ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)アドボカシーカフェ第81回開催報告
私たちの人生に『政治家』になる選択肢を!
統一地方選2023・若年女性立候補者への調査結果から探る打開策
2023年11月13日、ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)は、稲永ともみさん(神奈川県小田原市議)、西あきこさん(長野県富士見町議)、たなかふみえさん(広島県尾道市議選次点)、能條桃子さん(一般社団法人NewScene代表)、荻上チキさん(社会調査支援機構チキラボ代表)をゲストに迎えてSJFアドボカシーカフェを開催しました。
選挙に出馬するハードルは有るように見えていたけど無かった、と西さんは経験を基に話しました。西さんは、能條さんたちが立ち上げたFIFTYS PROJECT(以下、FIFTYS)のキャンプで背中を押してもらって議員になるまでの経緯を語りました。
このFIFTYSに参加して選挙に挑戦した若年女性たちは、社会を変えたいことがあるから、女性の声を届けたいから、といった内発的動機から出馬した人たちが多いことが、荻上さんと能條さんたちが行った調査分析から示されました。ハードルが多いとの予想で設計された調査でしたが、選挙出馬はポジティブな経験となったとの声が多く、FIFTYS で同じ志を持った人のネットワークや支援につながったことが大きな要因だったことも示されました。出馬経験がなくても、自治体の規模が小さくても、居住年数が少ない地域での出馬もFIFTYSは後押しし、いろいろな人たちを応援する仕組みづくりが進められています。荻上さんから、政治サポートについて、出馬後のロードマップなどを具体的に示して、等身大のロールモデルが可視化されることや、“ゆる”議会など気楽に飛び込めるアイディアなどが提言されました。
「私もできるかも」と思える色々な人の部分を溜めて自分のロールモデルにしている人が立候補につながっているとの見方を能條さんは示しました。たなかさんはゼロワン議会の自治体で、転勤・妊娠・子育て中の自分がチャレンジする意義を考え、無謀だと言われながらも出馬したことは、思いがけず誰かの手足を伸ばす機会になれた体験だったと語りました。西さんは元教員だったことで、自分の選挙・議員活動を教え子たちが見ており、何かアクションをすると変わることを見せていくことも子ども・若者の政治参画への一つのロールモデルだと話しました。
コロナ禍で苦しい立場におかれた女性たちの痛みが無視されない社会のために、自分に何ができるか、悩む中でFIFTYSの仲間に出会って選挙に挑戦した稲永さんは、経営者の配慮で地元の中小企業に働きながら議員活動ができる職場のサポート環境に感謝の意を表しました。また、自身が奨学金の返済を続けており、今まで議会の中で議論されなかったことが俎上に上がるという点でも、当事者性を持った人たちが議会に入ることで社会がどう変わっていくかを示していきたいと表明しました。
女性は控え目であることを良しとする文化が残る地域でも、女性が自分の意見を発言することで、誰かの声にならない何かを刺激すると、地域活動でも積極的に発言しているたなかさん。色々な声を確認しあって町の決定をみんなで納得していく議論の場の大切さを強調しました。若い人たちの意見や思いが、この国の決定にとって重大なポイントになるということをロールモデルのように見せていくことを始められるのではないかとの希望が共有されました。
詳しくは以下をご覧ください。 ※総合司会は上村英明さん(SJF運営委員長)
写真=上左から時計回り 能條桃子さん,荻上チキさん,たなかふみえさん,西あきこさん,稲永ともみさん
——能條桃子さんのお話——
私たちは新しい景色を作りたい、あとダブルミーニングで”Scene”という言葉には面子、顔ぶれという意味があると思うので、政治に新しい顔ぶれをということで、去年の夏から一般社団法人NewSceneという団体を作って活動をしています。主に今、FIFTYS PROJECTとして活動しているので、このFIFTYS PROJECTという活動の趣旨をお話します。また、今回の調査をさせてもらうということでソーシャル・ジャスティス基金から助成をいただいたんですけど、その中身については後で荻上チキさんが詳しくお話くださると思うので、私からは、なぜそういう調査をしたかったのか、そして結果として私たちが得たものを先に共有できればと思っております。
FIFTYS PROJECTは、去年の夏に「政治分野のジェンダー不平等を私たちの世代で解消」と掲げて活動を始めました。もともとは、個人のアクティビストとしてジェンダー平等について声をあげることはそれぞれやっていたメンバーが集まりました。
ただ何か問題発言があった時に声をあげることだけではなく、行政の中身や条例案などがひっきりなしに何か月一で出てくる状況がずっと続いていると思うんですけど、それに対して単発的に声を上げていくだけじゃ変わらないので、継続的に地域でちゃんと草の根で活動していく人たちを育てていくためにも、横につないで一緒に活動していくということが必要だよね、ということで活動を始めました。
私たちが考える「ジェンダー平等」とは、「性に基づく差別や搾取、抑圧がない状態」であり、個人対個人の問題や、問題発言をしてしまう個人の問題ではなく、政治的に作られた構造的な問題です。
ジェンダー平等の実現の一つは、女性が少ない政治分野でのジェンダー平等の実現です。現状を温存したいという、その方が楽だから温存する勢力があって、そこに加担しないで、これはおかしいんだと変えていきたいと動いていくフェミニストの存在が必要なところで、議会の中にもそういう人たちを増やしていきたい。そして、ただ政治家になってやってね、というんじゃなくて、やっぱり政治家は有権者の鏡だから、有権者側から変わっていくということを持ちかけられたらいいなとFIFTYS PROJECTを立ち上げました。
私たちは、今の行動を変えるために行動する政治家を増やしていきたい。政治家というのを人生の選択肢としてとる人たちが増えていったらいいなと思っていますし、その人たちが連帯できるコミュニティでありたいなと活動をしております。
具体的な内容としては、地方議会選挙に立候補する20代・30代の女性・Xジェンダー・ノンバイナリーの人で、私たちの理念に賛同してくれる人を増やして、横につないで支える、可視化することがまず一つあります。同時に、コミュニティを作っていくことによって、まずはボランティアという形でも、選挙や政治活動に関わってもらうことによって、未来の立候補者を増やしていけたらいいなと活動をしています。
私たちは、選択的夫婦別姓同性婚に賛成すること、包括的性教育や緊急避妊薬アクセス改善を賛成推進すること、トランスジェンダー差別に反対すること、クォーター制のアファーマティブアクションに賛同することを、今のところ、ジェンダー平等の政策として掲げていて、これらに賛同できる人を増やしていきたいと活動しています。
日本社会で育った人は女性だからといってジェンダーのことがわかるわけではなく、すでに男尊女卑的な社会体制がある中で育てば女性にもそういう考え方は根付いているので、自分が今まで常識だと思っていたものはちょっと違ったんだと気づき、もっとこういうジェンダー平等な社会がいいと考えて動いていく、マイノリティであったとしても動いていく人がいないと、社会はなかなか変わらないと思っていて、そういう人を増やしていきたいし、そうなれる場所であるといいなと活動をしています。
私たちが国政じゃなくて、なぜ地方議会に着目したのかというところを少しだけ話しておきたいと思います。全国に3万人位いる地方議会の議員の人数を分析すると、実は60代以上の男性が全体の56%を占めていて、20代・30代の女性は1%未満となっています。本来は市民の代表性を確保するべき地方議会に若い人女性が圧倒的に足りないというのが現状としてあって、ここを増やしていく、その一部になるようなことをしていくことから始まると思っています。
最近、若い人ほどジェンダー平等に対する意識は高くなっていると思いますし、それは調査でもいろいろ出ていると思いますが、政治家の数において若い世代ほど女性比率が上がって改善しているかというと、そうではありません。50代の男女比率は2割で、これもすごく少ないんですけど、実はそこをピークに、今の40代・30代・20代は女性比率が少しも改善していないと思います。
これは、世代が変わっていくことが一つのジェンダー平等を実現する上で希望として語られることがあると思うんですけど、実際の数を見てみると、そうなっていないので、私たちの手で少しずつでも増やしていけたらなと思っています。
この間の統一地方選挙の時は、29人が私たちが一緒に応援して候補となって、24名が議員になりました。受かった・受からなかったに関わらず、こういう候補者がいることを可視化して、それを見て「私はこの人に似てるかも」とか「この人のことは共感できるな」というロールモデルを増やしていくことによって、じゃ次は自分ができるかもしれないとか、自分の地域でもこういう動きを作りたいとか思ってもらえるようになっているんじゃないかなと思います。
具体的な内容をご紹介しますと、「ハラスメントのない選挙運動」というポスターを作って、配らせてもらったりもしました。選挙の中で一つ壁として結構あるのが、立候補すると性別や年齢によってよりハラスメントを受ける機会が実際に増えることです。それが、立候補したくなくなったり立候補をまたしたいと思えない元になっていると思います。ハラスメントのない選挙運動をするためには、本人が屈しないこともそうなんですけど、時には周りの人が介入できる余地があることは伝えられるといいなとポスターを作りました。
あと、FIFTYS PROJECTのオープンチャットみたいな感じで、20代・30代向けですけど、コミュニティを作ることをしたり、選挙ボランティアのイベントをやったりしています。
今は選挙が終わって課題の一つとして考えているのが、候補者をいきなり増やそうと思っても、そもそも自分が立候補すると心は固まっていない人たちが大多数なので、そういう立候補の前段階の人たちを一緒に勉強して育てていくってことであり、「FIFTYS PROJECTゼミ」をやっています。このゼミに参加してくれている人たちが300人位いて、そのうちの200人ちょっとが10代・20代・30代で、こういうところから自分たちが応援したいと思う候補者を育てていったり、地区の活動を展開していけるようにしたりすることが、まずできることかなと思って活動をしています。
社会を変えたいことがあるから立候補するいろんな人たちを応援する仕組みづくり
話はここがメインになると思うんですけど、選挙中は各候補者は自分の選挙に専念する必要がありますし、選挙が終われば、喉元過ぎれば熱さを忘れるというか、それぞれが経験した困難や制度的な問題がなかなか改善されないままずっと来ているから、日本の選挙はずっとすごく古いままやってると思います。それはもちろん、ジェンダーに関することだけじゃなくても公職選挙法の問題はいろいろあるとは思います。
今回の運動をして、若い女性の立候補増やしていくことを考えた時の課題を、実際に立候補したFIFTYS PROJECTの参加者に一緒に調査に参加してもらって、今後増やしていくために制度的にどういうことを変えていったらいいのか、私たちみたいな民間団体がどういうことができるのかを明らかにしたいなと思って、社会調査支援機構チキラボさんにお願いして調査をしました。
いくつか確かにこの路線で合ってるなと思えたのは、参加者がどうして立候補したのかは、今までの人たちは誰かからの要請でというのが多かったけど、FIFTYS PROJECTでは自主的に立候補していて、頼まれたからではなくて、変えたいことがあるから立候補しているという人たちが増えているということが改めてわかったからです。こういう人たちを応援していくための仕組みや土壌を作っていきたいなというのがまず一つ思いました。
あと、ハラスメントをFIFTYS PROJECTに参加した候補者は他の候補者よりも受けていたということも分かっていて、やはり若年女性だからということもあるんじゃないかなと思っていて、ここら辺を変えていけたらいいなと、調査する前から思っていたんですけど、改めて思ったことでもあります。
他にも壁となったことはあると思うので、今日は、実際に候補者だった人たち来ていただいているので後で詳しくお話しできたらなと思っています。
ちなみに、もう一つだけ追加しておくと、平均居住年数を見た調査がすごく面白かったと思っています。私たちのFIFTYS PROJECTに参加した候補者の平均居住年数は5年ちょっとだったんです。一方で内閣府の「女性の政治参画への障壁等に関する調査研究報告書」(令和3年3月)を見ると、30年以上住んできた人たちが7割から8割で、長く住んでいる人が政治家をやるのが当たり前だった。そこから、いろんな人たちが政治家をできていいよねというところに変えていくことが私たちの活動を通じてできているのかもしれないし、そういう人たちがちゃんと受かって続けられる状況を作っていきたいなと思っています。
——荻上チキさんのお話——
社会調査支援機構チキラボでは今回、FIFTYS PROJECTさんから依頼を受けて、FIFTYS PROJECTの活動の効果検証を行いました。
その効果検証にあたっては、2つの調査を設けることになりました。一つは、ワークショップ形式でKJ法を行うことによって、課題が具体的に見えてきた状況を整理しました。KJ法というのは、具体的な模造紙とかを用意して、それぞれポストイットやカードを持ち寄っていただいて思いついたものをとにかくたくさん書いたものを貼っていく。何か重要なことだというふうに自分が思ったことを書くのではなくて、自分が体験したことで連想するものを次々と書いて、そのグルーピングは後に回して、とにかく書いていく。そして、後でグルーピングタイムを設けて、メンバーで似てるものを整理してもらい、それに対して最後ネーミングを行ってもらう。つまり、そのグループにどんな分類が可能なのかという名前を付けてもらう。こう整理することによって何が見えてきたのかを俯瞰してみるのがKJ法というものです。
そしてもう一つは、内閣府がこれまでの選挙に出馬した方々などに対して、どういった経験をしたのかというアンケートを取った先行研究があります。そのアンケート項目を概ね引用した仕方で、比較回答可能な調査設計をしました。8割~9割の調査項目はその内閣府調査の項目と同じようにしつつ、新しい項目として、例えばメディア被害とかを設けた上で、この出馬するという体験がどういったものだったのかを可視化する調査になりました。
すなわち、ワークショップでKJ法を行うというのが一つの調査。そしてもう一つはアンケート調査です。
実際のワークショップでは、皆さんそれぞれペタペタ貼ってもらったものを前に持ってきて、自分たちのグループの傾向を発表してもらい、実際に模造紙に分類してもらいました。
このワークショップで模造紙に整理したものについて、どういうふうに分析をするのかということについて簡単に説明をします。模造紙でまとめていただいたものについては、全て一旦スプレッドシートで整理をしました。これはすでに分類済みのカードを整理したということになるんですけれども、それぞれどういったネーミングで、どういった内容のものが書かれていたのかを整理しました。今回のKJ法では、「動機」と「葛藤」と「サポート」についての「満足」・「不満」、このそれぞれを「出馬前」と「出馬後」でどう変化したのかを追っています。そうしますと、グループごとに分類された内容が整理されることになるわけです。その中には例えば、嬉しかったサポートもいっぱいあるよねとか、辛かったことがいっぱいあるよねということで、ハラスメント体験とか、ポジティブフィードバックとか、そうしたものが整理されました。これは複数班の調査があるので、それらのカードを整理してデータ化していくという作業をまず行いました。これらのカードがトータルで800以上900近く集まったので、分析しました。
ただ、これら既に目視分類されているものを再度整理するということだと客観性に欠けるところがあるので、テキストマイニングという手法を使って整理をするということになります。テキストマイニングされたデータをちょっとご紹介したいと思います。
データのまず全体の外観(上掲)を見ていただければと思うんですが、それぞれの、例えば立候補を決めた後のサポート状況とか、立候補を決めるまでの葛藤状況とかにおいて、どんなワードが使われがちだったのかが見てとれます。各々の人々がどういったワード、どういった単語などを通じて、その経験を振り返ったのかというようなことが、これで整理されるわけです。そうすると、「立候補を決めた後のサポート満足」において、とりわけこのFIFTYSが目立ったクラスターとしてあり、FIFTYSに繋がってたおかげでいろんなサポートが得られたよっていう満足度がとてもあります。
また、その「サポート満足」と「サポート不満」の両方にコネクトしていているラインには「夫」があり、要は、自分のパートナーによるサポートで満足をした人と自分のパートナーによるサポートでものすごく不満だった人とで大きく二極化している状況が可視化されるわけです。
「立候補を決めるまでの動機」の部分だと、やはり女性の政治参画というものを変えるとか増やすとかで、自分の経験というものをワーディングする方がとても多かったことがわかります。
一方で、「立候補を決めることの葛藤」というと、「自分」っていうワードとか「選挙」っていうワーディングとかが出てきてですね、自分が選挙に出るにあたって経験が不足しているのではないか。また、ここに「両立」っていうワードがあり、仕事と選挙の両立とか、家庭と選挙と両立ができるんだろうかというような不安感があるから、男性中心の選挙である状況に対して葛藤する方が相当程度いらっしゃる。
人数としては今回ワークショップに参加された方は20人ちょっとなんですけれども、そうした人たちがとにかく連想方式でワードを書くカードを作ってもらう形式だと、どういったワードが出がちだったのかが見て取れるわけです。
これは全体のクラスタリングしたものを見てとることができるので、それぞれの分極状況というものもいろいろ見てとれるわけです。例えば、「サポート不満」と「サポート満足」と「動機」部分の全てに「女性」というラインがコネクトをしているとなると、女性面ついてサポートをしてくれるところとサポートしてくれないところでの不満が分かれていることなどが見てとれるわけです。
他もカテゴリーごとに同じように分類していった結果があり、出現回数が多いものほど大きいクラスターとして表示されていくことになります。「立候補を決めるまでの葛藤」の部分だと、お金の面とか仕事面とか応援してくれる人がいるんだろうかとか、そうした葛藤が多くあることがわかりました。
ポジティブな経験となった選挙への出馬 同じ志を持った人のネットワークや支援へつながることから
こういった仕方で、FIFTYS PROJECTに参加し立候補された方々が潜在的にどういったワードで自分の体験を位置付けているのかも可視化するためにKJ法というのが使われました。ただ、このKJ法などを見てワークショップの様子などでとても感じたのは、多くの方々がとてもそのポジティブな経験として、自分たちの出馬体験を位置づけていたことです。ワークショップの様子はとても明るいものだったんです。
各ワードの回答数を見ると、「立候補を決めた後のポジティブ体験」が119回答ほどある状況で、「ネガティブ体験」の116回答とそんなに回答数は変わらない。そして「立候補を決めた後のサポート満足」で言うと、110回答あったのに対して、「立候補を決めた後のサポート不満」ですと52回答ということになっていて、この回答数の差はどういったものを連想しやすいのかというものの差であり、それを見ることによって、多くの人たちがそれだけサポートにも満足していたし出馬体験はポジティブなものとして捉えていたということが見てとれます。
当然この後紹介するようにさまざまなハラスメントであるとか改善すべき課題というのはたくさんあるんですけれども、それ以上にいろいろなネットワークとつながったこと、いろいろな支援とつながっていること、あるいは自分と同じ志を持った方とつながることなど、あらゆる体験をポジティブに捉える方が多くいらっしゃったのが印象的です。
ワークショップやアンケートを行う前の仮説としては、あくまで取り払うべき壁をどういうふうに可視化するのかが一つの焦点だったものですから、こうしたネガティブ体験に特化をしてなるべく調査をするようにしたんですけれども、蓋を開けてみると、割と肯定的な回答が多く、そうした立候補状況をより改善していくことによって更にさまざまな候補者の登場をエンパワメントしたいのだという意思が伝わってきました。
選挙出馬は、女性の声を一つの象徴や表象として届けたいという内発的動機から
加えて、このKJ法以外にもアンケート調査というのを行いまして、今回の立候補した動機、それから具体的な困りごとなどについても調査を行いました。
立候補のきっかけは、今回のFIFTYS PROJECTの参加者に関しては、「国政に対してあるいは地方政治に対して女性の声を反映させる」という動機を持った方が全てでした。「やや当てはまる」・「当てはまる」で100%行くという回答は本当に珍しいわけですけれども、そうした動機づけを持っている方々に対しての支援が行われているということで、これは支援目的と支援内容がマッチしていることを意味します。つまり、こういった方々を支援したいと思っているFIFTYS側の活動動機とこういった支援を受けたい方々のニーズが一致しているからこその回答ということです。
印象的だったのは、「課題解決したい」っていう方も当然いらっしゃるんですけれども、そもそも「女性の声を反映させるため」というのが100%で、「課題解決したい」という方がそれより下がってることから考えると、女性の声を反映させることそのもの自体が一つの課題解決になるんだと思っている方もいらっしゃるということになるわけです。
加えて、「ロールモデルに憧れて」という方も相当いらっしゃいました。具体的に先輩の議員がいらっしゃって、そのような議員になりたいなと思えるような活動を既にしている方がいることが可視化されることは、実際に次のターンでじゃあ自分も出てみようかなということを後押してることが見てとれます。
もう一つ印象的なのは、「政党や所属団体からの要請があったため」という割合が全体の2割程度しかなかったことです。内閣調査だとこれが倍近くの数字で、やはり要請を受けない限り、なかなか自分で出るという自発的出馬はないと。つまり出馬にはおそらく、要請経由の出馬と、内発経由の出馬とがあって、その自発的に出馬するという方に対してFIFTYS PROJECTはアプローチをしていると言えます。コネクションがない限りなかなか出馬する道が芽生えない、そういった選択肢は考えにくいという状況はどうしてもあると思うんですが、この点で言うと、実際に要請がないにもかかわらず出馬できている方が7割強もいらっしゃるのはとても強い活動が背景にあるのかなと思います。こうした団体がなければ、こういった数字というのは可視化されにくいと思います。
一方で、「親族の後継」という方が4.8%、回答者は実質上1名程度ということになります。「地元からの要請」も同程度だったと思います。
つまり大きく分けると、内発的な動機を持った、取り分け「女性の声を一つの象徴や表象として届けたい」という動機を持っている方が相当程度いらっしゃることがよくわかります。
続いて、「特に力を入れたい分野」に関しては、「教育」、「男女共同参画」、「少子化対策」、こうした部分がとても多くありました。三つに絞って回答してくださいという、内閣調査にちょっと準拠したものになっていたのですが、こうした政策分野が上にくるというのも今回の調査対象者ならではの傾向だったと思います。逆に、「道路安全保障」、「農林水産業」、「観光」などは全体として少なめな状況です。
これら諸々が、出馬された方の現タイミングでの動機づけの一つの傾向となっており、よりニッチな分野について自分たちならではの声を届けようという方がいらっしゃることになるわけです。
また、立候補を決める前の段階から選挙期間の間にどういった経験をしたのかについてもアンケートで聞いています。そうしたところ、実際にやっぱり相当程度の方が「ハラスメント」というふうに分類できるような回答をしています。具体的には、「性別に基づく物質的な態度」あるいは「ネットなどによる嫌がらせ」あるいは「性的嫌がらせ」など。これは若年女性だからということも当然あると思うんですけれども、逆に言えば、その認知率が高いということでもあるかと思います。というのも、今回、FIFTYS PROJECTに参加をされる方というのは一般の方々よりもジェンダー問題に対してとてもアンテナが高い方がいらっしゃると思うんですね。そうすると、他の世代などのクラスターの方に対して調査を行った内閣調査など比べても「これは許せないハラスメントだよね」ということに対してしっかりと敏感に反応して、それに対して異論を述べる、あるいは違和感を抱くことがあるんだと思います。その状況がこうした数の表れになっていると思います。
出馬経験が少ない・自治体規模が小さい・居住年数が少ない地域での出馬も後押し
こうした調査をとることによって、今回さまざまな課題が見えてきました。その課題の中で、出馬経験が少ない方で、なおかつ自治体の規模が小さくて、なおかつ居住年数も少ないような地域で出馬できていることを後押してきたことがとても大きい。政治家経験者が身近にいらっしゃらないという方にも支援をすることができているのが見えてくると思います。こうしたことを踏まえて、私たちの調査の中でいくつかの提言を行ってきました。
今回の調査の中では、出馬前と出馬後とでどういった体験をしたのか、どういった感覚を得たのかということをマトリックスで表示(下図)をした上で、ネガティブな体験などについてはケアが必要になってきますよねと。それから、サポートについての満足度不満を分析することによって、どういったサポートが有効で、どういったサポートが不要で、どういったサポートをさらに作ることが必要なのかということを可視化しました。
政治サポートへの提言 出馬後のロードマップなど
その中で、FIFTYS PROJECTさんに対する提言も盛り込んでいますが、一般に政治サポートという点で最後に整理したいと思います。
社会的なサポート、ソーシャルサポートには大きく分けると「情緒的サポート」と「道具的サポート」があり、道具的サポートにはさらに「情報的サポート」も加わります。そうした情報的サポートと情緒的サポートと道具的サポートそれぞれ、どういったものがあった方がいいのかということが整理されました。
情報的サポートという点で言うと、そもそも出馬後にどういった手順で人は議員になるのかが見えない問題がある。どういった手順で届け出を出して、どんな活動をして、誰に会いに行って、どういったタイミングでどんな情報が入っているのかという、出馬後すごろくというか、ロードマップのようなものが見えずに、だからこその出馬についても悩んだし、実際に出馬して選挙を戦っている最中も、明日はどうなるか、開票日は何をすればいいんだろう、どの選挙公報がダメなんだっけということで迷っている方もいらっしゃったわけです。そのために、具体的な出馬後のロードマップやチャートというものを整理する。また、資金の確保手段などどういった道具的レパートリーが存在するのかということも整理する。そして、具体的な情報ストック、例えばプレゼンテーションをする時のスライドであるとか、ファクトシートであるとか、誰もが伝えられるようなシートが便利にあればいいなという反応もありました。
情緒的サポートとしては、具体的なネガティブイベントに対して事例集を共有しつつ、それに対する対処法というものを整理するということ。また、日々起きたことを記録して共有すること。FIFTYS PROJECTの場合だと、今回出馬した方々の間のグループLINEなどを含めて様々メッセージを交わすことによって「あ、自分一人じゃないんだな」と勇気づけられた方もいらっしゃいました。そうした様々な横のつながりなどを増やしていきつつ、メンタルに対してケアを常に提供することが必要となります。
道具的サポートということで、候補者支援の方法論、人材資金面の提供など、さまざまなサポートが必要だということ。それから具体的なマテリアルフォーマット、例えばパンフレットやウェブサイトを作る時に大変だといった時に簡易でそれを作れたり、そうしたことができるような人々に対するアクセスを保証したりすることも必要になってくるということが見えました。
しばしば誤解されがちなのが、若い人=ネットに詳しいという、まあ一つの神話です。確かにインスタグラムとかTikTokとかは日常的に使っているかもしれませんが、だからといって自分がすぐインスタグラムを始められたり、自分一人でウェブサイトを立ち上げられたり、SNSで上手にコミュニケーションを取れるとは限らないわけです。どういった方にもSNSサポートが必要なんですが、選挙事務所や政党などから対応がなされることが少ない状況ではありました。
ということで、いろいろな課題について可視化をしつつ、具体的なメリットやポジティブなフィードバックについても可視化した上で、今後取り組むべき出来事というのも、今回のワークショップ、とりわけKJ法の回答から明らかにすることができました。これらの報告書はすべてあのFIFTYS PROJECTさんのウェブサイトおよび社会調査支援機構チキラボのウェブサイトに全て掲載しているので、興味のある方はご覧いただければと思います。
最後にこういった活動はとても有意義なものであるだけではなく、こうした活動を通じて得られたデータというものを次のシーンや次の出馬などに対して活用していくことがとても重要だと思うので、引き続きこうしたデータのシェアリングと啓発発信に対して力を入れていくことが必要かなと思います。
——パネル対話(稲永ともみさん・西あきこさん・たなかふみえさん・荻上さん・能條さん)——
能條桃子さん) 今年の統一地方選挙に立候補した時にFIFTYS PROJECTに参加してくれていた3人が来ているので、荻上チキさんも一緒に交えてお話をしていきたいと思っております。まずその3人の方々に自己紹介を立候補した背景も含めてしてもらってから本題に移りたいと思います。
ゼロワン議会の自治体で、転勤・妊娠・子育て中の自分がチャレンジする意義
たなかふみえさん) 広島県尾道市で今年の春に市議会選挙に立候補し、実は落選をしてしまいました。尾道市は人口13万人の町なんですけれども、それまで28人の議席があり、その中で女性がお一人もしくはお二人というすごく女性比率の少ない「ゼロワン議会」と呼ばれるような町でした。私は実は4年前に夫の転勤で尾道市にやってきたんですけれども、もとは岡山出身でして、すごく女性議員が周りにいたので、尾道市のそういった状況に違和感を覚えました。
転勤してきて、自分が妊娠し、本当に小さい子どもがいてという状況ではあるんですけれども、だからこそ、そういう人間がチャレンジするのをこのまちでやる必要があるんじゃないかと思いチャレンジしました。結果としては次点で、すぐ上の方と200票ほど差があったんですけれども、嬉しかったのは、「尾道に1136票も浮動票があったってことが分かって本当に嬉しかった」という声をお聞きしたことです。やっぱり、あの挑戦は全く無ではなかった。今もすごく他のいろんな活動がしやすく、やっております。
能條さん) よくこういうイベントで、立候補して受かって議員になった人たちの話ばっかりの中で、できれば今回はFIFTYS PROJECTに参加して残念ながら落選してしまった人のお話も伺いたいと。いろいろ思うことあるとは思うんですけど、前向きに地域活動をなさっていて、むしろ議員になった人たちは議会活動で忙しいのに対し、たなかさんはパワーアップして地域活動してるなと思っていて、そういうことも今日いろいろシェアできたらなと思います。
続いて稲永さんお願いします。
コロナ禍で苦しい立場におかれた女性たちの痛みを無視しない社会へ自分に何ができるか
同じような思いを持つ人たちとの出会い 議員への挑戦を後押ししてくれたFIFTYS PROJECT
稲永ともみさん) 34年間生まれ育った神奈川県の小田原市というところで、この春に統一地方選に挑戦し、皆様のおかげで当選することができ、現在小田原市議会の27議席のうちの1議席を預からせていただいています。
私が今回、立候補しようと思ったのは、このコロナ禍を経験したことがすごく大きいです。私は単身女性でいまは働きながら議員をしているんですけれども、コロナ禍で女性が苦しい立場に置かれている状況を見ていて、この先どうやって生きていったらいいんだろうとか、若年女性の自殺が増えていくことも他人事じゃないと感じていました。
これをこのまま放置していいんだろうか、私たちの痛みはいつも無視されてしまうと感じていて、その時はすごく怒っていたし、何かやらなくちゃと焦っていたんです。
そこから、自分に何ができるのかを考えて、昨年の春にパリテ・アカデミーの女性政治リーダー合宿に参加しました。その中で同じような思いを持っている方たちに出会って、エンパワメントされました。でも、その一方で他の参加者の皆さんはすごい肩書きの方が揃っていて、私は市民運動や社会運動にも全然関わってこなかったので、私みたいな普通の会社員はやっぱり議員にはなれないんだなとも思いました。
それでも何かやりたいという想いはあった中で、昨年の夏にFIFTYS PROJECTが立ち上がって、ちょうど1年前の秋に候補者キャンプに参加させてもらったんですけど、そこで今日いらっしゃっている西さん・たなかさんともお会いしました。同じ志を持った方が集まって、この人たちが全国に広がって議会の中に入っていったら、社会は変わっていくんじゃないかと希望が持てて、私も(皆さんの存在に)背中を押されました。
地元では連携している県議が立ち上げた「小田原ミモザプロジェクト」というものに参加しまして、選挙中も私を含め4人の女性候補者と合同で女性街宣を行ったり、皆さんライバルではあるんですけど、本当に支え合いながら一緒に選挙を戦ってこられたことは大きいです。また、当選してからもFIFTYSの仲間の皆さんも含め、たくさんの横のつながりに支えられながら活動できていることは本当に幸せに思います。
能條さん) ありがとうございます。稲永さんは私も選挙の時に手伝いに行かせてもらいました。
たなかさんのように小さい子どもがいると「お母さんなんだから選挙に集中しろ」みたいなことを言われ、でも逆に結婚しないと結婚するプレッシャーを与えられる。誰でも責められるじゃん、みたいな感じではあるけど、いろんな女性たちが本来議会にいないといけなくて、いわゆるママ枠はそれも大事だけど、それだけじゃないというのがある。女性は母親っぽいことや介護とかケアの話はしていいよ、でもそれ以外のことは男の仕事だから、みたいなステレオタイプは結構ある中で、選挙の段階から「いや、それがおかしいと思うんです」と演説してたのがとても印象的で、そういう話も今日したいなと思っています。
最後に西さんを自己紹介お願いします。
西あきこさん) 長野県生まれの36歳です。5月から任期が始まり、富士見町の議会議員をしております。私は無所属です。社会文教常任委員などいろいろな委員会に所属しています。私の住んでいる町は人口約1万4千人で、山梨県との県境近くで、長野県の中でも東京には比較的近いエリアです。議員の定数が11名で、そのうち今回は3名の女性が立候補して当選しました。前回までは女性が1人でしたが。
私の議員になるまでの経歴は、10年ほど前まで教員をしていました。その働き方もいろいろで、正規職だった時もあれば講師や非常勤だった時もあり、しかも長野県内のいろんなところを転々としていました。その間に大学院に在籍していた時もありました。そして転勤で今の住まいの富士見町にやってきました。
教員をしながら地域の活動に関わり始めて、政治に関心がだんだん強くなってきたのは、2019年にフィンランドに行ったのがきっかけでした。学校のいろんな課題を解決するためには政治の問題だとすごく感じてきました。2021年に私たちの住む町で町長選があった際に、その町長選をどう盛り上げるかというイベントをして、そこからいろんな活動が始まりました。パブリックコメントをみんなで書こうという会をしたり、こどもの居場所のスタッフをしたり、ユースセンターを今立ちあげていたりして、そこで、たなかさんとはまた別のつながりがあり、今に至っています。
議員になるまでのスケジュール感 FIFTYS PROJECTキャンプで背中を押してもらう
議員になるまでのスケジュール感をお話します(下図参照)。去年、その町づくりのいろんな活動をしていた時に、現職の今も議員をやってらっしゃる方から「どうだい?」と打診がありました。その時にFIFTYSの活動は知っていたので、面談などでFIFTYSからの情報収集をする中で、ダメかもしれないけどキャンプに行くだけ行ってみようという思いで、昨年の11月、ここにいらっしゃるみなさんにお会いした時に、たなかさんにエンパワーしてもらいました。私はその時のことが今回の挑戦の大きなきっかけの一つでもあると思っています。
全国の方が集まると、こういうことに関心を持って挑戦しようとしている人はいるんだなと励まされました。その後12月から3月ぐらいまでは本当に悩みながら、出馬に当たって地域の方に相談すると「やっぱり出ない方がいいよ」と言われたり、涙したり。あと、教員という仕事柄、仕事をしながら政治団体を立ち上げることはできないので、教員を辞めるタイミングも皆さんと相談させていただき、3月ぐらいまでがちょっとハードだったという気はしています。なんとかそういったところも乗り切って政治活動をし、選挙運動に取り掛かれ、おかげさまで当選させていただけた。本当に短い期間でしたけど、そこに至ったのが本当にありがたいなと思っています。
富士見町の今回の投票率は64.15%で、前回より1.96%上がっていて、県内の平均47.41%よりはかなり高い状況です。また、議員のなり手不足と全国的に言われている中で町村議会もそういう状況ですけど、立候補者数が4人定数をオーバーしたことは富士見町にとってはワクワクするようなことで、近隣の自治体からも注目されていました。議員の平均年齢も下がりました。女性議員の数は増え、とはいえ議員の中の割合は27.3%で、まだまだですけど。
いま取り組んでいることは、一般質問では、男女共同参画・パートナーシップ制度・こども基本法・若者の政治参画などを取り上げています。こども・若者の参画をとにかく促したいと「子ども向け議会見学会」などの活動をしています。男女共同参画のところで言うと、町の自治体の目標の中で、職員の女性割合や管理職の割合、あるいは付属機関である審議会・委員会の女性割合を目標にされやすいので、公開されている委員会などは傍聴してやろうという精神であちこち見に行っています。
能條さん) ありがとうございます。女性議員の数はただの数字じゃなくて、特にジェンダー平等に取り組みたいと思って議会に入ると、視点が増える、誰もそこに注目してなかったところに一つスペースをちゃんと作れるということなんだと、今聞いていて思いました。
先ほど、チキさんから調査の概要を説明していただいたんですけど、皆さんもその調査には既に参加してもらったので、発表されている内容の「ここは私が言った部分だ」とか、「ここは私は当てはまない」というのもあったかもしれないけど、皆さんから見て、出馬してみて分かった壁の部分を話していただけますか。あと逆に、あの調査の後のみなさんの発表をもらったら、「やっぱり出て良かった」って書いてるのが多かったのに、出て良かったのがなかなか伝わらないところがあるので、よかったことも話していただけますか。調査をやるとどうしても、ハラスメントなど変えなきゃいけないことの方が表に来るんですけど、「こういうことは良かったよ」とかもシェアしてもらえたらなと思います。
そこを3人に聞いた後に、チキさんから、追加で質問や、調査を引き受けていただく前と後でイメージが変わった新たな視点とかあったら教えてもらいたいと思います。
無謀だと言われた議員への挑戦 誰かの手足を伸ばす機会になれる体験に
たなかさん) 「無謀だ、無謀だ」と言われまくりながら挑戦して、「もう、やる以外ない」と思って挑戦をしたんですが、それまで仲良かった友達からまた外につながったり、この人は絶対興味ないだろうな・応援してくれないだろうなって人が「何かあれば言って」と声をかけてくれたりしました。自分が旗を立てたことで誰かがこっちに向いてくれたりして、誰かの手足を伸ばすことができた体験ができたのはすごく嬉しかったです。一人の思い過ごしや思いつきや我がままではなくて、本当に誰かも待っていてくれたんだと。誰かの機会になったことが体験できたのはすごくいい時間でした。
能條さん) みんなから「無謀な挑戦だ、やめとけ」とたぶんみんな言われたと思うんですけど、「でもやっぱり、やります」みたいな感じでやるので、特殊な人だとしても特殊な例を増やしていくしかないのかなと私は最近思ったりしますが、どうですか。近隣自治体も含めて、これからもっと女性候補者が増えていかなきゃいけないと思う時、これが変わらないといけないというのはありますか?
女性が自分の意見を発言することで誰かの声にならない何かを刺激する
いろんな声を確認しあい町の決定をみんなで納得していく議論の場の大切さ
たなかさん) 「発言してもいいんだ」という土壌を作ることが本当に大事だなと思っています。それまで28人も議席があるのに、女性が1人しか議員にならないまちを変えるには。町内のことで会合にちょこちょこ出て地元の方たちと活動することが多いのですが、目上の方がいる時に、女性が自分の意見を言うことの難しさをひしひし感じています。
でも今その中でもじゃんじゃん言ってます。全然私の意見が通らなくてもいいんですけど、「私はこう思いました」と私が言うことで、「あ、あるよね」って、誰かの声にならない何かを刺激する。私の意見が実現しなくてもいいけれども、いろんな声を確認し合うことで、このまちの決定に対してみんなで納得していく議論の場の大切さ。その土壌がないと思っているので、そこを作ったり、多様な声が出ることの大事さを共有しないと。皆さん控えめにするのが良いというふうに育てられ、そういう文化できているから、変えていく大事さを感じています。
能條さん) そうですよね。そういう会合で発言するのも一つのロールモデルだなと思います。
選挙に出るハードル あるように見えて無いと実感
西さん) 出馬はただ手続きをしていけばみんなできることと言ったらすごく失礼ですけど、そういう公的な手続きしていけばいいだけですよね。手続き上は、地縁とか血縁とかは正直なところ関係ないのに、自分も地縁・血縁がない、応援してくれる方がいないのでは、というのが心配ですごく悩みました。でも、いざ表明してやってみると、ポジティブなエールを皆さんからいただける、なんじゃこりゃみたいな。
そういう経験が選挙を通してあって、ハードルがあるように見えて実は無いっていうことを、やればやるほど感じました。ハードルがあるという雰囲気、空気があるけど、やってみると実は無いんじゃないかと。議員として今、事実として一つずつ検証している感じです。
選挙に出る前は、選挙の期間も議員になって以降も、もっとネガティブな方が強いと思っていたので、そうでもなかった感じです。
能條さん) 選挙に出ることが言葉といい持ってるイメージといい仰々しすぎる。でも意外と、「やってみると、まあできたもんだよ」ってみんながカラッと話すのが面白い。やってる時はみんなすごい大変だったと思うんですけど。確かに、出る前の方がもっと大きな壁を想像してたんですか?
西さん) そんな感じです。家族の反対という話もよく聞くんですけど、それって結局、男性が議員と話していても同じだなと思っていて、何期目かの現職の議員さんと話してても同じだって結構感じています。
能條さん) 家族がすごく応援してくれるのと何もしてくれないのと、そこら辺も人によって確かにあるのかなと思いました。
稲永さんはいかがでしたか。
働きながら立候補し議員活動を続けられる環境を整えてくれた地元の中小企業
稲永さん) 私は壁というと資金のこととか、家族もなかなか賛成してくれないというところもありました。
それから仕事をどうするかという問題もありました。もともと立候補をするなら仕事は辞めなければいけないと思っていたんですが、社長が「籍を置いたまま活動していいよ」と言ってくださって、ありがたいことに今もその会社で働きながら、議員をさせてもらっています。私が勤めている会社は大企業ではなく地元の中小企業なんですけど、落選のリスクもあるなかで会社を辞めずに立候補できる環境を、会社で皆さんにご理解をいただいて整えてもらったことは大きな支えになりましたし、本当にありがたいなと思っています。
よかったことはですね、私もすごく無謀で今回は無理だってさんざん言われたんですけど、今まで1回も選挙に行ったことない人が投票に行ってくれたり、「今まで票を入れたい人がいないから選挙に行かなかったけど、やっと入れたい人が出てきてくれた」と言ってくださったり、そういう声を身近でも聞いて、(挑戦しなければそういう人にも出会えなかったので)すごく嬉しかったです。
能條さん) 文字で見ると何パーセントがセクハラ受けてとかなんかで、それも事実としてやっぱりあって、人によってダメージや受け止め方には差があると思うけど、こういうのが無ければいいなと思います。でも実は選挙に出てみると他にも見えてないだけで支援者は集まってくるというのはあるのかなと思いました。
ここまでチキさんはいかがでしょうか?
荻上チキさん) 今回、能條さんと一緒に私たちの調査結果について記者会見を行ったんです。その記者会見では、「ポジティブな反応も多かったですよ」とか「居住年数が少ないような方々でも、こういったような仕方で出馬することはできますよ」というロールモデルの話と、一方で課題解決として「ハラスメントがあるので、それを何とかしましょうね」という二本立てでお話をしたんですが、記事になるのがだいたいそのハラスメントで、何割が被害みたいなところがフォーカスをされました。それも事実だから書いてほしいところがあるけど、そこばかり強調されるとますます萎縮するのではないかと思いました。
「私もできるかも」といういろいろな人の部分を溜めて自分のロールモデルにし立候補につながる
今回、3方の話を聞いていて、はっと思ったのが今後の課題です。西さんが資料とともに説明してくださった大まかなタイムスケジュール――何ヶ月前に悩み始めて、何ヶ月前に決断して、何を準備して――を含めて可視化することが必要だと思います。つまり、みんな自分は出馬していいんだろうかと悩み、自分こそがと堂々と出馬できる人は多分いなくて、その自分でいいんだろうかっていう葛藤時期に、どういった方に相談して、どんな整理をして、どんなチェックリストを果たしたのかを可視化する。政党に出るのか出ないのかも含めて悩まれたと思うんですけど、みんなこれぐらいの期間は悩んでるし、概ねみんなこれぐらいの時間で慌てて選挙の準備してるみたいなスケジュール感で、先輩もなんだかんだとやってるよということも可視化されると、「なんだ、いいんだ」と背中を押されるような気がするんですね。だから、先ほどの発表した調査だけでは見えてこないような、皆さん自身の振り返りから見えてくるロールモデル性みたいもあるんだなと今強く感じました。
能條さん) 「ロールモデル」って言ったときにイメージするロールモデルは有名な人みたいだけど、いろんな人のいろんな部分を組み合わせて、自分のロールモデルにしてる人がFIFTYSの候補者は多いのかなと思っています。だから、「この人みたいになりたい」って思っているというよりは、この人を見たことによって、「私もこの部分はできるかも」というのがどんどん溜まった人たちが立候補までつながったと思っています。そういう機会を私たちは団体として作っていきたいなと思いました。
今日ここでテーマとして話したいなっていうふうに思ってたのが、「政治分野のジェンダー平等」といった時にどうしても都会中心になってしまうこと。都市の方が、東京の方が今回、例えば杉並区もそうだし、武蔵野市もそうだし、議員の男女比率が半々になったりして、結構増えてきている。一方で、神奈川もそうですけど、パッと隣を見たら全然違う景色があって、理解が進んでいる地域と――それこそ長野とかは進んでる部分もあるのかなと思ったりするんですけど――そうでもない地域がある。
全国で女性議員をどんどん増やしていこうと思った時に、皆さんそれぞれの視点で見えている課題感をぜひ聞きたいなと思います。併せて、選挙の後もう半年は経っているので、活動を続けている中で見えていることがあったらシェアしてほしいと思います。
稲永さん) 小田原もかなり保守的な地域です。FIFTYSに参加した候補者の皆さんの平均居住年数が5年ぐらいだという話があったんですけど、私は生まれ育った場所で出たんです。選挙中も特に高齢の方からは小田原にずっと住んでいることがすごく重視されていると感じました。東京の議会で活躍するFIFTYSの仲間の活動やパリテを達成されている様子を見ていると、そこまでにはまだ遠い道のりだと、感じています。でも今回、小田原市議会も今まで27議席のうちずっと女性は6名だったのが10人まで増えて、割合的には37%ぐらいかな。
議会に女性が増えたことによって、議会の雰囲気も変わってきたと先輩議員の方から聞いてますし、より議論が活発になり、深まっていると私自身も感じているので、それは良かったなと思ってます。
たなかさん) 私は今バイトとかもしながらNPOでユースセンターズを作る活動をしてます。尾道というまちで、私も小学生の子どもがいるんですけれども、子どもたちを見てると自分のことも振り返れる。
ただ、「明るく元気な一年生」とか、青少年健全センターが非行防止のためにパチンコ屋さんにちゃんと出入りをしているとか、制度の中で作られた正解みたいなもののために公共が動いている。押し当てられた役割みたいなことで子どもたちへの公共的な支援や福祉とかいろんなことが成り立っているけれども、子どもたちの声を聞こう、ユースたちの生きやすい、発信しやすい、それを受け止められるまちになろうという活動をするために大人たちとつながって、ユースセンターズが必要じゃないですかと新たな概念を一生懸命に伝えています。
それをしながら、自分がしたい「ジェンダー平等」も同じだなと思っています。このまちに無かったものを伝えていくには本当に丁寧に話していく、伝えていく、信頼される人間になる、そういうことから始めて、聞く耳を持ってもらいながら一緒に考える仲間にしていく。そういう地道な活動をしています。
能條さん) 本来はどんな人が言っていたとしても議論ができるのが理想だけど、地方政治の現場や議会を見に行くと、どんな話をしているかよりも誰が言うかが大事な世界になっていて、その中に新しい人が入ってくるのは、循環があることで変わっていく意味があるのかなと思って聞いてました。
ありがとうございます。西さんはいかがでしょうか?
女性が伸び伸びと議員活動をできるようになった先には まだ議会に声が届いていない誰かの参画も
西さん) 今回、富士見町議会ではFIFTYSのサポートを受けたもう一人の30代の女性議員と私とで2人、入ったんです。やりにくさみたいなのは全然感じていないという訳ではないけれど、結構びっくりしたんです。同世代が2人いると、伸び伸びというか、この場所でけっこう過ごしやすいというか、そういうふうに感じるということに。今、富士見の議会に30代の女性がいることが事実としてあるから、議会活動としてはいろいろ配慮いただいていると思います。
ただ、じゃあ、ここにいないのは誰なのかということを考えた。30代の女性2人と50代後半以上の年齢の女性や男性という議員構成のなかで、じゃあ今度は誰が入ったらもっと議会が活発化されていくかを考えた。こども基本法もできましたし、こども若者の声や、議会にいない世代の声をどうやって届けるかというところに、議会活動でも心を砕いていると思っています。
そういうことをやっていくと、今後、若い世代がもっと政治参画しやすくなるかもしれない。若い人たちが私たちを見てロールモデルと思ってくれたら嬉しいと活動しています。
能條さん) 確かに、1人じゃなくて2人いるっていうのは重要だと思いました。
最後にチキさんに質問したいことがあります。私たちの提言を今回の調査でまとめてもらったんですけど、FIFTYS PROJECTとしてはそれを受けて、まず取り組んでいけることは何かを内部で今話しています。お金というのがマップにした時に出てきました。選挙に準備するために大体の人は仕事を数か月は休んだり辞めたりして、仕事をしながらの選挙活動は厳しくて、貯金がある人しか選挙に出られないのが基本。それかパートナーが稼いでくれているか。だから、ここはまずお金の支援ができるようになったらまた景色が変わると、どうやっていこうかというのが、あの調査を受けて進めているポイントの一つです。まだ夢物語ですけど、できたらいいなという話があるんです。
今回、アドボカシーカフェということで、政策提言というところがあると思うんです。いろいろ見えてきた中で、これは自治体の政策や、国の政策、法律や制度の問題なんじゃないか、進めていったほう方がいいんじゃないか、みたいな提言があれば、この機会に聞きたいと思いました。お願いします。
等身大のロールモデルを可視化 “ゆる”議会など気楽に飛び込めるアイディアの提言を
荻上チキさん) 地域レベルだと、しばらくは女性議員の割合を増やすことは可能だと思います。各自治体でしっかりと女性候補者を立てることで、それは大きな政党が取り組むだけではなくて、市民セクターレベルでも横のつながりを増やしていくことによって、だんだん長期目標を立てて支援プロジェクトを進めていくことは可能だと思います。
ただ、国政レベルとなるとまた話が違って、地方選挙だと大選挙区モデルですけれども、国政選挙だと比例と小選挙の並立ということになっていて、こうした状況だと1強多弱になりやすい。つまり、特定の政党が強くて残りは弱いという状況を人為的に作っていくシステムです。なので、よほどのことがなければ政権交代が起きない。新しい候補者を擁立するということが起きず、国政政党にとっては女性候補者を立てることはとても難しい。いや、簡単でしょうとは思うけれども、現職に「次は女性候補を立てるから」と肩叩きするのはなかなか難しい状況があります。まだ議席を取ってない政党はチャレンジできるけど、与党が乗ってこないというのはあります。
その大きな枠組みの話は、選挙制度を変えるか、選挙のルールを変えるか。ルールというのは、例えばパリティーにするとか、比例の時は男女・男女の順番でやるとか、そうしたものを義務付けるかどうかという大きなものが必要となってくると思います。
ただ、各自治体レベルの話になれば、今起きている市民レベルでの出馬支援が各自治体に広がっていくことによって女性が増加することになるかと思います。そうしたら、この自治体ではまだ女性が足りませんとか、ここの自治体では何割しかいないということを可視化することによって変えていくことも、とりわけ必要になると思います。
調査報告書の前半の部分で、女性政治家や女性候補が増えることで一体どんな影響が出るのかという先行研究もまとめていて、女性の候補者が増えた段階で女性有権者の政治的議論が加速されるという研究があるんです。これは日本ではなくて海外です。それは、女性候補者だから当選しやすいから選ばれやすいということはないので、出馬した段階である意味フェアな競争に乗ることができるということになりますが、実際にその候補者が出てくることによって、ロールモデル化するということは間違いなくあると。
「ロールモデル」というと、すごい人みたいにイメージされるんですけれども、そうではなくて、より重要なのは「親しみがある」というか、「自分たちと変わらないんだな」という感覚です。つまり、自分は他の候補者や政治家などと比べてスーパーパワーを持ってないと思ったならば、その人には政治家としてのロールモデルになる資質が十分にあるということは言えるんです。「自分でもいけるんじゃん」とか「自分みたいな人がいるな」という感覚をより与えやすいのです。ハーバード出たとか、こういった資格を持ってますというようなことを言うのではなくて、地元でこういったアルバイトをしてました、パートをしてました、介護の現場で働いていましたと、そうしたことの積み重ねが一つのロールモデル、その役割や行為というものを行っていくモデルになっているという点もあるので。
メディアも、そうした身近な等身大のロールモデルを可視化していくということが必要だと思います。となると、次のアクションとしてはメディア・アプローチかなと思ってます。能條さんと一緒に記者会見をやった時もハラスメントにフォーカスされたけど、もうちょっと等身大の目に見える形での姿、葛藤、そして試験の悩みとか、家族とのコミュニケーションとか、ありのままの素の実態というものを伝えていくことによって、「意外とできるかも」みたいな感覚を伝えていく。
この政治活動が崇高なものだというのがまだ強固に存在する一方で、おどろおどろしく汚れた男性社会という両極端なイメージも存在するので、そうではなくて意外とダラダラできる地方政治もあるんだよというか、「意外と気楽に飛び込んでいいんだ」みたいな状況をつくるということが必要。となると、ダラダラできる選挙とかダラダラできる議会ということで、“ゆる議会”とか数時間議会とか数時間選挙とか、選挙活動そのものを制限していくとか、いろんなアイディアを提言していくのが必要なのかなと思います。
能條さん) 本当、そうなんですよね。今回、調査をやってみて分かったことの一つがやっぱりそう。ハラスメントが一番注目されやすくて、一個そういう分野がもう確立されてるから、それを記事にしとけば間違いないし、それが記者の人たちの課題・関心でもあるのかもしれないですけど、それだけじゃない面を私たちもうまく伝えていけるコミュニケーションを作っていきたいと思いました。ありがとうございます。
――グループ対話とグループ発表を経て、ゲストからのコメント――
※グループにゲストも加わり、グループの方々に感想や意見、ご質問を話し合っていただいた後、会場全体で共有するために印象に残ったことを各グループから発表いただき、ゲストからコメントをいただきました。
写真=左上から時計回り 西あきこさん,田中ふみえさん,稲永ともみさん,上村英明さん,能條桃子さん
上村英明さん) 今の話を聞いていて、一つ若干矛盾するかなと思ったのは、若い人たちにとって政治が遠いという一般的な面が一つあると思います。でも同時に、能條さんが言うように、またみなさんの話を聞くとポテンシャルはあるという見方もできます。FIFTYS PROJECTはそんなすれ違いそうな議論を現場でつなぐ機会だと思っています。あるいは、その矛盾をつなぐにはどうすればいいでしょうか、皆さんに聞けたら嬉しいなと思います。
能條桃子さん) 私は、「若者」と見ないことなのかなと思っています。「若い人」と言っても20代だけで人口が1250万人いて、当然興味ある人から無い人までいる。それは多分、どの年代も割合はちょっと違ったとしても大体同じで、60代の人にも政治に関心があって運動にずっと参加してる人から未だ1回も選挙行ったことがないという人もいるだろうし。だから、それは本当に世代関係なく同じなんじゃないかなと思います。
ただ、S NS一つとっても、生活とか背景一つでも世代によって全然違っていて、だから私たちは20代・30代を対象にすると区切って候補者を発掘して支援していくことを、今はやる意義として感じています。
もし私たちの活動を応援してくださる人がいたら、マンスリーサポーターになっていただけたら活動報告とか送らせてもらいます。私たちの活動もいろんな世代の人に応援してもらっているので参加していただけたら嬉しいなと思います。
もう一つは、今の政治的な議論の中で、若者対高齢者とか、現役世代対高齢者みたいな線を作られがちです。特に社会保障の分野で作られがちだと思うけど、実際考えてみると、もし介護や年金など高齢者に対する公助が減った結果、どこにしわ寄せが来るか。それはまず単身などで当たり前として想定されてない高齢者の方がより影響を受けるというのもありますけど、結局は公助が減れば、その分、家族が支えることになって、介護施設を使えないとすると女性の方が動員されてきたところを誰が負担するかという話になる。だから、ジェンダーの問題だし、それは年代関係なく、私たちの問題になる話だと思うんですよね。
なので、今のこの若者・対・高齢者みたいな議論を一回止めて、なんか連帯できるとこはどこだろうという議論を作っていけたら、そこに共感してくる人たちがまた増えてって、一緒に活動できる人も増えていくかもしれない。世代を超えた連携という意味で言うと、私はそういうことをしていけたらいいなあと思っていて、私たちから呼びかけていけるといいのかなと思っています。
稲永ともみさん) 私は今、今回当選した新人の女性3人で会派を組んでいます。まだ保守が強い小田原の議会構成の中では、多数決になるとどうしても負けてしまうけど、その中で(自分たちの実現したい社会のために)私も最年少の議員として意見を言えるのは大きいしありがたいなと思います。
一般質問でも奨学金の問題――私も奨学金の返還をまだしているので――など、今まで議会の中で議論されてこなかったようなことを伝えられる点では重要ですし、こういう当事者性を持った私たちが議会に入っていくことで、どういうふうに社会が変わっていくのかを示していけたらと思います。そのためには、私たち議員もそれぞれ頑張るけれど、市民の皆さんにも関心を持っていただいて、(孤立させないよう)応援していただけるとすごく力になります。(私たちの姿を見て)議員になりたいと思える人が増えていくといいなと思っていますので、引き続きよろしくお願いします。
たなかふみえさん) 今FIFTYS PROJECTができたことによって、若い世代で本当に諦めていて会議の場では参加もしなかったとか、できなかったとか、声をあげることを考えたこともなかったゾーンの人たちが、こうやって後押ししていただいて、議会にこんなに今回入ってきたことが、今、日本の民主主義、民主化の本当にきちんとした段階を踏めてるところだと思っています。
若い人たちが政治に遠いというのは、自分たちの意見や思いが世の中のこの国のルールには関与しないと思って諦めさせたところを、その中でも関心がある人たちが上げてくれたテーマがこの国の決定にとって重大なポイントだったんだということをロールモデルのように見せていくことがこれから始められるんじゃないかと思います。これから完成していけたらいいなと思います。今その一点にいると思います。
西あきこさん) 私自身が教員だったってことで、私の姿を教え子たちが見ている。ポスターに出ているとか、街頭に立っているとか。そういったこともロールモデルだと思っています。できるという姿を見せる。
あと、私が届けられないでいた声を、自分が議会に入ることで気づけたこともあります。自分が一般質問する時に、同世代の方が子連れで傍聴来てくださることで、今まではなかったことが起こる。議場で赤ちゃんが泣いちゃうという場面があり、来年度からは傍聴に来たお子さんの託児のための予算をつけようみたいな話になる。本当に具体的に目の前で起こっている現状があるから、自分が議会にいることで変わっていくことを見せていく。それが多分、若者の参画の可能性だと思います。
自分が選挙に出たことで、今までベテランの女性団体の方と私がつながって、先輩方とつながったということは、別に若者だけの話ではないし、若い女性だけの話ではないと思います。今後もそうやって活動はしていけたらと思っています。
上村さん) 皆さんのお話聞いて、希望が湧いてきたなと感じます。みんなが生きやすい社会にしたいということで、一人とか一つの団体とか一つの分野だけではなかなか前に進めない状況の中でも、いろんな人たちが少しずつでもネットワークを広げていけたらなと思っていて、こういう対話の場もそのきっかけになればと思っています。ありがとうございました。
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