 

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5.【コラム:ソーシャル・ジャスティス雑感】  (辻 利夫)

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 友人の装丁家が、一番好きな書店という神田神保町の東京堂書店を、所用の帰りにのぞいてみた。同店のホームページにある「120年余の伝統を遡ってタイムスリップしたようなブリティッシュ・ダークグリーンのファサードをくぐり、“クラシック・モダン”コンセプトの落ち着いた店内」に入ると、夕暮れ時ということもあって、時間が止まったような居心地のよさを覚える。新刊や話題の本のコーナーには、よくあるハウツーものは少なく、今やどこの書店にも平積みで陳列されている扇動的な嫌韓・嫌中の本の類がないことに、ほっとしたりする。代わりに置かれていたのが関東大震災直後の民衆による在日朝鮮人への暴行・殺害についての記録などの書籍ということに、書店の見識がうかがえる。

 「暴徒化した朝鮮人が井戸水に毒を入れた」「放火、略奪している」といった流言をもとに、多数の朝鮮人が各地で殺害された、90年前の関東大震災時の事実も忘れられようとしている一方で、いわゆる嫌韓派からは、流言でなく当時の新聞が報じた事実だったとして、殺害は正当防衛だったとする主張が声高に叫ばれている。ヘイトスピーチに同調する感情が潜在的に広がるなかで、こうした関東大震災時の誤ったメッセージが浸透すると、首都圏が巨大地震に襲われた時にどのような事態が起こるのか―。東京堂書店の担当者はそんなことも見越して、書籍を陳列したのかもしれないと思った。

 

 

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今月号執筆者のプロフィール

  • 村 英明  (SJF運営委員長、恵泉女学園大学教授、市民外交センター代表)
  • 中村 国生 (「多様な学び保障法」を実現する会{旧「(仮称)オルタナティブ教育法」を実現する会}事務局長。同会の共同代表は、奥地圭子・汐見稔幸・喜多明人。)
  • 辻 利夫 (SJF運営委員、認定NPO法人まちぽっと事務局長)

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