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 SJFアドボカシーカフェ報告


 生活保護の現場から見る日本の貧困問題

2013年6月19日、文京シビックセンターにて、アドボカシーカフェを開催いたしました。20年にわたり生活困窮者の支援活動をしてきた稲葉剛氏と、新宿区福祉事務所の現場でホームレスの相談や支援に携わってきた嘉山隆司氏の2人のゲストをお迎えし、日本の貧困の実態を語っていただきました。そして、多様な方々にご参加いただいた会場でのディスカッションは、真の支援につながるセーフティーネットのあり様を考える機会となると共に、家族問題や報道問題などの問題が複層的にからんでいる状況をあぶりだしました。

◆ おもな内容 ◆

◇ 稲葉 剛 氏(NPO法人自立生活センター もやい 代表理事、生活保護問題対策全国会議 幹事)のお話
ああ~貧困の現状をどう見るか~「扶養義務強化が福祉現場に与える影響」

◇ 嘉山 隆司 氏(元 新宿区ケースワーカー、1977年入区・本年3月退職)のお話
ああ「生活保護抑制ではなく低所得層のセーフティーネットの強化を」

◇ 参加者とゲストのダイアログやディスカッション
◆ モデレーター 辻 利夫(SJF運営委員)◆

稲葉さんスピーチ写真1  嘉山さんスピーチ写真1
aaaaaaaaaaaaa稲葉 剛 氏                                                嘉山 隆司 氏

 

~映像アーカイブとともに報告いたします。~

 
 稲葉 剛 氏 のお話
◇“ネットカフェ難民”から“年越し派遣村”“脱法ハウス”、など、メディア上の貧困問題の取り上げ方は変わっても、根っこは同じ、ハウジングプアの問題だ。

・2010年のネットカフェ規制条例で本人確認資料を提示できずネットカフェを利用できない人が居住スペースを失うケースが増えた。それをきっかけに、“レンタルオフィス”名目での建築基準法に満たない“脱法ハウス”が広がった。

◇仕事がやせ細ることが、住まいがやせ細ることへ直結する現状がある。

・定期借家制度の導入など住宅分野での規制緩和をきっかけに、入居者の追いだしなど賃貸住宅居住者のホームレス化が増加した。

◇最初で最後のセーフティーネットである生活保護。

・実際には広い意味でのホームレス状態にある人は3万人以上いる。

・2002年に「ホームレス自立支援法」が施行されたが、機能していず、ホームレスは減らなかった。「求職者支援制度」など支援策は全て、あくまで再就職の支援であり、仕事を保障する形にはなっていず、生活保護まで生かせない為の、防波堤にすぎない為だ。結果的に、生活保護しかセーフティーネットとして使えない。

◇生活保護の捕捉率(要件を満たしている人のうち受給できている人の率)は32.1%だ。

・“水際作戦”―受給申請の窓口で追い返す作戦、“スティグマ”―生活保護の受給に対する負の烙印などがあるのが実態だ。

・国連の社会権規約委員会から、2013年5月17日に、日本政府に対して、①生活保護申請の簡素化、②申請者の尊厳、③スティグマをなくすための政府による教育、をポイントとする勧告が出された。

・それと同日に、日本政府は生活保護法の改正案を出した。しかし、①申請する権利を侵害する内容である点、②扶養義務を強調する内容である点、において国連の勧告に対し正反対のものであった。

◇貧困の問題を、血縁関係に押し込めないことが重要だ。

・生活保護の申請者に対し、血縁関係のなかで扶養しあう義務を強調することは多くの問題を引き起こす。

・DVにより避難しホームレス状態になっているケース等では、申請することにより家族に扶養照会が行くと居場所が知られて身の危険にさらされることになる。

・貧困の世代間連鎖防止が重要だ。生活保護世帯の子どもたちが学習支援などにより自立していく可能性が、親の扶養義務という重荷を背負わされることで阻まれることを防がなければいけない。

◇生活保護の基準引き下げは、子どものいる世帯により厳しい内容になっている。

・子どもが2人いる世帯で最大10%の引き下げとなる。これは、子どもの学習支援策と矛盾している。

 
嘉山 隆司 氏 のお話
◇自立支援をどうしたらよいか? 生活保護にいたる手前での支援が重要だ。

・単なる経済的自立から、社会生活での人間関係や日常生活の自己管理を支援することが真の自立につながる。

・支援する相手を尊重しながら伴にどう問題に対応していけるかで、ケースワーカーの本領が問われる。

◇強固なセーフティーネットの構築を急げ――第3のセーフティーネットである生活保護の前に。

・第1のセーフティーネットは、雇用保険や健康保険など。

・自分で働いて、自分で暮らしていけるよう支援する。住まいや当座の生活費があれば働ける人に焦点をあてる。

・支援を受ける層のなかで稼働グループが10年で4倍に増えている。

・住居を失った人に対する貸付制度を給付制度に改めたり、求職者支援制度の利用要件を改めたりすることで、第2のセーフティーネットの拡充が急務だ。

◇福祉現場の労働環境の整備が必要だ。

・介護職の男性による“寿退社”するのは、結婚後に家族を養えず転職を余儀なくされるほどの低賃金だからだ。

・ケースワーカー配置基準は、都市部で80世帯に1人、群部で60世帯に1人の割合だが、実際には、2012年度は平均93世帯に1人という不足状況だ。仕事では、調査や監査や書類づくりに追われている。

◇“自立”と“自助”へ。

・普通に働いて普通に暮らせる雇用があることが必要だ。

・お金だけの支援ではだめだ。相談に乗ったり、自立までいかなくても地域社会に参加を促したり、フルタイムでなくてもできるところから仕事をするよう支援したりと、色々な方による重層的な人的支援が大切だ。

 
 会場での対話から (敬称 略)
◇たくさんの課題の中で優先すべきことは?(参加者)

・生活保護法の改正問題だ。既に衆議院を通過し、参議院での会期が6月26日までであり、このまま通過しないよう止めることだ。(稲葉)

◇なぜ嘉山さんは体を壊してまで沢山の福祉事務所で働いてこられたのか?(参加者)

・現場から発信していくためだ。現場にいないと分からない。(嘉山)

◇家族間の扶養義務はどこまで強化されていくのか?(参加者)

・改正案では、明らかに扶養義務を果たしていない親族に対しては、例外的に限り、福祉事務所が生活保護の決定前に通知することができるという条項がある。もし、これが可決されると、申請と当時に扶養に関する説明を執拗に求められる可能性が高まる。また、扶養義務を果たしていない場合、家庭裁判所で調停ができる制度があるが、これによる対応が増加する問題も、今後発生する恐れがある。(稲葉)

・扶養現場にたずさわって、虐待、DV、親が精神的に子どもをコントロールして子どもの力を奪っている場合など、家族による扶養義務の強化が被害を拡大するケースを多く見てきた。しかし、一般的な“家族”に対する美しいイメージに対しギャップがあり、扶養義務の問題が伝わりにくい原因となっているようだ。(稲葉)

・“孤立死”が増えている。北海道の姉妹が “水際作戦”により生活保護を受給できず死亡したケース等がある。 “家族”は十分に支え合っていて、もはや支えきれなくなって、家族丸ごと倒れるという状況だ。(稲葉)

◇生活保護の申請を跳ね返す“水際作戦”にルールブックがあるのでは?(参加者)

・申請現場では、明文化されていないルールブックのようなものがあるように感じる。上司から受け継がれた慣習や言い伝えなどが法律以上に根強く残っている。(稲葉)

・“水際作戦”を乗り越えるような反貧困教育は、大阪の西成高校があるが稀有だ。(稲葉)

・新宿区にルールブックはない。法律に従って粛々と仕事を進めた。生活保護を受ける権利は説明した。稼働年齢の申請者にたいしては、自立支援センターなどを紹介することもあった。(嘉山)

◇生活保護の不正受給バッシング報道によって生活保護に対する思い込みがあった。(参加者)

・生活保護より家族に頼ったらいいのでは、受給を受けるのは良くないこと、等のイメージが変わった。(参加者)

・マスメディアに流れている偏った情報によるマイナスイメージを変えて行くことも新たな課題だと感じた。(稲葉)

◇ベトナムでは大家族で助け合って生きている。日本では扶養義務が問題になることを新たに知った。(参加者)

・日本の家族は特殊だ。吉原の遊郭が300年続いた歴史がある。借金で首が回らなくなった親に売られた子どもがいたような歴史がある特殊な国で、貧困ゆえに親を扶養してきた国であることを忘れないでほしい。(参加者)

◇生活困窮者の自立を支援して成功したケースは?(参加者)

・スーパーのアルバイトから常勤となり彼女ができたケース、住環境の改善を支援したケース等がある。また、中間的就労―少しの時間でも何かしら働くこと―によって活き活きしてきた50代の女性もいた。国に食べさせられているのではなく、自活することで自信を得たようだ。(嘉山)

・役所はコミュニケーションが大事だ。一生懸命に、相手のことを考えて仕事をするとよい仕事ができる―Caféの料理も手を抜かないで創るとおいしいものができるように。(嘉山)

 



 

今後の企画予定のご案内

◇7月18日(木)  SJFアドボカシーカフェ

国連「健康に対する権利」の特別報告者のアナンド・グローバー氏が、ジュネーブで行われた国連人権理事会で、正式な報告書と日本政府に対する勧告を発表たことを受け、ゲストに国際NGOヒューマン・ライツ・ナウ代表の伊藤和子さんをお迎えし、皆さまと話し合う機会とする予定です。今年2月26日のSJFアドボカシーカフェ のテーマを引き継ぐ企画となります。

@文京シビックセンター4Fシルバーホール、 18:30~21:00(18:15開場)

 
関連リンク
◆NPO法人自立生活センター もやい  http://www.moyai.net/

◇店主 嘉山隆司 氏の古民家カフェ「Momo Garten(モモガルテン)」
(中野区中央2、TEL 03-5386-6838)  http://www.facebook.com/momogarten

 

2013/06/19用のご案内資料はこちら

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