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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第5回助成

NPO法人 メコン・ウォッチ=SJF助成事業中間報告(2017年6月末


団体概要

 メコン河流域国における開発事業や開発政策の影響を監視する活動を行う政策提言型NGO。メコン河流域の人びとが開発によって被害を受けることなく、河川や森林など豊かな自然資源に根ざした暮らしを続けられるよう、開発事業によって影響を受ける人びととの対話を通じて、人びとが直面している問題を理解し、そうした問題を援助政策決定者・実施者と議論し、政策や計画に反映させる提言活動を行っている。

 

助成事業名:『日本の公的資金が格差社会を生まないために―ミャンマーで日本が関与する大規模開発事業に関するアドボカシー活動 

 ミャンマーでは、「民政移管」後、援助や海外投資による開発事業が急速に進み、立退きや環境破壊等の問題が頻発するなか、同国が経済発展を遂げたとしても、格差の大きな社会が生まれることが懸念される。日本がすでに2012年から開発を開始したティラワ経済特別区(SEZ)開発事業では、移転による住民の貧困化や、事業開発スケジュール優先で住民参加が不十分な状態での環境アセスメントの実施等、さまざまな問題が起きてきた。事業を支援する国際協力機構(JICA)は、人権や環境に配慮するガイドラインを持ち、それを守る義務があるにも関わらずである。

本活動では、ティラワSEZに加え、国際協力銀行(JBIC)が関与するダウェイSEZなど、日本が関わる大規模開発事業が益々増えていくなか、JICAおよびJBICが持つ環境社会配慮ガイドラインを人権侵害や環境破壊を回避するためのレバレッジとしながら、現地住民の抱える問題の解決に貢献するとともに、日本社会に対しては、日本をモデルにした経済開発の海外輸出を再考する機会とする。

 具体的には、両SEZ開発対象地で現地調査を行い、現地住民の置かれた状況や事業への参画の意思や懸念点等を把握し、それらの情報を基に、JICAやJBICにガイドラインに沿った対応を促していく。現地では、影響住民と現地NGOと連携し、効果的な提言に向けた支援を行い、内外のメディアには、英語・日本語で情報を提供する。一般にもセミナーやメールニュース、フェイスブック、ウェブサイトを通して発信していく。

 

メコン・ウォッチ中間報告1SJF
写真上=ティラワSEZフェーズ1の移転世帯が暮らす移転地(左側)。移転地の目の前(右側)には、移転地で新たな生計手段を確立できぬまま、移転地の家屋を借金の抵当に入れざるを得ず、結果として手離さざるを得なくなった世帯が新たに家を建てて生活している状況も見られる。(2017年2月)

 

事業計画 

1)ミャンマー現地訪問と聞き取り調査(年3回。1~2月頃、6~7月頃、10~11月頃に各2週間ほどを予定。ミャンマーのNGOや現地で活動する国際NGOとの協力関係により、現地調査を実施)

2)日本政府/JICA/JBIC/国会議員等への働きかけ(通年で必要に応じて適宜)

3)影響住民/現地NGOのキャンペーンへの情報提供・提案などの支援(通年で必要に応じて適宜)

4)内外のメディア(現地の必要とするタイミングで実施)/日本の市民社会への働きかけ(アーユス仏教国際協力ネットワークと、国内のセミナー開催)

 

助成金額 : 100万円

助成事業期間 : 2017年1月~2017年12月

実施した事業と内容: 

1)ミャンマー現地訪問と聞き取り調査

 本活動の実施期間中6月下旬までに、2月、4月、6月の3回ミャンマーを訪問した(各回ともに2週間程度)。

ティラワSEZ

毎回の訪問で、ティラワSEZフェーズ1の開発により移転を余儀なくされた住民から、移転後の生計回復について聞き取りを行なった他、現地NGOから情報収集を行なった。長年(移転後この3年半ほど)課題だった清潔な生活用水の確保がようやく2月に実現したが、住民が菜園などに使える共有地の分配、移転地の各世帯の公式な土地の使用権の配布準備手続きは始まったばかりの状況である。

JICAはこれから移転することになるフェーズ2の住民に対し、透明性の高い協議や十分な情報提供を行っていないなど、フェーズ1で起きた問題の教訓を十分に活かしていない状況が続いている。住民には、移転や補償に関して個人の事情に合わせた様々なニーズがあり、これに対して、JICAと企業、ミャンマー政府はきめ細かい対応が必要である。今後もNGOによる緊密なモニタリングが必要な状態となっている。

ダウェイSEZ

この事業ではミャンマー南部、タニンダーリ管区で大規模な工業団地と深海港、付帯道路の建設が予定されている。当初タイ・ミャンマー政府の合意でタイ企業イタリアン・タイ・デベロップメント(ITD)社が先行して整地や道路開発を行っていたが、同社の活動は環境配慮、住民への説明や合意形成を欠くきわめてずさんなもので、現地ではすでに様々な人権侵害が起きている。

2月の訪問では、JICAが道路建設の事前調査を行った地域に暮らすカレン少数民族の村、また、タイ企業によって進められる初期開発区域の移転対象の村で住民の開発に対する考えや要望について聞き取りを行うとともに、日本側の事業関連主体の動きについて情報提供を行った。

6月には、住民グループやタイのNGOを含む市民社会の関係者と今後の活動を話し合う戦略会合に出席し、特にカレン少数民族のグループから日本政府・JBIC・JICAに対する意見書の提出について準備を進めた。

 

2)日本政府/JICA/JBIC/国会議員等への働きかけ

ティラワSEZ

フィールドワークと現地からの情報をもとに、4月にJICAとの会合を持ち、適切な対応を働きかけた。特に、フェーズ1の移転世帯がJICAガイドラインの規定する生計回復のために必要としているきめ細かい対応について意見交換を行うとともに、フェーズ2での移転・補償措置を実施する上での透明性の確保を求めた。また、住民への聞き取り情報をもとに、フェーズ1とフェーズ2の懸案事項と現状をまとめ、国会議員への情報提供を行った。

ダウェイSEZ

ウェブ等の情報収集からJICAが5月にSEZ、道路建設、深海港を含む「タニンダーリ地域開発計画にかかる情報収集・確認調査」を開始することがわかったため、JICAガイドラインの精神に則り、地域住民および現地市民社会への情報公開や協議を行うこと、また、現地での既存の問題の把握に務め、その解決を含めた提言を行うこと等を求める要請書を提出した。
要請書はこちらからご覧ください

また、6月にはJICAと会合を持ち、同要請書に関する意見交換を行うとともに、同調査の進捗状況等について情報収集を行った。

 

3)影響住民/現地NGOのキャンペーンへの情報提供・提案などの支援

ティラワSEZについては、日本側の動きを逐次現地NGOにメールで伝えるとともに、現地訪問時に住民に対し、JICA会合での結果等、情報提供を続けている。

ダウェイSEZについても、JICAの新たな開発計画に関する調査について、調査の概要等を英語にして現地NGOに情報共有を行った。また、当団体の要請書やJICAとの会合の結果もメールや現地訪問時(6月)に共有している。カレン少数民族のグループが日本政府・JBIC・JICAに対する意見書の提出を考えていることから、意見書に必要な情報の提供や内容に対するアドバイスを適宜行っているところである。

 

4)内外のメディア/日本の市民社会への働きかけ

○セミナーの開催

6月7日に【セミナー】『ミャンマー経済特別区開発の今:環境と暮らしへの影響』を特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワークとの共催で行い、ティラワSEZとダウェイSEZの現場の状況について報告し、住民の願いと日本の関与の仕方について考える機会を設けた。参加者は33名。

○海外メディアへの発信

 現地住民やミャンマー/タイの市民社会に正確な情報と日本型発展モデルの課題・リスクを伝えることを目的に、ダウェイSEZ開発に関する投稿記事を作成。タイのオンライン・メディアに6月中もしくは7月には掲載予定。現在、ミャンマーのメディアへの投稿も模索中である。


今後の事業予定とその課題や展望: 

活動予定

2017/07-08

メールニュース等インターネット上での日本語・英語での発信
SJFアドボカシーカフェの開催に向けた調整
ウェブサイトの情報の更新

2017/09 

SJFアドボカシーカフェ

2017/09-10

第4回現地訪問・調査(2週間ほどを予定)

2017/11-12

日本でのセミナー開催(関西)
調査レポートのまとめ

・JICAやJBICとの協議、国会議員への情報提供は必要に応じて適宜行う。

・メディアへの情報提供などの活動は、現地の必要とするタイミングで実施する。

 

課題と展望

ティラワSEZについては、フェーズ1開発地域からの移転後3年以上が経過した現在も移転住民の生計回復が途上であることなどから、今後も、住民が求めてきたこと、また、住民の異議申立てを受けて行なわれたJICA審査役による調査報告で示された改善に向けた提案が、きちんと履行されていくかをモニタリングしていく必要がある。国際NGOによる企業側へのアプローチも始まっているなか、住民のための問題解決の方法・仕組みの必要性をJICA・日本企業にもよりよく理解してもらう機会は増えていきそうである。当団体としては、住民の意見・視点がしっかりと反映されるよう、日本の関係者への働きかけを行っていきたいが、特に日本企業の中にはこうした住民やNGOとの対話に慣れていないところが多く、当団体としても、コミュニケーションの方法を模索中である。

 ダウェイSEZ開発においては、ミャンマー新政権に対し、また、カレン少数民族の場合には、カレン民族同盟(KNU)に対し、住民から批判の声を上げにくい状況が見られる。また、タイ企業の開発により被害を受けている住民の一部からは、日本政府が開発に関われば過去の被害も補償されるのでは、という誤った期待が広がり、住民の間で新規開発に対する温度差もみられる。当団体では引き続き現地のNGOと緊密に連携をとり、住民への情報提供、またティラワなど他地域の住民の経験が共有されるよう配慮していきたい。


 

 

 

 

 

 

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