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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第8回助成中間2次報告

ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム実行委員会(2021年1月)

団体概要

 このフォーラムは、ジャーナリストを目指す日本と韓国の学生が集い、それぞれの問題意識を共有しながらジャーナリストとしての視点を学んでもらおうと、新聞や放送の現役・OBの記者が中心になって始めました。

 第1回は2017年11月に韓国ソウルで開催。以降2018年8月に第2回の広島、2019年の2月に第3回を沖縄、5月に韓国の光州で実施、それぞれ日韓が抱える問題のスポットを巡り、関係者の話を伺いながら、議論をし合いました。このように活動は、現地での数日間のフィールドワークが中心で、年に1,2回の実施を目標に実行委員会もボランティアとして企画の立案・準備にあたっています。

 

助成事業名・事業概要

ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム

 日韓両国の現代史の現場を訪れて、双方の抱える歴史を学び、若い目で感じたことを議論しあいます。私たちはジャーナリストの原点は「平和と人権を守る」ことにあると考えています。こうした場を通じて学生たちが将来ジャーナリストとなって、日韓の架け橋となれるような視野を育んでもらえればと思います。フォーラムを1年に1,2回実施するとともに、学生たちが毎回「週刊金曜日」の紙面などで報告文を掲載してもらう試みも続けていきます。

 

助成金額 : 100万円 

助成事業期間 : 2020年1月~21年6月 ※コロナ影響により延長予定。

実施した事業と内容: 

■第5回フォーラムの開催

 2020年は1月29日~2月2日に4泊5日で九州の筑豊・水俣を回るフォーラムを実施しました。韓国から4人を含め25人の学生、それに現役・OBなどの記者も19人が参加しました。最初に、沖縄密約をスクープし、今なお80歳を超えても現在のメディア事情に危機感を持ち警鐘を鳴らし続けている

 元毎日新聞記者の西山太吉さんから、国家とメディアの関係について話を伺いました。そして筑豊では、エネルギー国策として興隆を誇った炭鉱の遺構だけでなく、そこで働いていた朝鮮の人たちの通ったという「アリラン峠」や墓地などにも足を運びました。水俣では、いまなお水俣病に苦しむ胎児性の患者の方々の話を伺い、何十年も継続して取材しているジャーナリストからアドバイスも頂きました

■第6回フォーラムはオンラインで開催(2020年11月28日)

 コロナ禍の元、日韓の往来・国内の移動ができなくなるなかで、実行委委員会としては、東京とソウルをzoomで結んだオンラインフォーラムを企画・開催し、約40人が参加しました。フォーラムでは韓国のテレビメディアと権力との闘いを描き、日本でも公開された映画「共犯者たち」を制作し、現在は独立系メディア「ニュース打破」のプロデューサーの崔承浩さん(チェスンホ)の講演をベースに、ネット時代のメディアのあり方について日韓の学生たちが意見を交わしました。

 

助成事業の達成度:

第5回フォーラムは、フィールドワークという形の中で、学生たちは、自分たちのやり方で取材し、連日遅くまで議論を交わしていました。韓国からは前回のフォーラムの参加者で、今回、兵役につく直前にフォーラムに一部参加した学生もいて、軍隊があり兵役の義務のある韓国の若者の実情を身近に知り、そこから参加者同士の国を越えた交流を実感しました。若い人たちの感じる力、こうした体験がジャーナリストとして欠かせない「他者への想像力」に繋がっていくであろうという期待があります。また、フォーラムに参加した日韓の数人は10月のアドボカシーカフェでも、その体験を発表する機会を得ました。

 参加した学生の大多数は新聞社や放送局でジャーナリストとして踏み出していますが、その後も連絡を取り合うなど交流が続いています。

■第6回フォーラムは、コロナ禍を逆手にとって日韓をオンラインで結ぶ初の試みでした。フォーラムに先立ち、日本側では2回、事前の勉強会を開き、崔さんの制作した2本の映画を鑑賞したうえで、バックグランドを学びました。

 そのうえで、当日は学生たちが一人ひとり、zoomのカメラの前に立ち、相手の国の言葉で一言、映画の感想を画用紙に書いてスピーチをし合いました。さらに日本の学生は、「ネット時代のメディア」と題して、自分たちで取材した映像リポートを作成、一方、韓国の学生はパワーポイントを作り、それぞれのメディア事情について発表を行い、能動的にフォーラムに関わることになりました。

Kaida SJF
      写真上=日韓学生フォーラム第6回(20.11.28) 東京会場での参加者集合写真

■フォーラムの活動を広く知ってもらうことと、参加した学生たちが常時情報を発信できる場として、ホームページの立ち上げを企画しました。

 しかし、実行委員や学生の連携がコロナの影響もあってスムーズにいかずに、2020年の年内の立ち上げができませんでした。とはいえ、今後の活動にも欠かせないため、2021年の1月から、ホームページの業者の選定やコンテンツの内容などの検討を始めています(21年春頃リリース予定)

■フォーラムは、これまで事務局のようなものがありませんでしたが、連絡や事務作業、それにホームページ業務などのために場所の確保が必要です。JCJ(日本ジャーナリスト会議)の事務所に常駐ではなく、いわば間借する形で事務局を置くことが決まり、ホームページの作成を機に連絡の拠点とすることにしました。

助成事業の成果:   

■ソーシャル・ジャスティス基金の助成を受けた2020年は2回のフォーラムを実施しました。基金から、これまでほとんど手弁当であった活動に財政的な裏打ちができフォーラムも内容的に充実したものにできました。

 コロナ禍で、双方の行き来ができなくなってもオンラインという形で、日韓のジャーナリストを目指す学生たちが顔を合わせ、交流の糸口ができました。

■第5回はフィールドワークで九州の筑豊・水俣を巡り、学生たちは当事者の方々や、地元で長年取材を続けている先輩ジャーナリストから話を伺い、強制労働の問題や、水俣病といういわば、国と企業という権力がその地に暮らす人々の豊かな暮らしを踏みにじっていった、そしてその問題は今も解決されていない問題であることを体感しました。

■第6回フォーラムでは、メディアの自由を守るためには権力と闘うこと、その覚悟と厳しさを崔さんの講演から学びました。また映像リポートの作成に携わった学生たちは、ネット時代のメディアの在り方について、ビデオカメラを持って街頭インタビューや、ネットメディア、識者へのインタビュー取材を行いました。そしてこれからのジャーナリストにとって大切なのは、メディアという外枠ではなく、自分がどこに立ち何を伝えていくのか、という覚悟であることをリポートの結論としました。今年の春、新聞社や放送局に就職するメンバーたちは、この覚悟を胸に地方の現場へと一歩を踏み出します。

■今回の日韓でのオンライン同時フォーラムなどを通じて、日韓学生フォーラムの活動について今後、韓国側では韓国記者協会が共催、そして韓国言論支援協会から支援をしていただくことになりました。また日本側では、日本ジャーナリスト会議(JCJ)と新聞労連が共催として活動を後押ししていただくことになりました。

 

 

助成事業の成果をふまえた課題と展望:   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか(自力での解決が難しい場合、他とのどのように連携できることを望むか)。

(1)当事者主体の徹底力

 このフォーラムは、現役・OBのジャーナリストが、ジャーナリスト志望の学生たちと一緒になって作り上げていく、いわば現在と未来をつなぐ活動です。今後は、フォーラムの企画段階から学生たちにより主体的に関わってもらい運営していくことが課題になります。

(2)法制度・社会変革への機動力

 なぜこのようなフォーラムを企画したのか。それはメディアを取り巻く危機感があるからです。安倍政権になってからのメディアコントロールは、一方でマスメディア自身の「忖度」という形で共謀関係にあり、多くの市民から信頼を失っています。さらにヘイトスピーチやフェイクニュースなどメディア・言論の劣化が指摘されています。

 日韓についても、嫌韓ブームや歴史修正主義などで相互不信が高まっています。こうした状況だからこそ、これから「志」と「他者への想像力」を持ったジャーナリストの育成が急務ですし、そうしたジャーナリストが少しでも増えることで、権力の監視というジャーナリズムの基本の機能を回復できると考えています。このフォーラムに集う学生たちに私たちは希望を託しているともいえます。

(3)社会における認知度の向上力

 フォーラムは6回目を終え、これまでに30人近くの学生が新聞社・放送局に就職し、記者やディレクターとして全国各地で飛び回っています。この春にはさらに15人あまりがジャーナリストの仲間入りをします。フォーラムでの経験がどのように活かされ、社会へ還元されていくのか楽しみなところです。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)

 ジャーナリストが対峙するのは、短絡化すれば権力です。その最大の権力、国家権力が行きつく先の権力行使が戦争です。逆にジャーナリストが共闘するのは権力の行使を受ける私たち1人1人なのです。そこの部分を基軸に持っている人たちが、このフォーラムを運営しています。

(5)持続力

 記者になってからも多忙な中、フォーラムに参加する人もいれば、このフォーラムをきっかけに韓国の参加者と親友になり、留学した人もいます。就職先は違っても同期であったり、後輩であったり・・フォーラムで出会い、ジャーナリストの道を歩き始めた人たちという、財産がこのフォーラムを持続する力になります。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

 社会的な要因については【Ⅰ】-(2)でも述べました。新自由主義の元、派生してきたポピュリズムに対する危機感も、この活動の根底にあるといえます。

(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。

 かつてメディアの世界は学生の志望も多く人気もありました。いまはメディア・それもジャーナリズムを目指す学生は激減しています。メディアへの失望や、きつい仕事に就きたくないといった最近の学生資質なのかもしれませんが、フォーラムでは、そういった若い人たちにも、ジャーナリストという仕事のやりがいを伝えていければと思います。言葉が躍りますが、ジャーナリストは民主主義の戦士です。その戦士を一人でも多く送り出していくことが、フォーラムが果たす社会貢献だと考えます。

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。

 ジャーナリストは何より現場へ行き、現場で人に話を聞かなければなりません。フォーラムもその実地体験の場です。ではどこへ行くのか、そのきっかけは例えば、今回一緒に基金を受けることになった諸団体との連携からも生み出せるのでないか。メコン・ウオッチやアプロ女性ネットワークなどのお話を伺いながら、こうした問題について学生たちと一緒に考えてみたらどうだろう、と思いました。ジャーナリストとして取り組む課題は、至る所にあるのです。  ■

 

 

 

 

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