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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)第3回助成

 移住者と連帯する全国ネットワーク助成事業中間報告(2015年7月

団体概要

団体設立までの経緯

 1980年代半ばより、アジア・中南米などから多くの外国人が来日するようになったことに対応し、各地で支援活動がなされるようになった。そのうち関東地域で活動する団体が集まり、1991年に「関東外国人労働者問題フォーラム」を開催した。フォーラムはその後も開催、回を重ねるごとに参加する地域が広がり、1996年には「第1回全国フォーラム」を開催するにいたった。ここで全国の在日外国人支援団体が日常的に連携・協力するための全国ネットワーク結成を決め、1997年に「移住労働者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」として発足した。2015年6月に名称を「移住者と連帯する全国ネットワーク」と改め、現在に至る。

 

団体のミッション / 活動の目的

 外国人の人権が保障され、多民族・多文化が共生する社会の実現を目指し、各地で活動する支援団体のネットワーク化を行うことを目的とする(2014年6月90団体が加盟)。個別に取り組まれてきた支援活動をつなげ、アドボカシー・広報活動で共同行動をとるための事務局機能を担う全国唯一の団体である。各地域・分野の取り組みと国政レベルおよび国際レベルでの制度・政策形成をつなげることを目指し活動している。

 

現在の活動内容 / 今後の活動計画

・アドボカシー・ロビイング:年1度の定期省庁交渉のほか、課題別、法改正時の交渉を行なう。またNGOによる政策提言を発表するとともに、国会議員との議員勉強会を随時開催。さらに国連条約の日本政府審査におけるロビイングも実施している。(受益者:特に成果があったのは、DV法での外国人女性、外国人技能実習制度改善による外国人技能実習生)

・ネットワーキング:日常的にはメーリングリストを通じた支援団体・支援者による情報交換や、医療、女性、入管問題などテーマごとのサブネットワークで活動。年に一度、キリスト教団体から労働組合まで最大1000名が集う全国会議を開催している。さらにアジア地域における移住者支援NGOのネットワークでも活動している。

・出版広報:年10回発行の機関誌(850部)、書籍出版、集会やイベントの開催。

 

助成事業名大学・高校進学における外国人特別枠の設置・拡充にむけたアドボカシー 

 本事業の目的は、高校・大学入学における外国人特別枠の設置・拡充を通じて、日本人と外国人の進学格差を是正することにある。ニューカマー外国人の子どもは、貧困と言語的障壁ゆえに進学で大きなハンディキャップを負っている。根本的には、親の社会経済的地位や日本語力の向上なくして進学格差の解消は困難で、移民統合政策を根本から変える必要があるが、現実には難しい。それを補うものとして、補習授業や奨学金の拡充といった措置も効果的だが、多額の予算と長期的な対策が必要であり、短期的に実現可能ではない。

 それに対して特別枠は、実現可能で即効性がある対策であり、外国人生徒の進学を百人単位で促進できる。特別枠は国公立大では皆無、高校では4分の1の都府県にあるがニーズに対して定員が少なすぎる。本事業では、いくつかの国公立大で手始めに枠を導入すること、ニーズの高い東海地方の高校で枠を拡充することを目的に活動する。アドボカシーを通じて「進学問題」の社会的認知を高め、中長期的な対策に向けた布石を打つことも目的としている。

 

事業計画

1)国公立大学への働きかけ:プロジェクトメンバーには国立大教員が多く、内部事情に詳しい。実現可能性のある国公立大学に対し、入試特別枠設置を直接働きかける。その際、きっかけ作りとなるシンポジウムを開催する。

2)東海地方の教育委員会への働きかけ:特別枠の先進県である神奈川、大阪に比べると東海地方の枠は10分の1程度しかなく、南米人が多い実情に合っていない。これは市民運動による働きかけの弱さが一因であり、1)のシンポジウムをきっかけに要請行動を進められるようにする。

3)国政レベルでのアドボカシー:2014年2月に設置された多文化共生議連に働きかけ、議連の課題として取り組んでもらうようにする。また、大学改革の一環として「留学生比率」「外国人教員比率」に加え、「外国人学生比率」も多様性を示す項目として入れるべく、議員を通じて文科省と交渉する。

4)市民社会へのアドボカシー:進学、アファーマティブアクションを特集する移住連機関誌の発行と広報、websiteやSNSを通して市民社会の関心を高める。

 

助成金額 : 80万円

助成事業期間 : 2015年1月~2015年12月

実施した事業と内容: 

 上記事業計画のうち、1)は順調に進んでおり、2)はこれから、3)はタイミングを模索中、4)はできた状況にある。以下、これまで形になった事業について述べていく。

①愛知県立大学シンポジウム

 外国人多住地域にある公立大学であり、特別入試導入の可能性が高いところとして、大学内の教員に協力してもらいシンポジウムを開催した。他のイベントと重なる悪条件のなかでも100人が参加し、名古屋学院大学で導入を検討したいという発言があるなど、非常に反応も良かった。これをきっかけに大学内で入試導入に向けて活動するグループが形成されたので、必要な情報などを提供しつつ協力を続けている。

  移住連 愛知県立大学シンポ©移住連
愛知県立大学でおこなったシンポジウム「ニューカマーの大学進学‐進学格差の是正に向けて」(15年1月31日)

  移住連 愛知県立大学シンポ キルカットさん©移住連
自身の進学をめぐる経験について話すキルカットさん。当日はお母さんも参加し、発言した。(同上)

②宇都宮大学における「外国人生徒入試」の導入

 宇都宮大学の担当者へのメンバーによる個別のはたらきかけや、シンポジウムへの参加を促すことで、本事業とのつながりが生まれ、担当者が動き、同大学国際学部で実際に「外国人生徒入試」が実施されることになった。(2016年度より)

③茨城大学シンポジウム

 前述の外国人入試を導入した宇都宮大学と近い関係にあり、メンバーの1人が勤務する大学であるため、学内の教員を主たる対象としてシンポジウムを開催した。宇都宮大学から3人が報告し、実際に外国人の受け入れが学部に及ぼす影響を話してもらった。教育社会学の教員や、大学改革の方向性を模索する評議員などを新たに同盟者とできた点で効果があった。

④全国フォーラムでの分科会開催

 子どもの貧困と教育をテーマとして開催し、資料が足りなくなるくらいの参加を得た。貧困プロジェクトによる報告のほか、兵庫の県立高校で外国人特別入試の導入に成功したグループにも発言してもらった。それを地元で実践したいというグループは現れなかったが、良いアイデアをもらったので自分の大学でも取り組みたいという大学教員がいたのが最大の成果。

      移住連 全国フォーラム関門2015 子どもの教育と貧困 ©移住連
九州朝鮮中高級学校で開かれた「移住労働者と連帯する全国フォーラム・関門2015」における
「子どもの教育と貧困の問題」分科会。発言するのはコリアNGOセンターの金敏光さん(2015年6月13日)

⑤機関誌での特集

 機関誌『Migrant Network』の月号で、特集・外国にルーツを持つ若者の大学進学を刊行した。これ    は①②のまとめという性格と、今後のアドボカシーに直接使える資料(なぜ特別枠が必要で、どうすれば実現できるかを説明)という性格を持つ。これを学内での説明に用いる資料として、愛知県立大や茨城大に一定部数を送っている。次項の今後の活動に際しても用いることが想定されている。

 

今後の事業予定とその課題や展望:

 大学に対する働きかけを前提としたシンポジウムは、現在のところ11月の上智大学が決定している。国立大学ではないが、実現による社会的な影響が大きいこと、外国語学部で一定の需要があること、学内で関心を持つ教員がいることによる。
 事業を進めるに当たり、1)の大学に対する働きかけが効果が高いということが明らかになった。2)の高校入試に対する取り組みを進めつつ、今軌道にのりつつあり、推し進めるチャンスと思われる1)に、今後、より重点を置くことが有効と思われる。その上で、高校入試に向けた取り組みを軌道に乗せるためには、以下の課題があると分析している。
①大学入試は個々の学部で問題提起できる点で変えやすいが、高校入試は教育委員会を動かさねばならず、よりハードルが高い。②大学の内部事情に詳しいから効果的な活動ができているが、高校入試については地域の教育委員会に対して自分たちで働きかけができない。③そのため地域の団体に働き掛けてもらうことを想定していたが、教育に関わる団体はほぼすべてが子どもに教える事業が主体だった。そうした団体には、教育委員会に対してアドボカシーをする余裕やノウハウがない。今年度に特別入試の導入を掲げた兵庫県に対しては、兵庫県外国人教育評議会がアドボカシーを効果的に行ったが、これは子ども向け事業を行っていない団体であることが状況を物語る。しかし、そうした団体は近畿圏に集中しており、ニーズがある中京・東海地方にはない。
今後の展望として、高校入試に向けた教育委員会に対する直接の働きかけをいったん保留し、残りの期間で大学に対する働きかけの効果を最大限確保し、更にタイミングを見計らいつつ、国会議員と文部科学省を動かすことを具体的な取り組みとするつもりである。国会議員事務所には、すでに大曲が足しげく通っており、国会での質問事項に入試関連を入れてもらうべく働きかけていく。

 

 

 

 

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