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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第8回助成


NPO法人ピッコラーレ
SJF助成事業中間2次報告(20年12月

 

助成事業名若年妊婦のアドボカシー促進のための白書作成事業  

 本書は、にんしんSOS東京に2015年12月から2019年12月までの間に寄せられた相談者2,919名分(総件数3232件から明らかないたずらや妊娠葛藤相談ではないものを抜いた)のデータを用い、個人が特定されない形で作成し、妊娠に関する諸課題の提示と、アドボカシー活動につなげることを目的とする。相談窓口に寄せられる「妊娠したかもしれない」、「思いがけない妊娠をしてしまった、どうしよう」といった「妊娠葛藤」を抱える相談者の約70%が10代〜20代の若年者であり、誰にも相談できず孤立し、一人で葛藤を抱え込んでいる相談者も少なくない。なぜ、孤立しなければならなかったのか、その背景にはなにがあるのか。この白書では、若年妊娠にまつわる課題を整理し、社会全体への啓発につなげていく。

 

事業計画 

事業開始当初は、9月発行予定で進めていたが、新型コロナウイルス感染症の影響や、データ分析の方法の見直しを行ったこともあり、発刊が遅れ、現在は2021年2月発行を目指している。
2019年8月 事業立ち上げ
2020年6月 データベース作成
2020年7月 データベース収集方法の見直し&新規データ作成開始
2020年12月 白書原稿完成・印刷所入稿
2021年1月 監修者チェック・校正作業
2021年2月 印刷・製本・発行 配布開始
2021年3月 国会議員へのロビイング活動&院内集会&関係団体・行政窓口の訪問開始

助成金額 : 100万円

助成事業期間 : 2020年1月~2021年4月 ※コロナ禍により助成期間を延長した

実施した事業と内容:  

白書の構成は以下。
●第1部:妊娠葛藤相談の現状
●第2部:妊娠葛藤相談の実態
(1)妊娠したかもしれない・避妊について
(2)思いがけない妊娠
(3)中絶について
(4)妊娠葛藤決断後
(5)同行支援
●第3部:社会から排除される若年妊婦
それぞれの項目ごとの課題はあるが、共通して見えてきたことは、①性の知識不足、②避妊(アフターピルや低用量ピルなど)へのアクセスの悪さ、③「性的同意」のない性行為の多さ、④妊婦の抱える経済的困窮の現状、⑤複雑な家庭環境という背景の存在、⑥安心・安全な居場所がない妊婦の存在などであった。
ここでは、同行支援の分析から見えてきたことを記す。


―*―*―*―
「妊娠したかもしれない」と思ったときから、産む・産まないに関わらず、必要な支援に繋がれることが妊娠葛藤の支援には重要である。しかし、それには相談者が自分の現状を理解し、相談先を探し、相談をするという、大きなハードルを超える必要があり、複雑な背景を抱える相談者にとって、容易なことではないだろう。DV(デートDVなど含む)による性被害の場合、「友だちや親に絶対に話したくない」と感じていたり「ましてや、学校や警察にも…」と考えているケースも多く支援にも受診にもつながりにくい。現在、特定妊婦やハイリスク妊婦の支援は、妊娠の届け出を出すところから始まっている。しかし、自分の力でそこまでたどり着くことが困難な妊婦も多いということが今回の分析で明らかになっている。
(セクシュアル・)リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR:性と生殖に関する健康と権利)とは、性や子どもを産むことに関わるすべてにおいて、身体的にも精神的にも社会的にも良好な状態であり、自分の意思が尊重され、自分の身体に関することを自分自身で決められる権利のことであるが、現行制度ではより支援が必要な妊婦の存在が漏れてしまう支援の構造が浮き彫りになっており、ここに新たな支援体制が絶対的に必要であると言わざるを得ない。


250SJF20190723
(写真上=白書の表紙と章扉のイメージ)

 

助成事業の目的と照らし合わせ 効果・課題と展望   

【Ⅰ】次の5つの評価軸それぞれについて、当事業において当てはまる具体的事例。あるいは、当てはまる事が現時点では無い場合、その点を今後の課題として具体的にどのように考えるか(自力での解決が難しい場合、他とのどのように連携できることを望むか)。

(1)当事者主体の徹底力
 研究者や、統計調査などの専門家ではなく、妊娠葛藤相談窓口で実際に相談者の声を聞いている相談員が、相談員の視点から分類、分析をしている。電子カルテのデータ抽出方法も何度も検討し、やり直しを繰り返し、ベストな分類方法を模索しながら進め、データ分析・原稿執筆までを担っている。

(2)法制度・社会変革への機動力
 コロナ禍、若年妊娠に注目が集まっているこの時期に、妊娠葛藤を包括的に支える法律が存在しないこと、母体保護法、売春防止法、児童福祉法、母子保健法、生活保護法などに、妊娠葛藤の視点を盛り込むことなど地方議員、国会議員への働きかけをスピード感を持って行っていく。

(3)社会における認知度の向上力
 テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などから白書をニュースとして取り上げたいという声を複数いただいている。また、認定NPO法人ブリッジフォースマイルのプロジェクト「コエール」と協働で、白書を用いた啓発・ソーシャルアクションを2021年9月まで継続して行う予定。

(4)ステークホルダーとの関係構築力(相反する立場をとる利害関係者との関係性を良好に築いたり保持したりする力)
 医療機関や行政の窓口で不快な思いをし、私たちにつながる相談者も少なくない。私たちは、電話やメールの相談だけでなく、面談・同行支援を行っていることから、彼女たちに不快な思いをさせた相手と相対することがよくある。

 その際、敵対するのではなく彼女たちの最善の利益は何か、相談窓口から見える相談者のアセスメントを伝えるだけでなく、相談者にとって行政の窓口や医療機関は「社会」であること、また、「ここで相談者に寄り添うことが相談者に社会の居場所を作ることにつながる。そのために協働したい」と伝え、ともに相談者を支援していく体制を作っている。

 最近では、要保護児童対策地域協議会のメンバーに加わるも多くなっており、行政の認知度は上がっていると考えている。

 ここに白書が加わることにより、ケースでの介入ではなく、社会課題としての視点で行政とつながる事ができるようになるだけでなく、若年妊娠を懲罰的に対処することで押さえ込もうと考えている政治家や医師、教師などにも白書は説得力を持つであろう。それ以外にも、妊娠葛藤は社会で受け止め、解決する必要のある課題であるという新たな視点を提供するものとなる。白書をもとに、研修を行うことで、若年妊婦の背景を考えあえる。

 こういったこと一つ一つが、若年妊娠を偏見の目で見る社会に対して、眼差しの変容をもたらす起爆剤となると考えている。

(5)持続力
 「妊娠葛藤」という課題は、様々な課題を内包しているため、今後も、一つ一つの課題に焦点を当てて白書を作成していく必要に迫られると予想される。特に、緊急避妊ピルのOTC化、また、未成年の妊娠に対する親権の壁問題、包括的性教育のためのデータなど、今現在でも複数の課題が見えている。これから継続して取り組んでいく始まりとして、妊娠葛藤を理解するための本白書の存在は大きいと考える。

 

【Ⅱ】Ⅰの評価軸はいずれも、強化するには連携力が潜在的に重要であり、その一助として次の項目を考える。

(1)当事業が取り組む社会的課題の根底にある社会的要因/背景(根本課題)は何だと考えるか。

>妊娠・出産が自己責任とされていること。
>妊娠葛藤に対しての、無関心、無理解。
>貧困・暴力・虐待など社会的病理。
>性教育の不足
>避妊へのアクセスの悪さ
現在、コロナ禍も影響し、社会は底が抜けたような状態となっており、弱者は真っ先に切り捨てられ、排除され、いないものとして扱われている。妊婦も現代社会においては弱者である。妊娠・出産は保険診療ではない(医療費は自己負担)し、若年妊娠は、医療機関でも教育機関でも、また、社会的にも懲罰的に扱われ、妊婦から社会の居場所を奪っているにも関わらず、新生児遺棄が起きると母親のみが加害者としてセンセーショナルに報道される。そういった社会からの、妊娠・出産に対する、とりわけ若年妊婦に対する偏見・差別がこの課題を作り出していると考える。


(2)その根本課題の解決にどのように貢献できそうだと考えるか。
 政策提言、地方行政、医療機関への働きかけなどを行い、具体的には妊娠・出産周りにかかる費用を無料にすることを目指す。また、妊娠がもたらす社会的な困難について社会に発信し、妊娠は自己責任ではないこと、危機的妊娠への社会の眼差しの変容を促す。

(3)そのような貢献にむけて、どのような活動との協力/連携が有効だと考えるか。
 全国の妊娠葛藤相談窓口とネットワークを作り、課題の共有と解決方法を探っていくための勉強会の開催や、政策提言などを行っていくこと。ピッコラーレの事業の一つであるprojectHOMEと連携し、ピッコラーレの拠点である、東京都豊島区と協働し「妊婦に優しいまちづくり」を検討していく。
また、この課題に理解のある国会議員と連携し、妊娠葛藤を包括的にカバーできる法整備について検討会をもつ。


* 今回の白書を制作するために作成したデータベースに、今後も、新しいデータを加えていくが、このデータベースをより使いやすものに、検索しやすいものにするためのシステムを作ることができないかと考えているところである。

 

今後の事業予定

2021年1月末 監修者チェック・校正作業
2021年2月 印刷・製本・発行 配布開始
2021年3月 国会議員へのロビイング活動&院内集会&関係団体・行政窓口の訪問開始予定
白書完成後は、厚生労働省、内閣府の担当者に配布予定
認定NPO法人ブリッジフォースマイルのプロジェクト「コエール」と協働し、白書を用いた啓発・ソーシャルアクションを2021年9月まで継続して行っていく予定。■


 

 

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