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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第8回助成

NPO法人 ASTA=SJF助成事業中間報告(2020年6月

 

団体概要 

 2017年5月17日設立。性的マイノリティへの理解不足が原因で起こる差別やいじめ、当事者の自己否定などの問題の改善するため、延べ約23,049名の教職員・保護者・児童生徒・地域住民に対して、232回の出張授業・研修・講演会を実施してきた。

 

助成事業名性の多様性を認め合う社会の実現に向けた地域ネットワーク構築事業  

 本事業の目的は、LGBTなどの性的マイノリティの人権保障について、学校の教職員や保護者、自治体関係者を含む市民が互いに情報・行動連携できる地域ネットワークを構築し、性の多様性を認め合う社会の実現に向けた制度・政策提言を行うことである。
弊法人の啓発活動はこれまで一定の成果を上げてきたものの、ダイバーシティをさらに推進するためには同性婚合法化をはじめとする社会のしくみの改善が不可欠であり、そのためには人権・多様性の理解を深めた市民が、当時者/非当事者の立場を超えて連帯することが求められる。「点から線、そして面」へとネットワークを拡大し、権利擁護者を「育てる」だけでなく「つなぎ」、さらに「動かしていく」こと、それが本事業の1年後のゴールである。

 

事業計画 

 新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて、当初の計画【プランA】を実施するのが難しいことが予想されるため、代替案【プランB】を用意し、状況に合わせて柔軟に対応する。プランAがネットワーク構築を目的とするのに対し、プランBは教職員・保護者等を対象とした自主講演会を通して、ネットワーク構築に向けた土壌をつくることを目的とする。
1月~12月:LGBT出張授業【A・B】
自治体、学校、地域住民を対象に年間90回を予定:月平均7~8回
3月:ネットワーク構築に向けた第1回連絡会【A】
主に学校・教職員・保護者に呼びかけ、勉強会を開催する。
5月:ネットワーク構築に向けた第2回連絡会【A】
主に自治体職員と地域住民に呼びかけ、勉強会を開催する。
6月:ファシリテート研修【A・B】
弊法人が中心になってネットワークをファシリテートするため、ボランティア・スタッフに対する研修を行う。
8月~11月:教職員・保護者等を対象とした自主講演会【B】

 

助成金額 : 100万円

助成事業期間 : 2020年1月~2020年12月

実施した事業と内容:  

① 「中部地域ダイバーシティ・ネットワーク構築」事業
・ネットワーク構築に向けた第1回連絡会
参加者:行政職員・ASTA理事・他NPO法人理事など 20人
内容:パートナーシップ制度についての勉強会

② 「LGBT出張授業」事業(助成金を使用していない案件も含む)
・1月8日 大垣特別支援学校
・1月16日 愛知県幸田町立北部中学校 教職員研修
・1月16日 豊田市福祉部障がい福祉課 職員研修
・1月23日 愛知県立瀬戸高校 生徒研修
・1月24日 豊田みよし親子劇場 会員研修
・1月27日 名古屋市立徳重小学校+常安小学校
・1月30日 愛知県立春日井工業高校 教職員研修
・2月1日 UAゼンセン
・2月5日 あま市市民人権講座
・2月9日 三河自立サポートアクセル
・2月12日 豊明市保育士研修
・2月13日 みよし市三好丘中学校
・2月15日 名古屋市市民活動推進センター
・2月17日 愛知教育大学

成果:
LGBT出張授業の前後に行ったアンケート結果(設立当時からの累計)を比較する。
中学生・高校生11,947人対象の場合、「友人に性的マイノリティがいたら抵抗がある」と答えた666人の生徒は、LGBT出張授業の事後アンケートでは240人に減少し、「先生が性的マイノリティだったら抵抗がある」1,454人は448人に減少し、「家族に性的マイノリティがいたら抵抗がある」1,722人は620人に減少した。
寄せられたコメントは、「話を聞いて安心しました」という内容が多く、今、まさに悩んでいる生徒に確実に届いている感触を得る事ができた。同時に、「ALLYになりたい」という感想も多く、当事者を取り巻く環境がいかに大切であるかを感じて認識できている。さらに、性的マイノリティだけではない問題だという気づきも多く寄せられており、若い世代への期待は大きい。
大学生、社会人8,715人対象のアンケートでは、「友人に性的マイノリティがいたら抵抗がある」364 人は115人に減少し、「同僚や上司、部下に性的マイノリティがいたら抵抗がある」1,479人は394人に減少し、「家族に性的マイノリティがいたら抵抗がある」495人は138人に減少した。
コメントでは、「知っているつもりになっていた」「生徒への接し方が今後変わる」「自分自身の壁に気が付いた」「制服さえ変えれば解決できる問題だと思っていたが、全く違った」など、学校や行政の職場における自身の言動を反省する内容が多く見られた。

 

助成事業の目的と照らし合わせ 効果・課題と展望   

【Ⅰ】次の5つの評価軸※)それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか(自力での解決が難しい場合、他とのどのように連携できることを望むか)。

※この評価軸はソーシャル・ジャスティス基金がこれまでの助成事業の成果効果を分析した結果、アドボカシーを成功に導く重要な評価軸として導出した。

(1)当事者主体の徹底力
 弊法人は当事者・当事者の親のメンバーを中心に構成されており、事業の柱の1つであるLGBT出張授業においても、当事者が主体となって授業をデザインし、自らのライフヒストリーを語り、非当事者と対話している。延期になったが、「LGBT出張授業 in 金沢」の準備にあたっては、現地当事者とその親とも連携することができた

(2)法制度・社会変革への機動力
 弊法人が設立されて以来、長らく連携してきた愛知県豊明市が、県内で2例目(全国で48例目)となる「パートナーシップ制度」の導入を決定し、同年51日から施行された。また、5月8日にはこの制度を使って、愛知県で初めてとなる同性カップルが誕生した。

(3)社会における認知度の向上力
 上記パートナーシップの導入にあたっては、弊社代表も共同会見を行い、地元メディアで大きく取り上げられたことで、性の多様性に関する認知度向上に貢献することができた。また、学校を中心とする主張授業の蓄積が評価されたことで、弊法人のメンバーがNHKに複数回に出演しており、この問題の重要性を社会に対して大きくPRする機会を得ることができた。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)
本事業では、地域ネットワーク発展のために、LGBT関連の取り組みに展望を見出せていない自治体(教育委員会を含む)をあえてステークホルダーとして重視し、積極的に出張授業をすることを試みている。延期になったものの、今回u<初めて北陸地域での活動が決定し、金沢市および金沢市教育委員会の後援を得られたことは大きな成果である。

(5)持続力
LGBT出張授業を通常月6回~10回程度のペースで実施しており、持続した取り組みとなるはずであったが、新型コロナウィルスの感染拡大を受けて中断を余儀なくされている。また、ネットワーク構築事業も第1回連絡会を開催して以降、停滞している。対面での直接対話がより効果を発揮する事業であるが、オンライン等での実施も検討している。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

性的マイノリティが「いない」のではなく「見えない」存在となっていることに起因する多様性への無理解と差別

 非当事者にとっては、当事者が身近にいないことが意図せず差別的言動をとることにつながり、そのことでカミングアウトによって当事者が可視化されない、という負の循環が継続されている。こうした構造の中で、弊法人が最も重要だと考える「大切なのは性別や国籍、身体的特徴などではなく、人格や人柄であること」が埋没してしまっている。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。

共生に向けた権利擁護者(Ally)の連帯

 性というものを「個性」として尊重することが、当事者も非当事者も「自分らしく」生きることにつながるということに、当事者との直接対話を通して気づくことが重要であるが、弊法人の啓発活動だけでは限界がある。問題解決のためには、性的マイノリティの人権保障に向けて連携し協働する地域の自律的ネットワークが、継続的に機能する必要がある。出張授業から発生する「つながり」を活かしてコンソーシアムを構築する、あるいはその土壌を整備することで、そのための「しくみ」「きっかけ」づくりに貢献することができる。

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。

自治体および法曹関係者との協働

 当初計画では、各自治体の行政機関(教育委員会を含む)との連携が最も有効であると考えており、その点は変わりない。先進的なアクションを起こしている自治体の協力を得ながら、取り組みに踏み出せないでいる自治体に働きかけていきたい。一方で、近年は同性婚合法化に向けた機運が高まっており、国内でも裁判が継続され、各地で報告会が実施されている。今後新たに法曹関係者とも連携していくことで、ネットワーク化を促進していきたい。

 

今後の事業予定:
当初の計画としての【プランA】と、代替案【プランB】を区別して記述する。

6月28日:Nagoya Pride 2020【A・B】
<主催>ASTA・名古屋レインボープライド<共催>名古屋あおぞら部<協力>在名古屋米国領事館
プライド月間であることにあわせて、オンラインイベントを開催する。学校や家庭での話やレインボープライド、諸外国における性的マイノリティにまつわる事情等について、上記団体メンバーがトークをおこなう。弊団体主催初のオンラインイベントとなるため、今後の事業を検討する上での大きなポイントとなる。6月末の実施であるが、中間報告書提出の締切間近のため、「計画」として記載し、成果を終了報告書にて記載する。

7月~12月: LGBT出張授業【A・B】
・7月
「名古屋市立猪子石中学校」開催予定
「知多市市民向け」中止
「豊明市立星城高校」開催予定
「瀬戸市教職員組合」中止
「岡崎市役所」中止
「豊橋市役所」開催予定
「岐阜県関市」中止
・8月
「津市橋北中学校」中止
「豊田市浄水中学校」中止
「豊橋市市民向け」開催予定
・9月(以降通常実施見込み)
「蒲郡市PTA」
「豊田市ボランティア連絡協議会」
・10月
「尾張旭市役所」2回
「豊明市立豊明高校」
「岡崎市立城西高校」
・11月
「岐阜大学看護学科」
・12月
「本巣市」
「安城市」
・日程未定「一宮市」「新城市」「西尾市」「岡崎市」
・8月9日「LGBT出張授業 in 金沢」

7月:ネットワーク構築に向けた第2回連絡会【A】
主に自治体職員と地域住民に呼びかけ、勉強会を開催する。

8月:ファシリテート研修【A・B】
弊法人が中心になってネットワークをファシリテートするため、ボランティア・スタッフに対する研修を行う。

8月~11月:名古屋市16区をはじめとする教職員・保護者等を対象とした自主講演会【B】
開催日1日あたり2区~4区をまとめて、複数日で実施する。基本的には、オフラインでの開催を目指すが、足を運ぶのが難しい等の参加者を考慮して、現地からオンライン(Zoom)でつなぐことを想定している。ただし、新型コロナウィルスによる情勢の変化によっては、オンラインのみでの開催も視野に入れている。また、この自主講演会事業の特徴は、名古屋市全域を対象としていることあり、参加者数を拡大することよりも、
「誰も取り残さないこと」を目指している。情報やつながりを真に必要としている方に、弊法人のメッセージを届けていきたい。

9月:第1回中部地域ダイバーシティ・コンソーシアム【A】
全てのステークホルダーおよび市民に対して幅広く呼びかけを行い、コンソーシアムを発足させる。LGBTに対する支援活動・啓発活動の成果と課題を情報共有し、多様性の促進に向け求めた施策を協議する。

9月:アドボカシーカフェ【A・B】
「“LGBT”をきっかけとして人権・多様性について“自分ごと”で考える対話」

11月:第2回中部地域ダイバーシティ・コンソーシアム【A】
第1回の議論を受けてさらに対話を行い、具体的な制度・政策提言を考案する。同時に、今後の連携・協力の在り方について方向性を定め、継続的なネットワークを構築する。

12月:提言をとりまとめて報告書を作成し、自治体・政府等に提出【A】

7月~12月:SNSやウェブサイトで活動や対話の成果を常時発信する【A・B】

 

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