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ソーシャル・ジャスティス雑感(SJFメールマガジン2020年11月18日配信号より)

北朝鮮の核使用禁止への第一歩

(辻 利夫/SJF企画委員)

 

 アメリカ大統領選や新型コロナ感染のニュースに押されて、あまり注目されなかったように思われるが、10月24日、国連は50ヵ国が核兵器を「違法」として禁止する国連条約を批准し、2021年1月22日に発効すると発表した。10月24日は、第2次大戦で日本とドイツに宣戦した50か国の連合国が署名した国連憲章が批准され、国連が公式に設立された75周年にあたる日でもあった。

 核兵器禁止条約には、国連常任理事国でもある米中ロ英仏に、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の核保有国が反対し、ドイツなどNATO加盟のヨーロッパ諸国も不参加、安全保障をアメリカの核の傘に依存している韓国、そして日本も核保有国が不参加のため実効性に欠けるとして不参加を表明している。

 日本はこの間、米英仏中ロ5カ国の核保有を認めたうえで核軍縮を進める核拡散防止条約(NPT)に基づく核廃絶の道を目指してきた。しかし、核兵器の削減は進まず、むしろ小型化によって核使用のハードルが低くなっている一方で、NPTを脱退した北朝鮮は、国連の経済制裁も無視して核兵器開発を加速させ、核ミサイル攻撃の能力を強化させている。朝鮮半島で戦争が起きれば、韓国ばかりでなく日本も北朝鮮の核ミサイル攻撃により甚大な被害を受ける可能性は高い。

 ちなみに、日本が締結している「朝鮮国連軍地位協定」では、米朝戦争になれば、日本の了解がなくても横田や沖縄の7か所の米軍基地は後方基地として使用されることになり(横田基地は朝鮮国連軍の後方司令部)、北朝鮮の核ミサイルの攻撃対象になる。

 核兵器禁止条約は、核兵器の開発や生産、使用、保有などに加えて「使用するという威嚇」まで違法として禁じている。NPTによる核軍縮が袋小路に陥っているなかで、北朝鮮の核攻撃の脅威にさらされている日本が取り組むべきは、国連が定めた核兵器禁止条約を基に、まずは北東アジアの北朝鮮・韓国・日本に対する核兵器の使用禁止を、アメリカを交えた4か国で協約することではないかと思う。これには、韓国との合意と協力体制が不可欠であることは言うまでもなかろう。その前提として、相互不信が鬱積し過去最悪といわれる日韓関係の改善が図られなければならない。

 韓国の日本不信の根源は、朝鮮人民に多大の犠牲を強い、民族の尊厳をも奪った日本の植民地支配への明確な謝罪がないことである。それは、北朝鮮も同様であろう。日本の安全保障を名目に、日清・日露戦争を経て当時の大韓帝国を併合・植民地とした日本が、いま自国の安全保障のために、北東アジアの非核化を進める第一歩として北朝鮮の核使用の禁止を実現するには、なによりも日本不信の解決が求められている。

 

 

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