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★1.【巻頭】~委員長のひとりごと~ (上村英明/SJF運営委員長)
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ヘイト・スピーチや国連人権勧告の無視など、日本における過剰なナショナリズムの高揚もさることながら、ロシアのウクライナ、具体的にはクリミアへの軍事介入や中国・昆明でのテロ事件など「暗い」、さらには背景の複雑なニュースが少なくない。
その中で、やや明るいニュースに接することができた。2月21日に東京・新宿区で「市民電力連絡会」の発会式が行われたというものだ。これは、3年を経た東日本大震災・福島第一原子力発電所事故(3.11)をきっかけに日本各地に誕生した、太陽光、風力、小規模水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーを利用した市民発電所を手掛ける団体をネットワーク化しようというものだ。こうした動きは、僕の専門ではないが、いつも周辺にごろごろしていて、春先のタンポポのように微笑ましくなる。
「市民電力連絡会」の会長は、竹村英明さんだ。最近はご無沙汰しているが、何十年も原子力発電所の問題にしっかりと取り組んできた人で、僕と名前が一文字しか違わないので、最近でも間違って僕に声をかけてくれる人がいる。「原発問題、頑張ってますね!」と。 また、職場には、多摩市・第1号市民発電所「恵泉」がある。東京・多摩市では、2012年5月に市民によって、「多摩市循環型エネルギー協議会」が発足したが、同年10月には事業主体として「多摩電力合同会社」が設立された。その第1号発電所が、職場である恵泉女学園大学のキャンパスにある校舎の屋上に設置した太陽光パネルで発電を始めたのが、2013年7月であった。さらに、拙家の東京での菩提寺がある江戸川区には、市民が資金調達から建設、運営に取り組む市民立発電所がある。先駆的な事業として、1999年7月に完成した江戸川・第1市民立発電所は、この菩提寺・「寿光院」の屋根の上にある同じ太陽光パネルだ。
小規模発電による電力の買取り制度は、1978年の米国に始まり、カリフォルニアにおける風力発電の立ち上げに貢献した。さらに、本格的な買い取り制度の導入は1990年のドイツからとされ、これにより、電力総需要に占める再生可能エネルギーの比率は、2000年の6.3%から2007年の14.0%まで飛躍的に拡大したという。日本でも、3.11の後の2012年7月に、固定買取り制度が本格的に導入され、これによって「市民発電」は大きく促進され、今回の「連絡会」ができるまでになった。
「従来型の豊かな社会」における原子力発電の補完ではなく、市民がライフスタイルと社会のあり方を根本的に見直すきっかけとして、再生可能エネルギーをめぐる制度の発展と「市民発電」の拡大に期待したい。
┏ 目 次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
★1.【巻頭】 ~委員長のひとりごと~ (上村 英明 / SJF運営委員長)
★2.【SJFニュース】
・ご案内:『裁判員制度がなげかける死刑の情報開示』
SJFアドボカシーカフェ(3/27)
・ご案内:『27年目のチェルノブイリから考える、日本の子どものいまと未来』
SJFアドボカシーカフェ(4/9)
・ご案内:『トルコへの原発輸出から、日本の原発政策を考える』
SJFアドボカシーカフェ(4/18)
・ご報告:『日本で生かそう!国連人権勧告』第4回アドボカシーカフェ(2/28)
★3.【SJF(2013年度)助成先レポート】=アムネスティ・インターナショナル日本=
助成事業『名張毒ぶどう酒事件・奥西勝死刑囚と袴田事件・袴田巌死刑囚の再審開始を通した死刑廃止の世論喚起事業』の近況
★4.【コラム:ソーシャル・ジャスティス雑感】 (辻 利夫 / SJF運営委員)
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★2.【SJFニュース】
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●ご案内 ★参加者募集中★ SJFアドボカシーカフェ(第25回)
『裁判員制度がなげかける死刑の情報開示』
【日 時】2014年3月27日(木)18:30-21:00(18:15受付開始)
【ゲスト】若林秀樹さん(アムネスティ・インターナショナル日本事務局長/
国連グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク理事)
田口真義さん(東京地裁2010年裁判員/
「裁判員のあたまの中―14人のはじめて物語」著者)
【会 場】アムネスティ・インターナショナル日本 事務所(千代田区神田小川町)
(共催):アムネスティ・インターナショナル日本
―死刑を判断した裁判員には、今なお「壮絶な重圧と葛藤」があります。もし、死刑囚の処遇や執行の様子などの情報公開がないまま執行された場合、「裁判員経験者の苦しみは極限に達する」ことを想像してみてください。まだ、法務省は執行対象を選ぶ基準などについて詳細な情報を明らかにしていません。
「国民の判断」として「国民への死刑」を行うのであれば、十分な情報公開のもと、今いちど「国民一人ひとりの真摯な議論」を広めることが大切ではないでしょうか。「冤罪は社会不正義だと思うが、死刑制度は世論が分かれているのではないか。」という声がある一方、「人は間違いを犯し得る。冤罪は実に多く、間違ったら正すというのが人としての正義だ。しかし、死刑は執行してしまったら正すことができない、取り返しがつかない。」という声もあります
今回は、「死刑制度」の本質的な問題を「裁判員制度」からも見直すため、ゲストに、東京地裁で裁判員を務め、「国民が死刑制度について議論する機会が必要だ」として、その間の死刑の執行停止と情報公開の徹底を求める要請書を法務省に提出した田口真義さんと、冤罪の疑いがもたれている「袴田事件」などの再審開始を通した死刑廃止の世論喚起事業にも取り組んでいるアムネスティ・インターナショナル日本から、事務局長の若林秀樹さんを迎え、皆さまとともに、多様な視点から対話したいと考えます。
★ 詳細はこちら http://socialjustice.jp/p/20140327/
★ ご参加の登録はこちら https://socialjustice.jp/20140327.html
●ご案内 ★参加者募集中★ SJFアドボカシーカフェ(第26回)
『27年目のチェルノブイリから考える、日本の子どものいまと未来』
【日 時】2014年4月9日(水)18:30-21:00(18:15受付開始)
【ゲスト】根本崇さん(千葉県・野田市長)
白石草さん(NPO法人OurPlanetTV 代表)
【会 場】文京シビックセンター4階シルバーホール(文京区春日)
(共催):NPO法人OurPlanetTV
―原発事故から27年たった今でも、チェルノブイリ地域のある学校では80%以上の子どもが健康な状態ではありません。そのため、ウクライナでは「子どもたちの未来のために、健康リスクは最小限に押さえる必要がある」という合意のもと、とくに健康診断や長期の保養プログラムが国の重要な支援プログラムとなっています。いっぽう福島原発事故から3年たった日本では、低線量被曝はほぼ健康に影響がないという考えのもと低線量の放射能地域に子どもが居住し、この4月からは原発から20キロ圏の旧警戒区域への帰還も始まります。また、福島の近隣県をふくめた低線量放射線リスクを今後どう考えるのかという議論もまだ十分とはいえません。
今回はこの2つの現実の中で、子どもたちの未来を守るために、市民と行政が合意できる実現可能な支援の基準について考えます。ゲストには、昨年11月にチェルノブイリの学校や医療機関を取材し、ドキュメンタリーを制作したNPO法人OurPlanetTVの白石草さんと、「脱原発をめざす首長会議」のメンバーであり、「子ども・被災者生活支援法」がより住民の納得できる内容となるよう求める意見書を国に提出した野田市長の根本崇さんをお迎えします。そして、ドキュメンタリーをいち早く上映しながら、皆さまとの対話をとおして課題を共有する糸口を探ります。
★ 詳細はこちら http://socialjustice.jp/p/20140409/
★ ご参加の登録はこちら https://socialjustice.jp/20140409.html
●ご案内 ★参加者募集中★ SJFアドボカシーカフェ(第27回)
『トルコへの原発輸出から、日本の原発政策を考える』
【日 時】2014年4月18日(金)18:30-21:00(18:15受付開始)
【ゲスト】鈴木真奈美さん(フリーランス・ジャーナリスト)
田辺有輝さん(NPO法人「環境・持続社会」研究センター(JACSES)理事)
【会 場】文京シビックセンター4階シルバーホール(文京区春日)
(共催):NPO法人 JACSES
―いま、日本政府や企業は途上国への原発輸出を積極的に推進しています。しかし、途上国への原発輸出は、日本が多大な利益を得る一方、事故が起きた際に途上国に甚大な被害を押しつけることになる点や、廃棄の目途すら立っていない放射性廃棄物と、核拡散による核戦争の脅威を将来世代に付与する点など、社会的不公正を拡大させることになります。
そこで、国会で審議中のトルコとの原子力協定締結の問題について、トルコにおける原発建設の問題点や、トルコの地元住民の声などを紹介します。そして、福島原発事故を経験した日本の市民として、日本の原発政策全体の中での原発輸出の位置付けや、日本が原発輸出を止めるために必要なことなどについて、参加者の皆さまと考えていきたいと思います。
★ 詳細はこちら http://socialjustice.jp/p/20140418/
★ ご参加の登録はこちら https://socialjustice.jp/20140418.html
●ご報告: SJFアドボカシーカフェ第24回 (2月28日開催)
『国連人権勧告は守らなくていいの?―国際人権条約と日本の人権施策―』
シリーズ:「日本で生かそう!国連人権勧告」 第4回
【ゲスト】寺中誠さん(東京経済大学現代法学部ほか非常勤講師)
塩原良和さん(慶應義塾大学法学部教授)
―なぜ、日本政府は度重なる国連人権勧告をことごとく跳ねつけ続けるのか。その源にある構造を考え、国連からの人権勧告を日本で活かしていくために私たちは何ができるのか、多様な視点からの対話が活発に繰り広げられました。
安倍内閣が昨年6月に「国際条約機関からの勧告には法的拘束力がない、だから履行義務もない」という趣旨の閣議決定を行ったことに端を発し、今あらためて、日本の人権施策が国際人権基準と切断されている実態に注目が集まっています。
今回ゲストより問題の背景として、社会がスピードアップし効率性を強調する風潮が高まっており、経済発展のためには民主主義的なプロセスや人権すら「緩和」されるべき規制とみなされるといった人権軽視の姿勢がある点や、そのように競争にさらされている人々は総合的な不安定感を強め、人権はあたかも弱者の武器だと感じるような逆差別の感覚、ヘイト・スピーチに見られるような排外主義的な風潮が強まる点が提示されました。
そして、人と出会い対話することの重要性、権利を踏みにじられやすい少数派の人権が守られているのか、制定されているルールの本来の目的に立ち返り問い直すことの重要性、たとえ人権を制限しなければならないような場面でも、その基準や手続きが国際基準に沿うよう、国際法体系と国内法体系の対話を進めることの重要性が共有されました。
★ 詳細はWebサイト(http://socialjustice.jp/p/20140228report/ )をご覧ください。
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★3.【SJF(2013年度)助成先レポート】=公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
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『名張毒ぶどう酒事件・奥西勝死刑囚と袴田事件・袴田巌死刑囚の再審開始を通した死刑廃止の世論喚起事業』は、SJF2013年度助成事業の1つです。その近況レポートをいただきました。
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名張毒ぶどう酒事件の奥西勝さんは、この1月は、88歳の誕生日を迎えました。2013年5月以降、二度も危篤状態に陥り、今は安定しているものの予断を許さない状況が続いています。最高裁は、2013年10月、奥西死刑囚の第7次再審請求の特別抗告を棄却しました。弁護団は、2013年11月に、第8次請求を名古屋地裁に申し立て、新証拠の提出準備を始めています。
一方、袴田事件では、静岡地裁に第2次再審請求をしている袴田巌死刑囚の弁護団と支援者が、2014年1月13日に静岡市内で全国集会を開きました。アムネスティ日本からは、若林事務局長が参加し、支援の声を寄せました。また、再審無罪となった元死刑囚である免田栄さんや島田事件の赤堀政夫さんなど約350人が県外から駆けつけ、袴田巌さんの即時再審開始と刑の執行停止、釈放を求める「アピール」(訴え)を採択しました。第2次再審請求で、弁護団と静岡地検は昨年12月に最終意見書を提出しています。
袴田事件については、次々と新しい証拠が明らかとなっています。例えば、有罪になったポイントは、袴田巌さんの自白とみそタンクから見つかったとされる「5点の衣類」ですが、この2点で新たな事実が次々と明らかになりました。自白については、袴田巌さんの「自白」を録音したテープを分析した結果、袴田さんの自白から時系列のおかしい部分が見つかったため、既に収集された証拠から「体験物語」を構成したとみられています。関係者の供述調書・調査報告書には、同じ社員寮の同僚2人の
「(出火直後に)サイレンを聞いて部屋を出ると、袴田が後ろからついてきて、一緒に消化活動をした」
という証言があり、確定判決の事実関係と食い違っています。「5点の衣類」については、弁護側と検察側の双方のDNA鑑定において、付着した血液は袴田死刑囚とも被害者とも一致しないという結論が出ました。弁護団が証拠開示請求を続けた結果、次々と新事実が明らかになりましたが、それは600点にも上ります。
袴田事件には捜査段階で多くの疑義がありますが、それを裏付ける新証拠が出て検察側の主張は崩れており、かたくなに再審開始を拒否する理由は見当たりません。静岡地裁は、この3月中にも再審開始の可否を決定するのではないかと見られています。 (公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本)
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★5.【コラム:ソーシャル・ジャスティス雑感】 (辻 利夫 /SJF運営委員)
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3.11―3年目の春。季節はめぐり来るが、復興の春は遠く、足踏みをしている。「東北の人は我慢強い」と、よく言われるが、見えぬ春を待ちきれず故郷を離れる人も多い。東北3県の被災地域のほとんどで人口減少、過疎化、高齢化が加速していると報じられている。とりわけ深刻なのが福島の原発事故の被害地域だ。コミュニティが分断され、存続が危ぶまれている。
どうすべきなのか。3年目を迎えメディアを通して多くの対策や見解が語られている。復興交付金の縦割りでない現地自治体に使い勝手のいい運用、再生エネルギーのモデル地域、被災者の声を反映した子ども・被災者支援法の具体化など肯けるものが多い。そうしたものが有効に活用されるには住民の理解と参加が不可欠だろう。復興まちづくりでは、多くのNPO、NGOが現地に入り住民を支援してきた。そこに関わった人たちの、対策やプランの内容、合意形成も重要だが、なによりも大事なことは住民の復興への意欲を持続させることだと聞いた。さまざまな問題が起きるなかで、住民の意欲が萎えたり、気持ちが折れたりしてしまえば、復興はさらに遠のく。早くも震災の記憶の風化が取りざたされているなかで、復興へ向かう住民の心を支える持続的な支援に、ささやかながらも取り組んでいきたい。
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運営委員のプロフィール
- 上村 英明 運営委員長(恵泉女学園大学教授、市民外交センター代表)
- 黒田 かをり 運営副委員長(一般財団法人CSOネットワーク 理事・事務局長)
- 轟木 洋子 運営副委員長((公財)ジョン万次郎ホイットフィールド記念国際草の根交流センター事務局長)
- 伊集院 尚子(株式会社アスラン代表取締役、日本ブラインドサッカー協会広報、薩摩大使ほか)
- 大河内 秀人(江戸川子どもおんぶず代表、NPO法人パレスチナ子どものキャンペーン常務理事ほか)
- 辻 利夫(NPOまちぽっと事務局長)
- 土屋 真美子(NPO法人アクションポート横浜理事、NPOまちぽっと理事)
- 樋口 蓉子(草の根市民基金・ぐらん運営委員長、NPOまちぽっと副理事長)
- 平野 光隆(ミタイ基金理事)
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