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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第11回助成

にじいろCANVAS
SJF助成事業第4
次中間報告(25年1月

 

助成事業名:『にじいろみやぎ相談会・セーフスペースにじいろみやぎ開催、セクシュアリティと就労調査  

◆相談活動、居場所づくり活動を通して困難を抱えた性的マイノリティの課題解決を支援するとともに、そのニーズを把握し、持続的に支援可能な体制を構築する。

◆就労、特にその入り口となる学生時代の就職活動において困難を抱えてしまいがちな性的マイノリティの実態を把握し、キャリア支援の現場におけるジェンダー・セクシュアリティの扱いについての課題を明確化する。

◆上記活動・調査により明らかになった問題点を実際にキャリア支援に関わる機関と共有し、適切な対応がなされるよう働きかけることで、就職活動におけるジェンダー・セクシュアリティについての無理解・偏見に基づく不当な扱いをなくす。

 

助成金額 : 260万円

助成事業期間 : 2023年1月~2025年8月 *8カ月延長した 

実施した事業と内容(前回の報告24年6月以降について)   

◆にじいろみやぎ相談会

6月10日(月)17:30~20:30           サポートセンター研修室1 利用者1名

6月22日(土)13:00~18:00        エル・パーク仙台調理実習室 利用者1名

7月27日(土)     13:00~18:00         エル・パーク仙台調理実習室 利用者5名

8月12日(月)     17:30~20:30         エル・パーク仙台調理実習室 台風接近で中止

8月24日(土)     13:00~18:00         エル・パーク仙台調理実習室 利用者1名

9月28日(土)     13:00~18:00         エル・パーク仙台調理実習室 利用者2名

10月14日(月)17:30~20:30            エル・パーク仙台音楽スタジオ1 利用者2名

10月26日(土)13:00~18:00            エル・パーク仙台特別会議室 利用者1名

11月23日(土)13:00~18:00            エル・パーク仙台音楽スタジオ1 利用者0名

12月9日(月)     17:30~20:30         サポートセンター研修室4 利用者2名

12月21日(土)13:00~18:00            エルパーク仙台調理実習室 利用者0名

 

◆セーフスペースにじいろみやぎ

7月13日(土)13時~18時 場所: アートスペースリュミエール 利用者10名 スタッフ2名

9月14日(土)13時~18時 場所: ニューライフ花京院2階ミリオン 利用者10名 スタッフ3名 ボランティアスタッフ1名

11月9日(土)13時~18時 場所:アートスペースリュミエール 利用者7名 スタッフ3名

Kaida SJF
(写真=セーフスペースでは、参加者が気軽に取り組めるアクティビティを取り入れ、利用者がコミュニケーションを取りやすくする工夫をしている)

 

――8月以降のミーティングでは、相談員個人の振り返りをシェアし、相談会・セーフスペースの開催意義、手ごたえ、相談対応の自己評価などについて話し合った――

★相談会・セーフスペースの位置づけについて

 相談会でつながる相談者は一回限りの相談がほとんどであった。そのような中では相談者のこれまでの経緯や背景を掘り下げることは難しかった。一般的な相談スキルに加えて、より介入して相談者の全体像を認識する手法が必要であり、その技量の向上が難しかった。

 一部の利用者がセーフスペースを利用することで、その後の状況を継続して見守ることができた。利用者の人となりを把握し、何か問題を抱えている時には個別に相談をすることもできた。当初想定していた継続的に相談者に伴走する活動は、むしろセーフスペースの方がより成し得るのではと感じている。

★人材の確保について

 月に1~2回の機会であるが、2名の相談員を確保しシフトを組むのが難しくなり、特定の人に負担がかかる状況が生まれていた。皆本業があり、私的な時間を割いて事業遂行にあたってきたが、これを推進するには大きなモチベーションが必要であり、多くの人に私生活を犠牲にするようなことを強いる状況では、疲弊しさらに人材が枯渇する状況を生みかねないのではないか?また、相談者一人ひとりと向き合うことを求められるが、その負担は想像を超えるものを感じた相談員も多かった。

他方、セーフスペースに関しては、スタッフも共に場づくりをしながら、楽しい時間を過ごすという活動には、本業では得られないやりがいを感じることができたとの感想が聞かれた。

★助成金終了後の事業展開について

相談会は人員確保ができるまで休止し、負担があってもモチベーションを維持しやすいセーフスペースの開催を継続することとした。

 

◆研修

◇相談員内部研修 7/15 『トランスジェンダーと脱病理化』

◇県外相談施設・パレードの視察、他団体との連携構築

 東京研修(中野ハウジングファースト、パープルハンズ(大人食堂)、プライドハウス東京)

◇学習会、相談員の研修

 2024年7/28(日)開催のオープンダイアローグオンライン研修に、相談員の中から希望者が参加。

 

今後の事業予定 : 

◆相談会・セーフスペースの開催状況に関するまとめ

 相談会・セーフスペースの開催実績と事業評価についてまとめ、3月開催予定の団体総会までに評価と今後の事業展開についてまとめる。

◆事業報告冊子の作成・配布・・・2025年3月~8月

・アンケート調査結果{概要はSJFアドボカシーカフェ第83回で発表}をもとに考察し、就職活動とジェンダー・セクシュアリティに関する当事者と支援機関の現状について論じる。

・相談やセーフスペースの活動実績とそこから見える地域の実態についてまとめる。

・上記内容を踏まえ、自治体、企業並びに地域の支援団体等に対しての提言、今後の連携の提案について論じる。

・これらを掲載した冊子を作成し、ホームページ上に公開。さらに関係各所に郵送配布する。

 

助成事業の目的と照らし合わせ 効果・課題と展望   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例を挙げた。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるかを記載。

 前回の中間3次報告の記載内容に対して、更新した点を記載すること。試行錯誤のプロセス、今後の課題やそれに対する見通しなど、具体的・詳細に記述。

(1)当事者主体の徹底した確保 

 相談会では相談者主体を徹底し、今後の行動が自己選択できるよう配慮した。
 セーフスペースでは利用者のエンパワメントを意識し、行動する力を回復できるよう配慮した。

(2)法制度・社会変革への機動力

 仙台市パートナーシップ制度への当事者ヒアリングへの参加、結婚の自由をすべての人に訴訟支援、同性婚仙台家事審判の支援などを行っており、これで培われた関係作りが今後の支援体制構築に活かせると考える。

(3)社会における認知度の向上力 

 相談会・セーフスペースの認知はSNSを利用した広報活動を継続し、一定の認知を得ている。みやぎにじいろパレード2024においてブースを出展し、セーフスペースでの活動の成果物を展示した。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 他の活動でのネットワークを活かしたい。

(5)持続力 

 セクシュアリティの課題に取り組む人員確保の難しさを感じた。相談活動を支えるには、大きなモチベーションと相談スキルが求められるが、他の本業を持った上での活動には限界がある。相談員の生活をある程度支えるだけの裏付けをもって、そのような人材を確保してゆく必要がある。
 組織力を充実させ、団体としての責任能力を向上しておく必要を感じた。コンプライアンスを明文化し整備するとともに、より広範な専門知識を持った人と繋がり、活動に参画してもらえる体制構築が望まれる。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 2024年12月に仙台市がパートナーシップ宣誓証明制度を開始した。政令指定都市では最後の導入であり、全国唯一空白県として残っていた宮城県にも導入自治体が所在し、やっと空白が埋まることとなった。2015年に渋谷区・世田谷区で導入された当初からこれに類する制度を仙台市でも導入するように政策提言し、2018年・19年には仙台市との市民協働事業~にじいろ協働事業を行い、2019年からは市議会会派へのロビイングを実施、その結果2021年から5年間の男女共同参画せんだいプラン2021にはパートナーシップ制度の導入の検討が盛り込まれたが、これがやっと実現したことになった。これだけ時間がかかったのは、性的マイノリティに関する社会の関心がまだまだ薄く、ごく一部のマイノリティの問題としての認識しかないことが原因であると推測される。

 2023年にはLGBT理解増進法が制定されたにもかかわらず、未だ実施計画が策定されていない現状からも、こうした「ないがしろにされている」状況が見て取れる。

 セクシュアリティ多様性の課題は、ジェンダー平等の基礎と位置づけられるものと言える。ジェンダー平等への取組みの精度を上げていくために不可欠な要素であると考えられるが、未だその認識は浸透していないと言わざるを得ない。こうした状況がシスヘテロ規範に縛られた家父長制の残滓が残り続け、繰り返しバックラッシュが起こっているひとつの要因であると言える。

 こうした中、「LGBT」という言葉だけが広まり、マイノリティ個々人の状況は十分に認識されているとは言えない。また、障害や疾病を抱え孤立しがちなダブルマイノリティは取り残され、十分な支援が行きわたらない状況になっている。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。 

 困難を抱える性的マイノリティは、社会資源の乏しい地方でより厳しい状況に置かれている。これらの人々のニーズを把握し、より効果的な支援体制を限られた資源の中で構築していく必要がある。反面で、コミュニティの小さい地方では他分野との連携を活かした実践が可能でもある。地域の課題を把握しながら、セクシュアリティの課題と困難を抱える人の課題が交差した問題に取り組みやすい。地方での活動の実践により、地方ならではの支援体制の構築に、本事業は貢献できると考える。

(3)他団体と連携したプロジェクトのアイディア、あるいは具体的な構想、あるいは希望などはあるか。

 相談会・セーフスペースの事業はひと段落をつけ、その成果を地域で様々な課題に取り組む機関・団体に還元し、多分野が連携した支援体制の構築に役立てたい。また、全国のセクシュアリティに関する相談活動を行っている団体と連携し、セクシュアリティの課題に取り組む実践の効果をあげていきたい。

 

~宮城県地域では、みやぎにじいろパレードなどのイベント開催、交流会の開催、地域団体・教育機関・支援機関・団体等への講師派遣、相談支援活動など、セクシュアリティに関する重層的な活動が複数の団体によって展開されている。これまでの活動の経緯などから、これらの団体は互いに顔の見える関係にあり、様々な状況にある当事者のエンパワメントに貢献している。今後この連携をさらに深化させて、多様な当事者と共にある活動を進めていきたい~ ■

 

 

 

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