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2013年3月7日
2012年度 アドボカシーカフェ 報告

子どもの学習権を保障する「多様な学び保障法」実現のために

2013年2月28日、すべての子どもたち個々にふさわしい方法で学ぶ権利を保障する法案の実現にむけた議論が、ゲストや参加者の複数の視点から活発に行われました。多様な個性や状況の子ども一人一人が安心して自分に合った学習や成長ができる社会への強い願いが共有されました。多様な学び方によって生き生きとしてくる子どもたちから学び、共に進んでいこうという声で締めくくられました。

 

――― 主な内容 ―――

【1 】奥地 圭子さんの提言「立法化を目指す背景とその意味、新法の目指すもの」
ああ「多様な学び保障法」を実現する会共同代表、フリースクール全国ネットワーク代表理事。

【2 】鈴木 寛さんの提言「立法の筋道と課題」
あああ参議院議員、元文部科学副大臣。

【3 】参加者とゲストのダイアログやディスカッション

<パネリスト> 奥地 圭子さん、古山 明男さん(多様な教育を推進するためのネットワーク)
<進行> 樋口 蓉子(SJF運営委員)

以上を映像アーカイブとともに報告いたします。
――――――――――――

20130228FimGuest

―ゲストの鈴木寛さんと奥地圭子さん―

【1 】「立法化を目指す背景とその意味、新法の目指すもの」 奥地 圭子さんから

~子どもはかけがえのない命のかたまり、は原点~

~子どもが生きることと学ぶこととは1つのこと~
・学校は、人間社会が作った制度であり変えられる。
・子どもから見たら、つらい制度になっている学校制度を変えたい。
・学ぶ権利は、憲法の基本的人権である。しかし、現在の教育基本法に基づく普通教育では、学ぶ場が“学校”というもの一つしかない。教育基本法の下に学校教育法と並んで「多様な学び保障法」を制定し、フリースクールなどの学びの場が学校教育と同様の保障が認められるようにしたい。

~子どもが悲鳴をあげている。まず、子どもの命を救いたい~
・苦しいものを抱え込んで、いじめに向かっていく子どもたちの悲鳴。
・そして、いじめから“学校自殺”が多発している現実。
・「学校に行かなくてもいい」を子どもたちの選択肢の1つにしたい。
・何があっても学校に行かなくてはならないという固い枠を外してあげ、いじめの現場から逃げてもいいのだと言ってあげたい。民主党政権時、文部科学大臣の平野氏に提言したら「休んでいい」と言ってくれたが、その後の記者会見ではその言葉は出なかった。

~既存の“学校”に行かない選択をした子どもを支援する「多様な学び保障法」~
・様々な学ぶ機関を、主体となる子どもや親が選べる権利を保障することが目的。
・公費で保障され、学校教育との相互の乗り換え選択の自由、進学や進路選択で不利益をこうむらない状態の保障を目指している。
・新制度による多様な学びの場での教育も、親の就学義務を果たすものとしたい。
・不登校だった子どもたちが安心できる自分にあった場所で成長することは、自己肯定感を高めることにも役立つ。

~活動のきっかけは、我が子の登校拒否から~
・親の価値観が子どもを苦しめていることを、不登校から深く学んだ。
・学校外の子どもの居場所・学び場として「東京シューレ」を1985年設立。
・フリースクールに通う小中学生に通学定期券を発行すら当初は困難、実現は1993年。
・2000年、日本フリースクール大会をアジア初開催。
・不登校の子どもたちを対象とする東京シューレ葛飾中学校の開校を2007年。

 

【2 】「立法の筋道と課題」 鈴木 寛さんから

~“オルタナティブ教育法”から“多様な学び保障法”~
新法案が目指す多様な学びの場での教育は、従来の学校教育法に基づく学校の代替(オルタナティブ)ではないことを強調する為、2012年10月、「子どもの多様な学びの機会を保障する法律」と法案名を変更することを提案した。

~すべての子どもと若者に最善の学びを~
・いかに、唯一無二の学びを個別に支援していくかが基本。
・「学習権」は、教え込む“教育”ではなく、自発的な“学び”を保障される権利。

~唯一無二の子どもと対峙する均一化した近代システムからの卒業…「卒近代」~
・近代システムは、物質的な生産能力を最大化するための社会システムであり、学校教育は、それを支えるマシーン化された人間を産出してきた。
・直観力のある子どもは近代システムへの違和感を体現し始めた。

~学校教育“からの”自由~
・現行の学校教育は、3要件(検定教科書の使用、学習指導要領の遵守、教員免許を持った指導者)を満たす必要がある。
・「いじめ防止法」の民主党案では、不登校の子どもの親について、学習支援センター等のサポートを受けていれば就学義務を果たしているという条文を入れた。
・不登校の子どもについて、その子にとってのベストの“学び”がきちんと守られる仕組みが必要だ。

~学校教育“への”自由~
・多様な学びを選択する権利が、経済環境に依存しないようサポートする。
・「学習支援金」を民主党は設けた。学校教育法に基づかなくとも、3年間以上教育していれば中身を問わず支援の対象とした。
・「子ども手当て」は、学習支援金でカバーしきれない多様な学び(ホームエデュケーショなど)を支援することにより、すべての子どもの学習権を保障する意図があった。

 

【3 】参加者とゲストのダイアログやディスカッション

20130228WebFilmAll

~ 現役の教師に対するアドバイスがほしい。~
⇒(鈴木さん)教師は、学校の中に入っている以上、学校教育法に従う必要があるが、副教材は自由であり+αの教師力にかかる。2004年の「コミュニティ・スクール法」により、学校・保護者・地域が協働し子どもたちの豊かな成長を支える仕組みがあり、2012年度には122市区町村の1183校が指定され大幅に増加している。

~ 近代システムから脱するためにはどうしらよいか。~
⇒(鈴木さん)本当に幸せだな、と感じるのはどんな時だろうか。いじめ問題の背景には子どもの“関係性の貧困”による精神的孤立がある。“人生は金より友”であり、実際、ギリシャは経済不調でも友達さえいれば元気で幸せな様子だ。

~ 学び方が何でも許容されることで教育全体の崩壊要因にならないか。~
⇒(鈴木さん)戸塚ヨットスクールのようなスパルタ式スクールは子どもの人権侵害の観点で認定されないだろう。ガリベン式スクールについては、中身を問わない以上排除は難しいが、ガリベンだけでは本当のリーダーにはなれないというコモンセンスを作ることが一つの施策ではないか。
⇒(古山さん)詰込み型の塾が成立しているのは、子どもたちが日中は学校で息抜きをしてバランスをとっているからであり、全面的に責任を負うとなれば必然的に休養を取り入れたバランスを取らざるを得なくなるだろう。

~多様に学ぶ自由に対して、最低限の学ぶ基準は必要性ないだろうか~
⇒(奥地さん)子どもの能力について、今の教育体系の中で先を想像してしまうような親の考え方が変わる必要がある。学習支援センターが重要で、その子どもに最適な学びがわかる職員を養成していく必要がある。ひいては、今の教員養成体系も変わる必要がある。
⇒(古山さん)皆さんも、学習支援センターの仕事をやってみたい人はスタッフとして入ってみて下さい。規制をかけるかどうかという点については、アメリカではフリースクールは既に合法で自由度が高く、家庭で育てることが基本となっている。また、デンマークでは家庭学習の自由があり、公的な学校教育に対する要件は低くなっている。そもそも、学校で学ぶ文化・スポーツ・思想・技術などは、憲法で自由を保障しているもの。規制は最大限ゆるくてよいと思う。

~多様な学びの場を卒業した子どもたちのその後の成長を社会が認めていくことが大切~

~立法化に向けて活動することで、世の中の価値観を変えていけるのではないか。~

~今回のテーマは、まだ一般社会では特異的。問題意識を共有するための工夫は~
⇒(参加者)少数の子どもに対する支援でも、少しのところから変化が広がることを目指している。
⇒(古山さん)フリースクールは既成事実であり、ただ現状を認めるようお願いしている。
⇒(奥地さん)フリースクールの認知度は上がっている。学習指導要領以外の方法で子どもが生き生きしている事実を、子どもたちが命がけで教えてくれている。事実、2011年には、「不登校の子ども権利宣言」を子どもたち自身で整理して作成できている。

 

映像アーカイブ

 

チラシはこちらです

 

――― SJFの類似テーマの予定 ―――

2013年度のビギナー向けセミナーでも、本テーマを取り扱う予定です。対話がより深みと広がりを増すよう、多くの方々の参加をお待ちしております。

 

 

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