ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)
助成発表フォーラム第6回
2018年1月9日、SJFはこのたび決定した第6回目の助成先2団体(しあわせなみだ、モザンビーク開発を考える市民の会)と、助成事業が進行中の第5回助成先3団体(子ども情報研究センター、わかもののまち静岡、メコン・ウォッチ)を迎えた助成発表フォーラムを東京都新宿区にて開催しました。
本質的な民主主義とは何かとの問いかけが発せられました。
障害児施設の子どもたちに「あなたたちは声を聴いてもらう権利があるんだよ」と伝えることから始まる活動が報告されました。言葉を発せられない子どもの表現からも想いを汲み取ろうとしています。
障がいがあるゆえに意思を明確に受け止めてもらえず性暴力被害の救済からもれてしまう日本の法制度を変えようとしている活動が発表されました。「私たちには暴力を選択しない力がある」と信じて活動をしています。
貧しいから開発しなければいけないと言われて国外からの「開発援助」を受け入れた結果かえって状況が悪化するなかで、現地住民たち自身が求めている発展とはどういうことかを住民が示せるよう支援する活動が発表されました。現地の人たちの主体化を助けています。
日本の海外開発援助による「経済成長」の陰で、環境破壊や人権侵害をうけている現地の人たちの声に耳を傾け、その人たちの声を政策実施者に届ける支援をしている活動が報告されました。
コミュニティー全ての人が対等に決定に参画・行動できる世の中を若者たちがつくる活動が報告されました。その地域に住む全ての若者の声を集めて若者たち自身が行動を起こしています。
民主主義は、みんなの意見を本当に聴いていく、みんなの意見を体現することを強く意識し続け、だれかの声に耳を傾け続けるというマインドを問い続けていくことが大切だとの思いが共有されました。
問題のいちばんの本質、ほとんどの人が通り過ぎてしまうような課題に現場で寄り添い、そこから社会提言や政策提案へと合意を形成していくアドボカシー活動団体が一堂に会しました。地べたでやっているからこそ得られる手応えをおたがい持ち寄りながら、これからのジャスティスにむかって一緒に積み上げていきたいとの言葉で締めくくられました。
――開会挨拶――
上村英明・SJF審査委員長) このソーシャル・ジャスティス・ファンドの具体的な可能性については助成先とともにあります。今日のお話を聴いていただければお分かりいただけるかと思います。しかしファンドは順風満帆ではありません。ファンドレイジングがなかなか広がらず、みなさんの期待に添うだけの助成を差し上げられないでいます。
それでも、われわれ市民社会に期待をし、この場が、助成発表の場であると同時に、みなさんと意見交換をし、暗い社会をどう明るくしていくのか希望を見出せる場にできればと思います。
――第5回助成事業 報告――
※助成先の報告の後、他の助成先とミニパネル対話を行いました。
◆公益社団法人 子ども情報研究センター;奥村仁美さん(理事)
「障害児施設 市民訪問アドボカシー事業――障害のある子どもたちの尊厳を守るために」
(コメンテータ=NPO法人しあわせなみだ 中野宏美さん・理事長)
※助成担当者=佐々木貴子
障害のある子どもたちの尊厳を守るために、子どもの声を聴いて、何ができるのかを考えている日々です。今日は、子ども情報研究センターのロゴの入っているTシャツを着てきました。これは子どもたちの視覚に訴えていく意味があるのです。子どもたちはこのTシャツを見ると、いつもの人たちが来たと安心するようです。
私たちは「子どもアドボカシー」を学ぶために、2016年から施設に聴き取りに行くなど、事前訪問をして準備してきました。でも私たちは、施設職員さんたちのために行っているわけではありません。子どもの思いのみに興味があります。もし子どもたちが施設を出たければ、その希望をかなえようとするでしょう。施設側と私たち側ではいろいろ違うことが出てきます。
事前訪問は、2017年の6月から始めました。訪問する前は、私たちはとても不安だったのです。障害を持つ子どもたちとコミュニケーションできるかなと。でも、子どもたちはものすごい関心で近づいてきてくれて、私たちの不安を吹き飛ばしてくれました。
いま訪問している障害児施設は、守秘の上で受け入れてくれていますが、在籍しているのは37名です。いろんな障害をもつ子どもたちが混ざっている現状です。以前は視覚障害の施設で、ほとんど見えない子どもたちも今は5人います。ほんとうに多様な場です。
子どもの権利とはどういうことか、職員説明会も重ね、一緒に学び合いながら準備を進めてきました。
子どもたちに、「あなたたちは意見を聴いてもらう権利があるんだよ」というワークショップを、大阪のあべのハルカスで開催しました。障害の具合や保護者の意向もあって、施設の子ども37名のうち行けたのは中学・高校生の子どもたち4名でしたが、行けてよかったと思っています。一緒にコンビニでお菓子を買って、お菓子パーティーをしましたら、「お菓子を買うのは6年ぶり」と言う子どもたちもいました。施設と違う顔が見えるな、本音は施設の外でないと言えないのかな、と思いました。
声を聴いてもらう権利があるんだよ
この事前訪問を経て、実際の訪問が始まりました。この一か所の障害児施設と契約を結んで、私たちは「市民アドボケイト」として、週1回、2人ペアで行っています。このプロジェクトはチームで取り組んでいて、いつもの2人だけでなく、大学の先生やいろんな立場の方が一緒に行くことがあります。子どもに視覚で訴えようと、市民アドボケイトのポスターを施設にはって、私たちが行きますよと知らせています。
だいたい2時間程度なのですが、それが限度かなと思うくらい、ものすごいパワーで子どもたちは向き合ってくれます。
言葉を発せない子どももたくさんいるなかで、どういうふうに遊びを展開していこうかな、お話を聴くってどういうことかなと戸惑います。日々行って一緒にすごすことで、この子のこの表現はこういう意味かな、いつもと様子が違うな何かあったのかな、と感じることが増えてきているように思います。
施設はあまり環境がよくありません。プレイルームも薄暗くて、30人くらいが入るときついくらいです。プレイルームは、絵本を置くと紙をちぎってしまうということで、何もない。隣接する部屋との窓ごしにテレビが放映されていて、それを見るしかない子どもたちは多いです。寝たりする個室もありますが、そこは昼間はあまり出入りすることはありません。2階に男子と女子の集う部屋もあります。時には少人数の子どもとお話をワークのお部屋ですることもあります。ただし、どのお部屋にも鍵がかかっていて、職員さんに開けてもらわなければならず、動きがとりにくいです。
何にもないところなので、私たちが行くと、着ぐるみが来たような感じで子どもたちが寄ってきてくれます。メモをとりたくても紙は破られますし、鉛筆は噛まれてしまいますが、楽しいです。いろんなツールをつかって、何とかコミュニケーションをとれないかと試行錯誤の日々です。
私たちはアドボケイトとして子どもの話を聴き、子どもの意見表明を受け止め、意見を発せない子どもには意見形成の支援をし、子どもの必要に応じて施設職員に子どもの気持ちを伝え、子どもの悩みが解決し願いが実現するように代弁や手助けします。さらに広く社会に、障害児の気持ちや願いを代弁し、こういった市民アドボケイト制度の必要性を政策提言していきたいと考えています。
スーパービジョンが大事で、いろんな方に話を聴いていただき、スーパーバイズしていただいてアドボケイトの活動をつないでいます。
「子ども委員」も募集しています。これは子どもの意見を聴く活動なので、子ども抜きに進めることはやめようと募集を始めました。
子ども委員をやりたい子たちに集まってもらう会議を開催しています。また、システム検討会を学期に一度のペースで開いており、そこにも子ども委員に参加してもらっています。
子ども委員が集まってきたので、2017年12月に子ども委員の就任式をしました。いま、3名の子どもが子ども委員をしてくれています。就任式では、厳粛な感じで委任状を受け取ってくれました。
分からないことはたくさんありますが、子どもから学ぶ、子どもに教えてもらう事ばかりです。子ども委員の存在が私たちにはとても心強いです。私たちアドボケイトが子どもの話を聴く人だということを、子ども委員から施設の子どもたちに伝えてもらうこともあります。私たちは子ども委員を頼りにしています。
イギリスのアドボケイトさんが、アドボケイトとは何かを子どもに説明することが、アドボケイトの一番の仕事だと言っていました。私たちは何者なのかということを施設の子どもたちに伝えるために、漫談をしたり、寸劇をしたり、紙芝居ふうにしたりして伝えながら施設を訪問している日々です。
施設を訪問すると、魂を吸い取られたような感じになり大変ですが、とっても楽しいです。いままで障害を持つ子どもの世界を知らなかったことは損してきたなと思っています。
佐々木=総合司会/SJF審査委員) 子ども情報研究センターは2年間かけてこの事業を進めていらっしゃいます。しあわせなみだの中野宏美さん、共通する課題があるのではないでしょうか。
中野宏美さん)しあわせなみだへの助成も障がい児者に関するものなので、とても参考になりました。
質問が2点あります。
「アドボカシー」の目的は、社会や組織に何らかの変化をもたらしていくことかと思います。この1年で、施設に入って、具体的に何か変化を感じたことがありますか。
2点目は、施設名を匿名にしなければならない理由は何でしょうか。アドボカシーを受け入れる施設はかなり先進的だと思いますし、アドボケイトを受け入れて変えていこうとする取り組みは素晴らしいのに、なぜあえて匿名にしなければいけないのでしょうか。
子どもはどう思っているのだろうと考える施設へ
奥村さん) 子どもの声を大きくして代弁したいという思いで訪問しています。そこにいたるまでに、まず子どもの声を聴く難しさをとても感じています。子ども自身の表現が障害によってまちまちなので、受け止め方を迷うことも多々あります。
はじめは施設に子どもの要望を伝えて施設環境がよくなればいいなと思っていたのですが、施設に日々行くなかで、施設が施設として在り続けることはどうなのだろうと思う部分もあります。
匿名の部分とも関わって来るのですが、とても悲しかったのは、施設を訪問している期間に、性的虐待で施設の職員さん一人が辞めることもありましたし、子ども委員やるといってくれていた男の子が性的トラブルの措置でどこかに行ってしまったこともありました。施設の職員さんたちも何とかしたいという思いで、私たち市民アドボケイトを受け入れてくれている側面もあります。施設内部がまだまだ落ち着かない状況ということもあり、アドボケイトさんに来てもらっているということを自信を持って表明できるまでもうしばらく伏せておきましょうということです。
アドボケイトとして関わって変わったことと言えば、子どもたちは楽しみにしていて笑顔が増えたと職員さんたちが言ってくれます。施設長さんに聞いてみると、職員が子どもを叱ることが減ったことや、いままで措置を考えるときに、大人の論理でしていたのが、子どもはどう思っているのだろうと考えさせられる意見が職員から出るようになったことをあげてくれました。
子ども自身の変化は、まだ分からずにはいるのですが、外に出られない子どもたちが多いので、まずこちらが入っていく、いろんな風を届けたいなと思っています。それによって、歌えるんだとか、絵で表現できるんだとか、そんなことを見せてくれている段階かなと思っています。
佐々木)ほんとうに難しい場に入っていらっしゃると思います。アドボケイトが施設に入って障害のある子どもたちの声を聴きとることは、今までなされていなかったことだと思います。これからモデル、事例をつくりながら、いろんな子どもたち、施設に広がっていくといいなと思います。
参加者)私はCAPというプログラムをやっています。あべのハルカスの近くにCAPセンタージャパンが引っ越してきたところです。CAPは、子どもへの暴力防止のプログラムで、子どもたちに「安心自信自由の権利があるんだよ。それが無くなった時は、暴力にあった時で、自分の権利の侵害をされている時なんだよ」と子どもたちに伝えています。知的障害のある子どもたちに対するプログラムも進めているところです。
提案として、子どもたちとアドボケイトしていくなかで言葉ではなかなか伝えられない子どもたちはたくさんいらっしゃると思うので、「安心あるかな、自信あるかな、自由はどうかな」というのをツールにしていただけると嬉しいなと思います。
◆NPO法人 わかもののまち静岡;小野航汰さん(副代表理事)
「市民としての若者の影響力を高める『日本版ローカルユースカウンシル』の開発と普及」
(コメンテータ=NPO法人僕らの一歩が日本を変える。 今井郁弥さん・理事/広報局長)
※助成担当者=大河内秀人
若者の参加の仕組み、枠組みとしての「ローカルユースカウンシル」の提案ということで、ハンドブックの作成にあたっています。
<わかもののまち静岡>のミッションは、「静岡を世界で一番、若者に優しいまちにします」ということです。
「ユース・カウンシル」、「ユース・パーリアメント」、「子ども議会」、「わかもの議会」などいろんなフレーズにみなさん触れる機会が増えてきていると思いますし、実際、日本のなかで数多くの動きが起きていると思います。
地域に住むすべての若者の声を集めて自分たちでアクション
僕たちが目指している「ローカルユースカウンシル」とは何でしょう。
ローカルユースカウンシルとは「その地域に住む若者たちの声を集め、地域の若者をエンパワメントし、地域を変えるための協議体」と定義しています。運営はもちろん若者で行います。ポイントは一部の若者のためのものではなく、その地域に住むすべての若者の声を集めて、すべての若者のための協議体であることです。影響力を持つために意見を伝えることはもちろんですが、自分たちで実際にアクションをとっていくことが大きなと特長となっています。
海外の事例として、スウェーデンのヨーテボリ若者協議会(ユースカウンシル)を紹介します。101人の若者で構成されていて、若者自身が自分の身の回りの生活について考えて地域に影響を与えることができます。具体的には、地域選挙における16歳選挙権の導入であったり、若者の公共交通機関の時間限定の無償利用の実現だったり、はたまた真面目なことに限らず、ウォータスライド祭りをやりたいという若者の声を地域で実現したりです。若者協議会は民営だったり公営だったりしますが、ヨーテボリ若者協議会は自治体から毎年約350万円の予算がつきます。
若者から見える今の社会はどんな感覚でしょうか。「日本の社会は明るいと思うか」という2015年の調査では、「明るい」と答えた割合は約3割でした。にもかかわらず、「よりよくするために自分が関与したい」と答えた割合は約4割にとどまっています。静岡の投票行動のデータでは、2017年の静岡市議会議員選挙と静岡県知事選挙では10代・20代の投票率が20%台と低くなっています。
具体的にこのように自分が参画して変えていこう、自分が意見を表明して社会を変えていきたいといった意識は低い数値になっています。一方で権利を上手く仕えていないというご指摘もあると思いますが、実際に若者たちは社会の中でマイノリティ化しており、自分が意見を言ったところで社会は変わらないというような社会に対する閉塞感も抱えているのが現状だと考えています。
また、若者の人口流出が静岡市内でとても問題になっています。
若者の政治離れというフレーズがニュースで触れられると思いますが、ぼくたちの感覚ですと、政治が若者離れしているのではないかと思います。政治は子ども・若者の本当の関心に向き合っているのか、あるいは答えを出せているのか。
ドイツでは青少年担当の方がいて、僕たちの団体の代表の土肥がお話をうかがいました。青年期はその後の人間形成に大きな影響を与える時期であり、特殊なニーズにあわせたアプローチが必要であると言われています。いままでの日本のアプローチは、児童・子どもに対する教育支援や、成人であればニート支援や引きこもり支援など、縦割りの対策がとられてきたと思います。じっさいには、児童期から成人期に移行するにあたってグラデーションがあって、すぱっと切れるものではありません。その青年期独特のニーズに対応していくことが大切だというお話をうかがいました。
では、その青年期のニーズは誰がわかっているのかといえば、若者自身だというのが私たちの見解です。若者の専門家は若者です。
コミュニティー全ての人が対等に決定に参画・行動できる世の中を若者たちで進める
これからハンドブックをリリースしていくにあたって、みなさんと共有したい前提があります。
若者をいかに市民として育てていくかという教育のための仕組みではなく、若者自身が参画するための仕組みであることです。教育の対象だった若者が、自分自身が意見を持って参画していくように、社会と若者の意識変換を目指していきたいと思っています。
本事業の成果物として、日本でいかにローカルユースカウンシルという地域協議体をいかに日本でつくっていくか、というハンドブックを作成しています。いままで1年くらい検討会議を重ねてきました。今年の3月くらいまでにハンドブックを完成させて、7月から11月くらいに全国リリースフォーラムを開催する予定です。
このフォーラムなどを通して、日本各地の実践者のみなさまとお話しながら、ローカルユースカウンシルの仕組みを根付かせて行ければと考えています。
ハンドブック作成にあたっては、全体アドバイザーとして宮本みち子さん(放送大学副学長/内閣府子ども・若者評価・点検委員会座長)、検討会議委員として阿部芳絵さん(工学院大学助教授)・川中大輔さん(シチズンシップ共育企画代表)・両角達平さん(ストックホルム大学修士課程/NPO法人Rights理事)に意見をいただいています。
ユースカウンシル実現のための勉強会を、今年の12月に、京都市のユースサービス協会からお招きいただいて実施し、代表の土肥と両角達平さんが講演をさせていただきました。
そのなかであらためて、「若者の影響力とは何だろう」と話し合いました。
若者だけが参画すればいいのではありません。コミュニティー全ての人が対等に決定に参画できたり行動できたりする世の中を、若者たちで進めていこうとしています。
「ピーター・パン世界からの脱出」というキーワードを使っています。ネバーランドで社会参画を進めていくことを学んでも現実世界に入った時にギャップが生じてしまう。やはり現実の社会で一緒に一市民として参画していく仕組みとして、このローカルユースカウンシルを日本全国に実現できればとの思いで事業を進めさせていただければと思います。
佐々木) 一昨年前に助成させていただいたNPO法人、僕らの一歩が日本を変える。の今井さんにコメントいただければと思います。
被支援者から支援者になっていくハシゴを
今井郁弥さん) NPO法人僕らの一歩が日本を変える。で理事を務めております、今井と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。
わかもののまち静岡さんの活動は、本当に羨ましいなと感じています。私はいま、長崎県の大村市という市との事業の責任者をしていますが、なぜ東京の私たちに依頼が来たかというと、まだ自治体内に若者たちの声をすくい上げようとして立ち上がる方が少ないからなんですね。自走できる環境が整っていればいいんですが、自治体内の資源だけで完結させるのはとても難しいなと感じます。その一方で、静岡のみなさん、学生たちが自分たちがやっていかなければいけないと主権者意識をもって活動していらっしゃるのを見て、とても羨ましいなと感じた次第です。ただそのモデルをアドボカシーとして全国に広げていくときに、小野さんももしかしたら別のキャリアを歩まれたりと、いまの組織が勝手に回っていく、自走していく仕組みが必要になっていくと思います。自走していく仕組みを作ることについて、いま考えているアイディアなどがあれば教えてください。
小野さん)自走していく仕組みは、僕たちも頭の痛いことです。ヨーロッパですと、自走していく仕組みがあります。まずきちんと制度化されていて、ユースカウンシルが自分たちとしても国としてもきちんと認識されていてポジションが確立されています。そのなかで、年度で役員が交代するときも、次は誰がやるのか、次はどんなことをやらなければならないのかという計画が整理されています。これがヨーロッパのうらやましいところです。
では、いま日本でどんな仕組みができるか。現状では、若者参画というときに、ユースコーディネータといわれる人たちが若者をきちんと見守っていって、次の代表者、代表者として若者の声を集めていく若者を育てていくことが必要になってくると思います。
静岡のユースセンターで僕たちは、若者の放課後支援施設を運営させていただいています。そのなかで、最初は利用者だったけれども今度はボランティアとして運営する側に回りたいという若者も出てきました。被支援者から支援者になっていくハシゴをつくっていくことが大事だと思っています。
今井さん)海外から日本に何かを導入するには、いわゆるローカライズが必要だと思います。そのさい、どのような点を変えるのか、どのようなことを意識しているのか教えていただきたいです。
小野さん)それは、ハンドブックを作るにあたって悩んだところです。制度や民主主義の意識の部分で、ヨーロッパのものを日本にそのまま持ってこられないと考えています。
「日本でローカルユースカウンシルを立ち上げる若者はどんな若者だろう」という議論を重ねています。現状では、ちょっと意識が高いといわれるような人たちでないと市民権や若者権利に視点が行かないというのが課題です。生徒会に興味を持っている子たちが地域に出たときに、いかに民主主義というキーワードをもって地域協議体に興味を持っていけるかという意識を持ってハンドブックを書いたつもりです。
ヨーロッパのように誰もが参画できるユースカウンシルになるまでにはもう一歩先の未来になるので、まずは何か活動していたり、何か問題意識をもっているような子どもが、他の問題意識をもった子どもたちとつながる仕組みがリアリティがあるのかなと考えています。
◆NPO法人 メコン・ウォッチ;木口由香さん(事務局長)
「日本の公的資金が格差社会を生まないために――ミャンマーで日本が関与する大規模開発事業に関するアドボカシー活動」
(コメンテータ=モザンビーク開発を考える市民の会 渡辺直子さん・アドボカシー担当)
※助成担当者=上村英明
メコン・ウォッチは東南アジアのメコン川流域の国々で環境社会問題の監視をするNGOとして1993年から活動を始めました。当初はNGO間のネットワーク団体で、今のような形態で活動を始めたのは99年ごろからです。
日本の援助が現地の人々の暮らしに悪影響を及ぼさないようにアドボカシー活動をしています。アドボカシーをするためには現地での調査や政策分析など、現地の活動を重視しており、現場を持っているNGOです。
メコン川の流域であるタイ・ミャンマー・ベトナム・ラオス・カンボジア・中国の一部は、伝統的に日本の影響が歴史的にも経済的にも大きかった場所です。今は見る影もなく影響力が落ちていて、中国の影響力のほうが大きくなっていますが。でも日本(政府)はまだそれに負けないようにと、援助をしています。
政府開発援助(ODA)がどういう流れであったかを思い出してください。1980年代に盛んに行われた開発で様々な不正や問題が指摘され、その後に日本で開発に関する新しい制度が作られたのですが、それにもかかわらずいまだに問題が起きています。
最近は、中国との競争が強まって、日本の経済活動のための援助にシフトしています。過去に起きた問題が再び起きているのが現状です。今回あらたにSJFの助成対象になったモザンビークのケースもそうだと思います。
日本の経済活動のための開発援助
とくにミャンマーのケースは、日本政府が公的資金を呼び水にして民間企業を入れて、大規模に経済特区とその周辺のインフラを開発し、ミャンマーを経済的に発展させようというものです。
(日本が関係する)経済特区はいま2つ動いており、ヤンゴンの近くにあるティラワと、隣のタイに近い南部のダウェイで計画され、日本の官民が深く関わっています。
ティラワはすでに本格的に事業が始まっていて、最初の住民移転も終わり、いま第2期の開発事業が進んでいます。日本の関わり方は複雑なスキームがあります。公的資金で調査したり、日本企業が出資しやすいようにリスク保障のために貿易保険を掛けたり、日本の大手3商社が政府のスキームにのって現地企業と企業体をつくって開発を進めたりしています。そこにさらに、経済特区にできた工業団地に進出していく企業が加わります。
ダウェイでは、タイが先行して、イタリアン・タイ・ディベロップメント社が開発権を取得して開発を進めたのですが、非常にずさんな進め方をしてたくさんの人権侵害や環境破壊が起きています。
現在、国際協力銀行(JBIC)の「海外展開支援出資ファシリティ」――日本企業が海外に進出する際に出資や融資をして助ける公的なお金を動かす銀行――で出資する形で日本がこの事業に参画し始めました。その前にも、経済産業省が調査を行ったり、国際協力機構(JICA)が経済特別区につながる道路の建設の調査を行ったりしています。現在も、ダウェイ経済特別区がふくまれるタニンダーリという行政単位全体の経済開発の青写真を作る調査をJICAが行っています。メコン・ウォッチはJICAに「タニンダーリ地域開発計画にかかる情報収集・確認調査について」という要請書を提出しました。ご関心のある方は、ウェブに情報があるのでご覧いただければと思います。
日本の開発スタイルは本当に良いものか――海外経済特区開発の陰で虐げられる現地住民
そもそもJICAやJBICには、環境社会をきちんと守って事業を行うためのガイドラインが規定されていて、これを守らなければいけないと規定されています。それが守られていない場合には外部から指摘することができますので、メコン・ウォッチはこの「環境社会配慮ガイドライン」を活用して、問題解決や人権侵害を防ぐ活動を展開しています。こういった問題が繰り返し起きる根源は、「日本はいいモデルだ」という考えがあり、それを伝えるため海外で経済開発を進めているからではないかと思います。具体的な活動にはいろいろな調査や、有識者への働きかけ、国会議員やメディアへの情報提供、キャンペーン等があります。しかし、相手が大きいものなので成果が見えにくい。活動を続けていますが、現地住民が抱えている状況がものすごく良くなっているわけではないと、残念ながら報告しなければなりません。情報発信、いろいろな機関への働きかけを続けていきます。
ティラワで最初に移転した方々には、借金返済ができず追い出される形になった方や、明日食べるものを買うのにも苦労している人もいます。
信じられないくらい大きな規模で動いている経済特区の開発の影で、もともとそこに住んでいた人たちが虐げられていることが未だに起きています。地道に調べて、広く伝えていく活動を続けていますが、たくさんのアクターが関わり、問題を把握することも難しく、解決の糸口も見つけにくいという状況です。
いま、世界的に、ビジネスの中での人権配慮が注目され、「ビジネスと人権の指導原則」などが作られているのですが、実際の現場ではいろいろな問題がまだ起きています。この動きがどう進んでいくのかに関心を持っています。
日本はいろいろな意味で行き詰っていると考えています。日本の経済開発の方向性を考えようと何度かセミナーを開催してはいるのですが、議論を広げることが課題になっています。
また、こういった活動を海外からの助成金等で何とか続けていますが、いつまで続けられるかも課題です。
相手(開発)側は長く続けている。ダウェイにいたっては、本格的に開発が進むのは10年・20年先になる可能性もあります。その間にいろんなことが動いていく中、日本の市民としてそれをどうやってフォローしていけるかも課題になっています。
佐々木) 日本の市民はなかなか我が事としてとらえられない問題かもしれませんが、奪うばかりの開発はもう終わりにしなければいけないところまで来ているのではないでしょうか。モザンビークの開発問題にとりくんでいる渡辺さんいかがでしょうか。
渡辺直子さん) 今のお話をきくと、木口さんが提起された最後の課題の部分にもつながるのですが、投資のための援助とか、貿易のための援助とか――私は援助は人のためだと思っていますが――、援助のありようが変わってきているなかで、でも、政府など実施者側は「現地の人に良かれと思ってやっている」という論理を上手く建ててきます。
その「上手い論理」のなかで問題だと自分が考えるのは、現地の人が客体化されていることです。変わる対象として描かれている。彼らがいま実践していることや生きているなかで発展をどう考えていくか、という発想に全くならない。そこをどういう活動につなげて変えていけるのかなと考えています。
活動がいつまで続けられるかという課題には、日本からサポートを続けていくだけでなく、「アドボカシー」といった時に、被害を受ける側、あるいは開発の対象とされてしまう方自身の運動の展開――「主権を取り戻す」というお話が先ほどありましたが――、主権者・当事者としてどう関わっていけるかが一番のキーになってくる。そこが開発政策に生かされてくる、人権を語る上で生かされてくると、大きくいろんなことが変わると思います。
だけど、そこが一番難しくて、アフリカでは単純に、貧しいから何も知らない、だから自分たちが考えてあげるという形で語られてしまう。それが繰り返されている。そういった問題に関して、この「ネットワークSEZウォッチ」がどう取り組むのかなと思ったので、コメントをいただければと思います。
木口さん)ミャンマーは(長年軍事政権下にあり)鎖国のような状態だったのに、地域の人たちの力がとても強いです。自分たちの問題への対応力や発言力は意外に強くて、ミャンマーに入った時に驚きました。日本に何度かお招きしてお話しいただきましたが、お話が上手くきちんと問題をとらえて相手に説明できる力が高い。
それは、援助されていなかったからではないかと逆説的に思います。NGOが入る弊害はやはりあります。外からエンパワーメント等いろんなことが持ちこまれると、それは問題解決に結びつくことはありますが、渡辺さんがおっしゃったように、内在的にその人たちの力を伸ばすことを、疎外してしまう可能性もあるのではないかと思います。
個人的には開発自体を疑った方がよいと思っています。渡辺さんが何度も外務省等で官僚の方と折衝していらっしゃっているのを見ていますが、私たちも経験していることですが、話が噛み合わないのですね。ぜんぜん違う世界の話をしているような感じです。
そもそも何で開発されなければならないのか。「代わりに考えてあげる」という論理がまかり通っている。地元の人たちはJICAが調査していることすら知らされていない。それは例えば、東京都の将来を考えるのに、北欧あたりの国から人が来て勝手に青写真を描くようなものではないでしょうか。でも、いわゆる途上国に対しては(それが)当たり前だと言っている、そのこと自体を疑わなければいけないと思う。
――第6回助成事業 発表――
◇公益財団法人庭野平和財団 吉田達也さんよりご挨拶
(庭野平和財団からは、助成テーマ「いのちの無差別性に関する取り組み~あらゆるいのちが尊ばれる社会をめざして」を指定したご寄附いただき、SJF審査委員会は公募によりNPO法人しあわせなみだに助成を決定いたしました)
この度「いのちの無差別性に関する取り組み~あらゆるいのちが尊ばれる社会をめざして~」というテーマに対し、当財団から助成する機会をいただきました。
ソーシャル・ジャスティス基金につきまして、アドボカシーカフェ等を通じて助成先の方と一緒に歩んでいる姿を拝見し、助成する側のあるべき姿を教えてくださる素晴らしい活動であると以前から興味を抱いていました。
私ども庭野平和財団も助成事業を約40年続けてきましたが、目指している価値観を明確に打ち出し、その領域で助成実績を積み上げていくことはできないかと考えていたところ、まちぽっとの奥田事務局長さんから、「助成をする者同士のコラボレーションをもって、より効果的に資金助成ができたら理想的ですよね」とのお話があり、強く共感したのが今回のきっかけとなりました。
さて、昨今の社会は、座間や寝屋川の事件などが象徴するように、自分の命の尊さを感じにくく、目の前の人のことを大事にしづらくなっているのではないかと感じます。そのような状況にあって、障害児者に対する性暴力に関して、大変素晴らしい問題提起されているNPO法人しあわせなみださんが採択されることになりました。
最近ハリウッドでは、今まで泣き寝入りしてきたセクハラ被害者たちが声を上げたことがきっかけとなり、「#Metoo」、「#timesup」、「#HowIWillChange」といった世界的な広がりとなっています。言葉を発することができる、意思を明確に打ち出せる人たちは、勇気をもって立ち上がることで大きなうねりを作り出すことができる一方、障害をお持ちの方々は、声を上げることすら出来ず、周囲に気付かれない状況にあります。私自身恥ずかしながらこうした問題に対して無知であったのだと、しあわせなみだの申請書を通じて気付かされました。
障害児者への性暴力の問題について、2年後(2020年6月)の刑法性犯罪の見直しにむけて、世間の関心が少しでも高まるよう、問題を学びながらこれからもしあわせなみだの皆さんの取り組みを注視していきたいと考えております。
◆NPO法人 しあわせなみだ;中野宏美さん(理事長)
「『障がい児者への性暴力』に関するアドボカシー事業」
(コメンテータ=子ども情報研究センター 奥村仁美さん)
※助成担当者=大河内秀人
庭野平和財団の吉田様からお言葉をいただいて、また1年間頑張っていこうとの思いを新たにしたところでございます。
しあわせなみだというNPO法人は2009年に設立しました。性暴力撲滅に向けた啓発活動を続けてきました。この活動を通じて大きな課題であると感じているのが、障がいのある人への性暴力です。
障がい児者への性暴力 加害者は把握されにくく、犯罪を立証する困難を配慮しない法制度
日本では、障がい児者を主な対象とした性暴力の実態は、障害者虐待防止法で把握をしている程度です。この法律で把握できるのは、加害者が、障害者の施設で直接支援をしている人と、障害者を介護している家族等に限定されています。しかし、内閣府「男女間における暴力に関する調査」(平成26年度)によると、異性から無理やり性交された経験のある女性に加害者を尋ねたところ、その多くは交際相手・配偶者・職場関係者で、障害者虐待防止法の対象にはなりません。ほとんどの障がい児者への性暴力は明らかにならないのが日本の現状になっています。
海外では、障がいが無い、いわゆる健常な女性より、障がいのある女性のほうが性暴力を受けるリスクが高いことが明らかになっています。そして、障がいのある男性は健常な女性よりも性暴力を受けるリスクが高いということが分かっています。それだけ、障がいがあるということが性暴力を受けるリスクが高いことが分かります。日本では全くこういった調査は行われていません。
2017年の7月に改正刑法が施行されて、性犯罪に関する規定も改正されましたが、残念ながら、障がい児者への性暴力を罪に問うことは困難なままです。なぜなら、「暴行脅迫」を立証しなければならないからです。障がいのある方がどういうふうに抵抗するかというと、たとえば目線を動かすとか、手を少し動かすとか、独特の表現方法で抵抗するわけです。また、発達障害・精神障害・知的障害の方ですと、その場の雰囲気を判断するのは非常に難しいこともあります。こうした状況では、「暴行脅迫」を裁判で立証することは非常に難しくなります。
今回の法律改正のなかで、「2020年の6月に必要があれば見直します」という一文が入っています。何とかして2020年に、「障がいのある性犯罪被害者」の概念を盛り込みたいという私たちの活動が、今回助成をいただくアドボカシー事業になります。
障がいがあるからこそ遭ってしまう暴力がある 2020年に刑法改正を
どうして私がこの事業が必要だと思ったのかを説明します。
私は学生時代から障がい児者に関わるボランティアをやってきて、そのなかで性暴力を経験した方の話を聞く機会がありました。たとえば家族から性的虐待を受けた人、施設の職員から介護のたびに体を触れた人、スカウトで声をかけられて騙されて性産業で働かされた人等がいました。障がいがあるために、言いくるめられて性暴力にあって、誰にも相談できずに、また相談しても信じてもらえない人たちがたくさんいました。
障がいがあるからこそ遭ってしまう暴力があります。だからこそ私は性暴力を処罰する規定を定める刑法性犯罪、この性犯罪に、何としても2020年に「被害者としての障がい児者」という概念を盛り込みたいと、この助成事業を申請しました。
この事業で今回行うのは主に3つになります。
1点目が、障がい児者団体を対象とした性暴力に関する質的・量的調査です。
2点目が、この調査に基づいて、国会議員会館で院内集会を開催して調査結果を報告し、政策を提言することです。また国会議員や厚生労働省・法務省職員にロビイングをして、この問題に対する理解を深めていただきます。
3点目が、調査結果を市民に公開して、他の団体と協力して市民を対象としたイベントを開催することです。
こうして、障がい児者が性暴力に遭っている事実を知っていただき、刑法を改正する必要があるという社会の動きをつくっていきたいと思います。
2020年にむけて、みなさんと一緒に歩んでいければと思います。
奥村仁美さん) まず障害児者さんの性暴力が調査で明らかになっていないというところが法律以前の問題なのかなと感じました。私たちの活動もそうなのですが、子どもの声を聴いてこそ政策提言や法律づくりに関わっていかないとと考えています。
当事者と出会い、当事者の声を聴かせてもらう試みについて教えていただけますか。
それから、記録に残すことが大事になることは私たちも感じていますが、「記録は暴力だ」とある人から言われたこともあり、どう記録させていただけばよいのか悩んでいます。あなたのことを記録させていただいて、こう伝えますよ、こう提言に生かしたいたいですと当事者の方にどのように伝えて一緒に解決していったらよいとお考えでしょうか。
中野さん) 活動を継続してきたなかで、障がいがあって性暴力を経験した方とご縁をいただいてきました。その中には、今回の調査やロビイングにぜひ協力したいという方がいらっしゃいます。ですから、活動を継続してくるなかでの信頼関係が土台になってくると思います。
記録を残すことについては、数値的なデータ――誰が言ったか分からない形――なら抵抗がない方はいらっしゃいます。でもそれだけでは実体が十分に分からないので、質的なデータ――ひとり一人の個別の詳細なお話――も重要だと思っています。性暴力に関しては、市民が思っているより圧倒的に多くの事件が起きていることも重要ですが、ひとつ一つの詳細な事例が、法律を変えようという動きになっていくのかなと思います。これまで障がい児者の調査を行ってきた大学の先生に一緒にやっていただいて、守秘義務や記録の残し方についてアドバイスをいただいて、準備を進めています。
◆モザンビーク開発を考える市民の会;渡辺直子さん(アドボカシー担当)
「援助・投資によるインジャスティス(不正義/不公正)を乗り越える
~3カ国市民社会連携を通じたアドボカシー活動~」
(コメンテータ=メコン・ウォッチ 木口由香さん)
※助成担当者=上村英明
表紙の写真(上掲)は企業の土地収奪にあった土地です。ここにはかつて墓があって、畑があって、森があって、自然豊かな暮らしがありました。しかし「開発」の名のもとに入ってきた企業によって強制的に土地が奪われて更地にされ、大豆を生産する海外のアグリビジネス企業の土地となっています。今日は詳しく触れられませんが、大豆ということで、土地収奪の問題が私たち日本の食生活とも密接に関わっています。
私たちの団体は2012年に、アフリカの農民らから、日本のODA(政府開発援助)による事業が自分たちは何も知らされないまま物事が進んでいる、しかし自分たちの土地を奪う可能性があるのではないかと懸念しているので調べてほしいと協力要請があって活動を開始しました。
この事業は、ブラジル・日本・モザンビークという3カ国の事業で、現地の農民の方々の要請に応える形で、モザンビークの市民社会組織・日本の私たち・ブラジルの方たちと一緒に市民として活動をしています。
日本の開発援助 農民たちの実情にそった発展とは
モザンビークにこの5年間で10回ほど訪問し、農民と一緒に調査をしています。
土地収奪でどういう事が起きているのか、その背後には何があるのか、農民の方がどういうことを考えているのか、暮らしにどういう影響があるのか、農民の方と一緒に農民に話を聴きに行って現場から見えてくることを調査しています。そこから見えてきた事実を生かして活動を行っています。それは一般市民にむけた発信や、政策提言にも使います。あるいは、報告書などで広く読んでいただける形にしています。また援助政策の在り方だけを変えるのではなく、開発じたいをどう考えるのか。開発において対象=客体とされる人たちの主権、主体性をどう考えるのか。そこから考えたいと、現地から見えてきたことを学会などで農民と一緒に発表しています。
もう一つ、現地で起きている人権侵害――さきほど木口さんの発表にあったティラワのように、すでに事業が始まり、現地で具体的にこうしたから被害がこのように起きたというように、まだ直接的に目で見える状況ではありませんが――、進め方や事業骨子の策定プロセスのなかで政府による人権侵害があり、そこの実態を明らかにしていくために、個人個人の情報開示請求権を使って公文書の情報公開請求を行っています。一方で、抵抗の声をあげ続けるだけでは変わらないということで、現地の農民から要請を数年前に受け、農民たちの実情に基づいた発展とは何なのかを実地で考えるための調査を一緒に行っています。その一環として、日本の農民との交流も行っています。
植民地時代さながらの開発モデル 土地を奪われる住民 開発に抵抗し難民に
私たちが活動しているのは、アフリカ南部のモザンビークという国で、南アフリカの北側にある細長い国です。面積が日本の約2倍、人口が約2200万人です。
その北部、タンザニア国境沿いを含む5州で「ナカラ回廊経済開発」がJICAを中心として行われています。コンセプトは、港湾・鉄道整備というインフラ開発を行って、内陸部の石炭開発・沿岸部の天然ガス開発、内陸部で農業開発・森林開発を行い、それを外で出していくという植民地時代さながらの開発モデルで、回廊開発は現在アジア・アフリカで広く行われています。
この被害がすでに見えてきています。例えば炭鉱ですと、そのために州内の土地のほとんどの権利が企業に渡されています。それにより人びとは土地を奪われますが、抵抗する住民が身体的虐待や脅迫などの弾圧を受けている。また、農業開発や森林開発により土地が奪われていますし、鉄道整備によっても住民の強制移住が生じて、土地が奪われています。線路敷設の仕方が悪く、事故に遭う人もいます。こうした状況は援助の「先祖がえり」のようで、今あらためて「開発」の名のもとにこうした被害が生じています。
日本の市民として緊急に対応すべき被害があります。例えば、炭鉱開発には三井物産や新日鉄住金が関わっており、出資参画する企業が土地の利権をとり、住民の土地が奪われています。これら「開発」の名のもとに進出する日本企業は、日本貿易保険から公的資金による「貿易保険」が付与され、リスクを軽減してもらったり、同様にJBICから融資をもらう、JICAがインフラ整備のお膳立てをするなど、官民連携の名のもとに公的資金、すなわち我々の税金が投じられて、この地域の開発に進出しています。それにより土地を奪われている方々がいて、抵抗すると迫害されているのです。
モザンビークはいま政治状況も悪化しており、開発に抵抗する方々が「野党」とレッテルを貼られ、攻撃されるなど、状況が悪化しています。一昨年は、そうして「野党をかくまった」とされた地域の住民が政府の特殊部隊により焼き討ちにあい、難民が1万人を超える事態になり、現地では「内戦状態にある」とまで言われていました。開発のあり方と現地の治安情勢は結びついている。私たちの税金の使われ方もつながっているということです。
農業開発事業などは、「日伯(ブラジル)協力50年、日伯連携対アフリカ支援20年」ということで、3カ国(日本・ブラジル・モザンビーク)が連携していきますよとJICAは打ち出して行っています。ブラジルは南南協力の先行経験者として、日本は伝統的なドナー(資金提供者)として、モザンビークは投資や援助の対象国としての連携です。
これに対して、この3カ国の市民も連携して政策提言を行っています。
政府と対話する場づくり 現地の人たちの主体化へ
政府とどのように協議するのか、農民にとってその声が反映される「対話」とはどういう形なのか、ずっと苦慮していきました。現地の農民や市民社会らが政府の設定した場に行くと、取り込まれる、そこでの言質がねじれた形で既成事実化されることが起きたため、現地では農民・市民社会が政府と対話できない状況です。
これに対し、これまでモザンビークとブラジルで「3カ国民衆会議」を開いて、私たち市民の側が設定した場に政府に来てくださいということで対話の場をつくってきました。そこで3カ国の市民がともに戦略を立てて、それぞれの国に戻って提言に生かしたり、国際社会に訴えていくために何ができるかを考える場とし、そこでは女性も大きな役割を果たしてきました。
これら実績を受けて助成事業で何を行いたいか。私たちの助成事業の最上位目標は、過酷な現状を転換しようと立ち上がった小農(小規模農家)を支えることです。
活動における課題は、日本をふくむ3カ国すべてでガバナンス状況が悪化していることです。日本でも、沖縄や原発の問題など、同じ構造下で起きていて、いろいろな問題がつなってきています。例えば、報道の自由インデックスでは、180カ国中、日本は72位、モザンビークは93位、ブラジルは103位と低い。市民社会スペースがどんどん縮小している点で共通しています。
そんな状況で何ができるのか。目的としては、連携をより効果的なものに発展させ、3カ国以外の国際社会にも訴えていけるものにしたいと考えている。またこれまでの経験や知見を3カ国や世界に還元することで、公正な社会をつくっていくことに寄与したいと考えています。
現在、国連人権理事会で、「小農と農村で働く人々の権利に関する国連宣言」が議論されています。この議論において日本政府は「これまで様々に人権が規定されているなかで新たに加える必要はないのではないか」と、国際社会に対して非常に恥ずかしいことを発言していますが、これら議論に寄与していければと考えています。
具体的には、これまで通り、小農運動支援を続け、3カ国共同調査を行い、政策転換のための対話と、市民社会の連携強化と発信と、国際ディスコース転換があります。
この中で、とくに「支援対象」とされる農民らの客体化からの脱却と主体化をどう実施していくかがポイントになります。本助成事業においては、開発政策の策定・実施者である日本で民衆会議を開いてほしいと、モザンビーク現地から声があがっており、今度は東京で開く予定で、ここにご支援を頂きたいと考えています。モザンビーク、そしてブラジルでいったい何が起きているかを日本市民に伝えて考えてほしいと現地の方たちは言っていますので、そういう場を日本で設け、10月から12月の間に現地の方を招へいする予定です。
農業開発支援で先行したブラジル 自分たちが求めている発展を示せる人たち
木口由香さん) ブラジルの方たちは具体的にはどういう取り組みをされていて、どんな方たちが関わっているのでしょうか。また、土地収奪というものはどういうものか簡単にご説明いただけますか。
コメントとしては、日本でイベントをやるのは大事なのですが、やるとメディアにいくつかカバーされて、その時はちょっと話題になるのですが、もともと追いかけている人の他の人に広げ、伝えていくにはどうしたらいいのか、会場のみなさんからご意見をうかがいたいです。
渡辺さん) ナカラ回廊開発の農業開発支援(プロサバンナ事業)のもとになったのが、ブラジルでJICAが1970年代に行った農業開発支援・セラード開発です。それがブラジルを穀倉地帯に変えたということでJICAは「成功」事例として謳っているのですが、実際には、そこで元もと暮らしていた人たちが土地を奪われていたり、自然環境が破壊されていることがNGOの報告等で明らかになっています。
ブラジルは自然豊かなところで、もともと日本以外からも、そういう大規模な開発が入ってきており、先住民の方の権利運動と相まって、住民運動や権利運動、抵抗運動がとても強い。その分、被害も多いのですが、阻止している部分も多いです。また開発が入ってきた時に、自分たちが求めている発展とはこうではないということを、オルタナティブを、自分たちの実情に基づいて、考えたことを示せる人たちが多くいます。
一方、モザンビークはまだそれだけ強い人は少ない実情があります。自分たちが「貧しいから開発しなければいけない」と言われると、そのまま受けてしまう。ブラジルから運動の在り方を学ぶこともアフリカにとっては大きい意味があります。そのことは、私たち日本人にとってもとても大きな意味をもちます。
土地収奪はどういうものか。いろいろありますが、大規模で起きる典型的なものは、次のような形です。アフリカやアジアの多くの国では、人々が土地の所有権を持たずに利用権のみを持っています。モザンビークも土地法があり「そこで10年暮らして耕した者は生涯にわたりその土地を利用する権利がある」と法律で謳われています。ですが、一方で外から来た企業などが、土地を登録できる制度などもあり、総体として、土地に対する権利が曖昧な部分もあります。その実情が利用されます。例えば、企業などが土地取得する際には利用している農民らとの話し合いが必要とされますが、その際、「ここの使っていない土地を使わせてくれたら、学校も病院も建てるし、工場を造って雇用もする」と約束しますが、実際にはこれら約束は守られず、最初に使わせてくださいと言った狭い土地を拠点に、農民が作物を植えている土地でブルドーザーを使って作物を抜き、周りの木を倒し始め、「怖がって村人のほうが勝手に逃げて行ったのだから強制的に土地を奪ったのではない」という頓珍漢な論理のもとに土地を奪っていきます。話し合いすらないこともあります。
そこに、現地の政府が加担しているといえます。本来、こうしたことが起きたら、住民、農民らとの権利を守るべきとこだが、それがなされていない。なぜなら、そうした利権が自分の懐にも入るからです。例えば、表紙の土地収奪を行った企業は、前大統領の投資企業が保有するものです。このように、土地収奪は、政治と強く絡んでいて、人権が守られません。様々な形で行われていますが、大きいところでは、このような形でなされています。
――対話交流タイム――
※コーディネータ=轟木洋子・SJF審査委員
轟木) SJFの審査委員はユニークな人が集まっていると思います。応募される申請事業を見ると、私たちが実現したいもの、そのものなのですね。助成することで、私たちが実現したい社会に少しでも近づいて行けるかな、そういった気持で審査しております。
申し訳ないのは、ファンドが大変限られておりまして、本当はもっとたくさんの事業に助成したいのですが、限られた所だけになっているのは非常に残念です。今年度から、庭野平和財団の方に新しく加わっていただきましたけれども、できるだけたくさんのところを巻き込んで、もうすこしお金を用意して、少しでもみなさんの手助けになりたいし、目指す社会に近付ければなと思っております。
みなさんは今日、いろいろな想いでお集まりのことと思います。いろいろな団体の話を聴いてのご感想やご質問などいかがでしょうか。
参加者) 木口さん(メコン・ウォッチ)と小野さん(わかもののまち静岡)に質問があります。
木口さんのお話のなかで、西欧のNGOが外の価値観を現地に持ち込むのではなく、現地で生活し働いている人の価値観を尊重し同意をとるという話は、そうだなと思いました。なかなかその部分がユニバーサルに行かないなかで、国連がSDGsという「持続可能な開発目標」を定めたことで、共通の枠組み、土俵が定められたと受けとめてよいかと思います。今後パリ協定にむかっていくなかで、先進国と途上国がいろいろな議論のなかで、NGOもそこに加わっていって、一定の到達点を得たという形で、開発評価の手法などが生まれればいいなと思いました。
SDGsが設定されたことを、運動の側からどういうふうにご覧になっていますかコメントください。
小野さんのお話については、行政の側に義務教育課程までの子育て支援はあるのですが、それを超えると、若者参画や支援をきちっとやっている自治体はなかなかありません。東京では世田谷区が一生懸命やっていると思いますが。静岡で、みなさんの活動に刺激をうけて、行政が対応する組織をつくるなど、新しい動きがあればご紹介ください。
すごく大事だけど難しいなと思ったのは、「参加する一部の若者ではなく、すべての若者の声を集める」ということ。要するに、一部の立場だけを出すのではないということだと思います。日本に限らず、社会が分断されていて、ネット空間を見ると罵詈雑言の投げ合いのような現状があるなかで、その基本的なスタンスをもって具体的にどういうことをやろうとお考えでしょうか。
SDGs(国連・持続可能な開発目標)で開発現地は尊重されるか
木口由香さん) SDGsがあることは素晴らしいと思いますが、(私からすると)中身は玉石混交です。ある種、妥協の産物で、企業が入りやすいようにした。それは、ビジネスを変えないと今起きている環境問題や人権問題を解決できないからです。また、問題設定は正しいと思いますが、それをSDGsという目標に落としこむなかで、いろいろな矛盾が生じるのでは。目標を全部きちんと達成しても、おそらくいろいろな問題がこぼれ落ちますし、地球環境は持たないように思います。
ただ、目標があることで、いろんなところが変わる、行政が関わりやすくなる、企業さんも入ってきやすくなるということではとても重要だと思っています。それぞれのアプローチで世界を変えていくためのツールではあるとは思います。
自治体の若者参画支援の動き
小野航汰さん) まず、行政の対応として静岡市・焼津市でどのようなことがあるかをお話いたします。
弊団体が発足した経緯として、「もうひとつの放課後プロジェクト」という中高生の余暇活動支援がありました。中高生がこんなことをやってみたいということを大学生が支援していく活動で、これが原点にあります。ここから派生した活動として、わかもののまち静岡があります。
そのなかで、若者が意見を行政や市民のみなさんに広く伝えていく仕組みとして、「静岡市若者会議」を昨年度、静岡市主催で弊団体がコーディネートする形でやらせていただきました。
また焼津市ではユースセンターで、市が管理している建物を弊団体が事業委託をいただき、週2日(来年度からは週4日)開館し、放課後に中高生たちが集まって、勉強やお話をする施設を運営しています。そのなかで、商店街で自分のやりたいことをやるというプログラムをつけ、行政側に地域の活性化という名目でそういう施設をつくっていただいている取り組みです。
世田谷区で行われているような活動の延長線上にあると思います。それ以上の活動はできていない現状です。
市役所なり行政がどれだけ管理してよいかという問題はあります。民間で、子どもや若者が自発的に活動しているユースセンターの方が、波はありますが勢いが強いです。善し悪しだなという印象をうけます。
民主主義の仕組みをどう体現していくか。僕も若者として、教育を受けてきたなかで、民主主義イコール多数決という感覚がありました。活動をすることは、本質的な民主主義って何だろうと考える機会になりました。
みんなの意見を本当に聴いていく、みんなの意見を体現するためのものということを強く意識し続けることが重要だと思います。だれかの声に耳を傾け続けるというマインドを、ローカルユースカウンシルのハンドブックで問い続けていくことが大切だと思っています。
活動の共感者をどう増やしたらよいか
参加者) 重要な活動を行っているにもかかわらず支援をなかなか受けにくい活動をソーシャル・ジャスティス基金がサポートしていることに感銘を受けました。
木口さんの「活動の共感者をどう増やしたらよいか」という問いかけについてお話させてください。
関心をもってもらうきっかけは重要です。こういう時代なので、文章だけでは難しいでしょう。映像、15分・20分では見てくれないと思うので、たとえば5分間の映像をつくります。その映像では、どういった問題の本質があって、どうやってNGOの方が関わっているのかを伝え、支援を受けている方たちの声を届ける。誤解を受けないよう、導入は分かりやすくシンプルで、深いところまで考えてもらうような映像づくりには、専門的な方の協力が必要だとは思います。プロボノをやりたいと思っている方たちをつなげられればいいのではないでしょうか。
ただ作っただけではだめで、YouTubeなど投稿サイトに流したり、メディアなど影響力のある媒体に載せてもらったり、幅広く伝えていくことが重要だと思います。こういうのを少しずつ積み重ねて広めていく。何か聴いたら、志を立てて、何かやろうかという人は、知らない所にたくさんいると思います。
轟木) しあわせなみださんは情報発信が上手なようですが、ふだん心がけていらっしゃることは何でしょうか。
暴力をする人は、本当は暴力を無くすことができるんだ
中野宏美さん) TVプロボノに関わっている方に、プロボノで動画をつくっていただいて、日々の講演でも活用しています。CMや番組をつくっている方がプロボノで作成してくれます。
私たちが情報発信で工夫していることは、「性暴力」という言葉じたいが非常に難しい言葉、かなりインパクトの大きい言葉なので、それをいかに伝えるかは試行錯誤しています。
心がけていることは――、明るく楽しく。性暴力は深刻な問題です。でも、性暴力にあって悲しい時期、つらい時期はありますが、24時間365日、暴力に遭っているわけではない。そうではない瞬間があります。
「しあわせなみだ」という団体名には「いつかしあわせを感じて、なみだを流せる日が来る」という想いも込めているのですが、私たちが伝えたいのは、加害者を単に厳罰に処せばいいということではなくて、「私たちには暴力をしない選択をできる力を持っている」ということ。
性暴力撲滅活動は、「すべての人は暴力を無くす力を持っている」と相手を信じる活動だと思っています。そこは、これまで性暴力に関して活動してきた団体とは少し異なる部分かと思っています。「加害者対被害者」という、対立する見せ方というのは分かりやすい構造ではあるのですが、受け入れる人が限定されてしまう。暴力を振るおうとしている人に、「本当は暴力を無くすことができるんだ」と可能性を伝えていく、そこは工夫をしているところかもしれません。
轟木)奥村さんの障害児施設への市民アドボケイトの活動は、施設は密室になりやすいところで、私たちが知らない施設のなかで想像を超えた生活があることを報告いただきました。今日、他の方の活動のお話をきいて、これからの活動の参考になることなどございましたら一言お願いします。
奥村仁美さん) 施設を開くために私たちが入っていくことかなと思います。政策提言をしていくためにも、いかに私たちが施設を開いていくことかなと思います。
動画のお話がありましたが、写真1つ慎重ななかで、記述をどうするかがものすごく課題です。事実を伝えたいと思っても、思いだけでは受け入れてもらえないだろうなということに縛られていたのですが、やはりコミュニケーションがうまくできず障害をもつ子どもの情報が少ないなかで、スーパービジョンでは、しっかり自分の思いを書きなさいと、あなたの思いがどう動いたか、なぜその子にこの質問をしたか、その子の態度がどう変わったか、そういったことをたくさん書いて伝えていきましょうとなりました。いままで自分が考えていた発信の仕方と違うので、自分の思いを伝えても独りよがりにならないのかといった心配はいろいろありますが、エピソード記述なども学んでみようかなと、いろんなところから、みなさんに伝え聞いていただくことを考えています。
――閉会挨拶――
大河内秀人・SJF審査委員/企画委員) 一堂に会していただいてお話をうかがいあえたこと、1年の初めに良いかなと思います。審査委員として選考に携わり、寄せられた社会課題にショックをうけています。
問題のいちばんの本質、ほとんどの人が通り過ぎてしまうような課題に、現場で寄り添って、ひとつひとつ丁寧に取り組んでおられる事業を少しでも支えていきたいと思っております。本当に大変でくじけることも多いと思いますが、地べたでやっているからこそ得られる手ごたえを、おたがい持ち寄りながら、傷をなめ合うのではなく、これからのジャスティスにむかって一緒に積み上げていきたいと思っております。■
●次回アドボカシーカフェのご案内
『放射能災害から命,健康,くらしを守る――「チェルノブイリ法日本版」を市民立法で』
【登壇】崎山比早子さん(医学博士/3・11甲状腺がん子ども基金代表理事)
長谷川克己さん(避難当事者として市民運動に参加)
柳原敏夫さん(法律家/脱被ばく問題に取り組む)
【日時】2018年2月22日(木) 18:30~21:00
【会場】文京シビックセンター
【詳細】こちらから