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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第12回助成中間報告

NPO法人CoCoTELI(2024年6月)

助成事業名・事業目的

「精神疾患の親をもつ子どもの”こえ”を可視化するWebメディア

 精神疾患の親をもつ子どもの”こえ”を社会に届け社会課題としての認知向上を図ること

 子ども全体の15〜23%いると言われている精神疾患の親をもつ子ども支援の領域は狭間とも言えない空白の領域であると言い切れるほど日本において抜け落ちている観点である。

 私たちNPO法人CoCoTELIは精神疾患の親をもつ子ども・若者支援の土壌をつくるためのファーストステップとして、彼ら・彼女らを対象とした住む地域が関係ないオンラインでの居場所づくり・支援を行っている。現在居場所に45人弱、公式LINEの追加が約115人と多くの当事者の”こえ”を聴いているが、そもそも課題としても認識されていない精神疾患の親をもつ子ども・若者の困難や生きづらさ。他の子どもと比べて2.5倍高いと言われている子ども自身の罹患率。など支援の土壌をつくるためには社会課題として認知向上を図る必要がある。しかし、現状は課題として社会に多様な”こえ”や課題感を伝える手段が『関係者が発信すること』以外ほとんどない状況である。いつでもどこでも見ることができ、レバレッジが効く Webメディアという媒体を用いて当事者の”こえ”を社会に届け社会課題としての認知向上を図ることを目指す。

 

助成金額 : 83.5万円 

助成事業期間 : 2024年1月~25年6月

報告時点までに実施した事業の内容: 

 Webデザインの方向性変更、初めての決算期等の影響により、当初のスケジュールから1ヶ月半ほど遅れが出ている。現在HP内Webメディアページ構築が95%の状況。記事は、現在『ストーリー:2記事執筆』『事実:1記事(「あなたは1人なのか?」)執筆済み、2記事(「精神疾患とは?遺伝するの?」「社会保障って何?」)依頼済み』『ポッドキャスト:準備中』という状況である。

(写真下=公開予定のメディアページトップ
 
Kaida SJF
Kaida SJF
Kaida SJF
 

今後の事業予定 : 

2024年6月〜2025年6月

 HP内Webメディアページ構築後は、適宜インタビュー・記事作成・執筆依頼・ポッドキャスト収録依頼を行う。

 1ヶ月半の遅れが出ていることから初旬のメディア公開を予定し動いている。現在メディアページ構築が95%完了、最初に掲載予定の3コンテンツも執筆済みであることから「刺したい人に刺さる」「読まれる」ための細かい準備を残り半月で進めていく。

 今回のWebメディア構築を決めたことをきっかけに、社会的マイノリティに特化したWebメディアでのディレクション経験がある方をプロボノとして迎え、現在メディアコンサルとして定例mtgをとっていただいている。今後、彼の力も借りながら大切にしたい想いを大切にすることを前提とした上で『刺したい人に刺さるメディア』『読まれるメディア』にするための戦略設計をしつつ、仮説検証を回しながら進めていきたい。

 

助成事業の目的と照らし合わせた効果・課題と展望:   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか。

(1)当事者主体の徹底した確保

 インタビュー記事は「顔出しなし・匿名」であることを徹底。インタビュー実施前に「話したくないことは話さなくて良いこと」「いつでも消せること」等の注意事項を伝え、記事執筆後は必ずチェックを依頼し、依頼に応じて記事の修正を行なっている。また広報ポリシーを策定し、公開予定。CoCoTELIのメディアを含めた広報活動において立ち返る場所を作ることで「当事者主体」からぶれそうになった時に立ち返ることができる可能性を高める。

(2)法制度・社会変革への機動力

 具体的な取り組みはまだできていないが、記事を公開し多くの人に読まれることが今社会から見えていない課題を知ってもらうという点において社会変革の1歩目になると考える。しかし、申請書類にも記載したがストーリーを扱うメディアであるため「精神疾患のある親が悪い」と言った誤った認識を生んでしまうリスクがある。そこに対しては、親の立場の方との対談記事を特別コンテンツとして1~2個掲載することや記事内部に対立構造は課題をより複雑化させてしまうことの注意書きを入れることなどの工夫を行っていきたい。

(3)社会における認知度の向上力

 社会的マイノリティに特化したWebメディアでのディレクション経験がある方をプロボノとして迎え、メディアコンサルとして力を貸していただいていることは「読まれるメディア」に近づく=認知度が向上する。という点において具体的事例であると考えている。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 記事計画内に親の立場の方との対談記事が2つ入っているため、その記事において親と子の対立構造が生まれてしまうことで、精神疾患のある親・その子ども双方にとってSOSを出すハードルが上がってしまうこと、精神疾患の親をもつ子ども・若者支援の土壌をつくること=精神疾患のある方が安心して子どもを望み・育てることができる社会につながるということを伝えることを目指す。

(5)持続力

 1500万円弱の規模で1期目が終了した。現在、安定財源がないこと&寄付型NPOの創業期における安定財源獲得の難しさ等から、マンスリーサポーター等の時間はかかるが安定財源となる財源獲得の種を蒔きつつ、目先3年は大口寄付や助成金(特に複数年度のもの)の獲得にリソースを割いていく。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 複雑な問題で簡単に表せるものではないが、あえて課題を2つ設定するのであれば

  • 当事者の子どもが見えないこと
  • 社会資源がほとんどない

 の2点と考える。①に関しては子ども自身が自身の状況を自覚して言語化するハードルの高さや精神疾患に対する偏見等から子ども若者がSOSを出すハードルが高いことが大きいと考える。そのように子どもからの相談を待つには限界がある中で、子どもたちを社会側から発見する仕組みがないため多くの子ども・若者が見えない存在となっている。
 ②に関しては、現在経済的合理性がない領域であるため取り組みを始め・続けるハードルが高く支援の選択肢が生まれづらいことが理由として考えられる。また、虐待やヤングケアラー・貧困のように誰が見てもよくない状況ではない、一歩手前の名前がないフェーズの課題となるため支援の必要性がわかりづらく、認知が広がらないことも理由として挙げられる。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。

 今回助成いただいて実施するWebメディアはまだまだ知られていない課題の認知向上に大きく寄与する可能性がある。現在日本において精神疾患の親をもつ子ども・若者のストーリーや彼ら・彼女らを取り巻く事実に関してまとめられているサイト等はほとんどないなかで、Webメディアを構築し課題の具体をイメージしやすくなるコンテンツが増えることは多くの人が問題意識を持つきっかけになることが期待できる。
 また、団体として長期的に想定している病院や学校、行政等の連携により社会側から子どもたちを早期発見するモデル事業づくり→政策提言の流れを進めていく中でメディア構築による課題の認知向上がなされることは、人や社会の巻き込みやすさに大きな影響が生まれることが考えられるため、長期的にも好影響を及ぼすと考える。

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。

 多方面(医療・福祉・法律等)の専門家との連携が有効と考える。本領域は児童福祉分野だけでなく、精神保健福祉、その他にも様々な分野を横断する課題であるため、メディアを通して各業界のキーパーソンたちに記事執筆を依頼し公開することで、多様な分野のプレイヤーたちとの接点(入口)を増やすことできる可能性があると考える。
 また、親と子の対立構造が生まれてしまうことの弊害は大きいことから親の立場の方たちの団体との連携は重要と考える。その1歩目としてアドボカシーカフェでの精神障害者当事者会ポルケさんとのコラボは大きな意味を持つと考えている。■

 

 

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