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SJFアドボカシーカフェ報告

 

セクシャル・マイノリティのことを知り、誰もが生きやすい社会を目指して 第2回

~ カミングアウトというコミュニケーション ~

 

2013年5月28日、新宿の四谷地域センターにて、アドボカシーカフェを開催いたしました。
一人ひとりの多様なセクシャリティについてカミングアウト(公言)することが、なぜ、非常に覚悟のいる行為になるのでしょうか。背景から地域社会の何が透けて見えるのか、当事者と非当事者の垣根を越えた対話が広がりました。
ステレオタイプな性的役割から解き放たれた視点で見つめてみる、マイノリティだと差別されているということに安住せず自身も差別しているのではないかと問うてみる、など視点の転換に気づき、新たに視野が広がる場となりました。

◆ おもな内容 ◆

◇ 平良 愛香 さん(日本基督教団 三・一教会牧師、立教大学非常勤講師)から提言

◇ 島田 暁 さん(「レインボー・アクション」代表、映像作家)から提言

◇ 参加者とゲストのダイアログやディスカッション

◆ モデレーター 樋口蓉子(SJF運営委員)

 

映像アーカイブとともに報告いたします(以下 敬称 略)。

 

僕のカミングアウト5,5  平良 愛香さん

 

◇ あなたらしく生きて行きなさい、とずっと言ってくれた母親 ◇

… キリスト教の家庭に生まれる。「男らしくしなさい」という小学校の先生に対し、「男らしくとはどういうことか!髪が短いことか!」と激怒した母。

…最初から、男の人が好きだったが、“すくすく”と育っていた。そして、周りが同性愛者ではない、と気付いたのは中学生の時。

…同性愛の原因論や治療法の存在を知っていくにつれ、“怖い。絶対、病院に連れて行かれたくない。一生、人に知られてはならない。”との思いが強まっていく。さらに、キリスト教の高校に入学し、“神からも呪われている。どうやって一生を終わらせようか”ばかり考えていた。

◇ S.O.S ――カミングアウト1 ◇

…しかし一方で、“同性愛であることを何処かで吐き出さないと、自分が壊れてしまう。”との思いが強まる。カミングアウトは命がけ、失敗したら死ぬかもしれない。けれど、言わないのも死にそう。

…「愛香は、今までと同じ愛香だよ。」ついに、同級生の親友に話した時、返ってきた言葉。すごく、安心した。

…嘘をつかなくてよくなり、友人との関係性が変わっていった。

◇ 本当の私を知ってください ――カミングアウト2 ◇

…「今までと同じ関係だよ」と言われても、困惑するようになった。“嘘をついていた今までとは全く違う新しい関係をつくりたくてカミングアウトしたのに。”という思いが強まる。

…同性愛者との出会いを求めるようになる。沖縄でゲイ雑誌を見つけた時、その購読者に会いたい!と思う。けれど、会えなかった。それは、自分自身が命がけで隠していたように、みんなも命がけで隠していたから。出会いもなかった。

◇ あなたの目の前に同性愛者がいます、ということに気付かせないと差別は無くならない。――カミングアウト3 ◇

…群馬の短大で、初めの彼氏、同性愛者に出会えた。そして、人権の問題として、同性愛者の問題をとらえる視点を教えられた。

…同性愛の排除は、家制度による排除であり、キリスト教による排除という側面がある。

◇ 仲間たちにエール ――カミングアウト4 ◇

… 東京で、OCCUR(動くゲイとレズビアンの会)に参加する。そこで、自分が沖縄で孤立していたように、同性愛者はみんな孤立していたことに気づく。

… また、牧師の学校にも入った。キリスト教と出会ってしまったために、罪の意識を刷り込まれてしまった同性愛者を元気づけようと思った。神もありのままでよいとしているのだよ。

… あなたは、大事な存在だよ。

◇ セクシャリティはもっと豊かなもの、に気付いていこう ――カミングアウト5 ◇

… 女性差別が、セクシャル・マイノリティに対しても存在する。セクシャル・マイノリティというと男性同性愛者ばかりがイメージされる世の中。女性から男性になったトランスジェンダーは男性社会の中で女性であったことを隠さざるを得ないことが多く、強いストレス下にある。

… X(エックス)ジェンダーなど、性別二分に組み込めないセクシャリティもある。

… マイノリティV.S. マジョリティではなく、100人いれば100通りのセクシャリティがある。自分の性も豊かなバリエーションの一つであることに気づいてもらいたい。

◇ あなたは差別していることに気づいてください ――カミングアウト5,5 ◇

… 沖縄に生まれた者として感じることでもある。広く多数者の人に、様々な少数者を踏みつけていることに気付いてほしい。

… 同時に、私自身も少数者であるから差別していないとは言えない。差別者になりえることを問われていると思っている。

 

 

性的少数者を『活動家』の論理に回収しない『カミングアウト』論を
あああああああああああああああああああああああああああ島田 暁さん

◇ 「人を好きになることの無い人間」だと思っていた。 ◇

…小学校では放送委員会の後輩の男の子が休んだ時、手紙を届けたことがあった。初めて男性にひかれたのはこの時かもしれないが、それが「人を好きになること」だと思わないように生きていた。

…中学校では生徒会の後輩の女性からチョコレートをもらい、“おつきあい”してみた。相合傘や手をつなぐ場面で、ギクッとよけている自分がいた。

…どういう集団にいても“変わり者”だった。会話が「誰を好きか」といった内容に発展すると、適当にごまかして、開示しない人間と思われていたと思う。身の回りに同性愛やゲイといった情報がなかった。

◇ 「フツーに生きているゲイの日常」ブログ ◇

…好きな映像作家にゲイの人が多いことに気づく。

…折しもブログ・ブームが始まっていた。そこで、自分が気付き始めている「ゲイである自分」というものを表現しようと、“akaboshi”という架空のキャラクターでブログを開始した。

…ブログを通して知り合った男性同性愛者とお付き合いをしてみたことがある。が、あくまで虚構どうしの出会いであった。

◇ 尾辻かな子さんのドキュメンタリー作成――虚構からリアルな関係性へ ◇

…2006年に「ゲイin Japan」というNews Weekの見出しがキヨスクで目にとまった。その記事から、レズビアンであることを東京のパレードでカミングアウトした当時大阪区議会議員の尾辻かな子さんの存在を知った。

…ショックを受けた。自分に関わりのある情報を全く知らなかったことに。数ヵ月後、実際にセクシュアル・マイノリティの存在をアピールする活動を街頭で行っている場に出かけてみた。ひっそりとした活動の様子に、いい意味で裏切られたような印象を受けた。

…“akaboshi”として実際にセクシュアル・マイノリティの人たちと活動していく中で、解放できる自分を感じ充実感を覚えた。そして、参議院全国区に出馬する尾辻かな子さんの活動を、ドキュメンタリー映画にする目的で撮影し始め、公開可能な映像はYouTubeにアップロードする活動を始めた。

◇ “島田 暁”に浸透しない“akaboshi” ◇

…“島田 暁”は、日常生活の場でカミングアウトしていなかった。しかし、“akaboshi”として見つけた様々な活動に楽しみを見出し充実できている自分が、次第に、“島田 暁”に浸食していきたいと思い始める。

…職場の女性にコーヒーショップで「カミングアウト」をしてみた日(朝から非常に緊張していた)は、“島田 暁”に“akaboshi”が初めて浸みて行った、人生の大きな日だった。

…しかし、家族に対しては、分け隔てなく育ててくれた母親にしか直接は言えていない。やがて、製作したドキュメンタリー映画の発表の機会に“akaboshi”で作った人脈には“島田 暁”であることは浸透させていったが、以前からの“島田 暁”での人間関係には“akaboshi”は浸透させられていない。

…それは、90年代から実名でカミングアウトして、活動して、ぼろぼろに疲れた人たちの話を多く聞いたことも脳裏によぎる。「自分が無理をしない、疲れないこと」を第一にしているからだ。

◇ カミングアウトできるような関係は? ◇

…“みんなカミングアウトしようよ”、“もっとがんばろうよ”と活動家然として無理強いしたくないし、されたくない。

…新しい人間関係に入って行くたびに、カミングアウトするべきか、言わないべきか、という思考から一生逃れられないのではないかと思う。個別具体的な繊細な人間関係のなかで、言って、より深い関係性を築きたい人には、言うための関係を丁寧に築いていく必要がある。

 

参加者との対話から

◇ カミングアウトしたいと思う人が安心してできる環境が大事。そんな環境づくりに非当事者にもできることがあるのではないか。(参加者)

…非当事者だが、レインボー・アクションの活動に参加している。メディアなど多様な人から受ける質問の中に、当事者にとっては打ちのめされるくらい強く突き刺さる言葉もあるが、非当事者の僕なら、立ち向かっていけることがあるからだ。代わりに説明したり、うまくサポートしたりできることがあるからだ。(参加者)

…「自分は当事者性を持てない問題」でも、その人が明らかに傷ついていることについて、話を聞き、想像力を働かせれば体験を共有していくことはできる。(島田さん)

…理解できないことは当たり前であることを受け入れたうえで、自分で声を発することができない当事者をサポートしていく。(平良さん)

◇ 部下にカミングアウトした人がいる。自分が知らない間に、人の足を踏みつけるようなことをしていたのではないかと思った。(参加者)

…男性の上司が女性の部下に結婚や男女関係をきいたらセクハラと問題視されるのに、男性の部下に同様に聞いても不問だ。同性愛者にとって結婚圧力は苦痛でありカミングアウトへのストレスになる。(参加者)

◇ なぜ、同性愛者がキリスト教に行くのか?(参加者)

…新しい自分を救ってくれると思うのかもしれない、キリスト教が禁じているのを知らないのかもしれない。(平良さん)

…親にはカミングアウトしていない。親を絶対化したのが神だと思う。神は同性愛を許さなくても、イエス・キリストは自分に救いの手を差し伸べてくれる。(参加者)

◇ 障がい者でセクシャルマイノリティの人の問題にはどんなものがあるか。(参加者)

…脳性まひのトランスジェンダーは、介護者が理解してくれないと必要な介護を受けられない。トランスジェンダーの自閉症児の親は相談できる場所がないと言っていた。聴覚障害のある同性愛者は、眼から情報が入るため自分の性的指向に気づきやすくカミングアウトしている人もいるが、視覚障害者は、耳からの情報が限られており異性愛者として生きる以外の選択が難しい。わたしの知っている視覚障害のある同性愛者は中途失明の人のみ。(平良さん)

◇ 男はこうあるべきという思いの強い父にも開示したいと思いつつ、何か無神経なことを言われたら自分が制御できなくなる可能性があることに気が付いた。だから、今の自分では父親に、自分がゲイであるとカミングアウトするのは自分からは難しい。自分の問題でもある。 (島田さん)

…自分ひとりで頑張ろうとするとつらいと思う。冷静になれるような第三者的な人(カミングアウトした他の家族など)に助けを仰げたらいいと思う。(参加者)

 

終わりに

◇ 男らしさ、女らしさに違和感を覚えている人はセクシャル・マイノリティでなくてもいる。就活や婚活で「求められるジェンダー表現」の演出に疲れている人がいる。「正当な男らしさ、女らしさ」とされがちなレールに乗って生きなければならないストレスに対する自助グループはないようだが、今後のテーマだ。(島田さん)

… マイノリティゆえに感じるマジョリティの窮屈さ、性的な役割分担の枠にはめられている現実がある。(平良さん)

◇ カミングアウトは、“隠さなきゃ”というストレスから解き放たれ、本音を語り合える可能性が広がることでもある。自分のことを開示したら関係性を深く築いていけると思えるような相手がいた場合に、カミングアウトをしたいと思う。(島田さん)

…社会を変えるには、社会が当たり前としていることをまず疑うこと。(平良さん)

 

 

ご支援はこちらから(税金の控除が利用できます。) http://socialjustice.jp/p/shien/

 

今後の企画予定のご案内 ~お申込み受付中~

◇ 6月19日  SJFアドボカシーカフェ

「 生活保護の現場から見る、日本の貧困問題 」

ああ詳細はこちら http://socialjustice.jp/p/201306eventplan/

◆ 6月22日 ソーシャル・ジャスティス・ダイアログ

「 わたしたちは、どういう未来を創るのか

~社会的公正と「新しい」未来をシェアしよう~ 」

ああ詳細はこちら http://socialjustice.jp/p/201306eventplan/

 

関連リンク

◆「レインボー・アクション」 http://rainbowaction.blog.fc2.com/

◇ 日本基督教団 三・一教会 http://trinity.c.ooco.jp/

 

2013/05/28用のご案内資料はこちら

 

 

 

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