ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)アドボカシーカフェ第82回開催報告
クリエイティブの現場を安心できる場に
―弁護士と対話し考えるハラスメント問題―
2023年12月15日、ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)は、太田啓子さん(弁護士)、深井剛志さん(弁護士)、尾崎翠さん(明日少女隊発起人/アーティスト)をゲストに、宮下萌さん(弁護士)をコーディネータに迎えてSJFアドボカシーカフェを開催しました。
「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約」は包摂性が特長で、フリーランスやインターンも含め広く働く人の尊厳と相互尊重がある仕事文化の実現を希求していますが、日本は損害賠償訴訟の増加を恐れる経済界の反発で批准されていない経緯があると話題になりました。
クリエイティブ業界に多いフリーランスで働く方は、労働法で保護される労働契約ではなく業務委託契約で働くために雇用者との力関係に圧倒的な差が生じていることが多いと説明されました。
性被害を招くエントラップメント(罠)は、加害者はそういった力関係の差につけ込んだり、被害者をおとしめ弱体化して自分を権威づけたりして、性的関係へと逃げ道を塞いでいく形が多いことが示されました。
不同意の性交等が罪に問われる改正刑法の規定、回復に年月を要する性被害の損害賠償請求の時効対応、密室で性加害が行われても見出しうる証拠、二次加害の恐れがあるなかで被害者自身が訴えずに解決できる仕組み、業務委託契約でも労働法の規制が及ぶ労働者として救済できる可能性などが丁寧に説明され、現状の力関係下でも諦めずに弁護士に相談してほしいと強調されました。
芸能界に限らずさまざまな業界でハラスメントや性暴力ひいては人権侵害があり、私たち一人ひとりが無自覚に差別に加担し得るので、学び直して社会を変えていこうと呼びかけられました。一歩ずつ世論を変えていく必要がある時も、多様な立場の人がそれぞれの立場から声を上げると、その人からでないと声が届かない人にも届いて、結果的に連帯につながっていき、社会を変えていけると締めくくられました。
詳しくは以下をご覧ください。
写真=上左から時計回り 深井剛志さん、尾崎翠さん、宮下萌さん、太田啓子さん
宮下萌さん) 近年、映画やテレビや、舞台芸術、現代美術などのクリエイティブ業界での性暴力やハラスメントなどが問題となっています。その被害の深刻さの一方、クリエイティブ業界で働いている方にとって弁護士というものは遠い存在であるというところで、今回はフェミニスト弁護士の太田恵子さんと、地下アイドル案件も扱っていらっしゃる労働問題に詳しい深井剛志弁護士をお招きしました。
——尾崎翠さんのお話——
明日少女隊は2015年の結成以来、性暴力被害やハラスメントについての作品を作り続けてきました。
今年の夏に『WE CAN DO IT!』という本を日本で出版しました。この紙面の多くを割いて、性暴力とは何か――デートDVについてだったり、アート界の#Me Tooについてだったり、詳しく書いてありますので、まだお手元にない方、ぜひ本屋さんで見てみてください。オンラインでも出版元のアートダイバー社のホームページやAmazonなどで購入することができます。
性差別に気づかず間接的に加担しえる私たち 学び直して社会を変えていく
今年はジャニーズの性暴力、また、宝塚歌劇団のパワハラ問題などもあるように、今まさにクリエイティブの現場をいかに安心安全な場所にできるかが問われていると思います。
このイベントは、今年の夏に亡くなられた明日少女隊の隊員でもあった水井真希さんへの追悼でもあります。水井真希さんは映画監督であり女優であり、アクティビストであり、多彩な才能に恵まれた素晴らしい方でした。明日少女体ではBelieve campaignや広辞苑キャンペーンなど、さまざまなプロジェクトに参加して活躍されておりました。 明日少女隊の本の中でも水井さんの写真がたくさん掲載されています。皆さんぜひ探して水井さんの活躍を思い返していただけたらと思います。水井さんを失ったことは私たち明日少女隊の隊員たちにとって言葉にならない深い悲しみをもたらしました。しかし、生前、映画界の性暴力に対して声を上げ、戦ってこられた水井さんの思いを引き継ぎたいと思って、このイベントを企画しました。
明日少女隊では、設立当初から舞台や映画などの女優さんたちの参加があったのですが、水井さん以外の方々で、性的なシーンに協力した自分がいるのでフェミニストと名乗るのが辛いとおっしゃって辞めてしまったケースがいくつかありました。性差別的なシーンに参加してしまったから、自分の権利を主張する権利がないと考える方がいらっしゃるみたいです。
でも私たちは、そんなことないよと伝えたいです。誰だって、この性差別的な社会で今まで生きてきたのだから、間接的にもその性差別にうっかり加担したことがあるかもしれない。でも、今から学び直して、一緒に声を上げて、そういう社会を変えていくことで、次世代につながる安心安全な社会を渡していくことができるのではないでしょうか。
そもそも、どうして、性差別的な映画とかアートとか、そういうものに知らず知らずのうちに加担してしまった、ということが起こるのでしょうか?
日本のクリエイティブな業界でセクハラや性暴力が多い理由の一つに、日本の教育の問題があると思います。義務教育や高校・大学で一般教養として、人権について、ジェンダー学について、ハラスメントについて、メンタルヘルスの問題について学ぶ機会がないことがこのような状況を生み出しているのでは、と私たちは考えます。
——太田啓子さんのお話——
こんにちは。普段の仕事は離婚事件が一番多いですけれども、もともと性暴力にとても関心があります。
事件でも、その被害者側代理人をやることもあるのと、ハラスメントに第三者の立場で関わることもあります。一般的な典型例では、最近だと、ジャニーズや宝塚の問題で、組織外の第三者が入って当事者にいろんな聞き取りをして検証が行われるという作業も、弁護士が必ず入ります。そういう仕事を時々、大学や会社から請け負うこともあります。
一番最近では、2019年の年末に公表したデイズジャパンという知る人ぞ知るという感じだったかもしれないけれども、フォトジャーナリストの広河隆一さんという方が、彼を慕って尊敬する周りにいる若い女性のフォトグラファー志望者、ジャーナリストの卵みたいな方々に、大変ひどいハラスメントを繰り返していたという件があって、それについて第三者として関わりました。優越的な地位、より強い立場からのハラスメントですね。教師と生徒とか、スポーツのコーチと選手とか、上司と部下とか、取引先といつも仕事をもらっているフリーランスとか、映画監督と俳優さんとか、世の中にはいっぱいそういう力関係があるわけです。
性暴力というのは殴ったり脅したりを手段にしても起こりますけれども、そういうことをするまでもなく、あらかじめ上の方にいる人がその力を濫用して、もう嫌と言わせないでやるということが、すごく多いと思っています。でもそれは、迎合、むしろ喜んでいるかのように見えるからこそ、被害が見えづらく、救済がとてもされづらく、そこを法的にどう位置づけて、どう救済できるのかということに関心があります。
フリーランスへのハラスメント横行
最近やっている事件のことを少しだけお話したいと思います。報道もされたので構わないと思いますが、一年前の今頃に、大内彩加さんという女性の舞台俳優さんが、私が担当している被害者で、この舞台の脚本書いて自分で劇団も主催していて演出もする谷賢一さんという方が相手方・被告ですけど、この方からハラスメントを受けていたということで、今も裁判中でございます。その前に大内さんはインターネットに投稿して、賛同・支援の声もあがったけれど誹謗の的になるということもありました。
舞台俳優では、知乃さんという方がいらっしゃって、芸能界からハラスメントをなくしたいという活動をしていらっしゃいました。もともとは知乃さん自身が10代の時に演出家からハラスメントを受けて、それについて告発する演劇界の#Me Tooみたいなことを20 18年~2021年ぐらいになさって、その時に頼って縁があった弁護士がいて、その弁護士が知乃さんの活動を手伝いながら、自分もそういうハラスメントもしていて、依頼者である知乃さんにもひどいハラスメント加害をしてしまっていた、そんな事件に今関わってもいます。
フリーランスのハラスメントに精通して専門的にやっているということではないけれども、性暴力に関心がある中で、そんな事件が来ることもあるというのが正確かなと思います。なので、フリーランスの立場の弱さ――法的な救済が全く及ばないわけではないけれども、難しさ――を、お客様から聞いて思うことは結構あります。
割と最近ですが、日本俳優連合とMICフリーランス連絡会などが、フリーランスとして働く人へのハラスメントについてアンケート調査をやりました(https://blog.freelance-jp.org/20190910-5309/)。調査結果は、回答者の内のというパーセンテージではありますけども、パワハラ、セクハラ、いろんなハラスメントを受けたことがあるという人がすごく多くて、72.5%に至っています。具体的な被害内容としては、殴られたり蹴られたり、これは普通に犯罪ですけど、民事上の不法行為でもあります。あとは、人格否定に相当するような言葉を投げつけられたイラストレーターさん。打ち合わせ後にセクハラにあってホテルに連れて行かれて性的関係を断ったら以後は仕事がとても辛くなってしまった脚本家。声優さん性的な関係を迫られて断ったら悪い噂を流された男性の声優さん。打ち合わせと称してレイプされた映像制作技術者。本当にひどいことがゴロゴロあるのがたぶん日常だと思います。
こういうことに関心があって追っています。
性被害を招くエントラップメント 加害者は被害者をおとしめ弱体化し自分を権威づけ性交の強要へ
映画監督の榊英雄さんから性被害に遭いましたと、女性の俳優さんたちが『週刊文春』で告発したということがあり、それについて話題にしている記事(BUSINESS INSIDER 2022年3月29日)があります。この事件ご紹介するのは、必ずしも俳優さんじゃなくても、フリーランス、アーティストとして働くことの典型的な困難が詰まっている事件だったと思うからです。先ほど、水井真希さんの話がありましたが、彼女が発信していた被害も本当にひどいものでしたね。監督は、舞台俳優さん等にとっては結局その作品に出ようと思うと、キャスティング権を握っているので、嫌われたら出られないし、やはり絶対的な権力がありますよね。そこにいたければ、気に入られるしかなく、不愉快なことがあったら辞める自由はあるけれども、この業界で今後やっていけないというプレッシャーもすごくあります。この意味ですごくよくまとまっている記事なので紹介しました。この記事は、告発をした女性に取材をしていて、フリーランスのハラスメントにある難しさ、3つの「罠」としてまとめていて、本当その通りと思いました。
罠の一つとして、フリーの俳優を守る法的根拠が希薄。ハラスメント防止法はありますけど、法的には雇用関係にあるのかそうじゃないのかですごく違います。「労働者」は法律上の保護が厚いのです。その保護が厚いと言っても、その権利をちゃんと使っていない労働者がいっぱいいるとは思いますが、「労働者」であれば使おうと思えば使える法的な救済がフリーランス業務委託だと無いのです。一般的な不法行為は適用されるけれども、労働者ならではの保護が無い。これは大きな課題で、今、国の方向としても問題意識があることはあって救済方法も考えられているようではありますが、まずフリーランスで働くのは「労働者」と比べると法的保護が弱いという現状は、話をしておきたいと思います。
罠の二つ目に、被害が多発するワークショップがあります。これは、演劇や映画界に特徴的かと思うけれども、演出家や映画監督が、演技のレッスンで、時にそれがオーディション的な役割を果たすようですが、ワークショップというのをやるのです。でもそれが、加害者による被害者の狩り場みたいに機能してしまうことがすごく多いみたいです。このワークショップを経由して被害に遭う。「君、すごく見所があるね。ちょっと、この後、話せない」みたいな感じで囲い込む。被害者は、ワークショップに行く時点では、「その演出家や監督に学びたい、この人の結構すごいな、この人の演出で出てみたい」というのがあって、憧れて尊敬をしているわけですから、まさかそんな関係を迫られると思わず、こう「見所があるね。次に使いたいかもしれない」と言われたら嬉しいわけです。そういう憧れる思いも利用されて性被害が出てくる。
これは罠3の「エントラップメント型」の性被害にも関係します。
先ほど罠1で法的な救済が弱いという話をしましたが、ハラスメントに関する条約、「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約」があります。この条約では、フリーランスの人も含めて、およそ仕事の世界における暴力とハラスメントが、人権侵害・虐待の一形態であると。ハラスメントがあるということは、相互の尊重と人間の尊厳に基づいた仕事の文化を侵害するものであると。そういう暴力やハラスメントがあると、公共および民間のサービスの質にも影響し、人々とりわけ女性が働くこと、そこでキャリアアップすることを妨げる可能性がある、というようにハラスメントの本質が書いてあります。
「エントラップメント型」の性被害はどういうものか。性犯罪・性暴力を法律上どう扱おうかということが近年ホットなテーマです。刑法に性犯罪に関する規定はもともとあるけれども、非常に被害者目線が足りなかった。本来、性犯罪として補足すべき性暴力の一部しか補足できていなかったという問題意識で、刑法の改正が近年大きな話題になって、法務省の「性暴力の被害経験に関する質的調査報告」を心理学者がやっています。その報告にもエントラップメントについて記載されています。それによると、日常生活の中で上下関係を作り上げ、加害者は自分の価値を高め権威づけ、被害者をおとしめ弱体化させる。そして、逃げ道をふさぎ死角に追い込み、性的な話題にすり替え、性交を強要する。この促進要因として、顔見知りで、加害者は被害者よりも社会的地位が高く、被害者の加害者への行為を利用することが挙げられ、また、女性は従順さをよしとし人間関係で波風を立てるべきではないという文化規範も挙げられています。
日常的に多く発生する性暴力はたぶんこのエントラップメント型だと思います。赤の他人が夜道で突然押し倒してきてレイプするとかもありますけれども、かなり多くの性暴力は、もともと何等かの関係性がある人の中で起きています。その関係性も、むしろ近くて親しい、一緒に仕事をしている人などです。被害に遭う側は加害者と上下関係があるし、加害者が「俺の映画に出たら君はもう大スターになるよ」みたいなことを言ってきて「本当にそういう例があるかも」と思わされるし、「君、この舞台でやっていけなかったら、演劇で今後やっていけないよ」みたいに思わされてしまうとかで、もう「この人の演劇に出られるためだったら、みんなこういうことをやってるんだろう」と自分に言い聞かせて、性的な関係にならざるを得なかったりする。そういうことがむしろ典型的に多いです。
先ほど自己紹介で話したデイズジャパンの広河隆一さんというフォトジャーナリストは、まさにガザとかウクライナとか、チェルノブイリの原発事故とかに関心がある社会派的なフォトジャーナリストになりたいと思っている人の間ではすごい権威だったのです。会社みたいに明確なキャリアパスがあるわけでもないから、すでに成功をしている人に徒弟制のように学んで、その後に取り立ててもらってキャリアを作っていくみたいなことを期待するようなところがある。そういうふう弱みにつけ込まれる。自分としては仕事への尊敬だったのに、それをあたかも性的な好意とみなして、「いや、彼女も性的関係に同意してた」というふうに本当に加害者が勝手に思いこんだりするけれども、被害者側はそう思っていない。そんな中で性暴力が起きる。そして、被害者も自分では被害だと認識せず、「本当は不本意だった。でもあの時、私も自らホテルに行ったし」みたいに思って「被害」だと思いたくない、「被害」の自覚に時間がかかる、みたいなところもあったりします。
こういうのが多いけれども、裁判になった時に、性的同意があったかという証明に苦労することもあるというのが日常のようです。
弁護士に相談することはためらわないで フリーランスの救済に向けて
フリーランスの法的な救済がすごく弱いですよと言いましたが、フリーランス・トラブル110番というものがあります。厚生労働省の委託事業として、第二東京弁護士会が運営しています。私も実は最近知ったので手続きにすごく詳しいわけではありませんが、無料みたいなのでお教えします。想定されている相談事例があり、いかにもありそうです。映像制作を請けって、委託を受けたのを仕上げて納品してお金が入ると思ったら「欲しいものと違う」と言われて、仕事をいっぱいしたのに報酬が払われないとか、いっぱいあると思います。
このイベント前に、契約書に関心がある方も多いと伺ったのですけど、契約書も作らないで仕事を、人間関係とか口約束とか、メールとかLINEの緩い感じでやることもきっと多いのでしょう。どんな契約書が必要かというのは、お仕事の内容とか業務次第なので、典型的なひな型が必ずあるわけでもないけれども、まず、どんな仕事をいくらで受けたのか、それは一体いつ払われるのか、そういうことが典型的に決まっているべきだけれども、そういうことさえ明確に書面に約束をしてもらえないこともきっとあるんですよね。「その約束が無かったら困るからお仕事を受けられないよ」と言う自由も理屈上はフリーランス側にありますけども、そんなこと言ったら「じゃあ、あんたに頼まないから」と言われて仕事をもらえないから、なんとなく不案でもやるしかないこともあるのだろうと思います。
このトラブル110番では、弁護士会で「和解あっせん」もやっているんですね。アーティストの皆さんも典型的にこういうトラブルを抱えそうかもしれません。フリーランスの職種例も多く掲載されていて、スタイリスト、フードコーディネーター、イラストレーター、フォトグラファー、ウェブデザイナー、フリーランスの俳優さん――声優さんもそうだと思いますが――などいろいろあります。この110番のサイトに記載されているように、「あいまいな契約」、「ハラスメント」、「報酬の未払い」 が、フリーランスが働く中で典型的に起きる相談なのかなと思います。
弁護士に相談することはためらわないで欲しいと思います。法律相談はとりあえず聞くだけでも構わないです。法律相談料は弁護士事務所によっては違いますけども、私の場合は30分単位で30分5000円と消費税、一時間聞いたら11,000円頂戴しています。高いと思うかもわからないけれども、でも一時間でけっこう問題の整理もできますし、無料の法律相談をやっている所もありますし、気軽に行ってほしいと思います。裁判という手段もあるけれども、裁判の手前で弁護士が仲介する「和解あっせん」という選択肢もあります。ということをちょっとご案内しました。
性犯罪の条文についても多分ご関心があるかなと思って、お話させてください。
性犯罪の「強姦罪」というのは以前の呼び方で、今は「不同意性交等罪」や「不同意わいせつ罪」で、同意がないセックスとか同意がないわいせつ行為は犯罪です。条文もあって、殴った等の行為がなくても、「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること」、そこに付け込んでわいせつ行為をする、セックスするといったことが犯罪です。
犯罪にならなくても民事上の不法行為は損害賠償請求することがあります。ただ時効があって、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間」というのがすごく大事な時効の期間で、覚えておいたほうがいいかなと思ってご案内しました。
宮下萌さん) ありがとうございました。改正刑法の話は、後ほどパネルディスカッションで、深井剛志さんも交えて更に深めたいと思います。
それでは、深井さんにバトンタッチしたいと思います。
——深井剛志さんのお話:「芸能人の労働問題」——
よろしくお願いします。地下アイドルの問題をよくやっているとご紹介いただきました。それまでの経験を活かして、地下アイドルと事務所の間の法律問題を扱う『地下アイドルの法律相談』という本を書きました。 自分としては、声優さんや俳優さん、それからユーチューバーさんとかにも適用できるように意識して書きました。ですので、芸能従事者には広く適用できるような内容を書いたつもりで、漫画付きで非常に読みやすいので、興味があればぜひ読んでいただければと思います。
芸能従事者と――私の経験からすると地下アイドルになりますけれども――事務所ないし社長との力関係の非対称性の背景はどういうところにあるのか。もしくは、その非対称性によってどういう問題が多いのかということを紹介できればと思います。
まず、芸能人の労働条件をめぐる問題の所在についてです。一体どういうところに原因があるのかについて私が考えていることを端的にお話したいと思います。
労働契約に適用される労働法で保護されない業務委託契約で働く芸能人をめぐる問題
契約の内容が「業務委託契約」であるというように事務側が認識しており、それを基にかなりの脱法行為が横行しているという点が一つあると思います(これは、後でしっかり説明いたします)。その結果として、そのアイドル事務所との力関係の差が多くて、タレント側が泣き寝入りを強いられているというのが結論としてあります。この力関係の差というのが非常に芸能従事者における労働問題もしくはハラスメントの被害につながっているのではないかと考えております。
具体的に、「業務委託契約」と認識しているとは一体どういうことなのかというという疑問が当然あると思います。アイドルや俳優さんや声優さん、そういう方が事務所に所属していると多分次のようなタイトルの契約書になっていると思います。「専属芸術家契約」、「専属実演家契約」、「専属マネジメント契約」。この3つのタイトルは全部、私が見たことのある契約書のタイトルで、アイドルと事務所との間の契約書にこういうタイトルが書いてあるのです。こういうタイトルが付いているので、事務所は、これは契約の内容としては、業務委託だと認識している、もしくは主張してくることになります。
民法の中には「有名契約」といって名前がついている「典型契約」というのが書いてあるんですけど、その中には、「売買契約」や「賃貸借契約」、「雇用契約」というのはあるけど、この「業務委託契約」はそのまま民法の中に名前は出てこないです。ですから、業務委託契約というのは、世間一般で使っている用語で、法律の条文の中にはストライクには出てこない。僕もいろいろ調べたけど、世間一般で言われている定義は、「委託者が受託者に対して何らかの業務を委託する内容の契約」、というものらしいです。要は、どなたかが、その業務をやってくれる人に対して、この仕事をやってくださいよ、とその仕事を委託する、頼む、そういう内容の契約だということになってるわけです。
では、労働契約と何が違うんですか、労働契約だってそうじゃないですかと疑問に思われるかもしれません。サラリーマンさんも部下である人は上司から言われた仕事、社長から言われた仕事をやるんでしょう。じゃあ、それは業務委託契約と一緒じゃないですか。労働契約と何が違うんですかと。
この点については、「使用者の指揮命令に属さない」という点が一番大きいです。「命令」なんですね。労働契約の場合は、上司や社長から言われたことは「命令」 なので、基本的には「業務命令」という形で出るので断ることができない、というのが一番大きな点です。ですので、上司から言われた業務命令をやらない部下は業務命令違反となります。それが労働契約の一番典型なところです。業務委託契約はそうじゃないわけですから、基本的には、上司の指揮命令に属さない、命令を断ることができるというのが業務委託契約の一番のポイントです。
労働契約とは異なることでどういう結論になるかというと、「労働法の適用がない」ということになるわけです。労働法というのは、労働契約の場合に適用される法律で、労働契約ではない業務委託契約には適用されませんというのが建前なのです。
労働法が適用されないとどういう不都合ないし不利益があるか? 例えば、最低賃金の定めが適用されません。一時間働いたら東京だったら1100いくら位はもらわなきゃいけないという決まりがありますが、それは適用されません。 それから、休日。1週間に一回は休みを取らないといけません。何時間以上働いたら休憩を取らなきゃいけません。これも適用されません。 労働時間規制、一日8時間以上働かせてはいけません。それ以上働いたら残業代を払わなければいけません。これらも無い。有給休暇を取るということもできません。それから、違約金の禁止。あまり有名じゃないかもしれませんけど、労働契約の場合、労働者がミスした場合には違約金いくらもらいますよという条件を労働契約にあらかじめ盛り込むことはできません。それは非常に労働者が弱い立場に置かれてしまうので、そういうことはできないとされています。こういったものが全部適用されないのです。だから、業務委託契約だと休日なしで働かせても構わない、一日8時間以上働かせても構わない、最低賃金を払ってなくても構わないことになってしまう。
業務委託契約の場合、こういった非常に働く者が弱い立場に置かれてしまう契約ですけれども、私が一番問題だと思うものは、「解雇規制」という労働契約法16条にある労働法の条文も適用がないことです。「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という条文です。解雇というのは、すごく一般的に言うとクビです。労働契約を会社の方が破棄するのが解雇です。ドラマや映画で「お前はクビ」というシーンがあるかもしれないですけど、あんな簡単にクビはできないです。客観的に合理的な理由がないと解雇はできません。それから、「社会通念上相当である」というのは、「こんな些細なことで解雇するのは行き過ぎじゃないか」というような理由ではないというのが社会通念上相当でなければ解雇はできませんよっていう条文です。ですから、労働者は常に守られているんですよ、この条文で。世間一般の人が思うほど、解雇は簡単にできません。少なくとも、さっき言ったドラマや映画でちょっとミスしたのでクビだっていうのは成り立たないことが多いと思います。
この解雇規制も業務委託契約には適用されない。ということは、解雇もそんなに難しくないという立場に置かれるので非常に不安定です。アイドルは不祥事を起こしたから解雇とか、そういう発表を見たことがある人もいると思います。「解雇」というのは本来、労働契約で使う言葉なので、業務委託契約で解雇は、普通は考えにくいですけど、アイドルの契約でちょっと不祥事を起こしたので解雇だというのは、この解雇規制がないからだということで事務所はやっているわけです。
芸能従事者と雇用者との圧倒的な力関係の差
こういうふうに解雇の規制が無く、不安定な立場に置かれているため、力関係にすごく差があるんです。解雇の規制があって簡単には解雇できないという場合であれば、多少、会社が利権を売ったりとかで、自分の意見を伝えたりとかしやすいかもしれないですけど、解雇の規制がなく自分が不安定だとなると理不尽だなと思うことでも我慢しないといけなかったりとかに繋がっていくわけです。
ですので、すごく長時間働かせられるとか、最低賃金ももらうことができないで働かされるとか、休みなく働かされる、場合によっては意思に反する性被害やハラスメントを受けるなんていうことも、けっこうある相談で、この1・2年は増えている印象があります。
性被害の相談は、聞いてみると、その社長やプロデューサーなどすごい力のある人からされて、逆らったらクビになるかもしれないとか、この業界に居られなくなるかもしれないとか、そういうことを考えて仕方なく、もしくは反抗できない、もしくはその後に告発することができないとか、そういう状況になってしまいます。
ただ、こういう裁判例があります(東京地裁平成25年3月8日労判1075号77頁)。モデルさんがいて、その契約が「専属芸術家契約」という名前になっていて、これは業務委託じゃないかと当事者たちは思っていたんです。当然、事務所も思っていたと。しかしこの判決は、事務所が命じた業務を断ることができない、自分の希望を述べることいができないというふうな認定をしました。そうすると、労働契約というのは業務命令を断ることができないというのが条件ですので、断ることができないこのモデルさんと事務所との間では労働契約であるというふうに認められると言ったわけです。モデルさんで芸術家契約と名前がついているけど、これは本当は労働契約ですというふうに、名前に関わらず労働契約であると認められたものです。
そうすると、他の俳優さんやアイドルさんについても、契約に関わらず労働契約になると認められるケースが非常に多くなってきます。私も経験があって、アイドルさんが最低賃金をもらえてなかったので裁判を起こしたら、裁判所はこの人は労働者だと思いますというふうに言ってくれて、最低賃金は少なくとも払わないとダメですよという判断をもらったことがあります。ですので、争えばそういうふうに立場が是正されることもあります。
芸能従事者も法規制が及ぶ労働者として救済できることも 諦めずに弁護士に相談して
最後に、問題がある契約書の条項について少し説明していきます。
契約の締結過程については、事務所と契約する時にしっかり説明を受けたり、じっくり読ませてくれたり、質問を受けたり、条項の修正を求めることができたというのは、ほぼ無いです。これは、やはり力関係の差で、ここで逆らったら契約してくれないんじゃないかという恐れがあるからではないかと思います。
それから、報酬に関する問題です。これは私に実際にあった相談ですけれども、アイドルさんで、毎日ライブをしていたのに月額せいぜい1万円~1万5千円で、これは最低賃金にどう考えてもいっていないです。これは、先ほど言った裁判があった事例です。最低賃金分は少なくとも払いなさいよと、裁判を起こしたら認められた件です。
損害賠償に関する問題で言うと、契約書に書いてあることにアイドルが違反したら違約金を請求できますよという条項が入っていたりします。その金額がとんでもなくて、500万といった金額だったんです。いくらなんでも無効でしょと言いました。それは、労働法には違約金を定めてはいけないっていう条文があるので、その条文を使って無効だと言いました。そうしたら、事務所側はもう全く請求してこなくなりました。それから、いわゆる恋愛禁止情報というのがあり、恋愛をした場合には違約金を請求できるという条項が入っていたりします。これも違法です。労働契約であれば無効だというふうにできます。
それから、移籍に関する問題では、いわゆる2年縛りがあり、事務所を辞めた後2年間は他の事務所に移籍してはいけないと。また移籍後はそれまで使用していた芸名やSNSを使用してはいけないという条項もあります。これは明らかに労働者側、タレント側に不利なので無効であるという裁判例が出ています。私が取ったわけじゃないですけど、そういう裁判例出ております。
ですので、こういう条項が未だにはびこっていますけど、全部無効だとなるのではないかと思います。
一番言いたいこととしては、非常に弱い立場に置かれていると思われる芸能従事者であっても、その実態をきちんと見れば、法規制が及ぶ労働者であるということが言えるという事例が非常に多いので、諦めないで弁護士に相談してくれれば糸口が捕まるかもしれませんので、ぜひ相談してみていただければと思います。
——パネル対話——
宮下萌さん) クリエイティブ業界の方々から弁護士である太田さんと深井さんへの質問を事前にいただいておりますので、それらを中心に伺えればと思っています。
まず、セクハラの問題について弁護士に相談することはできないのでしょうか? というご質問をいただいております。この趣旨としまして、飲み会の席とかで体を触られて嫌だと思っても何も言えないというケースに遭遇したとのことで、遭遇した人は多いのではないかと思いますが、このような時にどのように対処するべきなのか悩むということで、このような俗に言うセクハラを弁護士に相談することについてのハードルを伺えればと思っております。
密室で行われる性暴力 証拠がないからと諦めず弁護士に相談して
太田啓子さん) もう典型的に弁護士に相談なさっていい被害だと思います。ご質問なさった意図を想像するに、もしかしたら証拠が無いのに相談してもいいんでしょうか?とか、自分はその時にむしろ喜んで「また、また~」とかやっちゃったから、それは後から被害というと向こうから逆ギレされるんじゃないかとか、そういうことが怖くて質問されたのかなと想像してお答えします。
典型的なセクハラは、私もセクシャルハラスメントはいろいろ見ていなかったから、もっと初心者の頃はこういう構図かと思っていました。女性が「触られました」、男性が「いや、触ってない」とか、女性が「ホテルに連れて行かれて」、男性が「行ってない」とか。事実関係を争ってきて、「いや、こんな証拠がありますけど」みたい争いなのかなと思っていました。でも、こういう事件もないわけではないですけど、実は多く起きてる事件は、事実関係自体にはあまり争いがないんです。女性が「ホテルに行って無理やりセックスさせられました」と言うと男性はそれは否定しないで「あ、そうだよね。確かにワンナイト過ごしたよね、俺ら。あの時はお互いに盛り上がって、合意があったじゃないか。何が悪いんだね。そうか、俺に気があるのに俺が妻と別れないから、それを恨んでセクハラとか後から言って俺を陥れようとしてるんだな。あの時、俺に近づいたのはハニトラ!」みたいな感じで、あらぬ方向に行く。
だから、触った・触ってないということは証拠があるに越したことはないですけれど、同意があったか・なかったかが争点になることが多いことを前提に話をしますが、被害そのものはなかなか証明が難しいことはあります。密室で起きた被害が裁判に持ち込まれて、証拠といえばお互いの言葉しかない事件はあり、劇的な逆転が起きて有名な事件もあります。
裁判は地方裁判所でやった後に、控訴して高等裁判所や最高裁判所でとなることもありますが、違う裁判官が同じ事件を見て全く逆の判断をすることもあるんです。言葉しか証拠がない時にはもうしょうがないから被害を訴えている人と「そんなことはやってない」と言う人の両者に法廷で話をしてもらって、どっちの言葉が世に確からしいかということを最後に裁判官が判断するんです。そういうことを見極めるのが裁判官はプロであるということになっております。そうなんだけど、プロが見たって判断が分かれることがあるわけで、それぐらい難しい。でも、言葉だけでも証拠ではあります。
一般的には、嘘をついていたら話がすごくぶれるんじゃないかとか、普通は後から言い出さないよねとか、いろんな要素で人の言葉の信用性は判断される。でも、その人の言葉の信用性の判断方法において、判断する側に性暴力への理解がないと、すごくずれた信用性の判断をしてしまうことがあるわけです。それについては今も完璧では全くないと思いますが、裁判所は性暴力の被害者の心理を学んできていると体感しています。その場ではむしろ受け入れてるように――迎合って言うんですけども――見える。相手がご機嫌になってもらわないとその場は困るし、和やかな宴会っぽいところでいきなり「やめてください」とか言えないですよ。それが普通であるということがだいぶ常識になっているとは思います。
「その時いやだったのに、なんで最後まで宴会に居たんですか?」といったことを弁護士から聞かれて傷つくと思うとためらうかもしれませんし、ひどい弁護士も中にはいるかもしれませんけど、弁護士も一人ではありませんから、仮に一人に話してうまく伝わなかったと思っても、諦めずに相談を続けてください。話が分かってくれる弁護士を一緒に探すこともできますので、諦めないでほしいなと思います。
自分の日記も証拠になります。何もないより、よっぽどいいです。手帳でもいいから書いてください。友達に相談した、とかも証拠になります。だから、なんか残してください。
宮下さん) 性暴力の事案は密室で行われて、当事者の証拠しかないというところで、証拠がないから弁護士に相談に行けないと思われる方は結構多いと思うけれども、今の太田さんのお話や、決して諦めないでというところと、もし可能であれば、前後にそのLINEの記録とか、メモとか日記を残しておくという証拠の作り方もお話しいただきました。ありがとうございます。
では、次の質問に移り、深井さんにお話を伺いたいと思います。
弁護士に相談するにあたってハードルとなるのが弁護士費用だというお話をよく聞きますと。とある方が大学側にハラスメントや性暴力のお話を訴えてもきちんと調査してくれず、本当は弁護士に同行してもらいたかったけれど、アクセスするハードルが高かったといったご質問が来ています。
こういった弁護士に同行してもらったり交渉してもらったりする費用は相場としてどれぐらいなのか、深井さんのご経験も踏まえてご教授いただければと思います。
深井強志さん) 私自身は、正に大学にハラスメントを訴えたっていう方——この方は講師だったかと思いますが――に依頼を受けて同行したことがあります。その方はセクハラではなくパワハラだったんですけど。被害者の聞き取りがあるので同行してほしいと言われたんですけども、着手金の最低額というものを弁護士だったら大体10万円としていることが多いので、私はその時は手続き全て含めて10万円ということで引き受けました。それは調査に同行して必要があったら私が話すということだけなので、その金額でできたということがあると思います。これは、人によりますよ。全ての弁護士がそれを10万円でやってくれるかどうかはわかりませんので、私がその事案と当事者との関係性もあって10万円でやったというケースです。
仮にそのケースが、大学の調査を経ていよいよ加害者であったり、場合によっては大学の安全配慮義務を問うということで大学側も訴えたりすることになった場合には裁判ということになりますので、裁判を弁護士に自前でやってくれというのは難しいと思います。そうなると、ハラスメントの裁判はけっこう骨が折れて労力もかかるので、裁判費用で弁護士の着手金は30万円ぐらいになってしまうことが多いと思います。
それに見合うだけの慰謝料と言いますか、成果が得られるのかというと、その受けた被害にもよります。日本の裁判所は非常に慰謝料の相場が低く、太田先生も非常に頑張って声上げていただいているところだと思いますし、私も、ハラスメントの慰謝料は非常に安いということで、労働問題を扱ってますから、労働弁護士会とかで声を上げたりはしています。
先ほどの太田先生の質問にあった飲み会で触られたとかの裁判は、まさに私もやったことがありまして、上司と飲み会中に隣に座っている上司に太ももを触られたという事案がありました。そういう事案でも、慰謝料は最終的に決まったのは確か50万ぐらいなので、弁護士に30万円払ってその慰謝料というのはけっこう厳しくなってしまいますよね。太田先生、どうですかね?そのあたり。
太田さん) 私もありました。大学でハラスメント相談室に申し立てをした学生さんでした。その事件は記録のボリュームがものすごくて迷ったけど、着手金20万円前後ぐらいいただいて1回同行する毎に日当で2万円と交通費をいただきました。
弁護士費用は聞きづらいと思うけど、弁護士も経験的に見積もり、決めづらいものはその都度、基準を見ながら見積もっているので、普通に聞いてもらうのがいいと思います。
確かに、触られて50万円という慰謝料は安い。それは、服の上から触られたかとか、下着の中まで直接かとか、胸だけなのか性器に入れられたのかとかレベルで変わってはくるけれども、こんな被害にまで遭って、こんな傷ついているのに50万円? みたいなことはあります。
でも、裁判に至らずに済むケースもあります。ケースバイケース。本当に一件ずつオーダーメイドだから、弁護士を頼んでの事件解決は手探りです。この弁護士に電話するといつも緊張しちゃうと思うとしんどいですから、相性もありますし人間的に信頼できるかもありますので、弁護士ショッピングは普通です。だから一回相談に行ったらダメだったと思わずに、何人か聞いてもらっていいと思います。
尾崎翠さん) このようなケースで、法テラスみたいな無料のサービスを使うことはできるんですか?
太田さん) 法律扶助というのですが、一定以下の収入と資産であることを条件に、弁護士費用に関してサポートする仕組みがあります。それは無料にはならないけれども、一般的な弁護士事務所の相場よりも安い費用を法テラスが決めて、それを弁護士に一括で払って、依頼者が法テラスに分割で返していくという仕組みがあります。その仕組みを使って弁護士に依頼できるかどうかはケースバイケースです。一般的な弁護士事務所の相場よりも半分~三分の一ぐらいです。総額でもそうなので、分割だから依頼者さまの負担感は随分低いと思います。だから迷わずそれを使っていただければと思います。
ただ、法テラスの仕組みを利用してこの弁護士に頼みたいというのは、頼めることもあるけど、そうじゃないこともあります。というのは、制度がもっと考えられるべきとは思っていますけども、一般的な費用との差額は誰が負担するのかというと、依頼を受けた弁護士が負担をしています。だから、法テラス案件があまり増えすぎると弁護士は厳しいというのはあります。だから断ることは、私はしていないですが、法テラス案件が増えすぎてるから今は法テラスでは受けられませんということもあります。それも含めて率直に聞いてもらうのがいいと思います。
宮下さん) 弁護士それぞれというところ、どうしても資金的に難しい方は、法テラスの法律事務所に法律相談に行くということもありますし、刑事事件だったら日弁連の委託援助を使えることもあります。日弁連は立替えという形ではなく援助という形で、刑事での告訴状の提出とか行う制度で、そういうのを使えるかどうかも各々の弁護士に相談していただくのがよいかなと思います。
二次加害の防止へ 被害者自身が訴えずに解決できる仕組みを 日本は国内人権機関がまだ無いが
次の話題に行きたいと思います。事前にいただいている質問です。
勇気を出して声を上げているにもかかわらず二次加害で自殺されてしまう方もいらっしゃるので、二次加害を防止する法律はないのでしょうか? この点も含めて、日本の現状の法制度について、どこまであるのか・ないのかをまず太田さんに伺えればと思います。
太田さん) 二次加害というのは法律用語ではないです。典型的には、被害告発した人をハニートラップじゃないかと貶めるといった行為ですけども、専用の法律は特に無いです。それ自体が名誉毀損であったり、侮辱であったり、人格を傷つける不法行為で損害賠償の対象になるということはあり得ます。ご質問の念頭にあるのは一部の外国にあるというレイプシールド法という法律かもしれないですが、レイプ被害を訴えて法廷に立った時に、被害者の性的な経験をふしだらな女ではないかみたいな観点で聞くような質問を遮断するような仕組みがある国にはあるそうです。日本にはそういう法律はないですが、あまりにも意図が見えず被害者を侮辱するような質問の時には弁護士も介入して裁判所も何かということはありますけど。専用の法律はないけど一般的な不法行為になれば違法になることがあります。
宮下さん) 二次加害との関連で、深井さんにもお尋ねしたいんですけれども、訴える時に、性被害の声を上げるにあたって、逆にこちらが名誉棄損で訴えられてしまうのではないかと懸念される方も多いと思うのですね。性被害をメディアで扱ってもらっても名誉毀損で訴えられない方法はないのでしょうか? というご質問をいただいてます。
あと、もう一つご質問を続けて、日本の現状だと、被害者が声を上げて訴えることでしか解決できないのでしょうか、それ以外の方法はないのかについても伺えればと思っています。
深井さん) 名誉毀損で訴えられない方法は、我々も悩ましいところですね。僕は一番やっている事案は労働事件ですけど、労働事件はよく、ハラスメントの事案がありましたとか、会社で長時間労働の事案があり労災が出ましたという記者会見がよくやられますよね。その記者会見が逆に訴えられるケースが最近非常に増えています。そういう時に労働者が会社から訴えられないように、我々も神経を遣っているところです。
私は、事実かどうか争いがありそうなところの明言は避けています。名誉毀損である表現であっても公益を図る目的で真実を話す場合には名誉毀損にはならないという免責規定といいますか、違法性をなくす法理があります。「これはしっかりハラスメントの被害をみんなに知ってもらう公益目的のためにやったことです」、さらに「これは全部真実です」と証明ができれば、名誉毀損に当たる表現であっても違法性はなくなるといった法令があるので、なるべく客観的で固い証拠があるところだけに絞ります。例えばLINE記録があれば、LINEの中で言われた暴言とか卑猥な言葉、セクハラとかに絞って、それはもう固いじゃないですか、もう真実であることは明白なので、記者会見の時はそういうところに絞って発表します。事実かどうか争いがありそうなところにはあまり言及しないという方法がいいんじゃないかと思っております。
メディアを使って発表する場合は、最近は週刊誌もそういうところは気を遣っていると思います。とある事件で、性被害のことを某週刊誌が取り扱った記事の取材経緯を当事者に聞いたけど、このLINEがあったからここはもう事実だとしっかり確定してから記事を書いたという取材の過程を教えてくれたので、固い事実かどうかというのは判断しているように感じます。
被害について被害者本人が訴えるしかないでしょうかというご質問については、法制度としては、違法行為があった時に第三者が捜査機関にそのことを伝える「告発」という制度は一応あります。じゃあ、性被害について告発しただけで有罪までできるかというと、それは無理なのです。被害者の申告がないと処罰できないという建て付けになっているからで、強制わいせつや不同意性交等罪で有罪まで持っていき処罰させるとなると、被害者本人の告訴という被害の申告がないとできないことになっている。
被害者本人が非常に消極的だったりセカンドレイプを恐れたりして告訴はできないとなかなか性被害を調査するところまでは行きにくいと思います。
宮下さん) 日本の現状だと、これは性犯罪に限った話ではなく、いろんな人権問題に関することですけれども、被害者が声を上げて裁判を起こしてという構造ができてしまっている。
「国内人権機関」が世界にはたくさんありますが、日本には未だにありません。なかなか救済は難しいところで、政府から独立した第三者機関が、例えば――私はヘイトスピーチが専門なので――ヘイトスピーチに関して積極的にダメだとか、調整やコーディネートをやっていくというものがあればいいんですけど、日本にはそれが無く、どうしても被害者・加害者の構造になってしまい、被害者が声を上げてやっと裁判を起こして、という問題もあると思っています。
性犯罪に関する刑法改正 不同意による罪
少し戻りまして、先ほど太田さんの話にもあった、刑法改正の話を重点的に伺いたいと思います。
刑法の関係でコメントをいただいています。とある方が大学院でハラスメントに遭って、もともと心身の障害があったところに、教授にアルコール飲まされて性被害に遭ったと。こういう事案も、同意しない意志を形成とか表明または全うすることが困難な状態でさせることという刑法上の性犯罪に関する条文の解釈に当たるのかも含めて、補足でいただければと思います。
太田さん) 性犯罪にあたる事由は、最近の刑法改正の前は、暴行または脅迫によって性交、セックスやわいせつ行為をした場合、というふうになっていたけれども、改正によって、被害者側の同意がないだろうとい事案を今までの裁判例を踏まえながら類型化したと理解してください。例えば、アルコール飲んで酩酊状態で抵抗できなくて寝てしまっている時にやるとかは典型的に条文が想定をしています。何等かの疾患があって抵抗できない状態であったら二号(「心身の障害を生じさせること又はそれがあること」)でもいけるでしょうし、当該性行為に関して同意をできない状態であった原因がある時は、アルコールであれば三号(「アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること」で行くでしょうし、指導教官だから抗えなかったみたいなことが一番大きかったのであれば八号の「経済的または社会関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること」になります。
犯罪に該当すれば本当に警察に持っていけば犯罪にもなれるけれども、犯罪に該当することがありうるけども警察に行くのは気が重いとかで、民事上の裁判だけとか、裁判まで行かずに交渉で示談だけでとか、いろんな選択肢があります。被害救済は、警察に行くことも積極的に考えてもらっていいと思いますけども、警察に行くだけではないですから。
宮下さん) ご質問をいただいていて、八号の「経済的または社会関係上の地位に基づく影響力によって・・・」に、大学院生と教授の場合の被害も入るのか?と。これも入るということで?
太田さん) どんな場合も必ず、とは言えないと思います。そう言えるかどうかが争いになる事件が今後もきっとあると思います。
その具体的な関係によります。その人が論文の指導教官なのか、単に同じ大学にいるだけの違うゼミの指導教官で挨拶するぐらいの関係なのかなど。「地位に基づく影響力」が現実にあるのかどうか、それによる不利益が、無いかもしれなくても、憂慮してしまうような関係性があるのかが個別にかなり慎重に吟味されると思います。
でも典型的にはあり得ると思います。指導教官と外国院生の深刻なセクハラ事案で、有名な裁判例もあるぐらいで、そういうことも考えてできている条文ですから、想定されていると思います。
宮下さん) ご質問いただいた方が想定されているのは典型的なアカハラだと思いますので、基本的に八号に入る。例外的そういうパワーバランスにない関係の場合もあり得ると。そこの指導教官だったら、あまり想定されないですけど。深井さん、コメントありますでしょうか?
深井さん) アカハラの事案もやったことがありますけど、単に学部生と単位もらうだけの教授の関係なのか、本当に大学院生の学位をもらえるのかどうかが関わっている指導長官なのかで確かに変わってくると思います。
この条文とか、この条文が導入される前に制定されたパワハラ防止に関する法律とかでも、アカハラは立法過程で念頭に置いています。そういうことも、抵抗できない関係性の典型的なものとして導入されたという経緯があるので、基本的には含まれるという考えで間違いないのではないか。例外的にこの関係性では厳しいという判断があるかもしれないけど、基本は含まれるのではないかという方向でいいと思っております。
性被害でPTSDに 損害賠償請求権の時効は被害回復に要する年月の配慮を
宮下さん) 事前にいただいている質問の最後は、時効の問題です。
時効の問題でネックになられた方がいらっしゃいます。2010年に被害を受けた方で、PTSDになって今も病院で治療中なのですが、PTSDと診断されてから時効を数えることはできますでしょうか?というご質問をいただいております。この質問含めて、時効の問題について太田さんお願いいたします。
太田さん) とても実務的な質問ですね。すごくよくあると思います。性被害に遭って、すぐには訴えられないというのはむしろ普通です。
民法上の「不法行為」には損害賠償請求権の消滅時効が定められています。誰かによって無理やり意に反する性的関係に応じさせられるというのも不法行為です。その相手に対して損害賠償の請求をしたいと思った場合には、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年」以内に行使しないといけません。だから、加害者が誰か分からない時には、まだその時効は起算点になく、まだ始まりません。でも、加害者を知ったならば、そこから三年間が行ってしまいます。
でも、その損害が後から出ることもあるわけです。後からPTSDが発症し、その発症がその被害と因果関係があることの証明をできることが大事です。それができれば、そこから数えて三年間というのは理屈上あり得ると思います。実務では、その因果関係の証明に骨が折れるかもしれません。でもそういう事件は実際にあり、特に、幼少期の性被害などでは、被害を訴えるのは本当に大変で、法定代理人を立てたりしますが。
このPDST発症はこの被害のせいで、発症は二年前だから時効ではない、というふうな理屈を一生懸命考えて主張するという感じかなと思います。
尾崎さん) 「不法行為の時から二十年間行使しないとき」と民法の同じ条文(第七百二十四条の二号)にあるのは、どう考えればいいでしょうか?
深井さん) これは確か、民法改正で除斥期間ではなくなった点ですね。
民法の第七百二十四条の一号の方は、損害及び加害者を知ってから三年間行使しない時、とあるじゃないですか。要は、その不法行為したのを「知った時」からです。例を挙げますと、お店を経営していて、お店に夜中に強盗が入ってお店のものを全部盗んで逃げちゃいました。それは損害ですよね。その損害を知ったんだけど、誰がやったのか分からない、だから弁償を要求することができない。で、15年経ってようやく誰がやったか分かりましたとなったら、そこから三年です。「加害者を知った時から三年」。だけど、「不法行為の時から」というのは、強盗に入られたその日からです。
だから、知った時とその行為があった時で、時効の起算点、始まる日が違うんです。誰がやったのかを知らなければ、一号では時効はいつまでたっても始まらない。 二号で20年後にようやく時効が始まる。 20年後から3年間が時効ということもあり得るんです。だけど二号によって、不法行為の時から20年間で、損害賠償請求権は時効によって消えてしまう。
太田さん)その後に、例えば25年後に犯人が分かっても、ダメということですね。
尾崎さん) ということは、知っている加害者から性被害に遭った場合は、その時から3年間が時効で、二号は適用されないわけですね。
太田さん) そうです。
深井さん) 被害を受けた時に、誰からされたということが分かっているので、行為の時イコール不法行為の時になります。だから一号と二号が一致して、時効が始まる起算点が一致するわけです。だけど、例えば、本当に見ず知らずの誰かから襲われて、どこの誰だか分からない場合は「加害者を知った時」に当たりません。法律上請求ができるぐらいに知ってから初めて時効の3年間が始まりますので、見ず知らずの人から夜道に襲われたとかいうケースであれば、その人がどこの誰かということをきちんと知ってから3年間です。
でももし、その3年の間に、加害者側がその自分の非を認めたとか、どう償えばいいですかと自分の加害行為を認めるような発言をしていることがあったら、そこから時効期間をカウントすることもあり得るので、そういう事情を拾える場合は大事にしてください。
日本は未批准の「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約」
全ての働く人の尊厳を相互に尊重する包摂性 複合差別防止の観点も
宮下さん) 会場からいただいた質問で、太田さんのお話にあった、仕事の世界における暴力とハラスメントに関するILO条約についてのご質問があります。
日本政府が批准しようとしないのか――批准していないですけど――。批准するとフリーランスの人に対するハラスメントの解決にも役に立つかどうか。あと、カスハラのことが気になるけれども、今回の条約はカバーしているのかというご質問です。いかがでしょうか?
太田さん) 2021年6月28日の東京新聞の報道があります。ハラスメント的条約が採択されて発効したけれども、日本は批准をしていないと。ハラスメントは禁止するという条約なので、日本国内でのその法律が必要になるけれども、財界が慎重であると。条約が求めるハラスメント行為の禁止規定を法律に盛り込むと、損害賠償の根拠の規定になると。いいことじゃないかと思うけど、訴訟が増えることを経済界は配慮して、それに政府ものっかり慎重なんじゃないかということのようですね。
2020年に出たハラスメントに関する法律に関しては、フリーランスも就職活動生やインターンなどが入っていないです。いま日本のハラスメント対策は重要な穴になっているところです。でも、そういう認識が世の中に一応ありますで、これからどうしようかというホットなテーマだと言えます。
深井さん) 日本は確か経済界からの反対がすごく強くて、ハラスメントの損害賠償の金額が高くなることを恐れる経済界の影響で、政府が批准しないというふうなことは聞いたことがございます。
宮下さん) 本当にこの条約は「包摂性」に焦点を当てていて、契約上の地位にも関わらないで、インターンとか雇用が終了した労働者とかボランティアの方とか、いろんな方が入るところですね。
もう一点、インターセクショナリティの観点からも焦点を当てている条約で、二つ以上の属性に関してかなり重点を置くようにということで、複合差別の問題の観点からも注目がある条約です。
日本はなかなか批准する気がないそうです。確か2021年ぐらいに話題になった条約でした。これは率先して条約に批准すべきかなと思っております。
カスハラは消費者の件なので即答できないですけれど、この条約は働く人に広く適用される条約かと思います。
いろいろご質問をいただいて、パネルディスカッションがすごく充実しました。ありがとうございます。
――グループ対話とグループ発表を経て、ゲストからのコメント――
※グループにゲストも加わり、グループの方々に感想や意見、ご質問を話し合っていただいた後、会場全体で共有するために印象に残ったことを各グループから発表いただき、ゲストからコメントをいただきました。
深井剛志さん) ブレイクアウトルームでの発言も聴いて、我々が考えている以上に、これは相談していいのかとか、これをセクハラと考えていいのかとか、不明点についての質問が多かった印象です。我々のほうから、啓蒙活動といっていいのか分かりませんけれども、「ハラスメントというものはこういうものなんだ」という理解を広めていくことも重要かなと思います。一方で、クリエイティブ界特有の問題もあると思っていて、芸能界で成功していくためにはこれぐらい我慢しなきゃいけないといった意識があって、もし、こんなことを相談したらいけないんじゃないかという意識があれば、それも直していくことを考えていかないといけないと今日は痛感したところです。非常に有意義な時間をどうもありがとうございました。
太田啓子さん) 一点目が、フリーランスは労働者じゃないから、すごく保護が弱いと話をしました。形式上は業務委託だけれども「労働者」として言えるじゃないかってことをまず考えることが大事ですが、でも業務委託でありフリーランスのままでハラスメントの損害賠償で結構いい判決が出るというのが去年ありました(https://www.bengo4.com/c_18/n_14510/)。これはライターさんですけれども、業務委託として受けていた会社の社長から触られる等のひどいセクハラがあって、業務委託をした会社の安全配慮義務違反を認めて、結構な金額の損害賠償が認められることもありました。なので、フリーランスだけどもそういう勝ち方もあることを補足しました。
二点目は、こんなに弱い立場でこんなに慰謝料も低くて不十分な現状にあるんですけど、世の中に正義があらかじめ用意されていることはないわけです。今の日本のいろんな法律や制度も過去になかった時代に頑張った人がいてできているので、今いろいろ不十分ですけども、「おかしい」と声を上げて動いていくことも、できる時にできるということで、よくしていくと。フリーランスは今すごく困難があると思いますけども、発信しやすい立場にあるのかもしれないし、ぜひ頑張りましょう。
尾崎翠さん) 私たち明日少女隊はソーシャル・ジャスティス基金から助成金を頂いて、今年の夏に日本で個展を開催することができました。個展は想像以上に人がいらっしゃって、また、いらっしゃる方々が高校生ぐらいからお子さんも年配の方も来て、かなり幅広い年代の方にお越しいただけました。また、あまりジェンダー問題をしっかり語ってこなかったアート業界の方もかなり来ていただけました。
一歩ずつ世論を変えていく必要があるのかなという中で、いろんな立場の人たちがそれぞれの立場で届ける人がいるといいと思うんです。自分はフリーランスだからとか、イラストレーター、漫画家、いろんな方がいると思うんですけど、漫画家じゃないとメッセージが届かない方たちがいらっしゃるし、音楽家じゃないとメッセージが届かない方がいらっしゃる。それぞれの立場で声を上げると、結果的に連帯につながっていく。
業界を超えた連帯って、すごく大事だと思うんです。今回のイベントも正にそれで、私たちのようなアーティストと弁護士の先生方が一緒に声を上げることに協力してくださったというのはすごく価値があることだったと思います。これからも積極的に業界を超えて、どんな業界からも、ジェンダー平等とか性暴力廃止しようというメッセージを同じく上げていくことが大事だと思っています。
宮下萌さん) いろいろな業界でハラスメントや性暴力、ひいては人権に関するさまざまな問題があると思います。ですが今日、本当にいろいろ業界を超えて、労働問題もそうですし、性暴力の問題もいろいろお話しできて、こうやって連帯して声を上げて、どんどん社会を変えていくことが大事だと改めて感じた次第です。ありがとうございました。
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