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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第9回助成最終報告


NPO法人ASTA(2022年1月)

団体概要

 2017年5月17日設立。性的マイノリティへの理解不足が原因で起こる差別やいじめ、当事者の自己否定などの問題の改善するため、延べ約46,161名の教職員・保護者・児童生徒・地域住民に対して、420回の出張授業・研修・講演会を実施してきた。(21年12月末)。

 

助成事業名・事業目的

地方におけるダイバーシティ実現に向けた能動的市民の育成

 本事業の目的は、LGBTQ+などの性的マイノリティの人権保障について、各地方において支援・啓発活動を担うことができる能動的市民を育成し、性の多様性を認め合う社会の実現に向けて制度・政策提言できる地域団体を創設することである。

 弊法人の啓発活動はこれまで一定の成果を上げてきたものの、活動地域は主に愛知県と岐阜県に限られてきた。偏見や差別等が根強く残る地域社会を改善していくためには、その地域に根差した市民がアドボカシー活動を展開することが不可欠である。弊法人がこれまで培ってきたノウハウや連携実績を活かして、市民運動のリーダーとなれる人材を育成し、パートナーとなれる団体を立ち上げることで、アドボカシー活動に関する地域間格差を是正すること、それが本事業のゴールである。

 

助成金額 : 50万円 

助成事業期間 : 2021年1月~12月

実施事業の内容: 


  • 「地域連携型LGBTQ+出張授業」事業
1月23日 越前市:市民80人

2月19日 越前市立北新庄小学校:5年生24人・6年生27人

7月3日 LGBTQ+出張授業 IN金沢:教職員・市民30人 *写真下

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9月25日 サッポロLGBTQ+出張授業:26人

10月9日 教育ダイアログ金沢:35人*写真下
     (金沢レインボープライド前日のイベント)

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11月27  日 大阪府立富田林市:市民11人

12月3日 札幌市屯田中央中学校:教職員30人

 
  • 「地域団体活動支援」事業
3月8日 第1回北陸ミーティング

3月22日 第2回北陸ミーティング

3月31日 第3回北陸ミーティング(白山市にて打ち合わせ)

7月11日 第4回北陸ミーティング(7月3日振り返り)

10月4日 第5回北陸ミーティング

10月27日 第6回北陸ミーティング(10月9日振り返り)

 
  • その他の出張事業・講演会(助成金を使用していない案件も含む)
  ―以下を含む138件―

1月7日 刈谷市立小垣江小学校:教職員30人

1月29日 豊川市:生活指導主事36人

3月1日 蒲郡市:市職員30人

3月2日 名古屋市立名東高校:1.2年生720人

3月7日 第2回みんなで保護者会:保護者22人

3月10日 桑名市立光陵中学校:2年生195人

6月2日  星城高校:1年生417人

6月26日 岡崎パートナーシップを求める会:議員30人

7月1日  江南市役所防災センター:市職員・管理職35人

7月26日 名古屋市教育センター:新任校務主任88人

8月4日  大府市役所:新任教員研修25人

9月9日  劇団うりんこ:俳優8人

10月3日 スクールカウンセラー:100人

10月21  日 バクスター株式会社:社員130人

10月23  日 豊田市ボランティア連絡協議会:社会福祉士40人

11月16  日 椙山女学園中学校:1年生203人

11月17  日 多治見市立陶都中学校:全校生徒・保護者533人

11月22  日 岐阜大学医学部附属病院:医療従事者30人

12月4日 品川区立日野学園:PTA26人

12月27  日 愛知教育大学:学生310人

 

助成事業の達成度:


  • 「地域連携型LGBTQ+出張授業」事業として、現地の団体と連携して7回の出張授業を行うことができた。特に7月に金沢で実施した出張授業は、北陸チーム(地域団体)が初めてファシリテーターを務めたため、同じグループ内に弊法人(名古屋チーム)のスタッフが付き添う形で行った。展示ブースの準備や受付業務なども名古屋チームと北陸チームが一緒に行い、連携を深めることができた。さらに、札幌と大阪においても現地団体と連携して、出張授業を行うことができた。
  • 「地域団体活動支援」事業として、6回にわたって打ち合わせ、勉強会、ファシリテーター研修、市民団体運営のノウハウの教授を行い、後述するように北陸チームの自走につなげることができた。
  • 「その他の出張事業・講演会」として、139回実施した。これらの日常的な取組の蓄積が、第1・第2の事業の効果的な実施につながっている。
 以上より、アウトプットのレベルで見る限り、当初に予定していた事業計画は達成できたと考えている。

 

助成事業の成果:   

 本事業の第1の目的は、性的マイノリティの人権保障について支援・啓発活動を担うことができる能動的市民の育成である。助成期間の間に実施した約140回の出張授業は、単にLGBTQ+に対する偏見や差別意識を除去するだけでなく、小さくとも何らかのアクションを起こしたいと考える市民の育成に寄与している。高校生以下に対するアンケートを集約した結果(2021年7月末まで、約2万人対象)では、出張授業の前後で「強くそう思う」と回答した割合が、「困っているLGBTQ+の人がいたら味方になりたい」で28%から65%に、「人の考え方が自分と違っても、否定せずに尊重できる」が41%から68%に、「差別や偏見がなく多様性が認められる社会にしたい」が60%から77%に大きく上昇している。なお、成人対象のアンケート(約1万2000人対象)でも、同様の傾向が確認できる。

 こうした効果は、人権保障が停滞しているとされる地域においても、同様に発揮されている。7月に金沢で実施した地域連携型LGBTQ+出張授業では、以下のような感想が寄せられた。

「今から、是非行動に移して居心地の良い学校、社会、自分らしくのびのびと成長できる社会、世界になることを目指して、まずは、学校の中で変えられることに取り組んでみます」。

「いろいろな方と話をする中で、これこそ多様性!だと実感できました。自分の周りの環境から少しずつでもいいから変化を起こしていきたいと強く強く思いました。」

「ラベリングなど必要のないやさしい世界になればいいのに…と心から感じています。一方で、私にもできることを模索中でもあり、これからも考え続けていこうと思います。」

 本事業の第2の目的は、上記のような市民を「点」にせず、性の多様性を認め合う社会の実現に向けて制度・政策提言できる地域団体を創設することである。北陸チームは、従来はそれぞれ別々の団体・サークルあるいは個人の集まりであったが、2021年に金沢レインボープライドが開催されることをきっかけに点と点がつながり、本助成金を得て実施したミーティングや出張授業を通して、団体として自立することができた。現段階でのその結節点が、10月に金沢レインボープライド・ウィーク内で開催した「教育ダイアログ」である。あくまでも北陸チームが主催する形を取り、出張授業における基礎知識講座や対話のファシリテーターも、北陸チームを中心に実践した。参加者は一般公募せず地元の教育関係者に絞って開催したが、県外からパレード目的で来た方々の飛び入り参加もあり、定員を超す盛況となった。今後弊法人は、「足りないときにはお手伝いに行く」スタンスで、北陸チームを応援したいと考えている。

 以上のように、北陸地域で市民運動のリーダーとなれる人材を育成し、パートナーとなれる団体を立ち上げる、という申請書で提示した本事業の目的を達成し、アドボカシー活動に関する地域間格差の是正に貢献できた。

 

助成事業の目的と照らし合わせた効果・課題と展望:   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか(自力での解決が難しい場合、他とのどのように連携できることを望むか)。

(1)当事者主体の徹底した確保


 申請書では、弊法人が当事者・当事者の親のメンバーを中心に構成されているように、新たな地域団体において当事者の参加をどのように増やすかが課題であることを指摘した。中間報告では、金沢在住の当事者・家族と連携していることに言及したが、金沢レインボープライドを有効活用したことで、その後北陸チームのメンバーは16人まで増加した。また9月と12月には、サッポロレインボープライド・札幌レインボーファミリーと連携して、北海道で出張授業を実施できた。

(2)法制度・社会変革への機動力

 申請書では、パートナーシップ制度導入の動きに活動をリンクさせていく必要性について述べた。中間報告では、「Marriage For All Japan」と協力して同性婚裁判の報告会を実施していることに触れたが、これはその後も継続している(8月に第9回報告会を実施)。また出張授業においては、パートナーシップ制度に関する情報を頻繁に更新し、最新事情を提供するように努めている。もっとも、同性婚の合法化は未だ実現しておらず、社会変革を待つのではなく、さらなる積極的働きかけが求められる。

(3)社会における認知度の向上力

 申請書では、愛知県内では知名度があるが北陸地域では十分でないことに触れ、メディアや行政と連携した成果発信の必要性を指摘した。中間報告では、弊法人の活動が朝日新聞に掲載されたことを記載したが、続いて8月に中日新聞の「この人」にも掲載された。さらに、9月にNHK名古屋「さらさらサラダ」に代表がテレビ出演し、11月にはセーブザチルドレンからオンラインインタビューを受けた。11月25日に刊行された雑紙『クロワッサン』(No.1057)にも、弊法人の活動が紹介された。これらの広報活動は、性的マイノリティのアドボカシーに対する社会的認知を高めることに寄与したと考えている。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 申請書では、必ずしも性的マイノリティの人権保障に熱心とはいえない自治体との連携が必要であり、課題であることを述べた。中間報告では、7月の金沢の出張授業で市および教育委員会の名義後援を取得したことを触れた。9月には北陸からの参加はなかったものの、行政意見交換会を開催している。取組が遅れている自治体を巻き込むことは容易でないが、先進自治体との連携を強化し、そこから働きかけてもらうことも突破口になると考えている。愛知県日進市では、弊法人の代表が男女平等推進審議会に委員として参画している。

(5)持続力

 申請書では、新型コロナウィルスの感染拡大に対応する必要性をあげ、中間報告では、研修を重ねて遠隔での出張授業を実施していることに言及した。現在では、リアルタイム、ラジオ形式、オンデマンド動画など多様な方式を確立したことで依頼者の条件に対応できるようになり、事業を継続できている。また、オンラインを活用することで、大阪、長野、北海道でも出張授業を実施するなど、活動の範囲が広がりつつある。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 中間報告では、性的マイノリティが「いない」のではなく「見えない」存在となっていることに起因する、多様性への無理解と差別が要因であると記載した。この認識については全く変わらないが、出張授業を継続する中で、単に「知ってもらう」だけでは不充分で、「知った上で何ができるか」を考えてもらう重要性を強く感じるようになった。さらには、考えるだけでなく、小さなことであっても実際にアクションを起こすことが望ましい。「大切なのは性別や国籍、身体的特徴などではなく、人格や人柄であること」を弊法人は重視しているが、それが埋没している背景に、意識変容が行動変容につながりにくいことがあるのではないか。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。

 弊法人は、「性というものを個性として尊重することが、当事者も非当事者も自分らしく生きることにつながる」ことに気付いてもらうために、「当事者との対話」にこだわって事業を進めてきた。一方で、意識が変わったとしても、1人だけで行動を起こすハードルは高い。多くの人がみんなで日常の行動をわずかでも変化させ、継続的に積み重ねていくには、それを後押しする文化(風土)を生み出す必要があり、本事業で取り組んだ地域市民団体の創設は、その突破口を開くものである。

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。

 中間報告でも述べたように、自治体、法曹関係者、関連団体との協力が必要であるが、特に教育委員会を含む行政機関との連携は不可欠である。人権保障の地域格差を是正するためには、特定の自治体だけでなく多様な組織とつながり、各地の当事者の声を届けることが有効である。有志で結成した「愛知・岐阜にパートナーシップ制度を求める会」に弊法人も加わり、「声をあつめる」プロジェクトを支援した。具体的には、約500名から寄せられた意見をまとめて報告会を行い、さらに市ごとにファイルを分けて、行政担当者と共有している。       ■

 

 

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