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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第11回助成

一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェ
SJF助成事業第1次中間報告(23年6月

 

助成事業名:『ふぇみ・ゼミU30:フェミニズム視点を醸成する若年向けゼミナール及びワークショップ  

 一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェが運営する「ふぇみ・ゼミ」(2017年開始)が主力にしているものであり、次世代のフェミニズム視点を持ったアクティビスト、研究者、公務労働者、企業労働者などの育成を目的としている。本事業の対象者は18歳から30歳までの若年層である。事業の主軸は2つある。

 一つ目は、2018年より続いている「ふぇみ・ゼミU30ゼミ」(年間プログラム)である。これは、ジェンダー、フェミニズム視点を持っているアクティビスト、研究者、ジャーナリストなどを講師に招いて講義を受け、受講生の活動や関心を広げることを目的としている。

 2つ目は、2022年から開始された、短期集中のサマーワークショップである。なお、本事業ではウィンターワークショップも行う。ワークショップの目的は、インプットに偏りがちな既存の「ふぇみ・ゼミU30ゼミ」ではカバーしにくい、少人数での綿密な討論、第三者に理解されるようなプレゼンテーション、社会運動のさまざまな方法論、参加者同士のネットワーク作りに置く。

 加えて、次世代のリーダー層の養成も、本事業の目的に含まれる。具体的には、現在進行形で社会運動をしているふぇみ・ゼミのスタッフをチューターとして、若年層同士でのネットワーク作りやノウハウの継承を図り、講座のプログラムや社会に向けたアクションの企画・運営を通して、ジェンダー平等の実現に向けた社会運動をリードしていく層の養成を図る。

 

助成金額 : 300万円

助成事業期間 : 2023年1月~2024年12月 

実施した事業と内容:  

  2023年3月より広報活動を開始し、SNSでの周知やチラシの配布を行った。

 現在32名が年間プログラムの「ふぇみ・ゼミU30ゼミ」に申し込んでいる。

 4月26日に「ふぇみ・ゼミU30ゼミ」初回ガイダンスを開催し、今年度に実施予定の講座の紹介を行った。

 5月17日に「近代スポーツから考えるジェンダー、セクシュアリティ、人種、自然」をテーマに、スポーツとジェンダー・セクシュアリティを専門とする井谷聡子氏(関西大学)を招いて講座を実施した。会場には学生や会社員などの7名が出席した他、ジェンダー初学者も参加した。若い世代のスタッフが司会を務めることで、同年代の参加者は遠慮せず自由に意見を発信できた(写真下)。

Kaida SJF

 また講座後に開催した懇親会は、参加者同士が講座内容に関する議論をさらに深める時間となった。本講座はスポーツという身近なテーマから、ジェンダーやセクシュアリティを考えるきっかけを提供した点で、ジェンダー初学者の参加者からも好評だった。

 

今後の事業予定 : 

■2023年 ふぇみ・ゼミU30講座

6月14日 斎藤正美(富山大学・ジェンダー研究)「失われたジェンダー平等政策ーバックラッシュ30年を問う」

7月19日 げいまきまき(アーティスト)「仕事であるということ、望まない消費に抗うこと~セックスワーカーとして~」

9月13日 宮下萌(弁護士)「ネット上の差別を考えるー法制度の観点からー」

9月16日 関東大震災朝鮮人虐殺100年フィールドワーク 梁大隆(1923記憶する行動)

10月4日 川端舞(自立支援センター勤務、ライター)「インクルーシブ教育の権利―障害児として普通学級に通った私を肯定してくれたもの」

11月8日 渋谷智子(成蹊大学・社会学)「家族をめぐる変化とヤングケアラー」

12月20日 古賀徳子(沖縄国際大学・戦時性暴力研究)「沖縄における日本軍慰安所と米軍の性暴力」

1月24日 河庚希(サウスカロライナ大学・エスニックスタディーズ)「在日朝鮮人フェミニズムー内なる壁を突き破る」

 

■2023年 ふぇみ・ゼミU30 サマーワークショップ

9月4日~8日(予定)事前レクチャー:アクティビズムの方法論を各講師から

9/8に1日ワークショップを実施

 

■2023年 ふぇみ・ゼミU30 ウィンターワークショップ

2024年2月26日~3月1日(予定)事前レクチャー:アクティビズムの方法論を各講師から

3/1に1日ワークショップを実施

 

助成事業の目的と照らし合わせ 効果・課題と展望   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例を挙げた。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるかを記載。

 とくに、助成申請書の3-5で5つの評価軸について記載した「課題と考えることとそれへの対策」に関連させて、どのように変化したのかも記載。

(1)当事者主体の徹底した確保 

 本事業の目的は、ジェンダーと多様性をめぐるさまざまなテーマを通して、既存社会に根差している差別構造を多角的に理解し、そうした構造を変容させていくための方法論を身につけた次世代リーダーを養成することにある。

 ふぇみ・ゼミU30講座は、学生・院生スタッフが中心となり、講座の運営や講座後の懇親会の開催を行っている。また、受講生による自主的な読書会・映画上映会・研究会等の実施を後押しする目的で、少額助成金制度を含むさまざまなサポートを提供する他、オープンチャットを利用し、過去のゼミ生ともやりとりできるよう整備している。

(2)法制度・社会変革への機動力

 各講座を通して、差別をなくしていくためのさまざまな運動・活動について学ぶとともに、講座を通してそれぞれが深めた問題意識を表現・発信していけるよう、サマーワークショップやウィンターワークショップの場で、さまざまな方法論を実践する機会を提供する予定である。

(3)社会における認知度の向上力 

 社会運動に関わるメーリングリストや掲示板で情報発信をする他、講師や書籍を紹介する短い動画を制作しSNS等で発信している。また、申請団体がこれまでリーチできていなかった層に情報を届けられるよう、独自のメーリングリストの整備を行っている。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 申請団体は、さまざまな国や地域、分野で草の根の運動を展開している個人・団体と協力関係を構築している。

 近年は、トランスジェンダーやセックスワーカーの権利等をめぐり、SNS上で相対立する意見が交わされていることもあり、どちらの意見が正しいのかと悩んでいる人も多い。そうした中、「党派的な」議論に振り回されるのではなく、自分で考え行動することが重要であるという立場から、異なる意見をもつ人・団体とも引き続き関係構築を深めていく。

(5)持続力 

 申請団体では特定の人に仕事が集中しないよう、現在、20名程度のアルバイト・スタッフを雇用している。どの程度の役割や業務を引き受けるかは、生活とのバランスや向上させたいスキルに合わせ、スタッフ自身が判断できる。また、先輩スタッフが新しいスタッフを育成していくなど、スタッフ間で相互に研修・練習を行う仕組みも取り入れている。こうした工夫を通して、スタッフのバーンアウトを回避する他、主体性を重視した運営を心がけている。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 差別は、ジェンダー、セクシュアリティ、階級、民族、障害といった様々な要因が交差することで生じている。差別のないジェンダー平等な社会を実現するためには、こうした差別の交差性を理解すること、また具体的実践としての社会運動の作り方を学ぶ必要がある。

 若い世代が身近で起きるジェンダー不平等の問題に直面しても、現在の社会ではその原因を学んだり、その問題を共有する機会が限られている。

 また若年層はSNSを通じて社会問題について発信することには長けているが、社会運動を体系的に組織するための方法を知る機会は少なく、SNSだけでは長期的な社会運動につながりづらい。

 差別を生じさせる社会的構造について体系的に学び、知識や経験を共有しあい、解決に向けて連帯するためのコミュニティ形成が不可欠である。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。 

 本事業は、ジェンダー平等な社会の実現に向けて、若い世代が社会運動を実践するための具体的ノウハウを学ぶ機会を提供できる。短期集中型のワークショップを通じて、差別の解消に向けて必要となる社会運動の方法論の継承を図る。参加者同士の主体的な交流を重視し、若年層同士でのネットワークづくりを促す。

 またジェンダーと多様性をテーマとする講座を通じて、差別が生まれる要因を多角的に考えられる人物を養成する。

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。

 申請団体は、若い世代がジェンダーやフェミニズムについて学ぶ機会を提供することを重視しているが、部落差別や障害者差別、労働運動や環境運動などの分野で活躍する人・団体とも協力・連携することが有効だと考えている。     ■

 

 

 

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