ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)の第5回目の助成先がこのたび決定されました。この助成は、いままで声をあげることができなかったこと、声をあげても聴いてもらえなかったこと、これまでの政策・制度では見過ごされがちだった社会的課題への取り組みを支援し、多様な人々の関係が公正となる社会を目指しています。現場からすくい上げられた声をもとに社会的な枠組みや制度・政策を変えていく提言活動を対象としています。
今回は、48件のご応募いただき、書類審査と面接審査により3つの助成先を決定しました。
【助成開始期】 2017年1月
【助成総額】 300万円
【助成先】
助成テーマ:「子ども・若者の未来に関する取り組み」を対象とするアドボカシー活動
◆公益社団法人 子ども情報研究センター
「障害児施設市民訪問アドボカシー事業 障害のある子どもたちの尊厳を守るために」
(助成金額 100万円、助成終了期 2018年12月)
◇事業骨子:
施設で生活する障害児は、親による支援を受ける事も難しく、最も弱い立場に置かれている子どもたちだ。しかし施設は閉鎖的になりがちで虐待の被害を受ける子どもも多いが、ありのままの姿や声は社会になかなか届かなかった。これは市民が偏見を持つ原因にもなっている。
本事業は、障害のある子どもたちが生活する施設を訪問し、声を聴き、代弁や権利擁護を行う市民訪問アドボカシーを行う。イギリスの独立子どもアドボカシーの手法から学び、傾聴し、言葉を話さない障害児については非指示的アドボカシーの技法を活用する。これをもとに市民による施設訪問アドボカシーのモデルを創り、報告書にまとめ、国・自治体に政策提言を行い、市民子どもアドボカシーの制度化を目指す。
障害児とその家族を勇気づけるとともに、障害児と市民をつなぎ、障害を持つ子どもたちが安心してすごせる社会をつくっていく。
◇選考骨子:
障害児施設の問題に注目が集まるなか、障害児の意見表明権に市民から取り組む本事業の意義は大きい。障害者差別解消法が今年施行され、障害者の困難やニーズについて人々が共有し合理的配慮ができるよう、言葉のバリアフリーが進む契機となることを期す。
閉鎖的になりがちな施設に、市民アドボケイトが訪ねることで、市民との関係性を開くことを重視する。市民の協力者や、訪問先の施設の方々との信頼関係を築いておられる。
長期的な展望を有し、他の団体や、行政、議員との連携も堅実に取り組んでおられる。
◆NPO法人 わかもののまち静岡
「市民としての若者の影響力を高める『日本版ローカルユースカウンシル』の開発と普及」
(助成金額 100万円、助成終了期 2018年12月)
◇事業骨子:
子ども・若者を「未熟な市民」から「若い市民」へと変えていく。大人と対等な権利を持つ市民としての若者世代の声を地域や社会で生かすチャンネルづくりを国内に広げる。
若者が地域に根差した課題を自分事として向き合うなかで、成功体験を積み重ねていき、エンパワメントする。若者の内発的動機を形にしながら、若者の手で地域をつくり、地域に若者の声をとどけていく。運営も若者自身で行っており、すべての若者の声を集めることを重視している。
若者の地域社会参加を促すローカルユースカウンシルを、欧州の実践に着想を得て、日本版を開発、普及を進める。地元静岡の自治体で試行した後、連携地域での実践、振り返りを行い、ローカルユースカウンシルの理念や手法を国内に波及させる。
◇選考骨子:
子ども・若者の意見が取り上げられにくい日本の各地域で、子ども・若者が、自発的な活動から地域づくりや政治参加に生かす成功体験を積み重ねていくことの重要性を鑑みた。
地域のすべての子ども・若者の声を集めるよう努力しておられるとともに、先進的に実践している大人やスウェーデンの先進事例の研究者との協力を築いており、運営力を評価する。
ローカルユースカウンシルを海外から単に導入するのではなく、日本の各地域に合った形で、子ども・若者をエンパワメントする活動が、各地域に広められる力に期待する。
助成テーマ:「見逃されがちだが、大切な問題に対する取り組み」を対象とするアドボカシー活動
◆NPO法人 メコン・ウォッチ
「日本の公的資金が格差社会を生まないために ミャンマーで日本が関与する大規模開発事業に関するアドボカシー活動」
(助成金額 100万円、助成終了期 2017年12月)
◇事業骨子:
ミャンマーでは民政への移管後、海外からの援助や投資による開発事業が急速に進むなかで、住民の移転による貧困化や、住民参加が不十分な開発事業が行なわれている。日本はミャンマーにとって影響力のある支援国で、その援助や投資は今後のミャンマー開発に大きな影響を持っている。同国で実施される開発事業が日本企業の利益優先ではなく、住民の声を反映しながら進められることを目指す。
ミャンマーのティラワとダウェイ経済特別区で、現地住民の生活状況や事業参画への意思や懸念を調査するともに、現地の専門家等からも聴き取りをし、政策提言のための情報収集を行う。また現地NGOと連携して、住民の声を開発実施者に届ける支援をする。それらをもとに、JICAやJBICが人権や環境に配慮するガイドラインを守り、日本企業も人権と環境に配慮したビジネスを行うよう働きかけるとともに、国会議員など政策決定に影響力のある人たちへの提言を行う。日本で市民向けのセミナーも開催し、日本の海外開発のあり方について考えるきっかけを提供する。
◇選考骨子:
ミャンマーで民主化が進み日本との関係が拡大するなかで、急激に経済開発が進められようとしている。日本の資金が入るミャンマーの経済特区における問題点を広く共有して、現地の住民が懸念や批判の声を出しにくい状況を変えることの重要性を鑑みた。
日本の政府や企業による海外開発援助のあり方を、守るべき人権や環境のガイドラインを生かしたものになるよう働きかける視点に注目する。
少数民族の声も含めて、現地住民の声をどこまで聴けるか、ミャンマー政府および日本政府や企業に働きかけると共に、現地住民自身の意見表明を支援する姿勢を評価する。
◇◆◇ 助成発表フォーラム 第5回◇◆◇
新たな3つの助成先は、どのような社会的課題を発見し、解決にむけて社会に働きかけようとしているのでしょうか。それぞれの活動テーマについてお話しをうかがい、対話交流を通じて、新たに気づき合い、活動する力を引き出し合えるような場を一緒につくりましょう。
【日時】2017年1月13日 18:30-21:00 (開場18:00)
【会場】新宿区・四谷地域センター 11階 2+3集会室
【参加費】無料
【詳細・参加申し込み】こちらから