ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第8回助成最終報告
特定非営利活動法人メコン・ウォッチ活動報告(2021年1月)
◆団体概要:
メコン河流域の国々(中国西南部、ミャンマー/ビルマ、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナム)に住む人々が開発の弊害をこうむることなく、地域の自然環境とそこに根ざした生活様式の豊かさを享受できることを目指し、現地の自然資源の豊かさや人々の暮らしの調査・記録、開発事業や開発政策の影響監視等の活動を行なっている。
◆助成事業名・事業概要:
「日本の開発援助による被害防止のために~JICA・JBICのガイドライン改定と適切な運用へ向けて~」
本事業では、日本の開発援助における、環境や社会への配慮を向上させることを目指し、日本の開発援助を主に担っている国際協力機構(JICA)および国際協力銀行(JBIC)がそれぞれ持つ「環境社会配慮ガイドライン」の適切な運用を促進し、その改訂にあたり、基準が強化されるよう働きかける。
◆助成金額 : 100万円
◆助成事業期間 : 2020年1月~12月
◆助成事業の達成度:
計画1)ガイドラインの適用に問題があった事例の教訓化
ティラワSEZの事例を通してJICAに対してはガイドラインの運用上の問題、また改定のポイントを指摘することができたと考えている。JBICに対しては、ガイドラインの解釈に関して市民側と理解の齟齬があることがわかり、ガイドライン改定に向けた今後の教訓として活かせると考える。
写真上=ミャンマーで日本による開発が進むティラワ経済特別区
計画2)JICAやJBICとの協議
具体的な案件に関し、開発機関であるJICAとは見解が異なることが少なくないものの、対話は成立している。一方、JBICは輸出信用機関という性質上、民間企業の利益保護に業務の重点があり、特に情報公開において困難を感じる場面が多く、対応に苦慮している。
計画3)改定に影響を与えるアクターへの働きかけ
前述のように、当初予定したより両機関ともガイドライン改定のスケジュールが遅れ、2021年にかかっているため、助成期間中は議員への働きかけを要する場面はなかった。
計画4)日本/海外のNGOとの情報共有と協働
コロナ感染拡大の影響で、海外出張が取りやめとなり、現地での勉強会などを実施することはできなかった。しかし、海外の市民グループに関しては、ユースへの情報提供を実現することができた他、多国籍開発機関のセーフガード政策の問題に取組む海外NGOに対し、JICAガイドライン改定プロセスに関する情報提供を行ない、情報交換と協働を続けられる関係を築けた。
日本のNGOとは、勉強会という形で、FPICやジェンダーについて議論する機会を持つことができた。ウェビナーは国連のビジネスと人権指導原則との繋がりを意識し、報告を行ったことで、通常のガイドライン関連のセミナーより、多くの視聴者を獲得することができた。
◆助成事業の成果:
ガイドライン改定のプロセスが、JICA、JBIC両機関で、想定したタイミングより後となり、助成期間中に、問題事例の情報を元にした提起・議論により、ガイドラインが被影響者の権利が守られる方向で改訂される、という大きな目標に到達することができなかった。また同様に、政府開発援助の実施を監督する立場にある国会議員やメディア、日本の市民に情報が提供され、ガイドラインへの関心が高まる、という点でもコロナウイルス感染拡大の影響で、会合やセミナーの機会が制限される中、十分に活動できたとは言えない。
だが、この困難な状況においても、これまでの現地や国際NGOとの関係を維持し、特にJICAの問題案件のモニタリングを継続できたことで、今後の改定のプロセスへ効果的な関与ができると考えている。
また、対応に難しさを感じてきたJBICにガイドライン遵守を求めるという点も、「ビジネスと人権」というイシューを強調し、事業実施企業に情報を届けることが、NGOからのプレッシャーになり得るとの感触も得られた。更に「ビジネスと人権」は、一般の新しい関心層に情報を届ける切り口にもなったと考えている。
◆助成事業の成果をふまえた課題と展望:
【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか(自力での解決が難しい場合、他とのどのように連携できることを望むか)。
(1)当事者主体の徹底力
本活動は、日本の援助機関(JICA、JBIC)の持つ環境社会配慮ガイドラインの水準の維持・強化を通し、被援助国の被影響住民の人権や生活を守ることに資する活動である。
このガイドラインはただあるだけでは実効性は担保されず、その遵守と向上に関し、モニタリング→問題指摘→適切な運用→基準強化→モニタリングというサイクルにおいて、市民社会がどれだけ関与し、現地政府以外からの情報を日本の援助機関や関係者にインプットできるかが鍵である。ミャンマーにおいては、NGOの監視が不可欠で、かつ問題が多いものの、軍事政権から「民政化」してまもない同国において、当事者で住民が行政と補償交渉を続けることが、JICAガイドラインを使って実現している。力関係において圧倒的に不利な立場に置かれることが多い事業の被影響住民の、エンパワメントのツールとしても重要なことに気づかされた。
(2)法制度・社会変革への機動力
もともと、環境・社会配慮ガイドラインのような開発援助機関に対するセーフガード政策は、被影響住民のみが制度を利用して対応するのではなく、国際NGOが関与することを想定して作られたものである。ガイドラインがいわゆる国際水準に改定された頃は、世界的な運動があり、様々なサポートが得られた。ガイドラインの実効性には「サイクル」に市民社会がどれだけ関与するかが鍵であるが、資金力のない日本の政策提言型のNGOがこの活動を続けるのは困難を極め、また近年、国内に多くの問題を抱える日本で、関心を持つNGOの裾野を広げることも難しいと言え、機動力は低下しているかもしれない。
しかし、これまで日本の世論の主流は、経済特別区は必要で、日本の石炭火力発電技術は質が高く輸出することは問題ないことだと考えていたと思われる。コロナウイルス感染拡大で、いわゆる「先進国」にいても生活安定は保障されたものではないということが認識され始めている。気候危機も顕在化し、経済開発一辺倒ではなく、ガイドラインのような社会や個人にとってのセーフガードの重要性が、意識されやすくならないだろうか。
特に、これまでは途上国の問題とされていた貧困について、日本の市民も「自分事」として問題を捉えてもらえる場面が増えると思われる。人権や環境、民主的なプロセス、そして、支援を提供する・受けるといったことについて、生存が脅かされる人も多い中、深く考える機会にするために、どうしたら良いのかと考えさせられている。
(3)社会における認知度の向上力
同様の問題意識を持つNGOとは情報交換を継続できており、また、勉強会の開催でネットワークが強化されていると見ている。「ガイドライン」に限れば、一般社会への認知を広げる点は課題であるが、前述のように「ビジネスと人権」や公平な社会の構築といった点で、これまでより広い支持を得られる努力を続けたい。
(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)
ガイドラインについて一定の建設的な議論ができる状態にない相手とは、他のNGOとも連携しながら、対話の機会を増やし、関係を維持するよう努めている。今後の課題。
(5)持続力
当団体を含むNGOのネットワークでは、20年かけ、環境社会配慮ガイドラインという一般にあまり知られていない制度の構築と運用の監視に取り組んできた。活動するメンバーは変わったが、知識や経験は一定継承されており、日本の経済開発による人権侵害をある程度防いできたと自負している。しかし、このような地道な活動を今後も長く続けることには資金面を含め課題が多いことは、以前から変わっていない。
一方、市民社会としてガイドラインの強化を実現した経験は、例えば「ビジネスと人権」の強化に取り組むグループにとって、有益な知見を含んでいるのではないかとも考える。ガイドライン普及の枠組みを超えて経験を伝えることで、ガイドラインの強化を達成する道があるのではないか、そこに課題と活路を見出す必要があるとも考えている。
【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。
(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。
開発に関わる人の中でも一般にも、現地の人たちも当然、日本のような経済・社会構造になりたいと思っている、という見方が一般的であることと、既に産業構造や社会が変わった日本の多くの人にとって、第一次産業やコミュニティを重視したいという被影響住民の希望はおそらく共感しにくくなっている。
(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。
ガイドラインは、現在の経済の枠組みの中で大規模インフラ事業をよりよく進めるためのものであり、問題の根本原因かもしれない現在の経済システムを温存させる側面も持っている。しかし、開発の問題を顕在化させることと、目前で起きる人々の暮らしの破壊を軽減することにガイドラインといった制度強化は重要な役割を果たしており、そこに市民社会の参加スペースを維持し続けることは重要である。
一方、コロナ禍の危機的な状況は、日本のこれからを考えるために、東南アジアで従来見られた人と自然の関係の豊かさ、厳しさなどを伝える機会であるかもしれない。特に、今後のパンデミックからの経済回復・刺激策として環境や社会に悪影響のある事業が増える可能性も否定できない中、歯止めとしてのガイドラインの重要性は増している。
(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。
ガイドラインに関しては、各イシューの中で、それぞれの分野で活動するNGOや研究者と協力していくことが有効と考える。
また、開発を実施する中でも、ジェンダー平等、意味のある住民参加、少数民族の権利、気候変動対策強化を通し、開発の意義自体もより深く問われるようになった。開発の現場で暮らす人々と引き続き協力し、各地の多様な価値観を日本の学生や一般に伝えていく。課題は前回報告と変わらず、日本の大学や、SNSを活用した情報発信に長けたグループとの連携をどう効果的に構築していくかだと考える。
※実施した事業の詳細:
計画1)ガイドラインの適用に問題があった事例の教訓化
当団体がモニタリングを行なっているミャンマー、ベトナム案件に関し、ガイドラインの適切な運用が行われるよう、以下の活動を実施した。
ティラワ経済特別区(SEZ)事業
日本が官民連携で進める「パッケージ型インフラ事業」。ミャンマーのヤンゴン中心市街地から南東約23kmに位置するティラワ地区約2,400ヘクタール(ha)に、製造業用地域、商業用地域等を総合的に開発する。日本の公的資金による各調査が実施され、電力など未整備の周辺インフラは円借款で、SEZ内は「海外投融資」という制度を活用し民間企業が開発する。地域の人々が大規模な移転対象となり、国際基準に則った適切な移転・補償措置を求める要望を住民がJICAに求めていたにも関わらず、早期開発区(約400ha)の移転で様々な被害が発生し、2014年6月には住民によるJICAへの異議申し立てが起きている。
*異議申し立て制度:環境社会配慮ガイドラインに定められている制度。事業の影響住民が、ガイドラインの不遵守の調査、問題解決のための対話の促進を求めることができる。
<1-6月>
- JICAが出資及び融資するティラワSEZ事業では、2014年に、被影響住民がガイドラインに基づく異議申立制度を使い、ガイドラインの不遵守を指摘した。なお、JICAの現行ガイドラインおよび異議申立手続要綱はそれまでのものを改定し2010年から施行されているものだが、この異議申立ては現行の施行後、初めての案件であった。第三者として判定する審査役が受理後に現地調査等を行い、その結果、違反は認められなかったが、影響住民の生活改善について、いくつか提言が出された。
その一つが、住民への共有地提供であったが未だ実現していない。この点につき、「ミャンマー・ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業のフォローアップについて」と題した書簡を審査役に2/19に送付。JICAが提言を実現するよう、審査役が引き続き情報収集・状況確認を行い、理事への提言を行うこと、また、2019 年度の異議申立審査役年次活動報告書への記載を含め、市民社会に対するより具体的な説明をするよう求めた。
- 同じくティラワ事業では、2020年2月に現地訪問したところ、新規開発地域(移転区域2-2西部)で、まだ13世帯が移転に合意していないにも関わらず家や農地の至近で工事が始まり、住民の通行に危険が及んだり、土埃や騒音など劣悪な環境で生活せざるをえない状況が確認された。また、ミャンマー政府(ティラワSEZ管理委員会)からは、立ち退いていない世帯に対して脅迫とも取れる通知書が出されていた。これらは、ガイドラインの不遵守が疑われる状況であった。この状況を受け、JICAに現状確認とミャンマー政府が住民と丁寧な合意形成を行うよう働きかけるべきと要請したが、ミャンマー政府の対応は強硬なままだったため、再度JICAに対し抗議文を送付、結果、予断は許さないものの、強制収用は回避された。
抗議文のリンク:
【緊急要請書】ミャンマー・ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業 ZoneB工業地域フェーズ4(移転区域2-2西部)の移転・補償プロセスにおける強制・脅迫等の回避を求める緊急要請書
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20200217.pdf
【緊急要請書】ミャンマー・ティラワ経済特別区(SEZ)開発事業 Zone B工業地域フェーズ 4(移転区域2-2 西部)の移転・補償プロセスにおける強硬措置に強く抗議
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20200226.pdf
<7-12月>
- 12月、ティラワ住民で構成される女性グループが、事業の影響による移転世帯の生活苦や、今後移転する人たちの懸念などを綴ったフォトエッセーを発行した。住民グループから事業者やJICAに現地で送付されているが、その日本語版を作成し、当団体のホームページで紹介した。
http://www.mekongwatch.org/PDF/Thilawa_WG_photoessay2020JP.pdf
ベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業
JBICが融資検討中であることを2020年2月に公開した建設予定の事業。三菱商事が参画。近隣には既にJBIC融資によるブンアン1発電所に加え製鉄所などがあり、累積的な悪影響も懸念される。気候変動が世界的な懸念事項になる中、JBICは脱石炭の潮流に逆行し、12月末に約600億円の融資契約を結んだ。
<1-6月>
- 3月と5月にJBICと会合を持ち、様々な点につき確認したが、JBICは住民移転計画および生計回復計画の有無と入手状況について回答しなかった。これはガイドラインで、JBICが確認しなくてはならない事項となっている。また、ガイドラインでは、「環境レビューのアカウンタビリティ及び透明性を確保するため…環境レビューに関し重要な情報につき、環境レビュー期間中に…公開する」、「環境レビュー時の情報公開」の内容として「環境社会影響評価報告書等以外に当行が環境社会配慮確認のため借入人等から入手した文書のうち、プロジェクトの実施国で一般に公開されている文書の入手状況及び当該文書」と規定されており、JBICが移転や生計回復に係る情報を回答しないことは、明らかにガイドラインの不遵守であった。
こうしたJBICのガイドライン運用の問題について、6月に開催された財務省NGO定期協議会において提起し、財務省の監督責任を問うた。また、同協議会に出席し部分的に回答したJBICから、ガイドラインの別の文言についてNGOとは違う解釈をしていることが露見したため(第2部1(1)「…環境への影響について、できる限り早期から、調査・検討を行い、これを回避・最小化するような代替案や緩和策を検討し、」)これについては、「環境への影響」には「地球温暖化」もあり、それを回避・最小化するような代替案や緩和策が検討されていなくてはならないと指摘した。
<7-12月>
- 8月、11月とJBICと会合を持ち、ガイドラインの解釈について再度議論したが、平行線を辿った。住民移転計画の入手有無についても一般に公開されていない文書のため回答する義務はないと解釈するとして、引き続き回答しなかった。NGOからは情報公開の在り方についてガイドライン改定時にも議論したいと意見した。
ミャンマー・ヤンゴン都市開発
ミャンマーの最大都市ヤンゴンの一等地である軍事博物館の跡地に、大規模複合不動産を建設・運営する開発事業(通称Y Complex事業)。JBICが出資企業に民間銀行との協調融資を行なっている。事業地はかつて軍事博物館で、環境アセスメント報告書に添付された賃貸借契約書によると、土地はミャンマー国軍が所有し、事業の高額な賃料が国軍の収入になっている恐れが現地からの情報提供で明らかとなった。
<7-12月>
- JBICに事実関係を問い合わせたが、民間企業との契約による守秘義務を理由に明確な回答がない。この件について、メールニュースを発行した他、8月に要請書を発出した。
【要請書】 ミャンマーにおける複合不動産の開発・運営事業(通称Y-Complex事業)に係る資金の流れ及び人権に関する説明についてhttp://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20200825.pdf
12月1日のウェビナーで、事業の問題点とJBICの関わりについて事例として報告した。
計画2)JICAやJBICとの協議
<1-6月>
- JICA環境社会配慮助言委員会にスタッフが委員として出席。ガイドライン改定に向けての包括的検討の議論に参加。8テーマについて開催された関連委員会のうち、以下4テーマに参加し、住民移転時の補償の確認の強化等を意見した。((3)国際基準、審査方法、(5)人権、ステークホルダー、ジェンダー、(7)自然生息地、(8)住民移転、先住民族)議論の内容は、ガイドライン改定を議論するために設置される諮問委員会に送られた。
改定に関連する議事録等詳細は以下に掲載されている。
https://www.jica.go.jp/environment/guideline/consideration.html
- JBICにガイドライン改定に向けたスケジュールを確認、この時点では8月までにJBICがレビューを終了し、9月にその結果を受けての公聴会が開催される予定で、そこで意見を述べる機会があることを確認した。その後、コロナウイルス感染拡大の影響でスケジュールは後ろ倒しになっている。
<7-12月>
- 8月からJICAが設置した環境社会配慮ガイドラインの改定に関する諮問委員会が始まり、スタッフが委員として参加している。8月には国際環境NGO FoE Japanと「環境・持続社会」研究センター(JACSES)と共同で「異議申立手続要綱の見直しに関するNGO意見書」、また、10月にも追加の提言書を提出した。異議申立手続要綱の見直しについては、ヒヤリング時の外部専門家の活用や、申立てをした人からの信頼を得られるような人選等を提言した。ガイドラインに関しては、特に影響住民との協議が、脅迫等のない中で行われるよう明言することなど、特に、これまでミャンマーのティラワの事例等で見られた問題から、市民社会から見た改定すべきポイントについて提言を行なった。諮問委員会の議論は継続中で、以下に順次資料や議事録が公開される。
https://www.jica.go.jp/environment/guideline/advisory_board.html
- Y Complexに関しては、11月に開催された財務省NGO定期協議会で、融資を行うJBICがガイドラインの定める情報公開の努力義務を果たしていないと指摘、議論した。
計画3)改定に影響を与えるアクターへの働きかけ
改定プロセスが当初予想したよりも遅く、積極的な働きかけは行えなかった。2019年に発出したNGO提言を元に、参議院・政府開発援助(ODA)等に関する特別委員会(2020年3月19日)でミャンマー・ティラワ等の事例が言及され、JICAのステークホルダーへの対応改善等が改定プロセスで適切に議論されるよう指摘された。
計画4)日本/海外のNGOとの情報共有と協働
<1-6月>
- 海外NGOへの情報提供:2月にミャンマーをスタッフが訪問した際、JICAガイドライン改定の進捗についてEarthRights International等に情報提供した。
- 日本のNGO間での情報共有:少数民族/先住民族の権利とFree, Prior and Informed Consent (FPIC)、また、森林やパーム油の認証制度におけるFPICの確認について、6/5、6/12の2回にわたり勉強会をインターネットの会議システムzoomで開催、延べ31名の参加があった。(講師:市民外交センター上村氏、木村氏、Rainforest Action Network川上氏)
<7-12月>
- 7月、NGOと研究者でジェンダー平等の国際動向、開発の中でのジェンダー配慮についてオンラインで勉強会を開催、意見交換を行なった。
- 別事業の企画で8月に計6回、FPICを題材に南アジアの若者たちとオンライン勉強会を開催したが、その一部を日本のNGO関係者と共有した。また、JICAのガイドラインについての解説なども行なった。
- 12/1にウェビナー「『ビジネスと人権』と国際協力銀行(JBIC)の環境社会配慮」をFoE Japan、Fair Finance Guide Japanと共催した。(協力:国際協力NGO 日本国際ボランティアセンター、認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ)国連のビジネスと人権指導原則導入の動向、これまでJBICが関与した問題案件の事例紹介、また、ガイドラインのようなセーフガード政策の重要性と限界を紹介した。当日視聴は約50名、後日の映像の視聴は約400回となっている。
詳細は資料・映像とともに以下で紹介している。
http://www.mekongwatch.org/events/lecture01/20201201seminar.html
- 12月、JICAガイドライン異議申立手続要綱の見直しに関する意見・評価の募集が始まるにあたり、JICAに日本語以外での情報周知と意見・評価の募集を行うよう提言。英語での周知情報がJICAウェブサイトに掲載され、意見提出フォームはミャンマー語・ポルトガル語も用意された(一方、周知情報そのものも多言語で掲載するよう提言したが、JICAは応じなかった)。意見・評価の募集開始について、海外のNGOに情報提供を行ない、意見提出を促した。 ■