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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第11回助成

明日少女隊Tomorrow Girls Troop (TGT)
SJF助成事業第1次中間報告(23年6月

 

助成事業名:『明日少女隊 個展  

 明日少女隊はこれまで、性犯罪の刑法改正、広辞苑の「フェミニズム」の定義の改訂、アート界のセクハラ、「慰安婦」をめぐる議論など、多岐にわたる日本のフェミニズムの課題について、アートとアクティビズムのプロジェクトを展開してきた。 これまでの明日少女隊の過去の作品の展示を東京で開催し、日本の女性問題を広く学べる場を提供する。 日本と東アジアの若年層の女性や性的少数者に向けて、ジェンダー問題の啓蒙活動を行い、ジェンダー平等な世の中を目指す。具体的には、アート作品の制作と発表、市民参加型のワークショップ等、アートやデザインの手法を取り入れて問題解決を目指すアクションを行う。

 

Kaida SJF
(写真=ロサンゼルスのウィメンズマーチにて)

 

助成金額 : 300万円

助成事業期間 : 2023年1月~2024年12月 

実施した事業と内容:  

 2023/2/10-2/16の間、日暮里の脱衣所~(a) place to be naked~というギャラリースペースでQueer Horizonというグループ展に参加。そこでアーティスト・フィルム「男女二元論を超えて」とトランスの権利に関するパフォーマンスで使用した3種類のプラカードを展示。映像は女性用と男性用の山道がある日本の山でのパフォーマンスを記録したものだ。

 トランスジェンダー・ノンバイナリー当事者のつくる・フォルスさんと共に、明日少女隊はどちらの道も選ばず、岩やシダ、生い茂る薮の中を歩き、「男坂」と「女坂」の間にある道を切り開く映像だ。

 この行為は抵抗の意志を表しており、男女二元論を押し付けるこの社会に疑問を持ち、生き残るため、そして未来を形作るために、新しい道を自ら生み出す姿を、パフォーマンスで表現。

 

 2023/2/16には映画上映 + 討論会を実施。上映イベント「トランスについて学ぼう!」というレクチャー動画の上映と参加者との対談を行った。

 

今後の事業予定 : 

 2023年7月、東京で個展「We can do it!」の開催が決定。会期は7月22日(土曜日)から8月6日(日曜日)まで。夏休みにかぶるので、多くの学生に来て欲しいという意図がある。キュレーターはニュージャージー市立大学ギャラリーのキュレーター兼美術史家の由本みどりさんに決定。

 場所は北千住buoy(https://buoy.or.jp)の2階のギャラリースペースとカフェスペースの一画に決定。作品の販売とグッズの販売を計画。

 この展覧会にあわせて、アートダイバー社(https://artdiver.tokyo)からフェミニスト・アートの歴史も学べる明日少女隊の画集の出版が決定。この本も展覧会でも販売予定。

 本の出版と展覧会のオープニングを兼ねたイベントを7月21日(金曜日)の夜に北千住buoyのギャラリースペースで開催予定。

 

助成事業の目的と照らし合わせ 効果・課題と展望   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例を挙げた。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるかを記載。

 とくに、助成申請書の3-5で5つの評価軸について記載した「課題と考えることとそれへの対策」に関連させて、どのように変化したのかも記載。

(1)当事者主体の徹底した確保 

 若い女性や性的少数者がまだまだジェンダーの問題について語りにくい土壌があるため、日本の若い女性や性的少数者がジェンダー問題に声を上げることについての意義とリスクを十分理解してくださった方とのみ企画し、マイノリティーの声を潰さないようにする。また、様々なマイノリティーの周縁に置かれた属性の人々を排除しない表現や空間を提示する。

(2)法制度・社会変革への機動力

 個展に展示する予定の「慰安婦」問題についてのビデオ・写真作品「忘却への抵抗」が、右翼による妨害行為を受ける可能性があるため、作品のテーマに理解を示し、妨害があるかもしれないということを、あらかじめ覚悟しているギャラリーで開催することが決定した。今後はすでに《平和の少女像》の展示などをしてきている表現の不自由展の実行委員の方達と連絡を取り、対策について相談し、警備スタッフを雇い 、警察ともあらかじめ連携を取れるようにしておく。

 このような対策の状況もSNS やメディアで積極的に発信し、マイノリティーに対する表現の不自由さが危機的状況であることを社会に訴え、社会の論調を変えていくことに貢献したい。

(3)社会における認知度の向上力 

 若者や学生、特に美大生はフェミニズムについて学ぶ機会が少ない ため、近隣の学校機関にビラを配り、学生を展覧会に招待する。 メディア、SNS、出版予定の本を活用して、若者や学生が、安全にフェミニズムを勉強できる場を展覧会の女子力カフェで提供できるように準備する。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 フェミニズムやアートへの無理解による摩擦が課題としてあげられる。特にアンチフェミニストからのバックラッシュやトランスジェンダーの権利問題をめぐってのフェミニスト同士の仲間割れなどが予想される。しかし、明日少女隊のメンバーは50人と大所帯のため、事前にさまざまな団体の情報を入手しやすい利点がある。事前の下調べを欠かさず、リスクを見極めながら活動を進める。

 一部の隊員は、アサーティブな会話術など心理学的分野に詳しく、協力関係を構築するために必要なコミュニケーションにも詳しいため、グループ内でそれらの情報を共有し、社会改革のために上手にステークホルダーとも良い関係を築いて行けるよう準備する。

(5)持続力 

 学生やシングルマザーも多い若手グループであるため、経済力がなく生活が安定しないメンバーが多い。マイノリティーグループであるため、経済的社会的に活動の継続が難しくなる場合がある。 そのため、活動に関わる隊員には、その人の必要に応じた謝礼を渡し、生活が困窮することなく活動できるよう個別配慮する。チームワークで労働力をカバーし、どの隊員も無理させない活動を目指している。隊員内のセルフケアへの意識を高め、持続可能で健全なグループを目指す。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 日本で最も定評のある美術雑誌、『美術手帖』の調査では、同紙の過去 360 冊で 特集したアーティストのうち、女性はたったの7名だったという。2019 年のあいちトリエンナーレでは、芸術監督が出展作家を男女半々にすると提案をした際、 多くの反対の声があったという。

 60 年代から続くフェミニスト・アートは、美術史を語る上で重要な存在だが、多くの日本の美術大学では教えていない。それどころか、日本では政治的なアートを嫌う風潮が強く、本来であれば、市民が社会問題を知る窓口を担えるはずの社会派アートが排除され続けている。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。 

 日本の人権問題を伝える若いフェミニスト団体の作品が、日本国内で展示される機会は稀であり、明日少女隊の個展は、新聞や本などの情報が届きにくい若者に対し、アートを通して同世代同士の目線で、ジェンダー差別やレイシズムを考える場を提供することができる。

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。

 ローカルなアプローチとして、ギャラリー周辺の学校に呼びかけ、社会科見学の一環として学生に展覧会に来てもらうよう促す。見学にきた学校には、明日少女隊が出版予定の本をその学校の図書館に寄付するなどのインセンティブを用意する。 また、出版予定の本の販売も同時に行い、展覧会に来た人が本を 持ち帰り、さらに学びを深めることも期待できる。

 これらの活動を通して、日本のより多くの若者がフェミニズムを身近なものと捉え、特に女性や性的マイノリティーの若者が自分の権利についての知識を得ることができるようにする。    ■

 

 

 

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