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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)連携プロジェクト助成決定概要

★総合報告書はこちらから

SJFは2021年12月に下記の4件の連携プロジェクトへの助成を決定し、22年12月までそれら助成事業が行われました。

助成募集趣旨

 SJFの「Social Justiceを求める市民活動・連携促進プロジェクト」(以下「本プロジェクト」、20年4月~23年3月、概要は末尾参照)の一環。公正な社会を希求し、市民活動が従来の発想の枠にとらわれずに連携してみようとする試行錯誤を応援します。助成対象はSJFから助成を受けた経験のある団体(以下「SJF助成先」)を代表団体とし、他の市民活動と連携する形での事業であり、SJF助成先へのフォローアップ助成という意義もあります。

助成決定額:各案件50万円、総額200万円

助成期間: 2022年1月から6か月間または1年間

 

刑務所所在地のFM局で受刑者の社会復帰をサポートするラジオ番組を放送する

(代表団体)NPO法人監獄人権センター
(連携団体)一般社団法人東京府中FM(ラジオフチューズ)

【事業概要】 ※助成期間6カ月間  

 元受刑者や受刑者の家族・友人など、公共の場で意見表明する機会が乏しい人びとが、自らの問題とどのように向き合い、克服しようとしているのか、どのような支援を必要としているのか等、率直な思いを放送し、市民社会との接点や支援のあり方を提示する。その放送局、ラジオフチューズ(府中市)は小学生・酒店店主・銀行員・主婦など市民が自分のラジオ番組を持ち、公共電波で放送を継続するノウハウを蓄積しており、受刑者の声の放送に対して感想や意見を発信して議論することが可能だ。この双方向性は、聴取者も放送に参加するパブリックアクセスの権利保障の基盤となる。
 また、府中市と防災協定を結んでいる府中刑務所は、災害発生時に避難所として市民が活用できる取り組みを行っており、この放送では防災情報や災害時の刑務所の役割等も市民に伝える。
 この放送はその地域だけでなくインターネット経由で全国から聴取可能である。
 放送に対して寄せられた感想や意見を集約、分析し、問題点の改善に役立てるとともに、とりまとめて国会の法務委員会等や法務省、各国大使館等に対して政策提言を行う。
 受刑者が出所後、就職や住居を確保し、地域コミュニティへ参加しようとする際に受ける差別を解消し、再犯防止推進に市民が参画するきっかけをつくる。

【助成決定概要】

・独創的な構想であり、この連携によって新たなよいモデルが生まれ、他の問題(入管問題など)への取り組みにも波及できる可能性がある。

・事業計画や予算計画の詳細さから実現性の高さがうかがえる。

・ラジオ聴取者の意識の高さを活かした連携プロジェクトだ。受刑当事者の声とともに、地域住民の声も生かす双方向性は、放送・電波の公共性を具現する新たなモデルとなりえる。

・刑務所のあるまちの人たちが受刑者、当事者の声に触れて起こる一人ひとりの中の変容から、受刑者、刑務所をめぐる問題に関心が高まり、さらに背景にある社会課題などを考え取り組む契機となる。

・この府中刑務所は日本最大の刑務所であり、再犯者・外国人受刑者・精神障害者・身体疾患または障害のある者などが収容されており、その地域でモデルをつくる意義は大きい。

活動報告はこちらから

 

 

子ども・若者の切れ目ない連続的な参画の仕組みの構築
  ―権利に基づいたこども庁、こども基本法を通して―

(代表団体)NPO法人わかもののまち
(連携団体)認定NPO法人国際子ども権利センター(C-Rights)

【事業概要】 ※助成期間1年間

 子どもの意見表明権は日本が1994年に批准した子どもの権利条約に定められているにも関わらず、子どもを権利の主体ではなく保護の対象ととらえることが未だ多く残っている。また、子どもから若者へと切れ目なく権利保障をしていく政策の構築が求められている。そうした中で、子ども庁、子ども基本法の動きが活発化しており、子どもの権利に基づく実効性を伴う政策提案、子ども・若者支援団体のネットワーク構築、世論の喚起が重要となっている。
 「世界こどもの日」(11月2日)に集約する形で、連続シンポジウムを企画し、議論を深めていく。この内容を報告書にまとめ、子ども庁と子ども基本法へのアドボカシー活動につなげるとともに、全国の地方自治体の実践者や市民団体などとシェアし全国的な議論へと啓発を行う。若者支援実績のある団体と子ども支援実績のある団体が両者のネットワークを共有し、これらシンポジウムには、地方自治体職員や政治家、まちづくりや子ども支援を実践する市民、子どもの権利保障の研究者など幅広い層に参画を促す。

【助成決定概要】

・若者には潜在力があり、その力を発揮するきっかけに本事業がなり、その若者と子どもが関わるなかで社会に自分の意見を生かすロールモデルと子どもが出会える意味がある。

・子どもや若者の意見を具体的にまちづくりのなかで生かし、実際に自分の声がまちづくり(条例制定、学校建て替え等)に反映される成功体験のチャンスを創っていくことは重要であり、まちづくり実績のある団体と子どもの権利実現実績のある団体の連携に、その実現可能性を鑑みた。

・児童養護施設を18歳で出ざるを得ない子どもが、その後どう保護されるかだけでなく、自分たちが社会でどう権利を実現できるのかを、若者の姿から習うことができることも視野に入れられる。

・大人は、子どもの主体性を尊重せず、選挙権のある若者に対するのとは異なる態度を子どもに対してとることが未だ多いが、子どもと若者を年齢で区切ることは子どもの権利条約では柔軟な解釈が望ましいとされており、支援が切れ目なくつながることは重要だ。

・子ども庁、子ども基本法へ本事業が生かされることは重要だ。

活動報告はこちらから

 

 

刑法Updateプロジェクト

(代表団体)NPO法人しあわせなみだ
(連携団体)NPO法人全国女性シェルターネット、認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ、性暴力禁止法をつくろうネットワーク

【事業概要】 ※助成期間6カ月間

 性暴力のない世界を目指し、実現する手法やプロセスの相違などを超えて協力関係を育む。性暴力による被害実態に即して性犯罪が問われるよう刑法の見直し推進する。法務大臣が「性犯罪に関する刑事法検討会」を踏まえ法制審議会の開催を21年9月に諮問し、刑法性犯罪処罰規定を見直す議論が約1年間行われるタイミングである。
 性暴力は、不平等な人間関係における性的支配を目的に起きている。セクシズムと呼ばれる性差別や、エイブリズムと呼ばれる能力中心主義の思想が広がりつつある中で、暴力を正当化するような社会の不公正を是正する行動が求められている。市民一人ひとりの性的人権が擁護され、性別や人種、国籍、障がいなど有無にかかわらず、あらゆるいのちが尊ばれる社会の実現に寄与する。
 とくに社会的に弱い立場にある人は、暴力被害に遭うリスクが高まる傾向が指摘されており、そういう人びとが発信できる場を設け、市民と議員や官僚が対話する機会を提供する。
Allguest20180109【助成決定概要】

・人権を守りたいという根本的な目的を共有する人たちが集まることは意義がある。とくに、しあわせなみだ等が障がい者への性暴力を含めて問題を提起していることは大きな価値があり、性交渉への同意の有無の客観的検証の可否という議論だけでは解決しない部分があるが、それについて、法律家を含めてどういった対話を行っていくのかが重要だ。対立点が存在するなかで、共有できるポイントを探すために対話は不可欠だ。

・企画される3つのイベントは異なる視点から構成されており、実際に被害を受けた女性たちのシェルターを運営する視点からみた現在の性犯罪構造に関する対話や、職業的地位に乗じた性犯罪の観点では性産業関係者との対話等、意義深いと考える。さらに多様な人たちが集まることが望ましく、性産業経験当事者の団体の中には性暴力被害救済という目的は共有するが性産業全てを禁止することには反対する立場のところもあり、また法律家の中には同意なき性交渉は全て犯罪とするという立法は難しいという考えの人もいるため、幅の広い対話を期待する。

・性暴力の被害者の支援、性暴力の撲滅という目的に対して、単に刑法改正の問題で終わらせてよいのかという視点も保持することを期待する。

・一部の関心の高い層だけの議論で法改正に進むのではなく、より一般市民の関心を高めていく取り組みも重要であり、院内集会の土台となるような世論を喚起する対話の場づくりに一層力と助成金を注ぐ事業計画へ柔軟に変更されることを期待する。

活動報告はこちらから

 

 

子どもアドボカシーセンター ネットワーキング プロジェクト

(代表団体)NPO法人子どもアドボカシーセンターOSAKA
(連携団体)一般社団法人子どもアドボカシーセンターNAGOYA

【事業概要】 ※助成期間1年間

 子どもが声をあげることができ、「困ったときは助けてもらえる」、「子どもの意見が大切にされる」という実感をもてるよう、子どもの声を聴く独立性・専門性・市民性のある人(子どもアドボケイト)の養成や、子どもアドボカシーセンターのネットワークを広げていく。
 子どもの意見が考慮されることのないまま、子どものSOSが届かず、命が奪われていくような虐待事件が後を絶たない。とりわけ声を聴いてもらえていない障害児施設や児童相談所一時保護施設などで子どもの声を聴き、その声を必要に応じて諸機関や諸制度に生かす活動を行う子どもアドボカシーセンターを立ち上げている地域がある。さらに子どもアドボカシーセンターを全国的に展開する基盤ができるよう、センター実行中の人たちやセンター立ち上げを考案中の人たちが、子どもの権利条約にある子どもの意見表明権や子どもアドボカシーの原則に基づき、設立・運営における理念や手法を共有し、活動の交流を行う。子どもの人権を大切にし、子どもの声を聴こうとする人たちのつながりを広げ強化していく。

【助成決定概要】

・子どもの意見形成・意見表明に基づき子どもを支援することが、行政だけでは限界がある現状において、行政機関や保護者等から独立した立場で子どもの声を聴き活かす市民、子どもアドボケイトが根付き始めている今は大事な時期であり、各地で立ち上がりつつある子どもアドボカシー活動のネットワークの基盤をつくることに注力することの意義を鑑みた。

・障害児施設や児童相談所一時保護所など、子どもの人権保障状況について不透明になりがちな施設等に、子どもアドボケイトが入っていくことは、精一杯な施設現場の抵抗を和らげ理解を深めながら進む難しさもあるなかで、非常に貴重だ。

・子どもアドボカシーセンター連携ネットワークの形成において本助成期間である1年において、まず実績のある大阪と名古屋で連携して基盤をつくることは実現可能性(フィージビリティ)がある。

活動報告はこちらから

 

 

※本プロジェクトは公益財団法人庭野平和財団様にご協力いただいております。

 

※本助成はSJF助成先からの申請に基づき、決定は(50音順・敬称略で)、明戸隆浩(SJF本プロジェクトアドバイザー)、上村英明(SJF本プロジェクトチーム=以下「*」)、大河内秀人(*)、佐々木貴子(SJF運営委員)、高谷忠嗣(公益財団法人庭野平和財団専務理事[当時])、瀧川恵理(*)、土屋真美子(*)、寺中誠(*)の協議による。

 

 

SJFの「Social Justiceを求める市民活動・連携促進プロジェクト」の概要

 公正な社会を実現しようとする市民活動が広がり深められるよう、連帯を育む機会を創出することを目的としている。これは、「公正な社会とは何か」を具現してきたSJF助成先と、SJFが共に学びあい創っていくプロジェクトである。

 本プロジェクトは主に3つの事業、①調査分析共有(2020年度)、②連携フォーラム企画(2021年度前半)、③連携プロジェクト助成(2021年度後半から2022年度)からなる。

 ①は、SJF助成先へのヒアリングを通して、Social Justiceの観点から社会課題をとらえ、その課題解決に向けたアドボカシー活動(社会提言、仕組み・政策提案活動)等の手法についてSJFが導出した評価軸で分析し、今後を展望した。ヒアリング結果は、回答いただいた助成先にフィードバックし、②への参画や、③への応募の検討に活用いただいた。

 ②は、社会課題への取り組みについての展望をSJF助成先が発表し合って交流するプログラムであり、異分野を掛け合わせた気づきから③のプロジェクト創造へつなぐ企画として設け、出演を希望するSJF助成先を募った。この企画、『―共に生きる― ソーシャル・ジャスティス 連携フォーラム2021』の詳細な報告はこちらからご覧ください。

 ③が本助成であり、概要は上記の通り。これら助成事業の連携団体同士が率直にクロストークし、課題と展望を語り合った『―共に変えよう― これからのソーシャル・ジャスティス 連携ダイアローグ2022』の詳細な報告はこちらから

 本プロジェクトの総合報告書はこちらから。 ■

 

 

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