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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第10回助成


気候危機と水害:ダムで暮らしは守れるか?連続セミナー実行委員会
SJF助成事業中間2次報告(22年12月

 

助成事業名川を住民の手にとりもどす~市民が考える気候危機下での「流域治水」~  

 熊本県球磨川を事例に、日本の河川政策の現状、海外のダム問題や川とのつきあい方との比較、川とわたしたちの暮らしの関わりをめぐる諸問題、住民参加・住民決定による河川政策づくりのあり方について、流域住民が知り、学び、考える「場」を通して、住民発の流域治水提言をとりまとめ、国や県の施策に反映させる。この活動を通して、住民主体による「流域治水」の重要性を広く社会に広め、住民の声が活かされた地域住民主導の政策づくりを実現する。

助成金額 : 100万円

助成事業期間 : 2022年1月~2023年6月 

実施した事業と内容:  

○球磨川流域の被災地現地調査、被災者聞き取り調査(継続)

 球磨川流域の広範な被災地、被災者に関して被災前後の様子の聞き取り調査を開始した。並行して他の市民グループが行っている聞取り調査を共有しており、まだ途中段階であるが互いに補完しながら、山の崩落や伝統的な川との暮らし等について当団体で調査を行っている。

○県議会、国会議員向け働きかけ(継続)

 引き続き、県議会議員、国会議員への働きかけとして、県議会議員の一般質問に関する協議と対話(6月、9月、12月定例議会)、県庁や国交省申入れ時への同席、国会議員の被災地調査案内と協議を継続している。

○市民向け啓発キャンペーンへの協力

 流域の市民・住民グループ等と協力し、河川整備基本計画や有識者懇談会、環境アセスメント、被災後の復興まちづくりが抱える課題などを知らせる取り組みを進めた。特にSNSやパンフレット作成、チラシ折込、HPへの情報掲載等を通した発信、昔の球磨川の豊かさを流域住民の声として広く共有する勉強会の開催協力を通し、広く問題を伝えることに貢献している。また現在、環境アセス手続きの方法レポートに関する意見公募が行われており、近日中に開催されるオンライン勉強会への協力を行う予定。

○流水型ダム視察

 2022年10月、川辺川ダム環境アセス手続きの参考事例であり、国内ではほぼ同規模に当たる福井県足羽川(あすわがわ)ダム建設予定地を視察。現地関係者と国交省職員に案内対応を依頼し、流水型ダム計画概要や工事中の環境影響等についてのヒアリングを行った。

○流域治水政策の先進地視察

 全国で先駆けて命と暮らしを第一に考える地域づくり政策として「流域治水条例」を制定した滋賀県庁を訪ね、当時県知事として政策を勧めた嘉田由紀子氏並びに現在の担当部署より、条例制定の経緯、内容、制定後の取り組み、評価について詳細な話を伺った。

 

○連続講座の開催

 連続講座「川と森とともに生きる球磨川流域の未来」を4回開催した(熊本の会場とオンラインでのハイブリット開催)。地域の人々が包括的に「流域治水」について考えるきっかけになるよう、各分野の専門家からの講義を受けて、議論を行い球磨川流域のあるべき姿について考える場を提供している。講演資料に加え、一部は講演録を作成し一般公開している。

なお、講座の開始と第1回講座について、朝日新聞(7月3日)に紹介された

【第1回】「『山が水を貯める力』について考える~森林保水力ってなに?~」(22/6/25開催)
講師:蔵治 光一郎 さん(東京大学大学院農学生命科学研究科(農学部)教授)

 2020年7月の球磨川水害では、人的被害や家屋の被害の多くが本流の増水ではなく支流の増水で、水だけでなく流木や土砂も一緒に流れてきたことが指摘された。支流の上流の森林は荒れており、かつ、各地で大規模の皆伐が行われていることが住民から指摘されている。国や県が(緑の)流域治水を打ち出す中、球磨川流域の約8割を示す森林にどのような課題があり、解決手段があるのか、森林の保水力の観点からの講義、質疑応答を行い、森林に対する理解を深めた。

参加者:参加約110名
講演録:こちらから

 Kaida SJF

 

【第2回】「森林を活かし、暮らしを守る~多発する災害の中で~」(22/7/3開催)
講師:佐藤 宣子 さん(九州大学大学院農学研究院森林政策学分野 教授)

 球磨川豪雨災害では、谷筋から流れ出た土砂と流木被害が発生し、下流に甚大な被害拡大がでているが、それには現在の山林の状況、国の森林政策が影響している。また、今後の森林問題を考えるためには歴史から学ぶ必要がある。全国的な森林政策の動向と球磨林業の歴史や特徴を紹介しつつ、林業従事者や自治体の役割は何か、また流域住民が共に「減災」のための森づくりに参画できるような、暮らしを守るための林業への転換について講義を受け質疑応答を行った。

参加者:オンライン現地合わせて約100名
講演資料:こちらから

Kaida SJF

 

【第3回】「住民の声を復興まちづくりに活かすために ~宮城県気仙沼 防潮堤問題に学ぶ~」(22/8/27開催)
■メイン報告:三浦 友幸 さん((一社)プロジェクトリアス代表理事、気仙沼市議会議員、大谷里海づくり検討委員会事務局長)
■サブ報告:柴田 さん(熊本県立大学環境共生学部教授)

 被災地の「いち早い復興」と「住民意見の反映」は、どちらかしか選べないのか。住民の声を行政の政策に活かすには、どうすれば良いか?東日本大震災後、宮城県気仙沼市では、復興事業として防潮堤計画が持ち上がったが、住民が主体となった地域での勉強会や署名などさまざまな活動、合意形成を通して、計画変更や砂浜の保護が実現した。この気仙沼大谷海岸の事例を中心に、住民参加型の復興まちづくりのあり方について報告を受け、意見交換を行った。

参加者:オンライン現地合わせて約120名
講演資料:三浦友幸さん=こちらから、柴田祐さん=こちらから

Kaida SJF

 

【第4回】「動く川に『ざわめく自然』は宿る~流域治水における環境の位置~」(22/10/8開催)
講師:森 誠一 さん(岐阜協立大学地域創生研究所・教授、越前大野市「イトヨの里」館長)

 長い歴史の中で、川は人の生活・歴史・文化と培う風土を造る一方、洪水による水害ももたらしてきた。そのために近年は治水・利水のみが重要視され、川が持つ多様な機能は忘れ去られている。川の直線化やコンクリート化は私たちの暮らしや生き物にどのような影響を与えてきたか。近年の河川環境の悪化は顕著であり、川はますます日常生活から遠くなり、私たちは生き物と風土が創ってきた「自然のざわめき」を感じることができなくなっている。そこに住む人や生き物の視点で、流域治水を考える上で重要な、これからの河川との付き合い方について、魚類保全の観点から講義、質疑を行った。

参加者:現地18名、オンライン約80名

 

 

助成事業の目的と照らし合わせ 効果・課題と展望   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例を挙げた。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるかを記載。

 とくに、助成申請書の3-5で5つの評価軸について記載した「課題と考えることとそれへの対策」に関連させて、助成当初あるいは前回報告時からどのように変化したのかも記載。

(1)当事者主体の徹底した確保 
  • 中間報告に比較して、さらに球磨川流域や県内の住民グループ・市民グループとの連携を深め、球磨川流域・熊本県内の住民グループ・市民グループ3団体(「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」(熊本市)、「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」(人吉市)、「美しい球磨川を守る市民の会」(八代市))、被災当事者による地域グループ3団体(「7・4球磨川流域豪雨被災者・賛同者の会」(人吉市)、「球磨川流域住民による再生ネットワーク」(球磨村神瀬地区)、「坂本町被災者・支援者の会」(八代市坂本町))と連携。連続講座開催周知やキャンペーン、視察対応、提言活動、定期的な訪問と聞き取り調査等を重ね、最新の情報提供・情報収集を行っている。
  • 市民グループ等に属さない流域住民についても、聞き取り調査や現地訪問、連続講座開催周知、キャンペーン周知などの形でゆるやかな連携を行っている。
(2)法制度・社会変革への機動力
  • 4月に「球磨川水系河川整備計画(原案)」、「環境配慮レポート」(法に基づく環境アセス手続きにおける「配慮書」に該当)、11月に「同方法レポート」(同「方法書」に該当)が国から示されるなど、当初予想より早いスピードで国の政策決定が進みつつある。現行の法制度上での意見書提出等には取り組んできたが、日本の法制度自身の閉鎖性、限界性から、政策に住民の声が十分に反映されているとは言い難い。
  • 一方で、連続講座を通して、球磨川豪雨災害の被害拡大の一因となった大規模皆伐や崩落などの背景にある現行の森林政策、日本の河川行政を巡る課題(第1回・2回・4回)、災害直後の復興まちづくりで起きがちな拙速な復興事業や合意形成の軽視(第3回)など、流域のこれからを考える上での新たな気付きを得つつある。
  • また、滋賀県視察を通して、滋賀県流域治水条例の内容や背景、実践例、行政側と住民側の評価について知ることができ、行政制度や組織における課題や解決の方向性についても認識を新たにした。
  • 県議会議員、国会議員等との連携を継続し、事業者である国や県への働きかけに取り組んでいる。また、マスコミ関係者への働きかけを強化し、問題の所在の明確化、住民の声の発信を強化している。
  • 今後事業を継続していく中で、球磨川流域や他事例の普遍化、国内外への発信を継続していく。
(3)社会における認知度の向上力 
  • 連続講座の趣旨やテーマ設定は、球磨川・川辺川ダム問題に関わる他の市民グループではこれまで扱わなかったものが多く、広範な住民や関係者からの参加を得ている。またSNSやチラシによる周知、人吉球磨地域への新聞折り込み(第4回)などにより当事業について認知度は向上しつつあると感じる。特に、毎回リピーター参加も多く、講演後のディスカッションでは毎回参加者との間で活発な議論が交わされ、企画意図の浸透、理解の深化を実感している。
  • 視察対応、講演、情報発信、SNS活用など、新規の関心層発掘を意識的に行っている。
(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)
  • 事業者である国や県との対話や提言活動を継続している
  • 連続講座開催に当たり県や国の関係部署への周知を図り、参加を促している
  • 流域の川づくりを考える際、ダム問題是非を避けて議論することは難しいが、連続講座周知の際はダム問題への直接的言及を避け、「ダムに賛成」「どう考えれば良いのかまだ判断できない」と考える層からの広範な参加を促し、「ともに考えるための対話の機会づくり」に意識的に取り組んでいる。
(5)持続力 
  • 現地側では、20~40年の市民活動実績のあるスタッフが事業企画、管理を担当し、広範な人脈やノウハウを活用して活動を展開している。また、東京側の国際NGOスタッフからは、事業マネジメントやキャンペーン展開、アドボカシー活動に取り組む上での助言を受けると共に、それぞれの国内外での現地活動へのフィードバック、連携に取り組んでいる。
 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 日本の河川政策における法制度の未熟さ、河川行政を巡る関係省庁の連携欠如、政策提言を実現するための市民社会が未熟である点(「反対運動」から「提言活動」へシフトできていない点)、議員や住民や市民社会を含めてまだ広く問題が認知されていない点、近代化・都市化し川や森との関わりが希薄化した現代的生活スタイルの広がり、ダムを含めた河川政策が進む地域が過疎高齢化し外部からの情報が限定的である点、政策決定への住民参加等本来のあるべきモデルが広く認知されていない点、など。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。 

 既存の市民グループと異なる角度からの課題の社会への発信、これまで取り組まれていなかった「川と共に暮らしてきた流域の伝統知や記憶」の聞き取り調査実施と可視化による掘り起こしや問題提起、賛成・反対運動ではなく「住民自身の声を取りまとめて提言し実現へつなげる」という試みを通して、関係する住民や事業者への新たな角度からのアプローチを模索する。

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。

 流域の多様な住民やグループとの連携や、問題の共有を進めると共に、様々なレベルの議員、行政関係部署への働きかけを更に進め、広範な立場からあるべき姿の共有や対話の機会づくりを進める。  

 

今後の事業予定 : 

●連続講座「川と森とともに生きる球磨川流域の未来」開催

【第5回】川や市街地の洪水をどう逃がすか(仮)(2023年1月以降開催予定)

都市部や市街地の氾濫を防ぐための取り組みについて学ぶ勉強会を開催予定。

【第6回】海外の川づくり事例に学ぶ(仮)

ヨーロッパやアジアなど海外における川と共に生きる治水政策、川づくり事例の先進事例を元に、日本における川づくりを考える勉強会を開催予定。

【第7回】命を守るための真の流域治水とは(仮)

滋賀県流域治水条例などを事例として紹介し、球磨川流域ならびにこれからの日本のあるべき流域治水政策の姿を考える勉強会を開催予定。

●市民による球磨川流域の未来へ向けた提言書(仮)とりまとめ(2023年4月頃)

講演会内容やそこで出た意見、聞き取り調査、視察調査などの結果を元に、市民の視点から見た球磨川流域の川とともに生きる未来へ向けた提言書を取りまとめ、県知事や国土交通省へ提出、対話の場を設ける。

2023年5月 事業完了  ■

 

 

 

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