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ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)アドボカシーカフェ第85回開催報告

 

教育分野のジェンダーギャップ解消に向けて

―意識の壁・制度の壁を概観して考える―

   

 2024年6月8日、ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)は、長尾すみれさん(#YourChoiceProjectリサーチ班責任者/東京大学法学部4年生)、武 功翼さん(#YourChoiceProjectメンタリングコミュニティ運営班/Web記事作成班/東京大学理科一類2年生)、鈴木貫司さん(NPO法人わかもののまち)を迎えてSJFアドボカシーカフェを開催しました。

 全ての学生が生まれついた地域やジェンダーにかかわらず、自由な進学選択・キャリア選択ができる社会の実現を目指し活動している#YourChoiceProject。政治・経済分野のジェンダーギャップを根本的に解決すべく教育分野のジェンダーギャップの課題に取り組んでいます。とくに地方にいることと女子であることが複合的に困難を生んでいる地方女子学生の選択肢を広げるサポートと、地方女子が抱える課題の社会化を両輪として取り組んでいます。

 進路選択におけるジェンダーギャップをめぐる課題をまとめた白書の内容が提示されました。要因分析のなかで、家庭の教育投資が子どもの性によって差がある現実や、ロールモデルが多い人ほど自己評価が高い結果が示されました。それらを踏まえ、ジェンダー・ステレオタイプな考え方から保護者や教育者が抜け出していかに子どもを後押しできるか、そして女子学生自身に内在化されてしまったステレオタイプへのアプローチが重要だと提唱されました。難関大学でマジョリティを占める男子学生がこういった課題を認識して共に社会を変えていけるよう、ダイバーシティ・インクルージョン教育の充実と強化を武さんは提案しました。

 教育機関側のジェンダーギャップも子どもに教育機会の格差を生む要因になっており、教育の社会資源の格差解消においては自治体の変化も重要だと長尾さんは調査を基に指摘しました。子どもの意見表明権の確保につながる義務規定がこども基本法によって自治体に課されたことは、進路選択に関して自由に意見を表明できる環境整備の契機となる可能性があると鈴木さんは後押ししました。

 教育分野のジェンダー課題に複合的に絡むさまざまな課題を鈴木さんは提示し、学力や能力を測る尺度が多様化し変化していることなどが注目されました。健常で男性で強くて、といったステレオタイプな能力だけが測られるのではなく、だれもが自分の活躍できる場を見つけられるような教育や成功のあり方となるよう、性別関係なく一緒に取り組んで、社会全体に寄与する活動に最終的にはなっていければと長尾さんは表明しました。

 詳しくは以下をご覧ください。   ※総合司会は土屋真美子さん(SJF運営委員)

      Kaida SJF

 

——長尾すみれさんのお話——

 今回この場を借りて#YourChoiceProjectの調査事業並びに白書の内容について公開できること、とても光栄に思っております。

 

 まず#YourChoiceProjectの団体説明をさせていただいた後に、私たちが地方女子を取り巻くジェンダーキャップについて調査したことを踏まえて作成した白書の内容を公開させていただければと思っております。

 私たちは学生団体から始まって、今は頑張ってNPOを目指しています。私たちのビジョンは、「全ての学生が生まれついた地域やジェンダーにかかわらず、自由な進学選択・キャリア選択ができる社会の実現」と挙げております。本当に最近ですが、東京大学の総長賞を私たちの調査事業を含めた#YourChoiceProjectの活動全体がいただきましたので、もしネット等で検索していただけたら見られると思いますので、ぜひご覧ください。

 

地方女子学生をとりまく進路選択上のジェンダーギャップ

 私たちが取り組む社会課題は、地方女子学生をとりまく進路選択上のジェンダーギャップです。私自身も地方の高校生だったのですけれども、東京大学の地方女子比率っていうのは9%しかいなくて、東京工業大学になるとそれが3%というふうに、女子というだけではなくて、地方という変数が加わると、より難関大学へ進学するハードルが高くなっていることがわかると思います。

 このような数字がなぜこんなに低くなってしまうのか?というところについて、私たち#YourChoiceProjectの調査結果から、特に着目すべき点があると思った部分をピックアップいたしました。

 まず、地方女子学生は偏差値の高い大学に行くことにメリットを感じていないということで、首都圏男子・首都圏女子・地方男子と比べても、地方女子というのは、地方にいるということ、そして女子であるということが特有の変数として、東京大学などの偏差値が高い大学に行きたくない、または行くことにメリットを感じないと回答しています。

 また、地方の女子学生は自己評価が低いというのも調査結果から分かりました。客観的に同じ偏差値を記録している学生であっても、地方の女子は、他の属性の学生に比べて相対的に、自分が東京大学に合格できるという自己評価についてすごく自信がない結果が見えてきます。

 調査結果では、保護者が「女子は地元にいてほしい」というようなことを要求していることも分かってきました。

 

地方女子の選択肢を広げるサポートと、地方女子の課題の社会化を両輪で

 これらの課題について#YourChoiceProjectがどのようなことをしているのかをご紹介させていただきます。

 「選択肢を広げる」ということで、直接、地方女子にアプローチするプロジェクトを行っております。例えば「メンタリングコミュニティ」という、地方女子学生の高校や大学進学の進路選択において相談役を務めたり、情報発信、特に受験のお役立ち情報、例えば大学に進学した後にどのような寮があるのかなどについて、情報格差をできるだけ無くしたりしています。また、イベントを行って情報格差を無くす取り組みもしております。

 私たちは、地方女子に直接アプローチするだけではなく、地方女子を取り巻く課題を社会化して、各アクターがこの問題に真剣に取り組めるような土壌を作りたいという気持ちがあります。地方女子学生を取り巻く問題は、まだ社会課題として認識されていない部分が多々あると思います。その中で私たちがパイオニアとしてたくさんの人にこの問題を知ってもらい、可視化していくことが重要だと考えています。

 そこで、調査事業や、政策提言、企業との連携を通じた住居や教育等の資源提供を行っています。今回、私からお話しさせていただきたいのは調査事業です。

 調査事業では、地方女子学生を取り巻くジェンダーバイアスやステレオタイプを詳しく調査しています。まず、地方の女子学生はなぜ東京大学を目指さないのかという2023年度の調査を行いました。

 そして今回、私たちソーシャル・ジャスティス基金さんに支援いただいて作成しているのは、この調査結果を踏まえて、より網羅的に進路選択におけるジェンダーキャップという課題について記した白書です。2023年の夏の調査結果では、私たちが調査できる範囲の問題しか扱えなかった部分がありますので、より広い問題を、私たちの調査はもちろんですけれども、その他のデータも用いて白書を作成して、「進路選択におけるジェンダーギャップって何ですか?」と聞かれた時に、これを読めば概要がわかるものを作成して、今後、政策提言に活用したり、他の様々な方、例えば保護者さんなどに読んでいただいたりしたいと思っています。

 

 私は北海道から上京してきました。私が#YourChoiceProjectに入りたいと思った理由は、自分が地方女子として受験を経験していたことがあると思います。例えば情報格差の面だと、私は文系だったけれども、東京大学向けのハイレベルな授業が受けられる予備校が少なかったり、受験に際して対面で受けられる試験がオンラインでしか受けられなかったりして、格差を感じた部分がありました。

 特に地方の女子というのは、医学部や薬学部など資格が取れる学部に行きたがる傾向もあるのです。 自分もまさにそれで、東京大学の法学部に進学しようと自分が決断できたことは他の人のサポートがあったからだと思っていますけれども、自分が地方にいて女子だからこそすごく悩んでいた部分だったと思いますし、資格がなくて自分が人生をきちんと歩めるだろうかと悩んで泣いていた時代も思い出されます。

 そういう原体験があって、人それぞれ自分の進路選択や人生が関わってくると、深刻な悩みになってしまうと思うので、そのような学生を一人でも減らせたらなと思って、私も#YourChoiceProjectに入りました。自分は、他の方のサポートがあったというのがすごく恵まれていたと感じています。

 

日本における教育分野のジェンダーギャップの実態

 では、私たちが作成しているジェンダーギャップ白書について内容の概要を具体的に説明させていただきます。

 現状こんなにジェンダーギャップがあることを示す欄を設けてあります。東京大学で「2割の壁」と呼ばれているように、東京大学内で問題視されてきた女子率の低さは、実は東京大学だけの話ではないんですよということが白書に書かれています。難関大学と呼ばれる旧帝大・東工大・一橋大学だけをあげさせていただいているけれども、女子率が4割を超える学校は一切なく、3割を超えている大学が少しだけ地方に偏ってあるという状態です。

 日本のジェンダーギャップは政治や経済の部分はすごくあると言われていて、教育の面ではあまり無いのではないかと言われていましたし、実際データでもそうだったのですけれども、去年2023年から、「大学進学率の男女差」が「ジェンダーギャップ指数」に加味されたことによって、教育分野でのジェンダーギャップは1位から大きく順位を落として47位という結果になりました。

 大学進学率は男女で比べると、地方を中心に男性と女性では15ポイントの差があるところもあれば、10ポイント近く差があるところもこんなにありました(下表:各県の大学進学率は、2023年度学校基本調査をもとに、分子をその年の大学入学者数、分母を18歳人口の推定値として計算)。女子の方が大学進学率が高い都道府県は1つしかない状態です。

     Kaida SJF

 浪人率も男女で大きく差があり、女子と男子には4.2ポイントも差があって、二浪になると5.2ポイントまで上がります。浪人をさせてもらえる人が少ないですね。このポイントは割合なので、全国の受験学生の人数を掛けてみると、女子の方が浪人できていない人数が相当多いことがわかると思います。#YourChoiceProjectが行った県の調査結果でも、「浪人肯定度」という点においては、地方女子と地方男子の間に顕著な差が見られて、一番浪人肯定度が低いのが地方女子となっています。

 では、大学の中の構成というのを見てみますと、実は分野ごとの女性と男性の割合はすごく偏っていて、特に理系に比べて文系分野に女性が大きく偏っていて、理系の分野でも資格が取れる医学部・薬学部に女性が偏っているという現状があります。

 

家庭の教育投資に性差がある現実 保護者のジェンダーバイアスが重要な要因

 これらの問題について、いろんな要因があるので、そこについて我々が調査をした結果や、集めたデータを元にお話させていただきます。

 一つ目は、家庭の問題が挙げられます。「教育投資」が男女で大きく差があることが文科省のデータからわかっています。通塾などの補助学習費では、幼稚園・小中高の各段階において、男子の方が金額が高くなっていて、およそ5万円程度違いがあるというのは大きな金額だと思っています。一方で、補助学習費、文化的な活動で例えばピアノやバレエや水泳、書道、ダンスなど学習費以外の学校外の活動、いわゆる習い事については、女子の方が費用が高くなっています。ということで、男子と女子で、学力かそれともそれ以外の文化的資本かというところで親が選択を左右している部分がわかると思います。

 これは私たちがインタビューした学生の事例ですけれども、兄と弟は進学塾に通っていたけれども、その女性が「塾に通いたい」と親に訴えても「自分でなんとかしなさい」と聞き入れられず、お金を出してもらえなかった。また、「女子に学費はかけられない」と言われて、浪人や地元外への進学も禁止されていたという家庭の事情が見えています。

 ですので、家庭の意思決定をする母親や父親、その他の保護者がどういうふうにジェンダーバイアスを持っているかもすごく重要なファクターになってくると思います。

      Kaida SJF

 

 

 

 

 

教育機会の格差を生んでいる教育機関におけるジェンダーギャップ 

 教育機関の問題については、学校をまずは挙げました。教員の男女比について、令和5年度の文科省のデータですけれども、高校の女性教員割合は3割程度にとどまっていて、特に校長の女性割合は、小学校で23%、高校は8.4%と低くなっています。

 児童に指導する立場である教員が男性に偏っていることで、リーダーや外に出て仕事をして活躍する人が男性であるというステレオタイプが子どもの頃から根付いてしまう要因になっていると思います。

 進学校の男女差については、進学校の上位、例えば東大進学者ランキングでは、灘校や開成高校などが並んでいて、ほとんど男子校が占めている現状があります。女子が入れない高校が進学校であるということですよね。県立高校においても、県内トップ校が男女別学で、しかも男子校の方が女子高より偏差値が高い県が北関東に多く見られています。県ごとのこのようなシステムによっても、女子にも開かれた教育というのがより改善されるべき部分だと思います。

 学校の設備については、学生寮の問題があります。まあ難関私立高校には寮を併設している学校が多くありますけれども、その学生寮は多くが男性寮であって、女子学生は入寮することができない現状があります。たくさんの地方から寮に引っ越ししてでも入りたいと思えるような有名な学校が、男子寮しか準備できていないという現状もあって、機会の格差があると思います。

 実は、学校ももちろん重要ですけれども、受験勉強において学校より塾での勉強がすごく大きかったと私自身も感じていますが、塾によっては男女差別的なシステムが残っているのです。女子学生が進学できる有名学校が少ないからという理由で、選抜クラスに入るための条件として、女子は男子より偏差値が高い必要がある制度が残っている有名な進学塾も存在します。成績を上げる、合格実績を上げることに主眼が置かれている学習塾というのは、学校よりも如実に残酷な男女格差が存在すると感じています。

 

女性の社会進出を妨げる内在化されたステレオタイプにもアプローチを

 これらは学生自身に問題があるというより、社会にあるステレオタイプが学生に内在化されてしまっているという認識で見ていただけるといいと思います。「賢いのが男性で、優しいのが女性」と認識するのが男子で7歳頃から、女子で4歳頃から、という小さい年齢からそのようなステレオタイプが内在化されているというデータもあります(”Gender Stereotypes about intellectual ability in Japanese children”, 大神田麻子ほか, Scientific Reports)。

 進路選択に関するステレオタイプについては、例えば、女性は男性よりも理系が苦手だと思う学生が3割以上いますし、女性の方が男性よりも家事・育児に向いていると思う学生が半数近くいます(公益財団法人プラン・インターナショナルの調査)。

 女性の社会進出を妨げる内在化された潜在意識にも、私たちはアプローチしていく必要があると考えています。特に地方の女子学生にフォーカスを当てますと、このような学生自身のステレオタイプも影響していて、先ほど申し上げましたが、学力においての自己評価が低い結果となっています。

 

ロールモデルが多い人ほど自己評価が高い

 ロールモデルの不足も課題として挙げられます。「自分にとってロールモデルが何人いますか」と尋ねて、0人から10人以上で挙げてもらっているのですけれども、ロールモデルが多ければ多いほど、自己評価、自分についての自信が高まるというデータも#YourChoiceProjectの調査から出ています。とくに東京大学などのロールモデルになりますと、今まで女子率が2割もいるかいないかという状態がずっと続いているので、ロールモデルが自ずと少なくて、自己評価を上げられない女子学生が多いのではないかと推察します。

 大学の問題については、構造的な問題というより、大学側も変わっていかなければならないという認識で挙げさせてもらいました。大学教員の男女比についてはロールモデルにも関わってくる部分です。また、ハラスメント被害においても、女子学生の比率が2割しかいなくて困っていますと東京大学は言っているのにも関わらず、被害経験者が男性では15.3%に対し、女性では30.1%、その他の性別では39.4%となっています(2020年度 東京大額におけるダイバーシティに関する意識と実態調査)。学内の環境が整っていなければ、誰も入りたいとは思えないと思いますので、大学側が変わっていく必要があると強く感じています。

 

 最後に、女性特有の問題を挙げさせていただきました。どうしようもできない部分として、生理による体調不良と受験の関係があります。東京大学の二次試験は自分の生理が被るからピルを探して飲んだ経験が自分もあります。また、何日・何週間にも渡る高校受験で生理があるだけでハンディキャップになると思います。

 人それぞれ体調の不良があるのはもちろんですけれども、特に女性にはこういう問題がありますので、低容量ピルの一般化を進めることや、保護者や学校の配慮も、女子学生の受験やその後の勉学における障壁を低くするために必要なのではないかと思います。

 

 もう一つプラスすると、大学に入る時に県人寮があるけれども、男性専用になっている都道府県が多くて、女子学生が入れる県人寮が男子学生に比べて少なく、女子学生受け入れ門戸数660に対して男子2433となっており、設備的な問題というのもまだたくさんあると思います。

 

 進路選択におけるジェンダーギャップ白書からの示唆を、3つにまとめて挙げさせていただきました。

 まず、周りの身近な人がどれだけ後押しをできるのか。典型的なジェンダー・ステレオタイプな考え方から抜け出して、どれだけ周りの学生や子どもを後押しすることができるのかは重要だと思います。

 あと、設備の部分では、地方自治体の影響力が強いと思います。高校の男女別学かどうかとか、県人寮とか設備についても提言をしていく余地があると思います。

 そして、大学側が変わっていく必要というのも強く感じました。

 今後、地方自治体への政策提言や、大学への提言、また白書をもっと読みやすくして、保護者の方や教育関係者に読んでもらうようなアクションを起こしていければと思っております。

 

土屋真美子さん) 福岡県出身なのですが、自分の昔の経験上も、保護者の意識では、「女の子はうちにいてほしい」とか「地元にいてほしい」とかで、「老後は娘に見てもらえたら」と言う人もいました。それがデータとして今回分かったのだと改めて新鮮でした。昔と変わってないという問題も含めて、データとしてこうやって出していくのは大事だと思いました。

 

長尾すみれさん) 地元に残ってほしいというのは、その先の介護とか親を見てほしいという要求と密接に関わっていると思います。

 今まで変わらなかった部分を今後、行動を変えていけるのかについて、ぜひこの後ディスカッション等で検討させていただければなと思います。ありがとうございます。

 

 

 

——武 功翼さんのお話——

 私は中学・高校と都内の進学校に通っていまして、そこから2023年に東京大学の理科一類に入学しています。私の卒業した高校はかなり進学実績の良い高校で、私の年も現役浪人含め39人とかなりの人数が東大に入っています。

 大学に入った後に、地方に行くと女子だからというだけで東大に行かせてもらえないことがあると初めて知り、この教育のジェンダーギャップという問題に関心を持ち始め、2023年7月から#YourChoiceProjectに参加しています。ここに至るまでの私が、どういうふうに考えてきたかを私の話で扱えればなと思います。

 私は3つのテーマで話していこうと思います。1つ目が、なぜ自分が教育のジェンダーギャップ是正に関わっているのか。2つ目が、実際に活動してみてどのように感じたか、周囲の反響も合わせてお話しできればと思います。最後に、日本にある教育上の課題と、それを解決するためにどういった解決策があるかという私の意見を述べようと思います。

      Kaida SJF

 

 

 

 

 では、一つ目のトピックからいこうと思います。なぜ自分が教育のジェンダーギャップ問題に関わるのかというところです。私は実は東大に合格した時は、化学を研究したい理系学生というだけでした。それで一応、東大の教養課程を利用して、幅広い勉強がしたいなと思っていたものの、このジェンダーギャップに関してはほとんど興味がありませんでした。東大入試はテストの点数で全て合否が決まるのにどうして合格に格差が生まれるのだろう、と疑問を抱いていた節もありました。

 ところが、東大で初めて受けた授業でその考えが変わりました。私は男子校出身だったというのもあって、自分とは異なる性別、つまり女性として生きる人たちへの理解が全く足りていないのではないか、このまま社会に出てしまったらまずいのではないかと自覚していました。たまたまシラバスで見つけた瀬地山角先生のジェンダー論という授業を履修することにしました。

 その授業では最初に教育におけるジェンダーギャップについての話から始まったのですけれども、その時に先生が地方の進学校の進学実績を表したデータを示しました。(そのデータは)東大と京大には全くと言っていいほど女子が合格していなく、さらに浪人の欄を見ると、東大・京大はもちろん旧帝大においても女子はほとんど進学しないことを示していました。先ほど、東大入試はテストの点数だけで決まるのにどうして格差が生まれるのだろうと申し上げたのですけれども、その考えでは到底説明できない異常事態。これが地方で起きていることを初めて知りました。

 そこで、難関大の女子率には構造差別という社会的な要因も含んでいることを初めて知りました。これを知った時はすごいショックを受けました。私のいた高校はみんながそろって東大を目指す環境ができていて、なんとなく東大を目指す雰囲気もあって、あまり意識しないのですが、大学に入って視野を広くしてみると、こんなにひどい格差が存在している。それを知らないで、自分は正しい意味で東大生と言う資格があるのか、自分の他に東大に入るべき女子がどこかにいたのではないか。そういうふうに自問をするようになりました。

 この問題を放置してはいけないと、この授業の後に感じて、最初は個人でこの問題をどうすればいいのかといろいろ考え始めました。地方には予備校が少ないし受験情報も手に入れるのが難しく、これが大きい影響を与えているのではないかと思って、こちらを解決する方法が何かないかというのを探っていました。でも一人だとなかなか難しく、先ほど紹介したジェンダー論の授業で#YourChoiceProject代表者の川崎莉音さんと江森百花さんの2人が登壇した機会があり、そこで活動しようと決断して今に至っています。

 

 2つ目のテーマとして、実際にこの問題に取り組み解決する活動をしてみて、どのような反響があったかというのをお話ししていきたいと思います。

 先に結論を言ってしまうと、「この取り組みに私も含め誰かが関わることは、すごい意義があることだ」と実際、身をもって体感しました。私は、E.S.S.という英語系のサークルにも参加しているのですけれども、ある日この#YourChoiceProjectについてE.S.S.で話題にしたことがあり、一緒にいた2人から即座に「偉い」という反応が返ってきたのです。この2人はジェンダーギャップをなんとかしようという積極的な意思があるわけではなかったのですけれども、これだけのリアクションが得られるということで、このような取り組みが日本社会で高く求められていることがわかると思います。

 もう一つ同じサークルに関して例があり、私はこのサークルで英語のスピーチを書いていて、サークルの夏合宿で、このトピックを使って発表してみた機会があったのです。その時もかなり大きな反響がありました。サークルの同期からもらった感想がいろいろあり、地方女子学生の声も私の元に届きました。

 これはジェンダー系のサークルではなく、単なる英語系のサークルなので、全員が全員この問題に興味が持っているわけでは当然ないです。それでも私がスピーチをした時にこうしたメッセージが届くということで、改めてこの教育上のジェンダーギャップという問題のリアルさを実感する機会となりました。

 この活動の感想について一つお話ししたいと思います。基本的に私のこの活動の中で誰かに話したとかで、それを聞いて悪く言う人はほとんどいませんでした。むしろプラスに評価する人がかなり多いです。これは、日本社会において教育上のジェンダーギャップを解消する取り組みが大いに求められているということを意味しているのだと思います。

 

ダイバーシティ・インクルージョン教育の充実を

 最後に、日本社会にあるこの課題とそれを解決するための私の意見についてお話ししようと思います。

 こういうトピックになると、ジェンダーバイアスが課題として出てくると思うけれども、それは私以外の人が話した方がもっと詳しい話ができると思うので、今回は私なりの別の視点からこの問題についてお話ししようと思います。

 2022年度の東大合格実績の上位20校のリスト(東大副学長・矢口祐人先生執筆ネット記事『なぜ東大生の8割は男性なのか』より)では、上位20校のうち半分に当たる10校が男子校です。進学実績のいい男子校はこれだけではなく、地方の県立高校とか、ここに入ってないけど有力な学校もあるので実際にはもっと男子校出身の東大生がいることになります。この上位20校のリストにあるだけでも、割合に直すと4人に1人がこうした男子校出身という計算になります。東大生の8割は男性ということが問題になっていますけれども、内訳を見てみると、その多くがこの少数の男子校出身という、さらに特殊な構造になっているのがわかると思います。

 そこで私の仮説なのですけれども、このような中学・高校と男子しかいない環境で過ごしてきた人たちは、私たちが今扱っているこの問題に対して無頓着、あるいはそもそも存在を知らない人が多いのではないかと考えています。もちろん、こうした学生が全てそうであるわけではないけれども、このような環境では周りが東大を目指すことが既に当たり前となっているので、そうではない環境で、さらには自分と違う性別の人がどうであるかには想像が及ばないのではないかという点では、ある程度整合性を持った仮説ではないのかと思います。

 東大のジェンダーギャップを解消するためには、その主な構成員である男性の東大生がこの問題について自覚すること避けて通れないのですけれども、そのマジョリティがこうした男子校出身という属性を持っていて、この問題について無知であるというのは、日本の男女共同参画を実現するにあたって大きな欠陥となるのです。

 この状態を解消することために、どうすればいいのか。一番手っ取り早いのは、共学にしたらというふうになると思うけれども、それだと結論として単純すぎる。もう少し工夫した結論を提示できたらと思います。それは、中高の総合学習の時間を使って、もっとダイバーシティ・インクルージョン教育を充実させることが重要になるのではないかということです。高校を卒業して価値観が固定化されてしまう前に、こうした時間を設けることで、日本に存在する構造差別について知識を得て、もっと考えてきてから東大に来てほしいと私は考えています。

 少し話題が違うけれども、一昨年の9月には灘高校で甲南女子大生と生理についての社会講義が行われまして、それが朝日新聞によって報道されています。これと似たようなことがもっと多くの男子校で行われるようになれば、少しでも東大の環境はいい方向に持っていけるのではないかと思います。

 もう一つが東大に入った後の話で、大学で行われるダイバーシティ・インクルージョン教育をもっと強化する必要もあるのではないかと思います。 現在、東大に入学してきた新入生が授業のガイダンスとして見る動画がいろいろあり、その中でこのジェンダーギャップの問題も含めたダイバーシティ・インクルージョン動画の視聴も求められるのですけれども、見た後に小テストや課題が課されることはなく、サボろうと思えばサボれてしまうシステムなのです。それを、その動画を視聴して例えば小テストに答えたり課題を出したりすることで何かしら単位が認められたり、東大では他にも情報セキュリティ教育という別のシステムがあり、そちらの方では受けないとWi-Fiが使えないという罰則があるけれども、ダイバーシティ・インクルージョンに関しても、同じように罰則を設けて、受けないといけないという拘束力を持たせることで、東大の構成員に対してもこの問題について広く理解してもらうことが可能なのではないかと思います。

 

 

 

——パネル対話(鈴木貫司さん・長尾すみれさん・武 功翼さん)——

鈴木貫司さん) 話を聞きながら、普段意識しないと全く知らないところにどうアプローチをしていくのか、アンコシャス・バイアスにどうアプローチするかが課題だなあと思いながら聞いていました。

 僕の方からちょっと視点を広める意味でお話しさせてもらおうと思います。

 

 僕自身、静岡県出身で比較的、地方の中でも流動性が多いところかと思います。東海道新幹線が通っているので、人口流出入が多い県でもあるのです。そういった意味では、地方といっても、県単位や地区単位によってだいぶ違うと思います。僕自身、大学は教育学部を卒業したのですけども、その前は工業高校を卒業して、一回専門学校に行って、辞めて大学に入り直す形で大学に入学しています。その後は青年海外協力隊に行って、教員も経験しながら、今は市民協働センターとNPO法人わかもののまちで仕事をしています。

 今年の5月からは地方のユースセンターのような「公民館まる」の立ち上げに関わっていて、10代・20代のフリースペースがあり、いろんな体験の場や学びの場をつくっています。「学力」といってもいろんな学力があるので、いろんな学びの場を提供できればいいなという活動をしていますので、そういったことも踏まえて話を聞いていただければと思います。

 NPO法人わかもののまちは、いろんな若者と一緒にまちづくりをしている団体です。このソーシャル・ジャスティス基金の助成もいただいてハンドブックを作成させていただいたりしました。

Kaida SJF

 

 

 

 

 

子どもの意見表明権を確保する義務規定が自治体に 教育格差を解消する契機にも 

 若者参画の視点から少し話させてもらおうと思います。「ユース・エンパワーメント」。女性もエンパワーメントがすごく大事だと思うけれども、本来の能力が発揮できていない状況で、社会の差別や偏見を減らしていく一方で、差別や偏見を100%減らせないので、それがあっても力を発揮できるように本人へアプローチするのが大事だと、エンパワーメントという考え方があります。

 今回、#YourChoiceProjectさんが白書を作成して社会へアプローチをして、社会の偏見をそもそも減らしていくのはすごく大事だと思います。また、女子高校生や浪人女子学生に直接アプローチして伴走していて、両方にアプローチできているのが、なかなかできないことなので、すごいことだと思います。当事者をサポートしていくというのは、活動として今日多いと思うけれど、社会へのアプローチと両輪でやっているのが大事だと思います。

 若者参画の視点でいうと、子どもの権利条約で、子ども若者に影響を及ぼすことに自由に自己の意見を表明する権利を確保しますというのがあります。去年、令和5年4月1日から施行された「こども基本法」の11条で、自治体が子ども若者に関すること全てについて意見を聞くことが義務規定になりました。ということは、女子高校生が東大に行きたくても行けないことや、学力保障のために必要な環境が整ってないことに対して、当事者が声を上げたことを自治体は聞いていかないといけないと今は義務付けられています。なので、文科省等に対して、教育分野ばかりではないですけれども、自治体にはこういう影響力がある状況に今なっていますので、そういった意味でもこの活動が大事だと思っています。

 

教育分野のジェンダー課題に複合的に絡むさまざまな課題

 僕自身が教育学部出身で、学校内外の教育に関わっているところからも話させてもらおうと思います。

 ジェンダーの課題と他の課題が複合的に合わさっていると考えています。

 まず、今までの学力に対する考え方が指導要領でも変わっていまして、「生きる力が大事」と言われる中で、いろんなスキルが認められるようになっています。今までは「学力」というと受験勉強だったところからだんだん変化している。ただ暗記するだけではなくて、課題を見出す力や変化に対応する適応力などが重要視されてきています。

 大学の半分ぐらいがもう一般選抜ではなくなっているのです。僕も探究学習でいろんな高校に行かせてもらって講義で高校生に関わっていますが、まちづくり活動や地域に対して何かやってみてようという女子学生がけっこう多いです。感覚としては男子学生より女子学生の方がむしろ多いイメージがあります。そういった特性のある女子学生が進学できれば面白いと思いますし、そういった可能性も考えるといいなと思っています。

 「学力とは生きる力」みたいに変化してきて、学校の受験のシステムが変化している中で、どうやって女子学生の進学率が男子と一緒になっていくのかは考えていかないといけないと思っています。

 次に、地方では、経験や機会の格差があると思っています。東大に限らず地元外の大学に興味を持ちづらい環境にはなっていますし、周りにロールモデルがいないというのは、人口規模的なところからもそうですし、学校と家の往復の中で学校の中にそういう先輩がいないとなると難しい。そもそも当事者が知らないというのが大きな差になっている。

 さらに、直線的キャリア形成による懸念があります。僕自身が浪人をしたり大学時代に休学をしていたり、その中で一度いろんな経験をしてから大学でリカレント教育的に学び直したことが今の社会にも重要視されているので、そういった意味でも、女性とか男性とか関係なく、一度期間を取って自分の興味関心を深めたり、自由な時間を取った後に大学に入り直す意義もあると思います。そういうキャリアの広がりも考えることは大事だと思っています。

 

周囲に応援してくれる人がいて多様なロールモデルに出会える環境をつくる

 白書で社会的な認知を広げるのが大事だとやはり思います。

 武さんみたいな男性メンバーも団体に入っているのが、僕自身も男性として生きているので、一般的に男性が興味を持ちづらいところはある中で、団体としての社会的発信力を大きくすると思っています。男性だから関係ないというよりは、男性も一当事者としてこの課題に対してアプローチができるのが大事だと思っています。

 自己評価の低さについては、安全圏の大学進学を勧める学校教員が地方だとけっこう多いので、そういった周囲からの影響もあると思います。僕も1回浪人をした時に、もともと工業高校出身でABCから授業が始まるような学校だったので、受験勉強をゼロから始めるみたいな形で、塾に入りたいと言ってもどこも入れてくれないので、いろんな人が「お前はやめろ」という中で大学受験をしました。それでも周囲に応援してくれる人がいたので大学に入ろうと思えたのです。そういった意味では、学校教員とか周囲の影響がすごく大事です。

 特性を活かすといった話があったと思うけど、受験競争に疲れてしまって不登校問題などいろんな課題が社会全体で多いので、一般入試以外の可能性については、探究活動や推薦入試などが広がってきているので、広い視点で考えると面白と思います。

 ロールモデルの提示も大事だと思っていまして、僕ら自身も今そういう場を作っているのですけど、実際の体験や実感をどう持てるのかが大事です。オンラインやウェブ情報で見ただけでは、ちょっと遠い存在と思ってしまうと思うけれども、身近にそういう人がいて多様なロールモデルに出会う機会をいかに作り出せるのかが今後の課題だと思っております。

 

 武さんが、課題を発信していこうというメンタルに変化したことに関心があります。いろんな社会問題あって、東大というと所得によって学力格差が生まれていて特別な環境の人たちみたいな話もある中で、ジェンダーの課題を知って取り組もうと思うことと、実際に行動に変わるのは全然違うと思うのですが、その辺りどうですか。

 

武 功翼さん) 自分の東大受験に反対する人は周りに1人もいなかったので、反対される人がいるとなった時に、居ても立っても居られなくなった。自分の大学生のなり方は正しいのかと感じたのです。その最初の土俵はせめて同じであってほしいと思ったので。進学校から東大に入った責任みたいなのが、こういう活動に参加することかなと思っています。

鈴木さん) その辺の当事者意識、女性の課題だけど、それは自分にも関わることだよねと考え得るというのが。

さん) そうですね。男性優位の社会がこういう問題を作っているので、男性がやらないとどうにもならないとは思います。

鈴木さん) 今日、参加者の中に男性の方も結構いると思うのですけど、やはり女性が頑張ればいいというものではなく、男性も一緒に頑張ってなんとかしていこうと共同体を作っていくというのは大事な視点だなと、武さんのそうしたきっかけを聞いて、改めて認識させてもらいました。

 今の社会構造では東大などに行って弁護士や官僚になってきた部分も否定できない事実としてあって、政治など公的な部分を作っている男性の割合を女性とどう均等にしていくかは大学進学の問題と密接に結びついているけど、学力格差の背景にある課題などとの兼ね合いも踏まえて考えていきたいと思いました。長尾さん、その辺りについてはいかがですか。

 

政治経済分野のジェンダーギャップの根本となる教育分野の課題にアプローチ

誰もが自分の活躍できる場を見つけられる教育や成功のあり方に寄与する活動に

長尾すみれさん) 政治の場や企業の意思決定層などに女性を増やしましょうということが国を挙げて言われていたり、経営者層に女性を増やした企業には補助金を出したり、いろいろあると思うけれど、そもそも大学に女性が少なかったら、政治家や経営陣に女性を増やすことは難しいだろうと思います。だから、教育分野でのジェンダーギャップという根本的なところにアプローチしていけるのが#YourChoiceProjectの面白いところです。

 それプラス、学生として関わる社会運動として、学生の課題、受験の時どうだったかというような、自分たちが学生として経験したことをそのままアウトプットできる部分という点でも、私は学生時代に#YourChoiceProjectに入って活動できていることには意義があると思います。鈴木さんにそういうふうに言っていただけて、とても嬉しいです。

 男性も関わっていくという点に関しては、女性の進路選択における障壁を低くしていくのはもちろんですけれども、そこから一歩超えて、先ほど鈴木さんが挙げてくださった、今までは典型的だった学力というものから、今求められている柔軟性だとか、新しい能力の見方にシフトしていこうという動きがあると思います。

 あるいは、私の発表で女性特有の問題として挙げさせていただいた生理の話に関して、生物学的に男性として生まれてきた人には生理はないかもしれないけれども、生理以外にもそれぞれ抱えている体調の問題がある中で、健常で男性で強くてみたいな、そういう人だけが成功できる、そういう能力だけが測られるような社会ではなく、より多様な見方で、誰もが自分の活躍できる場を見つけられるような教育のあり方があると思います。

 最終的には、全体の進歩につながるといいと思います。女性の話だけではなく、より幅広いさまざまな教育のあり方や、成功のあり方について、男性にももちろん関わることで、全体に寄与する運動、流れになればよいのではないかと個人的に思います。

 

鈴木さん) そうですよね。

 生理の問題など女性特有のことに少し前までは全然気づいていず、人によって症状がだいぶ違っていて放っておいたら社会的な弱者になり不利益を生むということを認知するファーストステップが、やっと社会で少しずつ動き始めたのが最近なのかなと思っています。男性に生理の痛みを体験する機会があったり、生理の漫画が流行ったり、有名人がそういう発信をしていたりして、ジェンダーフリーの流れが広がりつつあるとは感じています。

 なので、これからの社会を考えていく時に、ジェンダーも踏まえつつ女性・男性と区切らない見方をしていくのも大事になっていくと感じています。とくに性的マイノリティの特性は地方では出しづらい中で、男性・女性といったカテゴライズをどこまでしていくのか、活動の中でも配慮をするのは大事だと今感じています。個人差があって、女性で理系が得意な人もいるし、共感性が強くて福祉の文脈で活躍する人もいるし、女性特有とか男性特有とか、そういうのがなくなっていく社会になるといいなと思っています

 

 1つ聞きたいのが、地方によってだいぶ差がありますか。ジェンダーによる偏見や差別、優位性などで。

 

長尾さん) 私たちが2023年に行った「地方女子の進路選択上におけるジェンダーギャップ」という調査(https://yourchoiceproject.com/column/pressrelease2023)で分かったこととして、地方女子は東大進学にメリットを感じないとか、資格取得を重視してしまうとか、安全志向とか、保護者が地元にいてほしいと言うとか、たくさん載せているけれども、鈴木さんがおっしゃった通り、気候による制約の違いだとか、地域性の違いだとか、都道府県でどういう違いがあるのかについても今後できればと思います。

 今回の白書で分かったことに地方の制度上の問題もあって、先ほど指摘した通り重要な点ではあると思っているので、地方自治体の方々に動いてもらうために、都道府県ごとのジェンダーギャップ指数じゃないですけれど、#YourChoiceProjectが関わっている範囲で例えば、地元への呪縛の強さですとか、難関大進学率ですとか、女性が入れる高偏差値の高校がどれだけあるかなどについて都道府県ごとにデータを集めて示せるといいと思っています。都道府県ごとの違いが分かって、自治体の人に自分の自治体が大変な現状だと認識されて動いてもらえるのではないかと、白書事業の次のステップとして考えているところでしたので、鈴木さんに今ご指摘いただいて、いろいろなカテゴリーでも比較できると面白いと思っております。

 

鈴木さん) 地方自治体へのアプローチは大事です。日本全体となると動きづらいですけど、全都道府県で最下位ですよと言われたら、絶対なんとかしなきゃとなるじゃないですか。

 #YourChoiceProjectさんは政策提言でも実績があると思うので、ロビング的に議員さんなどにアプローチしていくと、県や市町村の自治体でなんとかしなきゃという動きができてくる可能性があります。

 地方では「高校魅力化」というプロジェクトが結構あって、魅力化プラットフォームとして、離島や山間地域に公営塾を建てて自治体が勉強を教えて大学進学につなげるとか、多様な学びの場を作ることもやっているので、教育の機会均等を横展開で広げていくことも提言できる可能性があります。

 東京ではNPO法人WaffleさんがITなどSTEM分野の女性の教育格差を無くしていこうとしているように、オンラインをうまく使いながら広げていける部分があると思います。地方と首都圏では実体験の差もあるけど、情報にアクセスできるかどうかの差はすごくあるので、オンラインをうまく使うと強力な武器になると思います。今は海外の大学もオンラインで受けられる時代になっていますので、そこに向けての提言ができると次のステップとして面白いなと個人的には思っています。

 

長尾さん) どのぐらいの範囲のことについて私たちが政策提言できるのかについて、今たくさんアイデアをいただいた気がします。今後、白書を完成させた後に、白書を使って様々なところにアプローチしていければなと思っています。

 

 

 

――グループ対話とグループ発表を経て、ゲストからのコメント―― 

※グループにゲストも加わり、グループの方々に感想や意見、ご質問を話し合っていただいた後、会場全体で共有するために印象に残ったことを各グループから発表いただき、ゲストからコメントをいただきました。

長尾すみれさん) 本日はこのような機会をいただけたこと、本当にありがたくて光栄なことだと思っております。特に最後のグループ対話では、私が発表した白書の内容についてアドバイスをいただけて、この活動に共感してくださって、この輪を広げようとしてくださる方々の声を実際にその場で聞けて、やっていることは間違っていないという自信にもつながりました。また、このような活動をより広げていきたいというモチベーションの部分でも、私個人にとっても資産になるような時間をいただけてありがたかったと思っております。皆さん、本当に今日はありがとうございました。

武 功翼さん) 今回はこのようなパネルディスカッションの機会をいただき、聞いていただきありがとうございました。グループ対話でもいろいろな意見が出て、日本でこういうところにも問題があるという発見も得られたので、すごくいい機会となりました。本当にありがとうございました。

鈴木貫司さん) ジェンダーや進学率だけではなく、複合的に様々な課題が結びついているとグループ対話で感じたじたので、#YourChoiceProjectさんはそれを特化してやっていただいて、みんなで共有しながら一緒にビッグデータ等を作っていくなど、課題意識を共有して連帯していくのが大事だと改めて今日感じさせていただきました。

 名前の「#YourChoiceProject」は、本当にいい名前だなと思います。全ての子ども若者が自分の選択肢の幅を広げられて、自分で選択できる世の中になっていくといいなと思っています。僕も現場の人間ですけれども、若者が自分の行動の選択をしっかりできる、そのためのいろんな選択肢のロールモデルが身近にある場を作っていきたいと思っておりますので、また一緒に何かできたらなと思います。今日は本当にありがとうございました。

 

 

 

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