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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)アドボカシーカフェ第20回報告

 

◆ 今後の企画   ◇参加募集中◇
アドボカシーカフェ第21回

『子どもの権利と地域・自治体での取組み』
シリーズ:「日本で生かそう!国連人権勧告」第1回

12月2日 18:30- 於 文京シビックセンター
◇ゲスト◇浜田進士さん(子どもの人権ファシリテーター)
詳細やご参加の登録はこちらから   ◆

 

 

国家秘密と情報公開

―特定秘密保護法案は、秘密のブラックホールか!― 【報告】

 

 

  20131024日、文京シビックセンターにて、SJFは第20回アドボカシーカフェを開催し対話の場を持ちました。閣議決定を翌日に控えさまざまな動きのある特定秘密保護法案について、法案への賛否を問う前に、政府情報の民主化の問題として参加者と考えました。いかに政府の秘密を国民の主権・知る権利のもとで管理しコントロールするかについて、情報公開、公文書管理、生活者、ジャーナリズムなど多様な視点から活発な対話が繰り広げられました。政府の秘密を民主的に管理し、歴史的の検証に委ね政府の説明責任を保障する統一的な仕組みの重要性が強調されました。

 

  主なプログラム ◆

   ◇ 三木 由希子さん(NPO法人情報公開クリアリングハウス理事長)の提言

    ◇ 瀬畑 源さん(都留文科大学非常勤講師)からのコメント

      ◇ 参加者のグループディスカッション

      ◇ ゲストとの対話

   ◆ モデレーター 辻 利夫(SJF運営委員)

全体しゃしん1
三木_当日しゃしん1瀬畑_当日しゃしん1

  概要と映像アーカイブ◆    

~ 特定秘密とされる情報は、人権との抵触が起こりやすい分野 ~

  秘密指定される事項は、既に秘密保護の法制がかけられている防衛事項に、外交、スパイ(外国の利益を図る目的で行われる安全脅威)活動防止とテロ活動防止に関する事項が加わっている。スパイ・テロ防止は、人と人とのコミュニケーションを監視するものであり、米国ではスノーデン氏が明らかにしたNSAによる大規模監視のような事例がある。すでにある防衛秘密などの秘密保護法制とは異なる対象が入ってきている。(三木)

  漠然と怖いという思いを抱いているが、実際に自分たちの生活にどのような影響があるのか考えたい。(参加者)

  政府は、特定秘密保護法案を日本版NSC(国家安全保障会議)の創設と抱き合わせ、法案成立の土俵をうまく作っているが、この土俵自体を問う姿勢が大事ではないか。(参加者)

  なぜ今、特定秘密保護法案かというのはいろいろな説明が成り立つとは思う。一例として、安全保障の専門家から聞いた話だが、国際社会では9.11と前後して、従来のテロ対策が治安維持を中心とするものから軍が関与するものへと変化した。テロ対策では、治安維持部門と軍事部門の境界が溶けているとも言われている。特定秘密として防衛以外に新たに3事項加えて対応することで、国際的なインテリジェンス・コミュニティ(情報コミュニティー)に日本が入りたいという状況もあるようだ。特定秘密保護法案の制度目的は、特定秘密の保護であり、私たちの「知る権利」や政府の説明責任との両立を制度目的にしていない。特定秘密保護法案に限らず、既に政府が多く持っている秘密も含めて秘密指定の解除ルール等により情報を公開していき、国民の「知る権利」を具体的に保障していく必要がある。(三木)

 

~ 「秘密」を情報公開させる仕組みづくりの課題 ~

  特定秘密と指定される情報は、国の安全保障に著しい支障を与える「おそれ」があるものとされている。情報公開制度では非公開理由の「支障のおそれ」には法的な蓋然性が要件となっており、その解釈運用が非公開を争う時に争点とできるが、特定秘密保護法案では何を「おそれ」とするのかについて抑止的に解釈運用させる仕組みがないため、その解釈を争うことはできない。(三木)

  特定秘密の範囲が拡大するのを防ぐ仕組みが必要ではないか(参加者)

  情報公開制度では特定秘密も請求対象であるが、請求しても非公開となる。広い非公開領域の一部である特定秘密は、請求した情報が特定秘密に該当するかどうかも明らかにされることはないだろう。このため、特定秘密の範囲が拡大していても、公開・非公開を争う情報公開制度ではチェックできない問題点がある。(三木)

  どうしても知りたい秘密について情報公開請求を繰り返しただけで罰せられるのか?(参加者)

  そうは思わない。情報公開請求をすることは私たちの正当な権利。知りたい情報があれば請求してみて、秘密に指定されていれば公開されないということになるだろう。特定秘密かどうかで公開・非公開を判断する責任は政府にあり、請求者の問題ではない。

 罰則の問題点は、「利益を図るなどの意図」の有無にかかわらず「秘密」を漏らした側が罰せられる点だ。自分や誰かの利益の為ではなく社会で知られるべき情報だと考えて内部告発をしても罰せられるかもしれないということは、内部告発のハードルを高くし抑止効果は大きい。また、「正当な」取材行為は罰せられないが「秘密」情報を渡した人は罰せられると、先日ラジオでご一緒した磯崎(首相補佐官)氏が番組で断言されており、これにより実質的にジャーナリズムへの制限が大きくなる点は問題だ。(三木)

 

~ 秘密指定の解除は機能するのか? ~

  特定秘密を時間の経過により公開し検証するような制度は未整備だ。秘密指定の有効期間は5年間となっているが、その後更新は可能で制限はない。30年超となる場合には内閣の了承が必要と法案が修正されるが、秘密こそ民主的に管理するため、30年経過したら原則は解除する審査を行う仕組み作りなど、解除や保存・公開の仕組み化が不可欠だ。(三木)

  秘密指定が解除されるまで情報が残っていないと何も出てこない。(瀬畑)

  既に秘密保護法制のかかっている防衛秘密の場合には、2007年から2011年の間に指定された防衛秘密は約5万5千件、この期間中に廃棄されたのは約34,300件だ。廃棄が進められていた原因の一つは2011年4月に施行された公文書管理法の適用を受けていなかったことで、このこと自体を公文書管理法の所管部署も把握していなかった。

 また、制度の狭間は注意が必要だ。例えば、2001年の情報公開法の施行前には行政文書が大量廃棄されていた事が情報公開クリアリングハウスの調査で明らかになったが、これは文書管理のルールが変わった狭間で起こったこと。特定秘密保護法案もこのままいくとどのようなことが起こるのかわからない。(三木)

 

  情報公開法施行の直前に大量の文書廃棄した理由は、永久保存だった文書が同法により最長30年保存となり期限切れとなり「不要」となった点が大きいが、行政機関のみで「不要」と判断するのは、行政文書が「国民のものである」という考え方が希薄だったという背景が考えられる。この後、公文書管理法が必要との認識が広がったのは、情報公開請求により、市民が欲しい情報である「どのような経緯で政策が決まったのか」についての文書が残っていないことが発覚したことがきっかけだ。「特定秘密」の適切な管理は、公文書管理問題の一部でもある。(瀬畑)

  特定秘密の廃棄について特別なルールは設けられず、公文書管理法が適用されると今政府は説明をしている。特定秘密の廃棄は他の行政文書と同様に内閣総理大臣の同意が必要となり、歴史的に重要な文書は国立公文書館等へ移管されることにはなりそうだ。ただし法案では、文書の保存期間が満了しても秘密指定が解除できないものは、そのまま保存期間を延長して各行政機関が保有することになっている。解除の審査の具体的な手順・手続が明らかではないため、課題は多い。(三木)

  秘密を解除する仕組みにより、秘密を無用に増やさない工夫が必要だと思う。(参加者)

  米国の秘密指定制度は大統領令で行われており、秘密指定の仕組みと同時に、解除の仕組み・秘密指定の適切性を確保する仕組み・解除する仕組みが具体的に規定されている。原則25年で自動解除とされており、解除できないものについては具体的な理由が求められる。また米国の秘密指定の監察・監査は、秘密を持つ連邦政府機関とは異なるミッションを持つ機関で行われている。オバマ政権の大統領令では、秘密が増えすぎると秘密を管理するなどによる行政コストがかさむ等非効率になるという考え方のようだ。(三木)

 

~ 第3者機関のチェックがあれば民主的に情報をコントロールできる? ~

  OECDの報告書に掲載されている2009年の調査によると、政府への信頼性と政治のリーダーシップに対する承認の相関は高く、日本は両者とも20%台と他のOECD諸国の中でも低い結果となっている。法案の可否に留まらず、どうやったら日本政府は国民の信頼を得られるのかという観点から、国民にとっての秘密管理や情報公開を考える必要があるのではないか。(三木)

  政府を信頼してほしいと言われても無理な現状を変え、民主的に秘密管理を進めていくためにも、公文書管理の文化を根付かせていく必要があるのではないか。(瀬畑)

  政策過程を後で検証する際に非常に重要となる公文書の管理が蔑ろにされているのが実態だ。(辻)

  公平性をもった第3者機関による秘密/公開のチェック機能がないのが問題ではないか。(参加者)

  第3者委員会なら信頼できる、というわけではない。重要なのは、どういう権限と、どういう人と、どういう役割をもたせるのか、という点を、政府の説明責任を果たさせるとう観点から、第三者機関の実質を明確にすることだ。(三木)

  公文書管理とリンクさせて秘密指定の乱用へ歯止めをかけられるか。(参加者)

  秘密事項の公文書管理が既に制度化されている米国が参考になる。秘密事項でも、まずは公文書館に移管され、秘密指定されている事項とともに秘密とする理由・解除予定日が明示される。(瀬畑)

  日本は、米国の秘密指定について秘密を守るための仕組みのみ参考にし、解除や無用に増やさない仕組みは参考にしていない。いかに秘密を広げずに管理してコントロールするかという情報の民主的管理の仕組みを構築する必要がある。(三木)

 

~ 健全なジャーナリズム環境は ~

  法案にはあいまいな点が多く、行政の裁量権を拡大させるのが狙いなのではないか。罰則の適用外となる「正当な取材行為」とは、誰がどのように判断するのか。行政を取材するときのスタイルが激変し、情報を持っている側の優位性が増すことが予測される。(参加者)

  ジャーナリズムという社会の健全性を保つ回路がダメージを受けるインパクトは大きい。(三木)

  情報操作がしやすくなる社会が生まれることになるのでなないか。リークする人間にとってハードルが高まる法案が通れば、情報が出てこなくなり、取材の質は落ちざるを得ない。行政による取材への圧力例があるように、もとより日本の報道の自由は非常に少ないことに加えてだ。(参加者)

  2001年に自衛隊法改正により「防衛秘密」保護制度が設けられた前後での報道をとりまく環境変化について、報道関係者がもっと情報発信してくれると、今回の法案について考える上で大変いいと思う。(三木) 

 

~ 国民の知る権利を考えていく ~

  日本国憲法を私たちの暮らしに活かしたいと思っている。特定秘密保護法を通しても自分の知る権利にどう影響するか考えて行きたい。(参加者)

  「秘密」が最終的には公開されるという点が保障されるよう、政府の説明責任の意識を高め、政治文化のなかに歴史的検証のしくみを組み込んでいってほしい。(瀬畑)

  対立関係を超えて、政府や市民が話し合える場を作れるとよいと思う。(参加者)

  特定秘密保護法案について、どういう政府の秘密の構造の中で起こっているのかということに着目し、秘密を民主的に管理・コントロールするきっかけにするよう、多くの人に引き続き考えていってもらいたい。(三木)

 

    

 

  当アドボカシーカフェに関し、日本経済新聞にて10月28日朝刊/社会面「論点争点」で取り上げられました。 ◆

 

◆ 次回のアドボカシーカフェは、ゲストに浜田進士氏をお迎えし「子どもの権利条約」について一緒に考えます。12月2日(月)18:30-21:00、文京シビックセンター5F会議室にて開催する予定です。ご期待ください。◆

 

◆◆◆ご支援はこちらから(税金の控除がご利用できます)◆◆◆ 

***2013年10月24日企画のご案内資料はこちら(保存用)***

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