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原発事故子ども・被災者支援に必要な施策を考える1/21(月)のご報告をアップいたします。

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原発事故子ども・被災者支援に必要な施策を考える

日時:2013年1月21日(月)
場所:四谷地域センター11階集会室


進行:大河内秀人(SJF、江戸川子どもおんぶず、原子力行政を問い直す宗教者の会)

大河内:私は宗教者であり、私たちは「命」を優先して考えますが、かつての戦争を停められませんでした、国家の国策に加担して、多くの人々を戦場に送りだす後押しをしてきた、という歴史があります。それについては、各教団はあまり落とし前をつけずに、戦後の経済発展にまきこまれました。
同じような構図で、日本のひずみや差別といった社会状況を踏み台にして、多くの人たちは特定の人を犠牲にして、利権を獲得してきた、という原発の問題があります。原子力問題は、日本の大きな問題の根本にあるのではないか、という思いで、原発問題にこだわって取り組んできました。
今日までアドボカシーカフェでは、子どもを守る、農業という視点で開催してきました。課題を解決するには、社会の中で仕組みをつくっていく必要があります。法律をつくっていく、ということが重要だと思っていますが、昨年、原発被災者支援法が出来ました。法律は成立させるだけでなく、魂をこめなければならないと思います。そこで、今日は支援法とはどういうものなのかを聞きながら、それ以降の話を考えたいと思います。


渡辺瑛莉さん(FoE Japan (http://foejapan.org/))

渡辺:今日は支援法が成立したプロセスについて、まずお話をしたいと思います。その前に少しFOEジャパンの紹介をしますが、日本で活動をはじめて33年目になります。世界中にFOEはありますが、それぞれが対等に横に手をつないでいます。ドイツでは50万人もサポーターがいますが、FOEジャパンは15人ぐらいのスタッフしかいない、という非常に小さな団体です。気候変動や森林保全の違法伐採などに取り組んできました。
3.11以降は福島のことが非常に気になっていて、4月ぐらいから活動を開始しました。
2011年の5月23日の文科省の中庭に多くの人たちが駆け付けた、という写真です。この時に、福島県で年20ミリシーベルトを基準に、学校を使っても良い、と基準を出したのですが、これについて多くの人たちが反対をして、文科省が撤回した、という話です。
15日ぐらいで国際的にたくさんの署名も集まりました。福島の親御さんたちや国内外の多くの市民が声を挙げた成果だと思います。

以前の区域設定がこの図です。未だに20ミリシーベルト問題は残っています。

20ミリシーベルトとはどういうものなのかというと、一般人の被ばく限度が1ミリシーベルトというのが常識です。ですから、非常に高い数値です。
放射線管理区域は年間5.2ミリシーベルト。だから、非常に高い。
労災として認められるのが、年5ミリシーベルトから、というのがありますので、それと比較しても非常に高い。累積で5,2ミリシーベルトで労災が認定されたこともあります。だから、原発事故以降、かなり超法規的なことが行われていると言えると思います。

避難の権利
 これは、避難をしたくてもできない ということがあったからです。これは経済的な理由もあり、社会的な理由もあり、認知されずに苦しんでいる方が沢山いるので、私たちは「避難の権利」を訴えています。
当初、原子力損害賠償紛争審査会では、自主的に避難をしている人たちが議論の俎上に乗らなかった。これは問題ではないかと考え、認知させたいとアンケートをしたり、マスコミに訴えたりしました。2011年8月5日に初めて自主的避難者も議論の対象とする、ということになりました。12月6日の原賠審でようやく、自主的避難に対する賠償指針ができました。

賠償指針の内容
 自主的避難対象地域というのが設けられました。その中にいる人たちは、一律支払う、という指針があります。避難については分断が起きているので、残った人も避難した人も、分け隔てなく支援する、という形で一律支払われました。ですので、実費をカバーするというものではありません。また、対象となった地域の範囲も十分ではありませんでした。

昨年春、与野党から相次いで法案が提出されました。そのプロセスで、いろんな活動を行いました。

法律の特徴と基本理念
 幅広い支援をしていこう、というのが一番の特色です。それから、自己決定権の尊重。とどまったり、避難するのは自分で決めることが出来ること。子どもと妊婦に対しては、特別の配慮をしよう、特に未然防止に力を入れています。そのためには、健康診断などをきちんとしましょう、ということです。
それから、これは大きいと思うのですが、国の責任を明記しています。国は国民の生命、身体、財産を保護する責任があり、またこれまで原子力政策を推進してきた社会的な責任がある、と明確に言っています。

支援対象地域
 政府指示避難区域よりも広い地域を支援対象地域として指定しようとしています。多くの市民団体は1ミリシーベルトを基準にすべきと訴えています。
放射線によるもの、というのは被災者が証明すべきではなく、これは明らかに違う、というもの以外は、きちんと保障する、という点で、これは大きな意味があります。
この法律はかなり市民と議員が協力し合ってできた法律なので、かなり良いものができたと思っています。

<課題>
ただし、これはあくまでも理念法です。だから、それをどう具現化するかは大きな課題です。議員立法なので、政府にイニシアティブがあるわけではない。多岐にわたる省庁が関わる必要がありますが、省庁間のコーディネートに時間がかかり、進みが遅い、というのも課題です。
被災者の声が、今後どれだけ反映されるかも、大きな課題です。また、地方公共団体の理解が得られて実施するというのも大きな課題です。

その結果、実施が遅れています。その中で、現行の支援が打ち切られ始めています。災害救助法の適用となっていた福島県外への避難者の新規住宅支援が昨年の12月末に打ち切られました。支援法が動き出すまで、つなぎの支援が必要ではと思っています。

<自主的避難者への賠償>
8月までしか賠償されていない。

<福島県県民健康管理調査の問題点>
 これには非常に問題があり、目的がそもそも不安解消なので、チェルノブイリの影響は小児の甲状腺がんのみ、という形で、影響を過小評価する目的で行っている。内部被ばくの把握も不十分だったりしています。影響は少ない、という前提で行っているので、協力したくない、という被災者も多いです。
しこりやのう胞が発見された子どもが4割ぐらいいた、という調査報告があります。これは、以前のデータがはっきりしていないので、親御さんは非常に不安になる、ということはあります。
一度データをとって、2年後に再検査、という形になっているのですが、これは長すぎます。甲状腺の病気を持っている人は、通常もっと頻繁に検査をします。それでさらに親御さんは不安になる、という状況になります。
チェルノブイリのデータしかない、しかもあのデータはかなりソ連時代に隠されていた、ということもあり、科学的でない、というような批判が国際的にもある。ただ、現場の医師たちの訴えは大きく、甲状腺がんのみは認めざるを得ない状況にある。

原発事故子ども被災者支援法の一刻も早い実施が望まれます。
そのために、現在、43団体が入った<市民会議>が、議員に対しても訴えるというような動きをしています。多くの人たちが声をあげて、横に繋がろう、と考えています。

大河内:アドボカシーカフェの特徴としては、皆で議論してというのがあります。その前にここだけ聞いておきたい、というのがありましたら、

葉山 とおる(科学者)1ミリシーベルトというのが非常に高い、ということを科学者だから知っています。多くの被ばくデータは動物データだけです。また、チェルノブイリのデータはあまり公開されていません。だから、福島の人たちに協力してもらって、人類最初のデータを蓄積していくしかないと思いますが、それについての法律はどうなっているのでしょうか?

渡辺:支援法の15条がそこに関係しているようなものだと思います。「国は、低線量の放射線による人の健康への影響等に関する調査研究及び技術開発を推進するため、調査研究等を自ら実施し、併せて調査研究等の民間による実施を促進するとともに、その成果の普及に関し必要な施策を講ずるものとする」とあります。

大河内:今、はじめてそのデータを集めて行くんだ、ということを福島県のアドバイザーはおっしゃっています。ただ、福島の人たちにとってはモルモット的に扱われていると思っていて、私たちがどうなるのか、ということをあまり方針が出ていないのが、かなりいらいらしているようです。

質問)浪江町と双葉町では、健康手帳をつくるという形になっているようですが、これはどう機能しているのか?地域の方たちは記載の仕方がわからない、という形であまり機能していない、ということも聞きます。保障のことを考えると、きちんと管理しておく必要だと思いますが。

渡辺:健康管理システムはどうすればいいのか、という議論は地元ではかなり行われています。健康管理手帳もその一つです。データを一元的に管理する、というやり方も議論されています。ただ、100ミリシーベルト以下は安全です、というような方が中心なので、もっと中立の立場の方も入った機関が必要なのではないかと思います。

質問者)茨城では心臓病の子どもが増えているとか、甲状腺がんの子どもが多くなっているというような話をよく聞きますが、それは事実なのでしょうか?

渡辺)私たちは調べていませんが、そういう話はよく聞きます。私たちは未然防止が中心なので、実態把握はちょっと遅れている部分もありますが、実態把握は非常に手間とお金がかかるので、本来はそれは公的な機関の役目ではないかと思います。

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◆ワークショップ
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大河内:今度は、福島の被災者の立場で、現実はどうなのか?支援法に何を期待しているのか、三春町から東京に避難している方、というのは多いのですが。お父さんは仕事をするために残って、お母さんとお子さんだけ避難されているという方が多いのですが、今日は避難をしている増子さんに話をしたいと思っています。


増子里香さん:西東京に娘と一緒に避難しています。三春町と言うのは大きなしだれ桜がある人口2万人の小さな町です。郡山は非常に線量が高いのですが、三春町は郡山よりも原発に近いというところで、線量は郡山と変わりません。ホットスポットがやはりあり、学校の一部に毎時2,2マイクロシーベルトでした。玄関が0.6、ベッドの上が0.3マイクロシーベルトでした。
私の住んでいた三春町で避難したのは、うちの家族だけでした。三春町は二葉町のようなところから避難する人を受け入れるところでした。そこからなぜ、避難をするのか、ということを言われました。
4月6日にうちの娘が入学しました。年間20ミリシーベルト以下は健康に影響はありませんから、普通に生活してください。という通達がきました。20ミリシーベルトというのは、毎時3.8マイクロシーベルトになります。
うちは、牛を飼っている農家で、有機栽培をしていました。観光栽培ではないので、こだわりを持って農業をしていました。5000ベクレルまでは作付をしてよいということになっていますが、そこでとれた野菜を自分の子どもに食べさせられるか、というと、自信がない。私は農業をしていたし、親とも同居していましたが、いろいろ知るにつれて、これは避難しなければと思うに至りました。
子どもに水筒にミネラルウォーターを入れていたのですが、子どもは学校の先生から「学校の水道は安全だから飲みなさい」と言われて、水道の水を飲む。6歳にして自分が食べるものに対して、いろんな人たちから選択を迫られる、というのはむごいことだと思いました。
小出先生は家族の中でも食べ分けろ、という話がありますが、それは同居している家族がいるところでは、できない。義父は国が安全だと言っているから安全だ、と考えている世代で、家族で意見が違うのもしんどいことでした。
ゴールデンウィーク後、自主避難という形で東京に避難してきました。私の夫は子どもの安全は願っているけれど、家から出て行って欲しくない、というのを周りからも言われました。受け入れる側の町だったということもあり、未だに家族の軋轢はあります。
でも、今、残っている人たちも出たい思いは変わらない。でも、出られない理由がある。
最初は東大和市に避難し、今は西東京市に避難しています。家賃は国や東京都が認めてくれれば、26年3月までは無料で住めます。それ以降はどうなるかはわかりません。
私は農家だったので、親子で種をまいたりしていました。それが東京に来て生活が一変し、パートしながら6時まで働いています。それは娘も一緒で、全く知らない町で学童に通い、学校に通っています。

三春町は自治体がヨウ素を配りました。ヨウ素を飲んで、と言われたのは、三春町だけだそうです。福島県庁に取りに行って、40歳以下には配られました。ヨウ素を飲まなかった地域もあります。それを比較検証しよう、という動きもあるそうです。
今のところ、私たちは健康障害が出ていません。よく鼻血が止まらない、というような話もありますが、これは個人差があります。

今、自主避難のお母さんたちとのネットワークをつくっています。自治体からは情報が届かない。避難してしまうと、福島の情報が全く入らない。避難者という登録をすると、東京都から避難者向け情報が来るのですが、それは福島だけの情報ではありません。

子どもの健康については、福島県の18歳以下の子どもたちの甲状腺調査をするということになっていますが、非常に限定的で、日が決められ、交通費がかかり、という形になっているので、受けられないのが現状です。
震災のすぐ後、県民健康管理調査というのがありました。そこにびっしりと3月11日にはどこにいて、何を食べたかを書き込むようになっています。それを提出した人には、あなたの被ばく量はこの程度です、というフィードバックがあるといわれています。でも、過去の話をして、それだけ時間をかけて何があるのか、という思いがあります。この調査は素晴らしいかもしれませんが、学問のための学問であり、私たちのためになるわけではない、というのはよくわかりました。甲状腺調査を受けたお母さんたちは、判定内容だけが配られて、「問題ありません」という子供だましのような結果が戻ってくる。のう胞があるとわかっていながら、再検査は必要ない、と言われます。セカンド・オピニオンを求めようとすると、再検査はできない、と言われることもあります。

支援法ですが、私たちのために役に立つ法律であってほしいと思います。最初は勢いがありました。私たちもロビーイングも行い、復興庁に要望書を提出したりしました。期待が大きかったのですが、政局が変わり、年間1ミリシーベルトを勝ち取ってきたのに、また、20ミリシーベルトに戻るのではないかと危機感を持っています。
今、支援法についてはほとんどストップしている状況です。自主避難者は、ほとんどみな自腹です。支援法の対象にならなければ、何の恩恵も受けられません。区域内と区域外の賠償の手厚さは全く異なります。区域内の方々は健康保険が無料だったり、年金を考慮してもらえたり、という手当がありますが、そこまではいかなくても、区域外の人たちにも寄り添ってもらえればと思っています。
今回、福島は分断させられ、差別が起きています。避難したか、避難できなかった、お金に換算されたり、小さいながらも様々な分断が起きています。それが差別につながることもあります。いじめがあって、学校に行けなくなっている子どもたちもいます。
支援法については、何しろ認知度が低い。これは福島だけの法律ではありません。東京の線量は、いわきとほぼ同じです。それを考えると、関東一帯が被災者だとも言えます。ぜひ、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

大河内)それではあまり時間もないのですが、グループディスカッションをしたいと思います。誰を支援するのか?避難した人、残っている人、誰が被災者なのか?関東も被災者だという話もありましたが、そういう議論をしていただければと思います。


二瓶さん)練馬区に自主避難しています。お母さんたちが来たくてもいろんな会合に参加できないのは、交通費の問題があったり、子どもを連れていくのが難しいというのもあります。

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