報告=ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)アドボカシーカフェ第29回
◆ 次回アドボカシーカフェご案内 ◆
『「多様な学び」―子どもたちがエンパワーメントできる政策実践―』
【日時】9月4日(木)18:30~21:00
【会場】新宿・四ツ谷地域センター11階
【ゲスト】高橋克法さん(参議院議員(自民)/前栃木県高根沢町町長/
超党派フリースクール議員連盟)
奥地圭子さん(「多様な学び保障法」を実現する会共同代表/
フリースクール全国ネットワーク代表理事)
【詳細・お申込み】こちらから
◆ 書籍ご案内(発行SJF 2014年8月4日)◆
『日本で生かそう!国連人権勧告』(SJFアドボカシーカフェ・シリーズ レビュー)
【監修】寺中誠さん
【協力】伊藤和子さん、三木由希子さん、浜田進士さん、半田勝久さん、
渡辺美奈さん、金明秀さん、師岡康子さん、塩原良和さん、上村英明。
【詳細・ご注文】こちらから
『多民族・多文化と共に生きる―外国人労働者受入れ制度を問う』
シリーズ:「日本で生かそう!国連人権勧告」第5回
2014年8月4日、SJFは第29回アドボカシーカフェを文京シビックセンター(東京)にて開催しました。
五輪と復興のため、「緊急措置」として4月4日の閣僚会議で建設分野において外国人材を活用していく施策が取りまとめられました、20年以上、中小企業の人手不足を諸外国の若者を受け入れ、時にその犠牲の上に成り立たせてきた「技能実習制度」の継続と活用が前提となっている緊急措置だと、ゲストの大曲由起子氏は指摘しました。日本の経済成長戦略に関連し6月に報告された技能実習制度を見直す検討結果(第6次出入国管理政策懇談会・外国人受入れ制度検討分科会)では、同制度の適正化とともに拡充の方向を示していますが、監理団体や実習実施機関のチェックが有効かは疑問です。今年7月24日に出された国連・自由権規約委員会の勧告では、2010年の技能実習制度改正にもかかわらず強制労働などに関する報告が多いことへの懸念が表明され、技能実習制度の焦点を「低賃金労働者の雇用」から「能力開発」に置き換える「新しい制度に代えることを真剣に検討すべきである」と表明されました。
外国人を受け入れる際の入国管理制度に関し、入国許可(ビザ)を与える外務省の手続きから、在留資格を与える法務省の入国管理手続きに変換される際に、外交政策上の人権・人道の見地からの判断と国内行政としての外国人管理との間で連携がはかれていないことが外国人の人権保障が不十分となる問題の一因だとゲストの寺中誠氏から指摘されました。また、外国人登録制度において、2012年に「新しい在留管理制度」が施行され、法務大臣による一元的な出入国管理と、住民基本台帳ネットワークシステムを援用した在留カードによる住民登録制度に統合されたことにより、この制度から外される非正規滞在者は医療や教育など基本的な社会保障が十分に受けられないという問題が顕在化したことも指摘されました。国際的な人権基準では、非正規滞在者の実態に即し滞在を合法化するような制度が要求されているのに対し、日本は非正規滞在者を排除する傾向が強まっている点が問題提起されました。
多文化共生の視点からの施策を外国人労働者受入れと並行して進めていくことの重要性が会場との対話の中で強調され、外国人労働者とその家族の人権も含め保障するような長期的政策が実行されるよう、移住労働者の人権基本法にむけた運動への意思を大曲氏は表明しました。多文化政策が適切に進められる為には、多文化の当事者である移住者に社会保障を「恩恵」として与えるのではなく、当事者自らが保障を申請できるという権利性を認め、行政はその申請を実現する義務を負うという制度が必要であると寺中氏は提言しました。
◆ 主なプログラム ◆
◇ 講演:
大曲由起子さん(移住労働者と連帯する全国ネットワーク事務局次長)
寺中誠さん(東京経済大学現代法学部ほか非常勤講師/
アムネスティ・インターナショナル日本前事務局長)
◇ グループディスカッション
◇ 講演者との対話
◆ 概要と映像記録 ◆ (敬称略)
―外国人受入れ政策の実態と課題
◇ 日本は社会・経済状況にあわせ場当たり的に対応してきた。1990年代、バブル景気と少子化の進行による人手不足とともに非正規滞在者が増加したが、日本は排除を強化してきた。そのなかで現行の形での技能実習制度は1993年に始まった。1998年2月に開催された長野五輪にむけ、非正規滞在者も労働者として使われ準備が進められ、五輪の準備が整ったところで長野県警が入国管理局とともに非正規滞在者を摘発したことが明らかになっている。そして今年、2020年東京五輪にむけ、建設分野での「緊急措置」、「技能実習制度見直し」、「外国人家事支援人材」受入れと施策が相次いでいるが、人権の観点が欠如した短期的な視点での政策だ。
建設分野での「緊急措置」としての外国人受入れは、今年1月24日に「建設分野における外国人材の活用に係る緊急措置を検討する閣僚会議」第1回が開かれ、年度末までに具体化するとされたところが、わずか3カ月弱後の4月4日の同閣僚会議で取りまとめられたもので拙速ではないか。政府は技能実習制度とは別に議論するとしているが、「新たな特別の監理体制」のもと実施するとは、技能実習制度を活用したもとでの監理体制を指している。即戦力として元技能実習生を使うとされているが、実習終了後出身国で建設分野に従事した経験の有無について政府は担保していない。技能実習制度は改定されてきたが、パスポートの取り上げや保証金による束縛による強制労働や虐待など人権侵害の状況は改善されていない。政府は、「不法就労や人権問題」の懸念により新たな監理体制をしくというが、その監理体制が人権問題のある技能実習制度の活用では論理矛盾だ。
2009年に入管法が改定され、「技能実習」という在留資格が独立して創設されたが、その際「同制度の在り方の抜本的な見直しについて、できるだけ速やかに結論を得るよう、外国人研修生・技能実習生の保護、我が国の産業構造等の観点から、総合的な検討を行うこと。」という附帯決議がなされ適正化の議論が進められていた。2014年12月までに報告書がまとまる予定だったが、官邸主導の新しい成長戦略の中で技能実習制度の活用が盛り込まれ、6月にはほぼ包括的な報告書が前倒しで提出された。技能実習制度は20年余り国際社会やNGOから批判され続け、国内でも2013年に総務省の行政評価で監理団体等について問題点が指摘されたにもかかわらず、「拡充」へと舵を切った報告書だ。実習生の権利を守るという観点での制度の「適正化」は評価できるが、不正な監理団体や実習実施機関のチェックについては議論が不十分だ。「拡充」により、実習生が日本に在留できる期間が延長され、企業が受け入れられる実習生の人数が増え、実習生が従事できる職種が増える予定だが、問題の拡充にもつながるだろう。短期的な目線で労働力不足を解決できるという見方があるが、諸外国の若者を搾取することで20年間成り立ってきたもので、国際貢献という建前と乖離した対策だ。
家事支援人材としての外国人受入れも、「成長戦略」の一つの手段として今年4月4日の経済財政諮問会議・産業競争力会議にて方向性が示されたもので、(日本人)「女性の活躍推進」のための「外国人」家事支援人材を国家戦略特区で受け入れて需要を見計らうというものだ。問題点として、男女の平等な有償/無償労働の分担―男性の長時間労働と女性の家事負担などの問題について解決の数値目標はない点、この家事支援人材には労働法制が適用されるようだが、個人家庭という密室の中で外国人の人権侵害が行われないか懸念がある点、様々な国で女性の家事労働者が搾取されていることが問題となっていることをふまえ労働者が勝ち取ったともいえるILO189条約「家事労働者のためのディーセントワークに関する条約」(2013年発効)への知識や関心のない点があげられる。(大曲)
◇ これまでの技能実習制度では研修生や技能実習生を労働者の諸権利から排除していた為、強制労働による債務奴隷である「新たな形態の奴隷制」だという国際認識を生んだ。(寺中)
◇ 建設分野での「緊急措置」を受けた権利保障に関する措置はあるのか。(参加者)
◇ 新たな監理体制では、問題となってきた技能実習制度のもとの監理団体を引き続き使うことは問題だが、政府は「優良」な監理団体を使うとしている。「優良」とは、法務省から過去5年間不正行為認定を受けていないことや処分歴がないこと等が基準となる。また、新しく、受入れ状況を把握し、不正行為情報共有を行う「協議会」をブロック別に設けチェックしていくとされている。NGOとしては、総務省の行政評価でも問題点として指摘されたように、不正行為をきちんと把握できていないのに不正行為認定の有無を「優良」監理団体の基準とすることは問題だと思う。(大曲)
◇ 「ディーセントワーク」とは?(参加者)
◇ 簡単にいえば「まともな労働」。ILOの定義では、基本的にはまず、権利が保障された労働であることが大前提であり、そのうえで、十分な稼ぎが得られ、適切な社会保障が与えられ、生産的な仕事であるという3つの要件が労働者に権利性のあるものとして認められている労働だ。非正規滞在者の枠組みに入れられる人々も、ディーセントワークができる、正規滞在者となれる法制度が望ましい。(寺中)
― 受入れられた外国人労働者、移住労働者は日本で基本的人権を満たされた生活ができるのか。
◇ 2014年7月24日に国連自由権規約委員会から日本へ出された勧告は、技能実習制度の下での強制労働が多く報告されているにもかかわらず労働搾取する人身取引の認定がなされていないことが問題であるとして、「人身取引が根強く続くこと」等に「引き続き懸念」し、「特に強制労働の被害者について、被害者認定手続きを強化し、労働基準監督官を含むすべての法執行者に対して専門訓練を提供する」行動をとるべきであると表明している。技能実習制度について勧告は「労働法制の保護を拡充した制度改正にもかかわらず、同制度のもとで性的虐待、労働に関係する死亡、強制労働となりえる状況に関する報告がいまだに多く存在することを懸念とともに留意する。」「現在の制度を低賃金労働者の雇用よりも能力開発に焦点を置く新しい制度に代えることを真剣に検討すべきである。」「事業場等立ち入り調査の回数を増やし、独立した苦情申し立ての制度を設置し、労働搾取の人身売買その他労働法違反事例を効果的に調査し、起訴し、制裁を科すべきである。」と表明している。
また、全ての受け入れた外国人の在留資格に深くかかわる入管法に対しては、国連自由権規約委員会は1998年から、登録証明書を常時携帯しないと刑事罰を科す外国人登録法を「差別的な法律」として「廃止されるべきである」と再度勧告している。また、再入国許可制度について、「第2世代、第3世代の日本への永住者、日本に生活基盤のある外国人は、出国及び再入国の権利を剥奪される可能性がある。」として、「日本で出生した韓国・朝鮮出身の人々のような永住者に関して、出国前に再入国の許可を得る必要性をその法律{出入国管理及び難民認定法第26条}から除去すること」を強く要請している。(大曲)(※外国人登録法は廃止されたが、2010年施行の入管法、特例法(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法)の中に、上記刑事罰は一部を除いて踏襲された。下記記述参照)
◇ 外国から移住労働者を受け入れる時には、入国許可(ビザ)を与える手続きから、在留資格を与える入国管理手続きに変換される。前者は外務省による外交政策上の人権・人道の見地から判断されるのに対し、後者は法務省入管局による国内行政として外国人を管理するものであり、両者で連携がはかれていないことが受入れ後の人権保障が不十分となることの一因となっている。
日本に在留する外国人は登録を受けるが、この外国人登録制度は、2012年に「新しい在留管理制度」が施行され、法務大臣による一元的な出入国管理と、住民基本台帳ネットワークシステムを外国籍住民に対して援用した在留カードによる住民登録制度に統合された。ところが、この制度から外される非正規滞在者は医療や教育など基本的な社会保障が十分に受けられないという問題が発生している。
監視社会のなかで、便利で保護的な機能が進展する側面がある一方、非正規滞在者などに対する排除の動きが加速している。国際的な人権基準では、その滞在者の実態に即し合法化する制度を要求しているのに対し、日本は非正規滞在者を排除しようとしている。
日本は、非正規滞在者を刑事司法に付し刑罰を課すと同時に執行猶予にし、入国管理施設に送り強制退去に持っていく。本来、不法滞在は入国管理という行政手続きに対する違反であるが、刑事処罰があることで威嚇したいが為に犯罪として刑罰の対象としている。一方、刑事司法手続きには人権保障が必要のため、処理は事実上すべて行政手続き(警察や入管)で済ませたいという意図が見える。つまり、強制退去を確保したいが為のみに刑事司法を使い、徹底的に行政手続きで済ますことで、刑事手続きに本来ある人権保障を回避することを政策として行っている。(寺中)
―もし自分が移住労働者だったら、どのような権利が必要になるか。
◇ 「すべての移住労働者とその家族の権利保護に関する条約」(移住労働者権利条約)が1990年国連で採択されているが、締約国は47カ国にとどまり北アフリカや中南米諸国・フィリピン・インドネシアなど移住労働者を送る側の国が主となっている。条約では移住労働者を「国籍を有しない国で、有給の活動に従事する予定であるか、またはこれに従事している者」と定めており、つまり移住者全体が該当する条約だ。移住の形態について、合法/違法を問わない条約である点が、多くの国が参加を躊躇する理由となっている。日本は条約に署名・批准も加入もしていず、その「家族統合」の権利を認めていないため、小さな子どもがいる移住労働者だけでも、逆に小さな子どもだけでも、入管手続きにおいて退去強制させうる。日本が批准している「子どもの権利条約」においても、その「家族統合」(第9条、10条)については保留したままだ。(寺中)
◇ 移住労働者にとって必要な権利を想像すると、緊急時の情報へのアクセス、子どもの教育、医療や生活保障といったセーフティネットが挙げられると思う。(参加者)
◇ 自然災害や紛争といった、「緊急時」に直面した移住者(stranded migrants)の権利という観点からもNGOとして国際的な人権基準にいれられるよう主張している。日本では特に震災や原発事故における移住者の権利、特に情報へのアクセス権について語ることができる。(大曲)
◇ 情報へのアクセス権と「知る権利」は若干ずれている。知る権利は自由権規約の条文に定められているが、自分たちの生活にかかる危険を知る権利、自分たちの労働に係る危険を知る権利も含まれているので、当然移住労働者にも認められなければいけない。(寺中)
◇「外国人市民会議」(川崎市)のような仕組みも必要ではないか。賃金や安全性など日本の労働者にあたえられている基本権と同等の権利や、家族とともに住める権利、様々な相談を母語で受けられる権利等があるとよいと思う。(参加者)
◇ 日本人と同じように人間として当たりまえに暮らせるように、安心して出産でき、教育とくに高等教育も受けられ、転職ができ、医療が受けられ、生活保護が受けられるとよいと思う。最高裁が7月に外国人は生活保護法の適用外との判決を出したが。(参加者)
◇ 補足すると、最高裁の判決は、外国人が生活保護を請求できる権利性はないことを示しているが、行政が恩恵的に実施することは問題がないという立場だ。(寺中)
◇ 日本人の底上げをするような制度を整えることは、逆差別感情による排外主義的な動きを抑えるためにも必要だと思う。また、移住労働者権利条約を批准すれば、制度は整っていくのではないか。いっぽう、国民感情をどのように変えていけばよいのだろうか――教育のありかた、メディアのありかたやマスコミ情報への接し方などが問われると思う。(参加者)
◇ 日本人自身お互いが見えなくなっており、外国人のことも見えず差別につながっているのではないか。日本語は難しいようなので、日本語によるコミュニケーション能力に応じた生活環境が提供できるとよいと思う。日本社会の雇用や労働環境を整備することは必要だと思う。仕事に高度も単純もないはずで、投票権やコミュニケーション能力の必要性以外は、同じ仕事なら同じ労働条件で働ける環境が必要だと思う。(参加者)
◇ 地域住民と同等にコミュニティに参加する権利や、自分たちのコミュニティを持つ権利などが保障されるとよいと思う。(参加者)
◇ コミュニティにおける参政権の問題ともいえる。国政レベルでない、住んでいる地域コミュニティの問題は、基本的にはそのサービスを受けている受給者たちが決めるものだ。国政レベルでは、国民とは国家を動かす人という概念の縛りがある状態だが、地域コミュニティでは、どのような人もそのサービスの受給者としての意見を言う権利はあるはずで、それをどう認めていくかというのが政策決定に参加する権利=参政権であり、投票権ということになる。だれがサービスや施策を決めるのかというところから、そのための制度設計をしていかなければいけないと思う。(寺中)
◇ 移住労働者権利条約の第3部で、基本権としてセーフティネット・子ども・労働・医療等についてはカバーされている。日本はこの権利条約に批准していないが、唯一、団結権(組合員になる権利)等の労働者としての権利については非正規滞在者にも認めており、その意味で条約と同等のレベルだと言える。参政権については第4部の41条に「1.移住労働者とその家族は、出身国の法律に従い、その国の公共の事項に参加し、その国の選挙の際に選挙権、被選挙権を行使する権利を有する。2.関係国は、法律に従ってかつ適切に、これらの権利の実行を促進する義務を負う。」(訳 江橋崇氏)とある。第4部以降は正規滞在者「のみ」に認められる権利という誤解があるようだが、3章の権利に「追加的に」移住者に認められる権利だとされている。(大曲)
◇ 移住労働者権利条約に日本が加盟することは非常にチャレンジングだ。先に「ディーセントワーク」の話をしたが、それはILOの定義であり労働者の権利保障が前提だが、対して日本の厚生労働省が使う際には「働きがいのある人間らしい仕事」と翻訳しており、権利保障の概念がなく恩恵として与えているにすぎない。日本は他にも翻訳にあたり、権利性をどんどん外していく傾向がある。移住労働者=migrant worker を「出稼ぎ労働者」と翻訳されると、稼ぎにお金のためのみに来た人であり帰る人であり、社会の一員ではなくヨソモノとなり差別語となってしまう。排除や差別の概念が自分の中にあるということを一度確認する必要があると思う。(寺中)
―多文化共生社会にむけての課題は。
◇ 国連人権機関から日本へ勧告された懸念事項を真摯に受け止め、勧告の実施へ努力していくことが重要だ。人権の観点が欠如したまま目先の課題に場当たり的に対応してきた日本は、多民族・多文化共生社会を制度的に保障するための土台となるような制度――包括的移民政策となる外国人人権基本法・人種差別禁止法・国内人権機関・個人通報制度がない。勧告実施のために努力することは、これら土台ができることであり、また連動して人身売買や技能実習制度等の個別課題の解決にもつながるはず。(大曲)
◇ 移住労働者基本法のような新法を創る運動を始めてはどうか。(参加者)
◇ その通りだと思う。まず、専門的な仕事に従事しない一般労働者の受入れについては、技能実習制度に代わるものとして制度が必要だと思う。それを皆さんと大きなうねりとして運動にしていくことは重要であり、この提案を受けてしっかりと考えたい。(大曲)
◇ 多文化共生を進める文化政策や体系的保障が日本には存在しない。日本は、“外国人差別はいけませんよ”といったお題目での啓蒙活動を行うことで、多文化共生にむけて政策的保障をするのではなく市民の態度の問題として済ませている。
むしろ文化的に排除していく政策はある。例えば、「外国人犯罪」という言い方が公的に使用されており、「外国人」に属する人々が犯罪に関わる場合、被害者・目撃者・加害者など多岐にわたるケースがあるが、犯罪白書では90年代後半からは、外国人=加害者の場合のみに重点が置かれるようになった。また、法務省・入国管理局のウウェブサイトには、滞在資格の違反者と思われる人を通報するサイトがあるが、必須項目である通報動機の選択肢には、近所迷惑・不安・利害関係・違反者のために求職できない等が並んでおり、過去にこういった理由での通報があったことから便宜を図った選択肢であり、排除文化が創りあげられてきていることを示している。
NIMBY(Not In My Back Yard)という言葉に表されるように、私たちは外国人に対して、施設建設の際などに表れる「いてもいいけど、自分の身近には来ないで」という感覚や、「知り合いの外国人はとても良い人だ」と両立する「外国人が身の回りに増えていることは治安上大きな問題だ」という感覚がないだろうか。「国民」ではない人々への排除の意識が、日本が「移住労働者権利条約」に加盟することを困難にしているのだろう。(寺中)
◇ 多文化政策の具体的な事例は?(参加者)
◇ 権利は、一方でそれを実現する義務が発生し通常は国家が負っている。ところが日本の外国人については、国家の方が権利者として権限を持っているかのようにふるまい、恩恵として与える政策を行っており、外国人は恩恵を受けるという手続き的義務を負ってしまっている。言語教育など良い施策でも国・地方自治体総じて“やってあげるよ”という押しつけであり、これではしっかりとした多文化政策とならない。多文化政策がうまくいっている国では、多文化政策の対象となる当事者、移住者を権利者として認めることから始めて、請求された権利を実現する義務を国が負うという構造になっている。(寺中)
◇ なぜ日本は全て外国人排除ありきなのか。(参加者)
◇ なぜだろうか。私たちの中に排除の意識があるからだろうか。表面は「おもてなしの心で」というが、実際に身近に来られた時はどう感じているだろうか。「出稼ぎ」という概念が象徴することから考えてほしい。(寺中)
◆ 講演者の参考文献 ◆
『なぜ今、移民問題か』(別冊『環』20)西島喬、藤巻秀樹、石原進、鈴木江理子 編著 藤原書店2014年
『すべての移住労働者とその家族の権利保護に関する条約』江橋崇 訳
『入管法改定が目指す外国人管理の新局面』寺中誠/岩波「世界」2012年10月号pp33-36
◆ 次回アドボカシーカフェご案内 ◆
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◆当日の様子ダイジェスト版