ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第2回助成先
= OurPlanet-TV =助成事業最終報告(Dec.2014)
◆団体概要:
2001年に設立した非営利のオルタナティブメディア。インターネットを利用して、ジェンダーや子ども、環境や人権などのテーマを中心に独自に制作したドキュメンタリー番組やインタビュー番組を配信している。また、東京・神保町にあるオフィス内にメディアセンターを設置し、子どもから大人まで、誰もが映像制作やメディアリテラシーなどを学べるようワークショップを行っている。 東日本大震災及び福島第一原発事故後は、主に子どもと被曝の問題や、人々の暮らしを守るために必要な情報を積極的に配信。2012年7月、日本ジャーナリスト会議(JCJ)より第55回JCJ賞が顕彰。そのほか、これまで地方の時代映像祭優秀賞(2010年)、貧困ジャーナリズム賞(2011年)、放送ウーマン賞(2011年)、やよりジャーナリスト賞特別賞(2012年)を受賞。
◆助成事業名:『映像報告「チェルノブイリ原発事故27年目の子どもたち」制作と上映キャンペーン』
本プロジェクトは、チェルノブイリの低線量汚染地域の学校を取材し、ドキュメンタリービデオにまとめたうえで、ステイクホルダー、政府、自治体関係者など幅広い人々へ提供し、現在の日本政府の被ばく低減策の改善を促すものである。
具体的には、ウクライナのキエフとコロステンの学校や医療現場を取材。子どもたちの健康状況とともに、大半の子どもが通常の体育の授業が受けられなくなっている実態を記録。ウクライナの健康診断のスキームや内容ついても調査する。
取材内容は30分程度のドキュメンタリーにまとめ、インターネットで配信するほか、DVD化して、NGO、市民団体、政府関係者、議員、自治体に配布。東京/福島/茨城にて上映&報告会を開催する。
◆助成金額 : 100万円
◆助成事業期間 : 2013年10月~2014年9月
◆助成事業の成果・助成の効果:
本プロジェクトの目的は、日本の線量基準や被曝対策、健康調査などのあり方を抜本的に変えることにあった。現在は、まだその活動の途上にあるものの、様々な地域で小さな成果を生んでいる。
例えば、南相馬市の避難勧奨地点の指定地域では、経済産業省が2014年9月末に避難解除を行おうとしていた。しかし、地域の住民が、本ビデオ20本を行政区長などに配布。低線量被ばくの影響や避難基準に対する日本とチェルノブイリの差を理解し、現在、地域一丸となって解除への反対を表明。10月末の解除が延期された。住民は原子力災害現地対策本部の本部長である副大臣などに、本ビデオを手渡して、認識を改めるよう要望している。
また、8000ベクレル以上の指定廃棄物を受け入れる最終処分場の候補地に指名された栃木県塩谷町は、環境省の一方的な方針に反対を表明。町長、町民が一丸となり、放射性物質汚染対処特措法そのものに問題があると指摘している。この地域でも、町が、住民に本ビデオを視聴して、低線量被ばくについて勉強するよう呼びかけている。
以上は、具体的に、ビデオが政策変更に直接、大きな影響を与えている例である。
◆助成事業の成果をふまえた今後の展望:
本プロジェクトのおかげで、学芸大学教育実践研究支援センターの支援を得ることができ、2014年6月には、追加取材を実施。健康診断と保養など学校や子どもに関し、更なる調査を行った。現在、その編集作業を行っている。今後、学校教育関係者に対する幅広い上映運動を広げ、現場の中から声が強まるよう取り組んでいきたい。
また12月には岩波書店より「チェルノブイリから学ぶ〜低線量被ばくと子どもたち」(岩波ブックレット)が発売となる。本書は、2度にわたるウクライナ取材の内容をより詳しく網羅しており、ビデオと合わせて触れることで、チェルノブイリの実態がかなりしっかりと掴めることと思う。
現在、ビデオは徐々に浸透しつつあるものの、最も重要な抜本的な政策変更。すなわち線量基準の見直し(避難基準の見直し)および健康診断や保養などの被曝防護対策の充実は、現在、非常に厳しい状況にある。今後、この困難な政策の転換に寄与するべく、インターネット、DVD、書籍、講演といった4つを組み合わせ、社会的なインパクトがより強化されるよう力をいれていきたい。
◆助成事業計画:
・2013年11月半ば—ウクライナ取材(キエフ/コロステン)
キエフとコロステンの学校と家庭/健康診断の仕組みなどを取材。
・2014年12〜月— 映像編集
・2014年3月— DVD制作(3週間程度)
DVD原盤制作/業者にてプレス
・2014年4月— NGO/議員/政府関係者/自治体へのビデオ配布
直接、訪問出来るところは、直接訪問して、報告する。
・2015年5月〜 上映&報告会(福島/東京/茨城)
福島/東京/茨城の3カ所で上映&報告集会を開催する。
・2015年6月〜各地でミニ上映会や対話集会などを実施。
◆事業計画の達成度:
事業そのものの達成度は非常に高いレベルで目標に到達できたと感じている。ウクライナ現地では非常に多岐にわたる取材を行うことができ、非常に豊富な調査ができた。またビデオも大きな反響を呼び、当初300枚程度のプレス予定が、これまでに2000枚のプレスするに至っている。上映会も全国各地で開催されている。
◆実施助成事業と内容:
写真=DVDタイトル(発売14年4月) ©OurPlanet-TV
ウクライナでの映像取材
11月14日から10日間の日程で、ウクライナのコロステンおよびキエフを訪問。以下の機関などを取材した
<コロステン>
★コロステン健診センター セルギー・チョルニー所長
★市立外来患者病院 アレクサンドル・ザイエツ医師
バースチリチ・ニコライ副院長/ブリースタ小児科部長
★第12学校 校長ニジニック・カリーナ先生
校医ノンナ・センチェンコ先生 体育ドミトリー・ヤルトモック先生
★コロステン市役所 ヴォロジーミル・モスカレンコ市長
★ヤレムシュク家 ナタリア・ヤレムシュク・マリア・ヤレムシュク
★ユルスン家 アレクサンドル・ユルスン・ガリーナー・ユルスン
★市場撮影 (食品放射線測定所)
<キエフ>
★第270学校 コロニエツ・ピョートル校長
★第259学校 ユルコ・アレクサンドル校長
★教育科学省 一般教育校主任専門官 コトゥセンコ・エレーナ
★国立放射線医学研究センター エフゲーニャ・ステパノワ博士
アナトーリー・チュマク博士(報告書統括)
★「チェルノブイリの医師たち」アンジェリナ・ニャーグ医師
★国立内分泌研究 トロンコ所長 テレシェンコ副院長
★国家戦略研究所 オレグ・ナスビット研究員
★国立記録センター セルギー・テレシチェンコ センター長
★保健省 アンドリーナさん
★チェルノブイリ博物館
<チェルノブイリ原子力発電所 >
報告会
「ウクライナ帰国報告会〜低線量汚染地域における健康管理と保養(学校での取組み取材から)」
日時:2013年12月11日 参議院議員会館 参加者:50人程度
「27年目のウクライナ〜子どもたちの健康状態と学校プログラム」
日時:2014年1月27日 参加者:放射能から子どもを守る全国ネット事務局
「子ども被災者支援法市民会議〜勉強会〜日本政府の支援チームミッション報告書を検証する」
日時:2014年2月19日 衆議院第一議員会館 参加者:20人程度
映像上映会&講演
「チェルノブイリ・28年目の子どもたち」完成上映会
日時:2014年4月19日 日比谷コンベンションセンター 参加者:約100人
その他上映会は全国約100カ所程度。講演つき上映会は杉並、世田谷、文京、千代田、佐倉ほか多数。
DVD頒布
2000枚をプレスし、日本医師会幹部、日本学術会議メンバー、国会議員、福島県医師会、他多数に頒布
執筆
「低線量被曝のチェルノブイリ原発事故27年目のウクライナ―日本政府の視察報告書を検証する」岩波書店「科学」4月号
◆ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第3回助成発表フォーラム2015
開催決定! =15年1月16日(開場18:00)=詳細はこちらから。
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