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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第10回助成

性売買経験当事者ネットワーク灯火
SJF助成事業中間報告(22年6月

 

助成事業名性売買経験当事者ネットワークの立ち上げ  

 日本社会では、女性の性の商品化や性搾取が深刻な状況があるが、性売買があまりにも当たり前になっているため、多くの市民は、それが問題であることもわからなくなっている。本事業では、性売買が女性に対する暴力で性搾取であることを前提にし、当事者たちの運動を深めていくこと、当事者運動のための様々な連帯事業をすることを目的としたネットワークの立ち上げ・構築を行う。

 

事業計画 

①当事者が繋がり、安心して語れる場づくり

 月1回、性売買経験当事者女性で集まり、ミーティングを行う。また、コロナの状況を見ながら当事者たちの交流合宿を行い、関係性を深め、ネットワークの目的を共有し、発展に向けた議論をする。

②実態を伝える活動

 HPを開設し、性搾取の実態を発信するとともに、社会への啓発、問題提起を行う。

③研修活動

 3か月に1度、性売買経験当事者女性だけでなく、支援団体や研究者などと研修の場を持ち、各地の当事者運動や性売買に関する法制度を学ぶ機会をつくる。

 

助成金額 : 100万円

助成事業期間 : 2022年1月~2022年12月 

実施した事業と内容:  

1月  活動方法、発信内容の検討
2/3  当事者ミーティング
3/20  当事者ミーティング
4/7  当事者ミーティング
5/14-15   当事者合宿
5/17  AV新法反対声明作成・動画撮影
5/19 AV業界に有利なAV新法に反対する緊急アクション勉強会にてスピーチ(写真下)

Kaida SJF
5/22  AV業界に有利なAV新法に反対する緊急アクションにて声明発表
5/23    性売買の現場で殺害された女性の慰霊、AV新法反対ロビイング
5/24    国会議員へAV新法反対、性売買の実態を伝えるロビイング
6/2     当事者ミーティング
6/10 新聞取材対応
6/14    アドボカシーカフェ打ち合わせ

 

今後の事業予定

 月1度ミーティングを続け、性売買経験当事者としての経験を共有し、安全に語れる場づくり、信頼関係の構築を継続する。合宿や交流会を行い、関係性を深め、ネットワークの目的を共有し、発展に向けた議論をする。
HPの開設はAV新法関連の突発的な動きなどがあったことから遅れているが、秋ごろには開設し、性搾取の実態を発信するとともに、社会への啓発、問題提起を行いたい。そのために今、原稿を準備している。
支援団体や研究者などと研修の場を持ち、各地の当事者運動や性売買に関する法制度を学ぶ機会をつくり、数か月に一度、勉強会を行う。

 当初の予定から変更したこととして、2022年9月に韓国研修へ行き、韓国の性売買経験当事者ネットワークと交流し、性売買のなかにいる女性を支援する団体への訪問や、日韓合同の研究会を通して学びを深め、国際的な連帯を深める。(そのためにかかる渡航費等の経費も本助成金から捻出したい。)

 

助成事業の目的と照らし合わせ 効果・課題と展望   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例を挙げた。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるかを記載。

 とくに、助成申請書の3-5で5つの評価軸について記載した「課題と考えることとそれへの対策」に関連させて、どのように変化したのかも記載。

(1)当事者主体の徹底力 

 当団体の活動は、当事者による当事者主体の活動であるため、この点は徹底されており、当事者主体でない活動にはなり得ない。当事者たちで活動をつくり、継続している。

(2)法制度・社会変革への機動力

 2022年4月末に性売買を合法化する「AV新法」の骨子案が自公政権から出され、反対アクションが立ち上がった。当団体も反対アクションの賛同団体となり、契約に基づき性交を金銭取引の対象とすることを合法化することの問題を伝えるため、声明を発表し、集会や勉強会でスピーチし、直接議員へのロビイング活動を行い、多数のメディアに取り上げられ、被害当時者の立場から現状の発信を行った。

(3)社会における認知度の向上力

 性売買経験当事者が現場で起きている暴力や被害、搾取の実態を伝え、現状を変えるための当事者運動はこれまで日本社会にはなかったため、大きな注目を浴びる活動になると思われる。しかし、同時に、性売買で利益を得てきた業者や買春者などからの攻撃も大きくなることが予想される。そのため、大々的に活動を広めるのではなく、まずは当事者同士で安全・安心感を第一に活動できる場づくりを徹底しようと考えてきたが、AV新法で、性売買を国家的に合法化する道が切り拓かれようとしているため、急遽声明を出したり、ロビイングやスピーチ、取材対応などを通して活動を社会に伝えることとなった。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 当団体の活動に際して、相反する立場をとる利害関係者とは、性搾取によって巨額の利益を得てきた業者や、女性の人権を侵害し、加害してきた買春者らということになる。そのため、良好な関係を築く必要はなく、むしろ当事者たちが経験した現実を伝え、業者らを批判することによって、社会変革につなげていく必要がある。

 一方で、支援活動などを通して、当事者と出会い、性売買・性搾取の実態に気づいてきた支援者や研究者らとは学び合い、当事者だから知り得た実態を共有するなど、連携していく。すでにAV新法の問題点を伝える活動を通して、研究者、医師、弁護士、女性支援者、メディア関係者などとのつながりができており、そうした方々と共に学ぶ機会を大切にしていきたい。

(5)持続力

 日本ではまだ誰も行ったことのない活動であるため、どのようなリスクがあるか、想定しきれない部分があるが、AV新法の問題点を伝える活動を通して当団体の存在が世間に知られ始めたため、さっそく性売買の経験当事者の発信を嫌がる業者側からの攻撃がはじまっている。口をふさがれることがないよう、メンバー同士で支え合い、励まし合い、当事者以外の理解者とのつながりも大切にしながら活動していきたい。

 また、活動を持続させるには、財政的な支援も必要となる。本助成による活動期間に、現状を伝える活動を通して理解者を増やすことで、助成期間終了後は、別の助成金を申請したり、寄付を集めるなどして、継続していきたい。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 日本社会では、女性の性の商品化や性搾取が深刻な状況があるが、性売買があまりにも当たり前になっているため、多くの市民は、それが問題であることもわからなくなっている。そのため、性売買の現場にいる女性たちは常に性暴力の被害に遭っているが、それが被害として捉えられていないこと。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。

 性売買の現場の実態を知らないことから、性売買が女性に対する構造的な暴力であることを理解していない市民が多いと考えるため、性売買の実態を当事者として伝えることで貢献できると考える。

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。

 多くの性売買経験当事者は、社会の無理解や性売買斡旋業者による分断から、自身が当事者であることや、性売買を通してどのような被害経験があったのか、経験や気持ちなどを安心して話せる場所がなく、今悩んでいることや困っていることも相談できない状況にある。そのため、まずは当事者たちが安心して出会い、話ができる場を作り、信頼関係を構築・維持することが何より重要だと考える。また、安心・安全の確保を第一に重視しながら活動し、支援団体や研究者、弁護士や医師などの理解者を増やし、そうした方々とも信頼関係をつくりつつ、勉強会を開くなど、地道な連携が必要だと考えている。

 

【Ⅲ】その他 自由記述

 性売買が女性に対する暴力であるという理解があまりにも乏しい社会であるため、実態を知らぬまま、無自覚に業者側の視点に立って性売買の問題を考えようとする市民も多くいるため、私たちの経験を伝えることを通じて、性売買の問題を多くの市民が考えるきっかけとなればと考えている。   

 

 

 

 

 

 

 

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