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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第11回助成

DPI女性障害者ネットワーク
SJF助成事業第1次中間報告(23年6月

 

助成事業名:『障害のある女性の複合差別の実態を記録し、届けるプロジェクト  

 2012年『障害のある女性の生活の困難―人生の中で出会う複合的な生きにくさとは―複合差別実態調査報告書』発行からその後10年の活動を集約し、明らかとなった課題を掘り下げ、複合差別解消への提言等を報告書としてまとめ、刊行後は連続講座を開催することにより、社会啓発や支援者育成、当事者のエンパワメントに貢献する事業とする。

 

助成金額 : 270万円

助成事業期間 : 2023年1月~2024年12月 

実施した事業と内容:   

 申請当初は、2023年3月に「障害のある女性の複合差別実態調査報告書2022年度版)」として刊行する予定であった。

 報告書作成プロジェクトは2022年4月に発足しており、企画および執筆者選定、依頼は昨年中に予定通り行うことができた。

 原稿集約もほぼ予定通り、今年1月中に終了したものの、本プロジェクト以外の活動やメンバーの多忙が重なり、やむを得ず報告書刊行の期日を6月30日とし、書名は、『障害のある女性の困難~複合差別実態調査とその後10年の活動から~』と変更した。

 専従者がおらず、メンバーそれぞれが仕事や生活を抱えながらの活動であるため、時間に余裕を持たせ報告書の質を充実させることを優先したためである。

 

 2月から5月にかけては、事業管理者および各講座を担う責任者を人選し決定した。

 北海道および東北は現在会員が不在であり、講座を開催し障害女性の課題周知に努めることは重要である。現地に住む障害女性にアプローチし、事業の重要性や、講座開催の意義等、連絡調整を重ねた。

 その過程であらためて感じたのは、障害女性の複合差別への認知の低さであり、障害者の自己実現を阻む地域の福祉資源の脆弱性であった。

ASTA

(写真上=プロジェクト打合せの様子:メンバーは、熊本、京都、名古屋、東京から参加)

 

今後の事業予定 : 

 申請当初は全国5ヶ所(札幌・東京・名古屋・京都・熊本)で対面とオンラインによるハイブリッドでの講座開催を計画。札幌講座については、現地の意向によりオンラインのみで10月に開催する予定となった。

 この講座とは別に、北海道あるいは東北での対面による講座開催の可能性を模索して行きたい。

 また、11月に熊本講座、2024年3月に京都、7月あるいは8月に名古屋、10月あるいは11月に東京開催を計画している。

 熊本講座については、地域の障害者団体だけではなく、女性分野で活動している人々と連携して開催できるよう、調整中である。

 

 

助成事業の目的と照らし合わせ 効果・課題と展望   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例を挙げた。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるかを記載。

 とくに、助成申請書の3-5で5つの評価軸について記載した「課題と考えることとそれへの対策」に関連させて、どのように変化したのかも記載。

(1)当事者主体の徹底した確保 

 報告書の原稿執筆者は障害女性18名、障害男性1名、障害を持たない女性3名であり、障害女性当事者の経験と意見が充分に反映されている。

 また、各講座の責任者はすべて障害女性が担うことになっている。

(2)法制度・社会変革への機動力

 報告書の内容は、障害女性の複合差別の現状をテーマ別にまとめ、解消するための制度改革や社会意識の変革の必要性を提起し、とくに提言として総合的に記述した。

 今後開催する講座も、法制度や社会変革への提案を提示できるよう、内容を検討して行きたい。

(3)社会における認知度の向上力 

 報告書刊行をHPやSNS、メンバー個々のネットワークを駆使して広報する。また、これまでにつながりのある報道機関の記者、研究者などにも情報提供し、さまざまなルートでの社会的発信を行っていく。

 刊行した報告書を確実に読み、活用してもらえる進呈先の検討を行い、実行する。

 開催する講座の広報戦略を考え、幅広い層の参加が得られるよう努める。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 障害女性の支援にたずさわる福祉・医療・保健関係機関や、相談機関に報告書を進呈するとともに、各地での講座参加を呼びかけ、障害女性の課題と支援にあたっての学習を促す。

 異性介助の問題を指摘する時、ともすれば介助にたずさわる人々の誤解を招く場合がある。

 介助は人々の暮らしを支える重要な仕事であるにもかかわらず、それに見合う社会的評価を得られてはいない。介助労働者の過酷な勤務や低収入、不安定な社会的地位の問題は、介助を受ける障害女性の生活の質にも反映される。

 介助にたずさわる人との連携をはかり、意思に反した異性介助を含む介助現場の課題について、共に考え改善への行動につなげていくことが重要と考える。

 また、障害者団体内部で女性の参画を促進し、男性中心になりがちな運営を是正するために、障害男性の協力と意識改革を進めていくことも重要と考える。

(5)持続力 

 2012年複合差別実態調査報告書は、刊行してこの10年間、私たちの活動の中で多くの人々に届き、さらに求められて何度となく再版を繰り返した。

 私たちの報告書は手に取り読み継がれれば共感を呼び、さらに多くの人々に関心が広がって行くことを実感している。本事業で刊行する新しい報告書も同様に持続的に社会へ影響力を与えていくと考える。

 さらに各地で講座を開催することにより、障害女性の課題の認識と複合差別解消の意識が醸成され、具体的な施策実現へとつながっていくことだろう。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 障害女性が被る複合差別という社会的課題の根底には、障害者差別および性による差別の解消がいまだ果たされず、双方の差別を是認するような社会の仕組みや慣習が存在し、人々の意識に優生思想が根付いているためと考える。

 さらに複数の差別を複合的・交差的に受ける複合差別の認識も低いため、複合差別の可視化は容易ではない。

 複合差別の課題は障害女性だけではなく、マイノリティーな立場にある人々が背負わされている、共通する課題であると考える。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。 

 本事業の報告書と講座で障害女性の複合差別を伝える時、当然ながら障害者差別と性による差別の存在とその解消の必要性をも伝えていくことになる。

 報告書の読者および講座参加者は二つの差別について自身の活動や知識、経験を踏まえ、あらためてその解消の必要性を確認し、具体的な行動へとつながる機会となるだろう。

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。

 障害種別を超えた障害当事者活動、男女協働参画、DVや性暴力被害者支援、福祉・医療・保健の関係機関とそこにたずさわる人々との連携・協力が必要である。  ■

 

 

 

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