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   報告=ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第3回 助成発表フォーラム2015

 次回の企画ご案内   
障害者権利条約と差別解消法―みんなちがって、みんないっしょ―
                      (SJFアドボカシーカフェ第34回)
 【日 時】226日(木)18:30-21:00(開場1800
 【会 場】文京シビックセンター 4シルバーホール
 【登壇】尾上浩二さん(障害者インターナショナル日本会議副議長
               /内閣府障害者制度改革担当室・政策企画調査官)
    熊谷晋一郎さん(東京大学先端科学技術研究センター特任講師/小児科医)
    寺中誠さん(アムネスティ・インターナショナル日本事務局長
                    /東京経済大学現代邦楽部非常勤講師)
   ◆詳細・お申込みこちらから

 

ソーシャル・ジャスティス基金(SJF) 3助成発表フォーラム 2015

 

116

新宿区・四ツ谷地域センター 

 

 昨年末の総選挙が最低の投票率となったことは日本の民主主義社会が危機的であることを示しており、ある種の諦観が敷衍しているようです。けれども、総選挙では争点とならなかったものの重要な社会課題が山積しています。それら見過ごされがちな社会課題について少数派の声も含め多様な市民の声を吸いあげ、行政に生かし、法や制度、社会のシステムを変えていく社会対話・提言活動である「アドボカシー活動」に取り組むことは、一人ひとりが社会を変えられる1つの道筋となるでしょう。

 ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)は、政策や制度をいかに市民の声を反映して構築していくかを課題とし、社会対話をするための資金や「場」づくりを通してアドボカシー活動を支援する新しい仕組みの市民ファンドです。一人ひとりに開かれた社会にどこまで貢献できるか、みなさまのご支援とご協力のもとに助成年度を重ねてきました。今後、助成先の横のつながりから生まれる新たな社会的効果にも一層貢献していきたいと考えています。

  今回、フォーラムでの対話交流を通じて、根底にある共通の社会課題として浮き彫りになったことは、教育の機会が保障されることの重要性です。日本は、生存権や学習権など社会権に基づく権利保障が危機的な状況ですが、国籍を問わず、貧困の連鎖から脱却できるために、また、人身取引に走らざるを得ない子どもたちが救済されるために、そして、あふれる情報から自ら適切に判断し行動できるために、教育の機会が子どもたちに保障され、そのことを子ども自身が知り得、活かせることが必要との問題意識が共有されました。

 アドボカシー活動をよりよく進めるための課題として、地域や現場に密着して活動する人たちの声をアドボカシー活動に吸いあげる場や、自治体を総体的に啓発していくシステム、散在する素晴らしいアドボカシー活動を可視化し社会に広く伝えていく手段、そして信頼関係の構築などが多方面から指摘されました。

 SJFの助成先のミッションや解決しようとしている社会課題について共有し、建設的な対話交流を通じて新しい示唆や発想が得られ、さらなる連携の契機となった会でした。 

      樋口さん             上村さん
     =総合司会・樋口蓉子(運営副委員長)      =開会挨拶・上村英明(運営委員長)

 

―◇―3回助成先の発表と対話概要―◇―

 

【助成テーマ1】=「子ども・若者の未来に関する取り組み」=

大学・高校進学における外国人特別枠の設置・拡充にむけたアドボカシー(移住労働者と連帯する全国ネットワーク=移住連)――日本人と外国人の進学格差を是正することを目的とする即効性が期待できる対策です。経済的不安定を背景とする進学格差を是正することは、子ども世代の貧困の再生産という貧困の連鎖を断ち切ると同時に多文化社会形成にもつながります。

 発表者=稲葉奈々子さん(移住連 貧困プロジェクト)

                               移住連=稲葉さん 

⇒ 来日した移住労働者は1980年代から増加し、20年以上経ても非正規雇用(派遣)から脱することができないまま2009年のリーマンショックを迎え、大量の派遣切りにより多くが失職しました。派遣でしか就職できない親世代の不安定さが子ども世代に悪影響を及ぼし、貧困が再生産されるという構造的不平等を解決するべく、「移住連貧困プロジェクト」を2009年に立ち上げました。

 子どもや若者が生まれや環境などにより教育の機会を奪われ、就職困難となり、貧困が再生産されている問題に対して、積極的な是正措置を求めていく方針です。国籍による進学格差対策を文科省に要請しており、「大学改革実行プラン」のなかでも急務となっているグローバル人材の養成を目的とする施策において、外国にルーツをもつ子どもたちを、将来のグローバル人材として受け入れる入試特別枠を設けることを目指しています。グローバルな見識を有しながら日本の地域社会で能力を発揮する人材を発掘する施策としても、外国人の子どもたちが潜在能力を十分に発揮できるような機会を保障する入試枠の創設は意義が大きいと考えています。このアドボカシー活動を、省庁、与党も含めた議員や議連、国立大学や県教育委員会など教育機関への働きかけ、他の市民活動団体との連携により進めていきます。

 会場からは、特別枠で入学した後のサポート体制が十分でなく退学せざるを得なかった事例があげられ、入学後も語学支援などの面で配慮が必要であることが指摘されました。

 すべての子どもの学習権の保障という観点からは、外国人学校が学校教育制度から外され公的助成を十分に得られていない現状が報告され、多様な教育機会の法的な保障にむけた動きが盛んになっている今の機会を生かすことが提言されました。

 

 

 

児童・青少年向け人身取引被害者のための専用サイト/アプリ開発プロジェクト(人身取引被害者サポートセンター ライトハウス)――日本で唯一の人身取引被害者専門のホットライン事業を有する団体です。事業の背景として、近年子どもの性的搾取被害が増加していますが、取り締まる国内法は未整備であり、人身取引に対する取り組みは社会的・法的・文化的に先進諸国に比べて著しく遅れている点があります。被害の早期発見・被害者の早期救済のため、訴求力のあるコンテンツと広報機能を強化し、ホットライン事業がこれを支援します。

 発表者=古賀広宣さん(事務局長)
     坂本新さん(ファンドレイジング担当)

                           ライトハウス=(左から)古賀さん、坂本さん 

⇒ 人身取引被害者は日本国内で推計約24万人(Global Slavery Index2014より)にのぼります。人身取引とは、ポルノや売春・性労働による性的搾取、児童労働や外国人研修制度を悪用した低賃金過重労働による労働搾取、臓器売買などがあり、現代の奴隷制とも呼ばれる人権侵害です。日本は、先進国(G8およびOECD加盟34カ国)で唯一、国連「人身取引をなくすための議定書」に未批准であり、アメリカによる「監視対象国」として人身取引年次報告で2004年より指定されています。人身取引を禁止する国内の法制度は先進国で唯一欠如しているにもかかわらず、政府は「人身取引議定書を実施するための国内法整備は完了している」という立場であり、被害者を救済する法制度もなく、警察が検挙しにくい構造が放置されています。

 ライトハウスは、被害の入口となっているインターネットやSNSに切り込んでいくために、被害者となりうる層の啓発につながるよう、子ども向け専用ウェブサイトと専用アプリ配信システムの構築・公開と、啓発マンガ(全3話)の発刊・無償配布を行い、そのプロモーションとしてSNSや現役中高生キャンペーンチームによる口コミ促進を企画しています。

 会場からは、被害者の相談をうけた次の場としてシェルターを持つことが解決を進めるために重要であることが指摘されました。また、子どもの自尊心が低く、自分を大事に思えない子どもほど悪用されやすく、悪用されることから抜け出しにくいことが指摘され、“体しかない”という状況の根っこを変えていけるよう色々な面で連携がはかれるとよいと提言されました。

 この問題の社会的背景として、女子高生(JK)ビジネスなど子どもの性の商品化を容認するような社会の人権意識の低さや、貧困が固定的に進行しやすく搾取の対象が生まれやすい構造があげられました。被害者自身が、被害者であることを認識できるように、さらに、子どもたちが早期に問題を認識することで大人になってから周りの子どもたちを被害から守れるように、啓発が重要であるということが共有されました。

 

 

【助成テーマ2=原発事故による被害者支援に関する取り組み=

放射線防護について情報・知見・取り組みを、市民と科学者が共有し、共に次の一歩を模索していくための第5回市民科学者国際会議の開催(市民科学者国際会議)――低線量被ばくによる健康影響を示す新たな研究が多数発表されていますが、社会的に知られておらず、立場の違いから政府機関に正式には取り上げられることもありません。本国際会議は、正答のない現状で、政府や企業から独立した科学的知見と市民の視点に基づいて放射線の健康影響を再評価し、総合的な意思決定に寄与することを目的とし、被害者保護と放射線防護対策のプロセスを確立します。

 発表者=岩田渉さん(代表)

                       市民科学者国際会議 =(左から)岩田さん、真下さん

⇒ このように社会的争点が多く、多額のお金がかかわる社会問題については、政府による議論の場のみでは、水俣病の場合と同じように、肝心なところははぐらかされるのが実状であり、利益相反のない科学者も含めた本当に科学的な議論が必要だと考え会議を設けています。具体策として、放射線防護に関する社会の意思決定において、審議会制度の問題点をふまえ、放射線専門家のみでなく多様なステークホルダーとともに議論し決定できるような新たな仕組みの構築を課題として考えています。また、学際的議論を充実させるため、公衆衛生と放射線影響のメカニズムからのアプローチと、社会学・法学・情報学からのアプローチという2つの基軸を課題としています。

 会議では、とくに次の第5回開催にむけた課題として、異なる見解をもつ行政側の研究者や、子育て中の母親、若い世代など多様な参加者層を得ることや、高度な内容をわかりやすく伝える入口を設けることを考えています。そこで、会議のプレイベントとして、ラッパー・映像作家・ジャーナリスト等による多様な表現手法を援用したワークショップ・パネルディスカッション・上映会などを企画中です。

 会議の参加者と対話を重ね、議論が整理され、本当にコンセンサスができたところで意見として提示したい、また会議の成果を発信していく方法は、自分の等身大で考え模索していきたいと考えています。さらに、この問題についての社会運動とは直接的には距離がありますが、それらの運動を動機づける土台として、不確かさも含めた科学的に正確な情報を発信することも会議のねらいとしているとの考えを示しました。(「市民科学者国際会議(CSRP2015」は、920日から22日まで東京・代々木オリンピックセンターにて開催される予定です。)

 

 

【助成テーマ3=見逃されがちだが、大切な問題に関する取り組み」=

生活保護基準の引下げを阻止するとともに生活保護の捕捉率(※)100%を目指す事業(生活保護問題対策全国会議)――生活保護利用者は、高齢・障害・傷病・母子など社会的・経済的に弱い立場におかれ孤立しがちですが、昨今のバッシングの影響で偏見が強まり更に声をあげづらい立場となっています。生活保護基準の引き下げに対し当事者とともに抵抗し、さらに当事者の声を社会に届けること、および正確なデータに基づく生活保護制度についての正しい理解を市民の間に広めることは、人権保障の重要な活動であり、低所得者救済策と連動して国民経済全体の底上げにもつながります。(※.受給資格があると思われる人のうち実際に受給できている人の割合)

 発表者=猪股正さん(弁護士/日弁連貧困問題対策本部前事務局長)
     田川英信さん(自治体職員/元生活保護ケースワーカー)

                           生活保護問題対策全国会議=(左から)田川さん、猪俣さん 

⇒ 苦しい生活にもかかわらず我慢し生活保護を受けていない人たちへ利用を促したいとの目的で活動しています。生活保護に対する誤解や偏見から、受給申請を思いとどまる人も多いという背景があります。日本は国際的にみても、個人的な扶養義務が強調され過ぎであり、社会的扶養の強化が必要だと考えています。生活保護から漏れている人がいる状態は、憲法25条(生存権と国の社会的使命の規定)違反だとの考えを示しました。生活保障を受ける権利性が認められ、生活を改善していくための生活手当として生活保護が活用しやすくなることを目指しています。

『あなたも使える生活保護』というパンフが、日本弁護士連合会のHPからダウンロードできるようになっています。パンフには生活保護申請書も添付されており、水際作戦などにより申請窓口で渡してもらえない場合も想定した実践的な作りとなっています。今後は、このパンフが自治体でも活用され、住民が利用しやすい態勢にまで進めるとよいだろうと考えています。

 会場から、行政の意識変革を促す必要性が問われ、自治体の職員が貧困についての理解や職務経験が乏しい現状や、首長の本音として生活保護費を増やしたくないという意識が職員に伝わる自治体もあることが報告されました。これに対し、人権啓発委員会など中間的に設けられている委員会や審議会と連携することを視野に入れた活動が提言されました。

                                                                                         

―◇―◇―◇― 

 次回の企画ご案内   
障害者権利条約と差別解消法―みんなちがって、みんないっしょ―
                      (SJFアドボカシーカフェ第34回)
 【日 時】226日(木)18:30-21:00(開場1800
 【会 場】文京シビックセンター 4シルバーホール
 【登壇】尾上浩二さん(障害者インターナショナル日本会議副議長
               /内閣府障害者制度改革担当室・政策企画調査官)
    熊谷晋一郎さん(東京大学先端科学技術研究センター特任講師/小児科医)
    寺中誠さん(アムネスティ・インターナショナル日本事務局長
                    /東京経済大学現代邦楽部非常勤講師)
  ◆詳細・お申込みこちらから

 

※ SJFでは、助成事業や対話事業を応援してくださるサポーターやご寄付を募っております。認定NPO法人への寄付として税金の優遇制度をご利用いただけます。詳細はこちらから
 
2015116日企画のご案内資料はこちらから(ご参考)

 

 

 

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